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狂乱
狂人茂勝(エロ度☆☆☆☆☆)
大阪までもたなくても良い。
俺の騎乗する名馬でも、使い潰してしまっても仕方がない。
既に俺に続くものは、信繁や義光を始めとした僅か50騎程度。
あとの者は皆付いてこようとしても途中で馬が潰れて脱落していく。
今狙われれば、それこそ天下転覆の危機とも言える。
とは言え、続々と兵も後からついてくるので、堺の商人や周辺の商人に進路中での替えの馬の支度と戦闘糧食の準備をするように使者を出す。
また、周囲の引退した武士や、豪族などにも声をかけ、採算度外視の糾合軍を組み立てる。
「信繁、軍の規模はどの位だ?」
「はっ! 賊軍はその規模1000程度。五大老の裏切りを想像出来ず、城に容易に招き入れてしまったがために、既に天守は敵方に。なお、我らの檄に答える者は城外に集結中にございますが、なにぶん数については・・・・・・」
「ふん! 上等だ、茂勝の軍なんてこの50騎で粉砕してやる」
「殿! どうかお止まりください!」
義光が必死の形相で訴えてくる。
「ふざけるな! 大阪には白寿も駒もいるんだぞ!? なぜおまえがそれを言う!」
「どちらも殿の御命には代えられませぬ!」
義光が俺の馬の手綱を無理矢理引く。
ヒヒーンと嘶きを上げながら、馬が状態を大きく反らせば、俺は落馬しないように慌ててしがみ付く。
「義光! 何をする!?」
「殿! 大阪に着いて何をするつもりでございます!?」
「母や妻や子を助ける! 何が悪い!」
「それが賊軍の唯一の勝機でございます!」
「!?」
冷静になれば分かることだ。
正史では発狂して多くの家臣を切腹させ、改易の憂き目にあった前田茂勝。
だが、それは前田家が関ケ原で西軍に属しながらも朝廷とのパイプを重視されて許され、そのプレッシャーの中で父から跡を継いだゆえの結果だと思っていた。
だが、今回の急な造反はやはり狂っていると断定してしまえるものだ。
それでも微かに存在するたった一つの勝ち目。
本来であれば考慮するに値しないほどの僅かなそれは、俺を殺して朝廷を味方につけること。
そのうえで日の本を戦国に戻すことしかない。
と、すれば財源などに窮した朝廷が裏を引いている可能性も・・・・・・。
「俺が狙い、か」
「そうです。お忘れくださいますな。殿が死ねば日の本はまた戦乱の世に戻ります。お駒も白寿も代わりはこれから幾らでも現れます。しかし、殿は、天下人は唯一人なのです!」
「貴様!?」
その言葉に思わず激高し、腰の刀を抜き放つ。
俺の大事にな人達に代わりなどいない。いるわけがない!
詭弁を弄するその者を手討ちにしてやろうと思ったその刹那。
傷も無いはずなのに義光は顎から血を滴らせていた。
わなわなと震える身体で下唇を噛み切り、悔しさに血の涙を流している。
目の前にいる義光はこの場にいる誰よりもその言葉を吐きたくない人物。
愛娘の駒と初孫の白寿がいるのだから・・・・・・。
キンッ
刀を鞘に納める。
この刀は父上から受け継いだ一期一振。
未だ体の小さい俺だが、逆に小柄だった父上のこの愛刀はピッタリと合っているのだ。
相も変わらずの澄んだ鍔の音は、父上が落ち着けと言っているようにすら思う。
「・・・・・・義光」
「はっ!」
「それでも俺は行きたい」
「殿、ならば兵が集うのをお待ちください!」
「待っていられるか!」
こうしている間にも俺の大切な者達が大変な目にあっているかもしれないと言うのに!
「ならば! 某に先陣をお任せください!」
「なに?」
「某とて前田への怒りは同様にございます。今大阪に集う兵を率い、先ずは城に討ち入り敵を滅ぼしてご覧に入れます!」
義光が血の涙も拭わずに進言してくる。
確かに今はそれが上策。
俺が死ねば、それこそこの日の本にとっての・・・・・・。
「・・・・・・しかし、お前は歳が・・・・・・」
「なに、だからこそ最後のご奉公ときばれるというもの! 何卒!」
義光の必死の訴えに俺も黙る。
見れば臣下の礼を取り、眼前に握りしめられた拳にも爪が喰い込んで血が流れている。
「・・・・・・義光。この刀を持っていけ。きっと父上が皆を守ってくれる」
「ははっ!」
略式ではあるが、刀を拝領させる。
この刀は俺の刀と城内の者なら誰でも知っている。
「蛍! 義光について行き、裏内のくノ一たちと連携させろ!」
「はっ!」
先程のくノ一が伝えたところによれば、くノ一衆が守り、天守は落ちたものの裏内の方が抵抗を続けているとのことだ。
男が入れない様にと無駄に堅くした守りが、予想外に役に立ったのである。
しかし、それを守るのはくノ一衆と侍女達合わせて200人弱。
年端も行かない少女も多いことを考えれば、長く持つとは到底思えない。
だが、50人に満たないくノ一衆のおかげでもっていることも確か。
そのくノ一衆と現状で連携を取れるのは桜と蛍のみ。
ただし、1人は忍びの来襲に備えて残さなければいけない。
そうであるなら、俺の側室であり新たな人質になりかねない桜は当然除外だ。
「秀頼様! お願いでございます。私に行かせてください!」
しかし、桜とて一児の母。
娘の傍に今すぐにでも駆け付けたいのだろう。
「桜・・・・・・。堪えてくれ。義光、蛍、行け!」
「「ははっ!」」
再び走り出した義光とたった数人の兵達。
主君の母や妻子を、自らの娘を、孫を助けるために、齢60を超えた老兵は駆ける。
奥州の暁将の最後の雄姿だった。
俺の騎乗する名馬でも、使い潰してしまっても仕方がない。
既に俺に続くものは、信繁や義光を始めとした僅か50騎程度。
あとの者は皆付いてこようとしても途中で馬が潰れて脱落していく。
今狙われれば、それこそ天下転覆の危機とも言える。
とは言え、続々と兵も後からついてくるので、堺の商人や周辺の商人に進路中での替えの馬の支度と戦闘糧食の準備をするように使者を出す。
また、周囲の引退した武士や、豪族などにも声をかけ、採算度外視の糾合軍を組み立てる。
「信繁、軍の規模はどの位だ?」
「はっ! 賊軍はその規模1000程度。五大老の裏切りを想像出来ず、城に容易に招き入れてしまったがために、既に天守は敵方に。なお、我らの檄に答える者は城外に集結中にございますが、なにぶん数については・・・・・・」
「ふん! 上等だ、茂勝の軍なんてこの50騎で粉砕してやる」
「殿! どうかお止まりください!」
義光が必死の形相で訴えてくる。
「ふざけるな! 大阪には白寿も駒もいるんだぞ!? なぜおまえがそれを言う!」
「どちらも殿の御命には代えられませぬ!」
義光が俺の馬の手綱を無理矢理引く。
ヒヒーンと嘶きを上げながら、馬が状態を大きく反らせば、俺は落馬しないように慌ててしがみ付く。
「義光! 何をする!?」
「殿! 大阪に着いて何をするつもりでございます!?」
「母や妻や子を助ける! 何が悪い!」
「それが賊軍の唯一の勝機でございます!」
「!?」
冷静になれば分かることだ。
正史では発狂して多くの家臣を切腹させ、改易の憂き目にあった前田茂勝。
だが、それは前田家が関ケ原で西軍に属しながらも朝廷とのパイプを重視されて許され、そのプレッシャーの中で父から跡を継いだゆえの結果だと思っていた。
だが、今回の急な造反はやはり狂っていると断定してしまえるものだ。
それでも微かに存在するたった一つの勝ち目。
本来であれば考慮するに値しないほどの僅かなそれは、俺を殺して朝廷を味方につけること。
そのうえで日の本を戦国に戻すことしかない。
と、すれば財源などに窮した朝廷が裏を引いている可能性も・・・・・・。
「俺が狙い、か」
「そうです。お忘れくださいますな。殿が死ねば日の本はまた戦乱の世に戻ります。お駒も白寿も代わりはこれから幾らでも現れます。しかし、殿は、天下人は唯一人なのです!」
「貴様!?」
その言葉に思わず激高し、腰の刀を抜き放つ。
俺の大事にな人達に代わりなどいない。いるわけがない!
詭弁を弄するその者を手討ちにしてやろうと思ったその刹那。
傷も無いはずなのに義光は顎から血を滴らせていた。
わなわなと震える身体で下唇を噛み切り、悔しさに血の涙を流している。
目の前にいる義光はこの場にいる誰よりもその言葉を吐きたくない人物。
愛娘の駒と初孫の白寿がいるのだから・・・・・・。
キンッ
刀を鞘に納める。
この刀は父上から受け継いだ一期一振。
未だ体の小さい俺だが、逆に小柄だった父上のこの愛刀はピッタリと合っているのだ。
相も変わらずの澄んだ鍔の音は、父上が落ち着けと言っているようにすら思う。
「・・・・・・義光」
「はっ!」
「それでも俺は行きたい」
「殿、ならば兵が集うのをお待ちください!」
「待っていられるか!」
こうしている間にも俺の大切な者達が大変な目にあっているかもしれないと言うのに!
「ならば! 某に先陣をお任せください!」
「なに?」
「某とて前田への怒りは同様にございます。今大阪に集う兵を率い、先ずは城に討ち入り敵を滅ぼしてご覧に入れます!」
義光が血の涙も拭わずに進言してくる。
確かに今はそれが上策。
俺が死ねば、それこそこの日の本にとっての・・・・・・。
「・・・・・・しかし、お前は歳が・・・・・・」
「なに、だからこそ最後のご奉公ときばれるというもの! 何卒!」
義光の必死の訴えに俺も黙る。
見れば臣下の礼を取り、眼前に握りしめられた拳にも爪が喰い込んで血が流れている。
「・・・・・・義光。この刀を持っていけ。きっと父上が皆を守ってくれる」
「ははっ!」
略式ではあるが、刀を拝領させる。
この刀は俺の刀と城内の者なら誰でも知っている。
「蛍! 義光について行き、裏内のくノ一たちと連携させろ!」
「はっ!」
先程のくノ一が伝えたところによれば、くノ一衆が守り、天守は落ちたものの裏内の方が抵抗を続けているとのことだ。
男が入れない様にと無駄に堅くした守りが、予想外に役に立ったのである。
しかし、それを守るのはくノ一衆と侍女達合わせて200人弱。
年端も行かない少女も多いことを考えれば、長く持つとは到底思えない。
だが、50人に満たないくノ一衆のおかげでもっていることも確か。
そのくノ一衆と現状で連携を取れるのは桜と蛍のみ。
ただし、1人は忍びの来襲に備えて残さなければいけない。
そうであるなら、俺の側室であり新たな人質になりかねない桜は当然除外だ。
「秀頼様! お願いでございます。私に行かせてください!」
しかし、桜とて一児の母。
娘の傍に今すぐにでも駆け付けたいのだろう。
「桜・・・・・・。堪えてくれ。義光、蛍、行け!」
「「ははっ!」」
再び走り出した義光とたった数人の兵達。
主君の母や妻子を、自らの娘を、孫を助けるために、齢60を超えた老兵は駆ける。
奥州の暁将の最後の雄姿だった。
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