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7.目覚めてみれば、囚われの身の上
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なんだろう、フワフワとして、あったかい。
なのにからだは重たくて、寝返りを打つことさえ億劫だ。
……と、そう思ったところで、ふいに意識は浮上した。
「───っ、ん、ここは……?」
「おはよう、ようやく目覚めたかい、リアルト?君のかわいい寝顔を見ているのも、とても楽しい時間だけどね?」
見覚えのない、真っ白い部屋。
それが天蓋つきの大きなベッドだと気づいたのは、真横からかけられた声のせいだ。
「なっ!!シエルっ?!」
とっさに飛び起きようとして、ジャラリという音と、首もとの圧迫感に気がついた。
「な、んだよ、これ……っ!?」
それは、己の首につけられた首輪のようなものだった。
そこから伸びる太い鎖は、その天蓋つきの大きなベッドの支柱へとつながっている。
しかもこの感触、首に巻かれた革のベルトのようなものには、魔力を封じるための細工がされているらしい。
おかげで、妙にからだがダルかった。
「どこだよ、ここ?」
まるで見覚えのない景色だ。
添い寝をするような位置からこちらを見下ろしていたシエルにたずねれば、魔王とは思えないような、実にかわいらしい天使の笑みがかえされる。
「ん、ここ?ここは僕の城だよ。ようやく君を迎えるための準備がととのったんだ」
「どういう意味だよ、それ!?」
そこはかとなく不穏な空気を感じとりながら相手をにらみつければ、あたりまえのように額にキスを落とされた。
「ずっと君が欲しかった。人の身でありながら、この僕と拮抗する魔力、それにとことん効率化された、その美しい魔法の術式の数々。そのすべてを、僕のものにしたい」
うっとりとささやきかけられる声は甘く、その声に耳を傾けてしまえば最後、わけもわからずにうなずきたくなってしまう。
魔王が魔王たる所以は、この『魅了』の力にあった。
この力に屈服させられたものたちが、次々と配下に加わっていくんだ。
そうして魅了されたものからの魔力は魔王へと吸い上げられて、さらにその力を増大させていく礎になる。
だから魔王は強くなればなるほど、加速度的にその強さを増していくなんて言われているわけだ。
だけど厄介なのは、なにもその魔力の吸い上げシステムだけじゃなかった。
魔王の持つ『魅了』の力は、配下候補のモンスターたちにばかりかかるものじゃない。
それは当然、人にたいしても有効だった。
つまるところ、オレにとってはみじんも歓迎できることじゃなかったけれど。
「君の持つ魔力はすばらしいものだけど、ほんの少し強すぎて、厄介でもあってね?だから申し訳ないけれど、ちょっとの間だけ封じさせてもらったよ」
申し訳なさそうに言うシエルからは、本気の謝罪であることが伝わってくる。
「本当はそんな首輪なんて無骨なもの、その細い首には似合わないんだけど……それでも君の場合、少々魔力を封じたところで、まだ安心はできないし……」
たしかにそれは単純な体格差の問題で、いくらオレが冒険者のなかでは細身のほうだとしても、それでもシエルくらいの子ども相手なら、取っ組み合いになった場合でも、まだこちらに分があるわけだ。
「で、こんなことまでして、なにしようってんだよ?」
おおかた、オレの魔力を吸って、さらに強くなるとかそんなんだろうとあたりをつけ、
ジャラジャラと音を立てる鎖をつまんで問いかければ、シエルははにかんだような笑みを見せた。
「あ、あのね……っ!今日こそは、君が欲しい!」
「だからオレが『欲しい』って、オレの魔力を奪おうってんなら、封じるのは本末転倒だろう?」
それにもし全力でまた戦いたいっていうのなら、なおさらだ。
「ちがうよ、リアルト。僕が欲しいのは、君の魔力じゃなくて、君自身だ」
「え…………?」
でもオレの問いかけにシエルは真剣な顔をすると、まっすぐにこちらの目を見てくる。
そしてそのまま、オレの肩を押さえつけるようにつかむと、身を乗り出してキスをしてきた。
さらに、こちらのくちびるをこじ開けるようにして入ってくる、相手のあたたかくぬめる舌の感触に、オレのあたまは最大級の混乱を来していた。
なのにからだは重たくて、寝返りを打つことさえ億劫だ。
……と、そう思ったところで、ふいに意識は浮上した。
「───っ、ん、ここは……?」
「おはよう、ようやく目覚めたかい、リアルト?君のかわいい寝顔を見ているのも、とても楽しい時間だけどね?」
見覚えのない、真っ白い部屋。
それが天蓋つきの大きなベッドだと気づいたのは、真横からかけられた声のせいだ。
「なっ!!シエルっ?!」
とっさに飛び起きようとして、ジャラリという音と、首もとの圧迫感に気がついた。
「な、んだよ、これ……っ!?」
それは、己の首につけられた首輪のようなものだった。
そこから伸びる太い鎖は、その天蓋つきの大きなベッドの支柱へとつながっている。
しかもこの感触、首に巻かれた革のベルトのようなものには、魔力を封じるための細工がされているらしい。
おかげで、妙にからだがダルかった。
「どこだよ、ここ?」
まるで見覚えのない景色だ。
添い寝をするような位置からこちらを見下ろしていたシエルにたずねれば、魔王とは思えないような、実にかわいらしい天使の笑みがかえされる。
「ん、ここ?ここは僕の城だよ。ようやく君を迎えるための準備がととのったんだ」
「どういう意味だよ、それ!?」
そこはかとなく不穏な空気を感じとりながら相手をにらみつければ、あたりまえのように額にキスを落とされた。
「ずっと君が欲しかった。人の身でありながら、この僕と拮抗する魔力、それにとことん効率化された、その美しい魔法の術式の数々。そのすべてを、僕のものにしたい」
うっとりとささやきかけられる声は甘く、その声に耳を傾けてしまえば最後、わけもわからずにうなずきたくなってしまう。
魔王が魔王たる所以は、この『魅了』の力にあった。
この力に屈服させられたものたちが、次々と配下に加わっていくんだ。
そうして魅了されたものからの魔力は魔王へと吸い上げられて、さらにその力を増大させていく礎になる。
だから魔王は強くなればなるほど、加速度的にその強さを増していくなんて言われているわけだ。
だけど厄介なのは、なにもその魔力の吸い上げシステムだけじゃなかった。
魔王の持つ『魅了』の力は、配下候補のモンスターたちにばかりかかるものじゃない。
それは当然、人にたいしても有効だった。
つまるところ、オレにとってはみじんも歓迎できることじゃなかったけれど。
「君の持つ魔力はすばらしいものだけど、ほんの少し強すぎて、厄介でもあってね?だから申し訳ないけれど、ちょっとの間だけ封じさせてもらったよ」
申し訳なさそうに言うシエルからは、本気の謝罪であることが伝わってくる。
「本当はそんな首輪なんて無骨なもの、その細い首には似合わないんだけど……それでも君の場合、少々魔力を封じたところで、まだ安心はできないし……」
たしかにそれは単純な体格差の問題で、いくらオレが冒険者のなかでは細身のほうだとしても、それでもシエルくらいの子ども相手なら、取っ組み合いになった場合でも、まだこちらに分があるわけだ。
「で、こんなことまでして、なにしようってんだよ?」
おおかた、オレの魔力を吸って、さらに強くなるとかそんなんだろうとあたりをつけ、
ジャラジャラと音を立てる鎖をつまんで問いかければ、シエルははにかんだような笑みを見せた。
「あ、あのね……っ!今日こそは、君が欲しい!」
「だからオレが『欲しい』って、オレの魔力を奪おうってんなら、封じるのは本末転倒だろう?」
それにもし全力でまた戦いたいっていうのなら、なおさらだ。
「ちがうよ、リアルト。僕が欲しいのは、君の魔力じゃなくて、君自身だ」
「え…………?」
でもオレの問いかけにシエルは真剣な顔をすると、まっすぐにこちらの目を見てくる。
そしてそのまま、オレの肩を押さえつけるようにつかむと、身を乗り出してキスをしてきた。
さらに、こちらのくちびるをこじ開けるようにして入ってくる、相手のあたたかくぬめる舌の感触に、オレのあたまは最大級の混乱を来していた。
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