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マツヲ。

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139:匂わせられる恋心

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 クソ、なんなんだよこれ、気持ち悪りぃ……!!
 心のなかで毒づけば、心なしか頭痛や耳鳴りまでひどくなった気がする。
 たぶん、ロコトにかがされたあの薬品の効果なんだよな?

「……君、ホントにムチャするヨネ。まだ回復しきってないンダカラさ」
「うぅ……」
 あきれたように言う声を聞きながら、砂嵐におおわれた視界のまま、身じろぎする。

 だってマオトは悪意ある相手にだまされて、ブレイン殿下の心が離れていくように誘導されてしまっただけの被害者にすぎないんだから、心配にもなるだろ!
 本人が人から言われたことをすなおに受け止めるタイプだったがゆえに、そして努力家だったのも悪い方向に作用してしまったというのが、今回の真相なんだろ?

 かんがえてもみろよ、心の底から敬愛するブレイン殿下に『これ以上愛するつもりはない』なんて言われたときにマオトが感じた痛みは、どれほどのものだっただろうか?ってこと。
 そのときの絶望感は、はかりしれないほどに深いものだっただろうし、同情して余りあると思う。

 それは今の俺にとっても、決して他人ごとではなかったから。
 ロコトのたくらみが成功していたら、俺だってブレイン殿下のそばにいることすら、ゆるされない存在になっていたかもしれないのだし……。

 きっとマオトのほうは、あくまでも今のブレイン殿下の恋人に嫉妬して、文句のひとつも言いたかっただけなんだと思う。
 なら、ほっぺたをはたかれたのをふくめ、俺が受け止めてやればいいだけの話だろ!
 俺が今、ブレイン殿下を独占してしまっているのは事実なんだから、それくらいは覚悟のうえだ。

 でも現実は、そう甘くはない。
 すべてを俺の胸のうちにおさめるだけで済ませたくとも、すでにこれはブレイン殿下の知るところとなってしまっている。

 たぶんロコトが連行されたというなら、まちがいなくマオトだって無関係とは思われないだろうし、そうなったらブレイン殿下から、いったいどんな目で見られることか!
 きっと犯罪者でも見るような、そんな氷のように冷たい目で蔑まれるにちがいない。

 ───だって彼らは俺にケガをさせ、さらにロコトのほうは、もっとヒドイ目に遭わせようとたくらんでいたのだから。

 これでもちゃんと、あの人から向けられている愛の重さくらい、理解しているつもりなんだ。
 だからこそ、俺が関わったせいでマオトがさらにツラい思いをするのも見逃せなかったし、そんな誤解の末の悲劇を、悲劇のままにはしておきたくなかった。
 そうだよ、それを止められるのは、俺をおいてほかにいないだろ!

 それにもっと言えば、あのときのロコトは気になるセリフを吐いていたんだ。
 それは、俺がかがされた薬の出どころについて。
 なにしろ『いざというときに使え』と言われたらしいのだから、それはあの兄弟を───もっと言えばロコトをたきつけた犯人は別にいるってことになるんじゃないかって。

 そいつはおそらく、この世界に侵食して腐った世界に改変しようとしているヤツと、無関係じゃないハズだ。
 パレルモ様至上主義のそいつにとって、今の俺はジャマな存在にちがいないし、かといって奪った権能の力だけでは強制排除ができないとしたら、だれかをたきつけて代わりに俺を陥れるのが次善の策になるんだと思う。

 そう思うからこそ、相手の正体をあばいて追いつめるには今、俺にはロコトたちから話を聞く必要があるんだ。

「セラーノ先生、お願いです!俺を懲罰房へ連れてってください!」
「エェッ!?それどころじゃナイデショ、君!?」
 貧血の症状が出ているのに耐えながら、必死にひじをついて身を起こすと、目の前のセラーノ先生の腕をつかむ。

「それでも今、俺が行かなきゃいけないんです!」
 これに関しては、みじんもゆずる気はなかった。
 ともすればゆらぎそうになる視界に、必死に気合いを入れてじっと相手の目を見つめる。

 ───やがて、俺の望むとおりに折れてくれたのは、セラーノ先生のほうだった。

「……はぁ……君ッテ、トコあるヨネ~」
 あきらめたようにセラーノ先生は大きなため息をつくと、汗でおでこに張りついてしまっていた俺の前髪を、指先で払ってくれる。
 その笑顔はいつもの糸目とおなじハズなのに、やけに頼もしく見えた。

「仕方ナイ、君のワガママに付き合ッテあげるヨ」
「ありがとうございます」
 肩の力を抜き、あきらめたように大きなため息をつくセラーノ先生にぺこりとあたまをさげる。

「まぁ───そンな君ダカラこそ、好きになッタンだしネ」
「え……っ!?」
 俺がねばり勝ちをしたところで、しかしセラーノ先生は予想外のひとことをぶちこんできた。

「な、んで……っ?」
「フフッ、おどろいタ?もちろん……冗談だけどネ」
 とても額面どおりには受けとれないような、そんなツラそうな顔をしながら、なお笑って見せるセラーノ先生に、キュッと心臓のあたりが痛みを訴えてくる。

 ───どうして俺なんだろう?
 最初に思ったのは、それだった。
 だって『星華せいかとき』の攻略対象キャラクターは、皆それぞれに周囲の人から好かれておかしくないほど魅力的な人物のハズなのに……。

「セラーノ先生……」
「ダメダヨ、ちゃんと冗談ダって信じてくれなきゃ」
 だけど俺に気をつかわせまいとしているのか、なおも笑顔を重ねてくる。

「…………っ!」
 そのせいで、なにも言えなくなっていた。
 だって今はなにを言ったところで、きっと逆効果にしかならないと思うから。

 シナリオライターなんていう職業だったくせに、こんなときに気の利いたセリフひとつ浮かばないなんて!
 そんな自分が情けなくて、くやしくて、無力感に泣いてしまいそうだった───本当に泣きたいのは、俺のほうじゃないハズなのに……。
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