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83:甘やかなる攻防戦
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どれだけそこに気持ちがあろうとも、こたえるわけにはいかない事情がある。
いずれにしても、俺が悪いことに変わりはないけれど。
だって、ブレイン殿下はなにも悪くない。
むしろ身分差をかんがえたら、誠実すぎるほど誠実にこちらへの愛を告げてくれたのに。
なのに、その気持ちにこたえられないのは、俺側の一方的な事情にすぎなくて。
それでもブレイン殿下は、俺のためにと、色々と心をくだいて懸命に甘やかそうとしてくれる。
そんなことされたら、ますます好きになってしまうじゃないか!
だって、かんがえてもみろよ。
数ある選択肢のなかから、相手ならばどれがいちばんよろこぶだろうかって、そんなふうにかんがえながら自分の言動を選ぶなんてさ。
相手のことが好きじゃなきゃ、大切に思われてなきゃ、しないことだろ?
これまでこの世界でのテイラーというキャラクターは、そんなふうにだれかの言動の理由として考慮してもらえたことなんて、たぶんなかったから……。
それどころか、自分自身の言動ですら、パレルモ様のためでしかなくて。
ひとことであらわすならば、『大事にされてこなかった子』だったんだ。
そんな俺が、いきなりブレイン殿下なんていうハイスペックな美形に愛されてみろ。
まず、まちがいなく消化不良を起こすから。
万が一にも、あふれるほどの愛なんてそそがれたら、溺れるどころか溺死待ったなしだ。
乾いた砂漠に生えるサボテンだって、いきなりたくさんの水をあたえられたら根腐れを起こすものだし、まぁそれと似たようなモンだろう。
「やっぱり、顔色があまりよくないね?」
「……ふつうの体力しかなかったら、そうなります」
暗に昨夜のおまえのせいだと告げれば、ブレイン殿下は苦笑を浮かべる。
「おっと、私のせいだったか。それはすまなかったね」
「っていうか、殿下こそどういう体力してんですか?!そんなにガッつかれたら、ふつうのご令嬢なら死んじゃいますよ!?」
それはもう、リアルにガチで。
「うーん、キミ以外には、ここまで励んでしまったことはないからなぁ……なんてったって、はじめての『特別』な存在だからねぇ」
「っ、どうしてそういうこと……っ!」
なのに、そのかえし方、ズルくないか!?
そりゃ、長らく固定の恋人を作っていなかったブレイン殿下にとっては、偽装とはいえ恋人ができたなら『特別』と言っていいのかもしれないけども。
わかっているのに、毎回そんな思わせぶりなことを言われるたびに、動揺してしまう。
顔は熱いし、心臓はうるさいくらいにバクバクいっている。
俺の事情なんて知ったこっちゃないと言わんばかりに、からだは全力で『この人のことが好きだ』と訴えてくるから困った。
「そうやって顔を赤くして照れてくれるから、つい期待してしまうんだけどね?私のことを愛してくれるんじゃないか、って……」
そこで言葉を区切り、ブレイン殿下はジッとこちらを見つめてくる。
「……っ、それは最初に申しあげたハズです!そのお気持ちをたまわるわけにいかないって」
その真摯なまなざしに耐えられなくなって、そっと視線をはずすと、ささやくようにこたえた。
本音を言えば、そうできるのなら、どれだけよかったことか……。
でも、テイラーというキャラクターについている属性は、あくまでも『星華の刻』のモブのひとりにすぎなくて、そうでなくても攻略対象キャラクターであるパレルモの取りまきの筆頭という立ち位置でしかない。
そこから逸脱するわけには、いかないだろ!
そんなことしたら、俺自身がこの世界の改変を行ってしまうことになる。
それをただすためにこの世界に来たというのに、ミイラ取りがミイラになるみたいなこと、できるわけがないと思う。
「うーん、フラれてしまったか……本当にキミは難攻不落だねぇ」
なんてことのないような言い方をして、極力重たい空気にならないようにしてくれるブレイン殿下のやさしさが身に染みる。
本当に、めちゃくちゃイイ男じゃん!!
どうして俺なんかに興味を持ってしまったのかはわからないけれど、本来ならブレイン殿下は最強のモテ男のハズなのに。
ヒロインと結ばれるかどうかはさておいたとしても、しあわせになってもらいたいって、そう心の底から願いたくなる。
「だいたいブレイン殿下なら、よりどりみどりなんじゃないですか?」
だから俺も、冗談めかして相づちを打つ。
本人さえその気になれば、だれだって狙いどおりに落とせるだろうに。
「それが、私が欲しいと願う子だけは、なぜかふりむいてくれなくてね」
「それはまた、難儀な子もいたものですね」
まるで他人ごとのようにかえせば、ほんのりと不満げにくちびるをとがらせてくる。
その顔がまた少し幼く見えて、いつもの落ちついた知的な印象をあたえる表情とは異なっていて、思わずドキリと胸が高鳴った。
さらにはその指先が、もてあそぶようにこちらの髪を梳いてくるのがくすぐったくて、ちょっと肩がハネてしまったけど。
「───もういっそのこと、閉じ込めて私しか見ないようにしてしまおうかと、かんがえそうになってしまったんだけどね……?」
「なんですか、それ。えらい物騒じゃないですか」
髪をいじっていた手が、こちらのほっぺたに添えられる。
「だって、そうでもしないと、キミはどこかへ行ってしまいそうだから」
「っ!」
俺の顔の横にもう片方の手をつき、そのままおおいかぶさるように、こちらの顔をのぞき込んできた。
そのバラ色の瞳は切なげに細められ、ゆっくりとこちらへと近づいてくる。
これって……ひょっとして、キスされる……?
ど、どうしよう?!
今さらながら、キスひとつでも動揺してしまう自分が情けなくて、よけいにほっぺたが熱くなる。
うわあぁ、どうすれば?!
わけがわからなくなって、ぎゅっと目を閉じれば、間近なところで相手がかすかに笑ったような気配がした。
いずれにしても、俺が悪いことに変わりはないけれど。
だって、ブレイン殿下はなにも悪くない。
むしろ身分差をかんがえたら、誠実すぎるほど誠実にこちらへの愛を告げてくれたのに。
なのに、その気持ちにこたえられないのは、俺側の一方的な事情にすぎなくて。
それでもブレイン殿下は、俺のためにと、色々と心をくだいて懸命に甘やかそうとしてくれる。
そんなことされたら、ますます好きになってしまうじゃないか!
だって、かんがえてもみろよ。
数ある選択肢のなかから、相手ならばどれがいちばんよろこぶだろうかって、そんなふうにかんがえながら自分の言動を選ぶなんてさ。
相手のことが好きじゃなきゃ、大切に思われてなきゃ、しないことだろ?
これまでこの世界でのテイラーというキャラクターは、そんなふうにだれかの言動の理由として考慮してもらえたことなんて、たぶんなかったから……。
それどころか、自分自身の言動ですら、パレルモ様のためでしかなくて。
ひとことであらわすならば、『大事にされてこなかった子』だったんだ。
そんな俺が、いきなりブレイン殿下なんていうハイスペックな美形に愛されてみろ。
まず、まちがいなく消化不良を起こすから。
万が一にも、あふれるほどの愛なんてそそがれたら、溺れるどころか溺死待ったなしだ。
乾いた砂漠に生えるサボテンだって、いきなりたくさんの水をあたえられたら根腐れを起こすものだし、まぁそれと似たようなモンだろう。
「やっぱり、顔色があまりよくないね?」
「……ふつうの体力しかなかったら、そうなります」
暗に昨夜のおまえのせいだと告げれば、ブレイン殿下は苦笑を浮かべる。
「おっと、私のせいだったか。それはすまなかったね」
「っていうか、殿下こそどういう体力してんですか?!そんなにガッつかれたら、ふつうのご令嬢なら死んじゃいますよ!?」
それはもう、リアルにガチで。
「うーん、キミ以外には、ここまで励んでしまったことはないからなぁ……なんてったって、はじめての『特別』な存在だからねぇ」
「っ、どうしてそういうこと……っ!」
なのに、そのかえし方、ズルくないか!?
そりゃ、長らく固定の恋人を作っていなかったブレイン殿下にとっては、偽装とはいえ恋人ができたなら『特別』と言っていいのかもしれないけども。
わかっているのに、毎回そんな思わせぶりなことを言われるたびに、動揺してしまう。
顔は熱いし、心臓はうるさいくらいにバクバクいっている。
俺の事情なんて知ったこっちゃないと言わんばかりに、からだは全力で『この人のことが好きだ』と訴えてくるから困った。
「そうやって顔を赤くして照れてくれるから、つい期待してしまうんだけどね?私のことを愛してくれるんじゃないか、って……」
そこで言葉を区切り、ブレイン殿下はジッとこちらを見つめてくる。
「……っ、それは最初に申しあげたハズです!そのお気持ちをたまわるわけにいかないって」
その真摯なまなざしに耐えられなくなって、そっと視線をはずすと、ささやくようにこたえた。
本音を言えば、そうできるのなら、どれだけよかったことか……。
でも、テイラーというキャラクターについている属性は、あくまでも『星華の刻』のモブのひとりにすぎなくて、そうでなくても攻略対象キャラクターであるパレルモの取りまきの筆頭という立ち位置でしかない。
そこから逸脱するわけには、いかないだろ!
そんなことしたら、俺自身がこの世界の改変を行ってしまうことになる。
それをただすためにこの世界に来たというのに、ミイラ取りがミイラになるみたいなこと、できるわけがないと思う。
「うーん、フラれてしまったか……本当にキミは難攻不落だねぇ」
なんてことのないような言い方をして、極力重たい空気にならないようにしてくれるブレイン殿下のやさしさが身に染みる。
本当に、めちゃくちゃイイ男じゃん!!
どうして俺なんかに興味を持ってしまったのかはわからないけれど、本来ならブレイン殿下は最強のモテ男のハズなのに。
ヒロインと結ばれるかどうかはさておいたとしても、しあわせになってもらいたいって、そう心の底から願いたくなる。
「だいたいブレイン殿下なら、よりどりみどりなんじゃないですか?」
だから俺も、冗談めかして相づちを打つ。
本人さえその気になれば、だれだって狙いどおりに落とせるだろうに。
「それが、私が欲しいと願う子だけは、なぜかふりむいてくれなくてね」
「それはまた、難儀な子もいたものですね」
まるで他人ごとのようにかえせば、ほんのりと不満げにくちびるをとがらせてくる。
その顔がまた少し幼く見えて、いつもの落ちついた知的な印象をあたえる表情とは異なっていて、思わずドキリと胸が高鳴った。
さらにはその指先が、もてあそぶようにこちらの髪を梳いてくるのがくすぐったくて、ちょっと肩がハネてしまったけど。
「───もういっそのこと、閉じ込めて私しか見ないようにしてしまおうかと、かんがえそうになってしまったんだけどね……?」
「なんですか、それ。えらい物騒じゃないですか」
髪をいじっていた手が、こちらのほっぺたに添えられる。
「だって、そうでもしないと、キミはどこかへ行ってしまいそうだから」
「っ!」
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これって……ひょっとして、キスされる……?
ど、どうしよう?!
今さらながら、キスひとつでも動揺してしまう自分が情けなくて、よけいにほっぺたが熱くなる。
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