ここは弊社のゲームです~ただしBLゲーではないはずなのに!~

マツヲ。

文字の大きさ
83 / 188

83:甘やかなる攻防戦

しおりを挟む
 どれだけそこに気持ちがあろうとも、こたえるわけにはいかない事情がある。
 いずれにしても、俺が悪いことに変わりはないけれど。

 だって、ブレイン殿下はなにも悪くない。
 むしろ身分差をかんがえたら、誠実すぎるほど誠実にこちらへの愛を告げてくれたのに。
 なのに、その気持ちにこたえられないのは、俺側の一方的な事情にすぎなくて。

 それでもブレイン殿下は、俺のためにと、色々と心をくだいて懸命に甘やかそうとしてくれる。
 そんなことされたら、ますます好きになってしまうじゃないか!

 だって、かんがえてもみろよ。
 数ある選択肢のなかから、相手ならばどれがいちばんよろこぶだろうかって、そんなふうにかんがえながら自分の言動を選ぶなんてさ。
 相手のことが好きじゃなきゃ、大切に思われてなきゃ、しないことだろ?

 これまでこの世界でのテイラーというキャラクターは、そんなふうにだれかの言動の理由として考慮してもらえたことなんて、たぶんなかったから……。
 それどころか、自分自身の言動ですら、パレルモ様のためでしかなくて。
 ひとことであらわすならば、『大事にされてこなかった子』だったんだ。

 そんなテイラーが、いきなりブレイン殿下なんていうハイスペックな美形に愛されてみろ。
 まず、まちがいなく消化不良を起こすから。

 万が一にも、あふれるほどの愛なんてそそがれたら、溺れるどころか溺死待ったなしだ。
 乾いた砂漠に生えるサボテンだって、いきなりたくさんの水をあたえられたら根腐れを起こすものだし、まぁそれと似たようなモンだろう。

「やっぱり、顔色があまりよくないね?」
「……ふつうの体力しかなかったら、そうなります」
 暗に昨夜のおまえのせいだと告げれば、ブレイン殿下は苦笑を浮かべる。

「おっと、私のせいだったか。それはすまなかったね」
「っていうか、殿下こそどういう体力してんですか?!そんなにガッつかれたら、ふつうのご令嬢なら死んじゃいますよ!?」
 それはもう、リアルにガチで。

「うーん、キミ以外には、ここまで励んでしまったことはないからなぁ……なんてったって、はじめての『特別』な存在だからねぇ」
「っ、どうしてそういうこと……っ!」
 なのに、そのかえし方、ズルくないか!?

 そりゃ、長らく固定の恋人を作っていなかったブレイン殿下にとっては、偽装とはいえ恋人ができたなら『特別』と言っていいのかもしれないけども。
 わかっているのに、毎回そんな思わせぶりなことを言われるたびに、動揺してしまう。

 顔は熱いし、心臓はうるさいくらいにバクバクいっている。
 俺の事情なんて知ったこっちゃないと言わんばかりに、からだは全力で『この人のことが好きだ』と訴えてくるから困った。

「そうやって顔を赤くして照れてくれるから、つい期待してしまうんだけどね?私のことを愛してくれるんじゃないか、って……」
 そこで言葉を区切り、ブレイン殿下はジッとこちらを見つめてくる。

「……っ、それは最初に申しあげたハズです!そのお気持ちをたまわるわけにいかないって」
 その真摯なまなざしに耐えられなくなって、そっと視線をはずすと、ささやくようにこたえた。
 本音を言えば、そうできるのなら、どれだけよかったことか……。

 でも、テイラーというキャラクターについている属性は、あくまでも『星華せいかとき』のモブのひとりにすぎなくて、そうでなくても攻略対象キャラクターであるパレルモの取りまきの筆頭という立ち位置でしかない。
 そこから逸脱するわけには、いかないだろ!

 そんなことしたら、俺自身がこの世界の改変を行ってしまうことになる。
 それをただすためにこの世界に来たというのに、ミイラ取りがミイラになるみたいなこと、できるわけがないと思う。

「うーん、フラれてしまったか……本当にキミは難攻不落だねぇ」
 なんてことのないような言い方をして、極力重たい空気にならないようにしてくれるブレイン殿下のやさしさが身に染みる。

 本当に、めちゃくちゃイイ男じゃん!!
 どうして俺なんかに興味を持ってしまったのかはわからないけれど、本来ならブレイン殿下は最強のモテ男のハズなのに。
 ヒロインと結ばれるかどうかはさておいたとしても、しあわせになってもらいたいって、そう心の底から願いたくなる。

「だいたいブレイン殿下なら、よりどりみどりなんじゃないですか?」
 だから俺も、冗談めかして相づちを打つ。
 本人さえその気になれば、だれだって狙いどおりに落とせるだろうに。

「それが、私が欲しいと願う子だけは、なぜかふりむいてくれなくてね」
「それはまた、難儀な子もいたものですね」
 まるで他人ごとのようにかえせば、ほんのりと不満げにくちびるをとがらせてくる。

 その顔がまた少し幼く見えて、いつもの落ちついた知的な印象をあたえる表情とは異なっていて、思わずドキリと胸が高鳴った。
 さらにはその指先が、もてあそぶようにこちらの髪を梳いてくるのがくすぐったくて、ちょっと肩がハネてしまったけど。

「───もういっそのこと、閉じ込めて私しか見ないようにしてしまおうかと、かんがえそうになってしまったんだけどね……?」
「なんですか、それ。えらい物騒じゃないですか」
 髪をいじっていた手が、こちらのほっぺたに添えられる。

「だって、そうでもしないと、キミはどこかへ行ってしまいそうだから」
「っ!」
 俺の顔の横にもう片方の手をつき、そのままおおいかぶさるように、こちらの顔をのぞき込んできた。

 そのバラ色の瞳は切なげに細められ、ゆっくりとこちらへと近づいてくる。
 これって……ひょっとして、キスされる……?
 ど、どうしよう?!

 今さらながら、キスひとつでも動揺してしまう自分が情けなくて、よけいにほっぺたが熱くなる。
 うわあぁ、どうすれば?!
 わけがわからなくなって、ぎゅっと目を閉じれば、間近なところで相手がかすかに笑ったような気配がした。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙にはAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。 校正も自力です(笑)

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃がはじまる──! といいな!(笑) 本編完結済、ロデア大公立学園編、はじめました! 本編のあと、恋愛ルートやおまけのお話に進まずに、すぐロデア大公立学園編に続く感じです。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。 皆さまありがとうございます。 「ねえ、私だけを見て」 これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。 エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。 「この恋、早く諦めなくちゃ……」 本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。 この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。 番外編。 リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。 ――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

処理中です...