関白の息子!

アイム

文字の大きさ
199 / 323
千姫ルート 上海要塞防衛戦

戦支度2(エロ度☆☆☆☆☆)

しおりを挟む
 二将の同意を得たことで、ようやく本来の軍議が開始される。

 進行役として、第一参謀となる井頼が上海周辺の地図を広げて説明する。

「先ず、お二人には1万ずつ兵を率いてもらい、遊軍となって敵の補給線と増援を潰していただきます。そして、敢えて上海の手薄さと要塞化を見せ、敵主軍を上海要塞に引き付けます。そしてこれを撃破し、一息に南京を陥落せしめる。大まかな考えとしてはこのようになっております」

 先ずは概要を説明し、詳細を順を追って話すつもりなのだろう。
 しかし、簡単そうに話されるその内容に二将は眉根を寄せる。

「井頼。十倍の軍と言うのは本来倒すものではない。退けるものだ」

「・・・・・・はい。加藤様の仰る通りです。そもそも十倍の軍とは戦ってはならぬと言うのが、兵法書の言うところ。戦うとしても直接ではなく、補給線を狙うか、将を狙うか、兵と兵をぶつけるのは過ちである、とも」

「うむ。敵より士気や兵器が優れていようと数を頼みにされればどうしようもない。儂とてもしも兵に囲まれればせいぜい五や十を道連れにするのが精一杯」

 たしかに、清正が一度の戦の中で殺す数は数十ではきかないかもしれない。
 ただ、それは周りに味方がいて一対一、ないしはそれに近い状況に出来るから。
 そしてそれは軍と軍の争いでも同じことが言える。
 大事なのはいかに多対一の状況に持ち込むかである。
 そう言った意味でもやはり数に劣ると言うのは、始める前から負けているということに近い。

「分かっています。正直に言えば、兵と兵の争いでは十倍の兵を倒すことは出来ないでしょう。ですが、策に嵌めることが出来るのであれば話は異なります」

「・・・・・・十倍の敵を倒すとなれば」

「はい。火攻めにございます」

 長江と言えば、まさに赤壁(南京よりも上流)の戦いの舞台である。
 火攻め自体に考えが行き着くのに時間はかからない。

「確かに最近は常に東向きの風は吹いている。だが、その分敵も警戒しているはずだ」

「はい。ですので分からぬように準備をせねばなりません。それと、お二人には申し訳ないのですが、この要塞は破棄します」

「む?」

「この要塞自体を火種とし、敵を一網打尽に致します」

 要塞は外壁こそ煉瓦や石、漆喰で作ってはいるものの、その内部構造は木製。
 燃えることは間違いがない。

「敵を城に招き入れ燃やすと?」

「それも考えはしましたが、こちらによほどの被害が出てからでないと敵は誘いには乗らないでしょう。そうしてしまえば南京攻略のための兵力が残らない」

 あくまで南京攻略が目的なのだから、それでは意味がない。
 大軍に当たるには兵が必要であるのと同様に、城を攻略するにも大軍が必要である。

「・・・・・・では?」

「現在建設中の城壁。この中に油と火薬を仕込み、敵の接近と共に敵軍に向け倒し、一挙に広範囲に火をかけます。また、長江の船団で集中砲火をかけ、敵を混乱させます」

「城壁を倒す? だと?」

 敵の虚を突くには想像もしない方法を考える。
 それは確かに正しい。
 だが、壁とは壊れないように造るもので、崩れるように造ったことなど無い。

「はい。壁の基部を抉り大量の火薬を仕込みます。ちょうど木を切り倒す時のことをご想像ください。また、あらかじめ地面に油を込めた瓶を埋めておきます。これは底部に火薬が仕込まれており、着火すれば辺り一面に油を大量に巻き散らし延焼させることが出来ます」

「大量の火薬と油が必要となるな」

「陛下が請け負ってくださいましたので、随時運ばれてくるでしょう。そして、この策の結果、どうせ要塞には城壁も無くなり丸裸同然になるのですから、南京の先の事は考えず全て使い切ってしまいましょう」

「・・・・・・ふむ。それで南京を守れるのか?」

 失敗すれば南京より戻る場所も無くなっている可能性がある。
 そうすれば敵国に孤立した者達の末路など決まっている。

「はい。その頃には明は北京を守るのに苦心しているはずですので」

「金軍が瀋陽を越えられる、と?」

「いえ、越えさせます」

 それすら金軍と朝鮮部隊頼りの賭け。

「・・・・・・成る程な。しかし、本当にそんな事が可能なのか?」

 まだ誰も試したことのない策。
 予測されることはない代わりに成功するかは事前の準備次第。
 しかし、その時間も人手も無い。
 むしろ、南京のためにも早く敵を引き付ける必要すらある。

「出来ると言いたいところですが、全てが始めてのこと、全力を尽くすとしか申せませぬ」

「それで良い。綱渡りばかりだが、出来る限りもがけば不思議となんとかなるものだ。儂と島津殿は明朝には出立する。井頼よ、ここは任せるぞ」

「ははっ!」

 清正と義弘はのそりと立ち上がると、千姫に一礼して軍議の間を辞す。
 これよりしばらくは2人の隊は野営続き。
 一晩だけでもしっかり休んでおこうと言うのだろう。

 そして、2人が去り、4人だけが残る。

「お麟。私も城壁の設計図を見せてくる。その間に敵の情報や周辺の地形、物資の確認を頼む。念のため敵の斥候などには気を付けろよ」

「はい。井頼様も事故など起きぬようにお気を付けください」

 そう言い合い、2人も軍議の間を出ていっ――

「あの、私はなにをすれば?」

「・・・・・・いえ、休んでいてください」

 自分のためにしてくれているのに、なにもしないのは居心地が悪い。
 その気持ちも理解できないわけでもないが、現実的に千姫に出来ることなど無い。
 だから、井頼としては少し申し訳なくも思うが、そう言うしかなかった。

「いいえ。仕事なんて幾らでもあります。皇后様は自分で出来る仕事を探してください。私達も今は付きっきりではいられません!」

 だが、お麟の方はハッキリとそう言った。
 井頼の方はその言葉にこそ驚いていたが、千姫はそれに気を悪くするでもなく、着ていた打掛を脱ぐと紐で間着の裾を縛り動きやすいようにする。

「分かりました。では、炊事場に向かいます!」

 ムン! と気合を入れて千姫が部屋を出る。
 それに続いてお麟も出て行けば、結果として軍議の間には井頼と信繁だけが残されてしまったのだった。

「・・・・・・真田殿、皇后様の護衛をよろしくお願いいたします」

「心得ている。だが、某はそれだけに集中するし、もしも敗色濃厚の時には無理にでも皇后様だけを連れて逃げる。それを覚えておいてくれ」

「はっ! もとより承知の上でございます!」

 形勢が悪くなることすら許されない状況に、しかし井頼はニヤリと笑う。

 もうここまで来ればやれるだけやるだけ。
 井頼はこの一戦に己の全てを賭けると心に誓った。


 
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...