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千姫ルート 上海要塞防衛戦4
守城2(エロ度☆☆☆☆☆)
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明兵達は、大砲陣地の大爆発を見たと言うのに、全く歩みを止めない。
ただ整然と前へ、前へと進んでくる。
「思っていたより肝が据わっておるのか?」
基次はその様子を見ながら、少々の意外さを感じていた。
200年以上の平穏を過ごした国の軍にしては、何とも不自然であったからだ。
「将が、良いのかもしれません」
隣で標的とする者を選別している孫六も、基次の意見に同感ではあった。
ただただ土嚢を抱き歩いてくる兵達は、一体なにを頼りにしているのか。
「その将を除けば、烏合の衆となりましょうが・・・・・・」
だが、その標的が分からない。
「将も兵も同様に土嚢に隠れられては流石に判別がつかん、か」
「仰る通りで。敵将は新式銃の脅威を知っていたということですし、その対策と考えるべきでしょう」
そして、少しずつ近づいてくる明兵に焦りを覚えてしまう。
このままでは普通の鉄砲兵と大差がない。
それに、正直に言って今の新式銃の弾はそうとう貴重で、一般兵を撃つにはもったいない。
「・・・・・・あれは、狙えるのか?」
基次が指示したのは進安のいる本陣。
7丁半も先の地点である。
だが、そこからは大砲陣地の爆発を受けて、慌てて後方に陣を移す煌びやかな太った将らしき者の姿。
「いえ。あれだけ動かれては・・・・・・。それに、後方に下がろうとしているようですし」
的が大きいので、当てることは簡単。
ただし、それは体のどこでも良いのであれば、だ。
中途半端に当てれば、逆に将を殺しにくくしてしまう。
「ふむ。ではやはりお主たちの仕事は先となるな。下がっておれ」
「はっ!」
少し悔しげに表情を歪め、孫六は後方に下がる。
もしかすれば、この戦ではもう狙撃隊を用いる暇はないかもしれない。
「じゃが、儂らにとってはその方が良い」
敵将だけを撃ち取るなど、やはり基次は好きにはなれない。
「鉄砲隊、構えぃ!」
城壁を盾に、鉄砲隊が指示通りに構える。
何時もであれば、もっと近づいてからだ。
だが、あの土嚢戦術のために、命中率が低くなる相当離れた位置から撃たなければいけなくなってしまった。
「良いか、出来るだけ下半身を狙って撃て。なに、殺さずとも敵の後続が踏み殺してくれる」
問題は角度がきつくなるために、外れやすくなることだ。
だが、それを言っていても始まらない。
そして、敵が2町まで近づく。
「ッ撃てぃ!!」
西側の兵たちが一斉に引き金を引く、腹に響く火縄の発射音が連続して聞こえる。
敵への効果は、通常の半町先から撃つそれの何分の一だろうか。
「チィッ、次、撃て! 弾を惜しむな。とにかく、撃ちまくれ!」
上海要塞守備部隊が装備している銃は、基本的に秀頼の発案した連装銃である。
よって、初弾を放った兵達も下がることはせずに、そのまま次弾を放つ。
そして、撃ち終われば後ろの者と交代し、入れ替わりながら銃撃する。
1町先まで敵が近づくまでは連装銃の弾を一片には放たない。
だが、近づけば、一度に二発ずつ放つことで弾幕を更に密にしようと考えている。
もっとも、それも敵の攻勢次第。
もしも、下手に及び腰になられてしまうと、せっかくの火計の策が失敗する可能性もある。
敵の意気を感じ取りつつ、攻められ過ぎても、退かれてもいけない。
基次達歴戦の将でなければその差配は難しかっただろう。
「・・・・・・じゃがな、将がまともに指揮を取らぬのなら、これほど御しやすいものも無い」
ニヤリと基次は笑う。
「左翼、敵右翼に狙いを定めよ。波を作るぞ!」
ただ敵を撃つだけでは軍略家の必要などない。
基次の指示通りに右翼側への集中砲火が浴びせかけられる。
そうすれば、一瞬のこととは言え敵左翼は突出し、右翼の動きは止まる。
同時に整然と進軍していた明軍が左翼側に密集する。
「ふん。良い的じゃ。放て!」
基次は大砲陣地の沈黙以来、暇を持て余していた大鉄砲隊に向けられる。
すなわち棒火矢部隊に。
兵の密集地に向かって放てば、爆炎で明兵が吹き飛ぶ。
棒火矢は土嚢程度で防げるものではない。
「足を止めたな?」
周囲の明兵がその様子を見て、恐れおののき足を止める。
それを見た基次は一斉攻撃の指示を出す。
すなわち、連装銃を単装で用いずに同時に射撃し、弾幕を形成したのである。
単純に今までの倍の弾が日本軍と明軍の合間を駆け抜ける。
それが産み出す悲鳴もまた倍。
「この程度で怯むでないぞ」
基次は単純にこの攻撃で敵を倒すことを考えているわけではない。
明軍が持つ土嚢と、明兵自体の死体で戦場に丘を創ろうとしていたのだ。
完全な平地であり、戦場となっている上海要塞周辺には丘も山もない。
その中に突如現れた丘は、確実に明軍の進軍の足かせとなる。
そして、それを乗り越えてしまうと、後退が困難になる。
つまり、城壁を用いた火計で、より多くの兵を取り逃さずに殺せる地形を創ろうと言うのだ。
二つの小高い丘と、その間の盆地のような地形。
これを作っておけば、敵が逃げる時には必ずその盆地部分から逃げるはず。
その時に集中砲火を浴びせれば、蓋を閉じられる。
「良いか、あの線までがこちらの火計の効果範囲になる。出来るだけ、あの線で殺せ!」
基次は完全な勝利のために、冷酷により多くを殺せる方法を採用した。
そして、その地形を創ろうとした分、敵前線への攻撃が手薄になる。
そうすれば、一つ、また一つと堀に土嚢が投げられていく。
「ふん。苦戦してやるのも楽ではない!」
時間と犠牲を強いるが、確実に日本軍の城壁に、すなわち勝利に近づいているという達成感は、地獄の入口への甘い誘いであった。
ただ整然と前へ、前へと進んでくる。
「思っていたより肝が据わっておるのか?」
基次はその様子を見ながら、少々の意外さを感じていた。
200年以上の平穏を過ごした国の軍にしては、何とも不自然であったからだ。
「将が、良いのかもしれません」
隣で標的とする者を選別している孫六も、基次の意見に同感ではあった。
ただただ土嚢を抱き歩いてくる兵達は、一体なにを頼りにしているのか。
「その将を除けば、烏合の衆となりましょうが・・・・・・」
だが、その標的が分からない。
「将も兵も同様に土嚢に隠れられては流石に判別がつかん、か」
「仰る通りで。敵将は新式銃の脅威を知っていたということですし、その対策と考えるべきでしょう」
そして、少しずつ近づいてくる明兵に焦りを覚えてしまう。
このままでは普通の鉄砲兵と大差がない。
それに、正直に言って今の新式銃の弾はそうとう貴重で、一般兵を撃つにはもったいない。
「・・・・・・あれは、狙えるのか?」
基次が指示したのは進安のいる本陣。
7丁半も先の地点である。
だが、そこからは大砲陣地の爆発を受けて、慌てて後方に陣を移す煌びやかな太った将らしき者の姿。
「いえ。あれだけ動かれては・・・・・・。それに、後方に下がろうとしているようですし」
的が大きいので、当てることは簡単。
ただし、それは体のどこでも良いのであれば、だ。
中途半端に当てれば、逆に将を殺しにくくしてしまう。
「ふむ。ではやはりお主たちの仕事は先となるな。下がっておれ」
「はっ!」
少し悔しげに表情を歪め、孫六は後方に下がる。
もしかすれば、この戦ではもう狙撃隊を用いる暇はないかもしれない。
「じゃが、儂らにとってはその方が良い」
敵将だけを撃ち取るなど、やはり基次は好きにはなれない。
「鉄砲隊、構えぃ!」
城壁を盾に、鉄砲隊が指示通りに構える。
何時もであれば、もっと近づいてからだ。
だが、あの土嚢戦術のために、命中率が低くなる相当離れた位置から撃たなければいけなくなってしまった。
「良いか、出来るだけ下半身を狙って撃て。なに、殺さずとも敵の後続が踏み殺してくれる」
問題は角度がきつくなるために、外れやすくなることだ。
だが、それを言っていても始まらない。
そして、敵が2町まで近づく。
「ッ撃てぃ!!」
西側の兵たちが一斉に引き金を引く、腹に響く火縄の発射音が連続して聞こえる。
敵への効果は、通常の半町先から撃つそれの何分の一だろうか。
「チィッ、次、撃て! 弾を惜しむな。とにかく、撃ちまくれ!」
上海要塞守備部隊が装備している銃は、基本的に秀頼の発案した連装銃である。
よって、初弾を放った兵達も下がることはせずに、そのまま次弾を放つ。
そして、撃ち終われば後ろの者と交代し、入れ替わりながら銃撃する。
1町先まで敵が近づくまでは連装銃の弾を一片には放たない。
だが、近づけば、一度に二発ずつ放つことで弾幕を更に密にしようと考えている。
もっとも、それも敵の攻勢次第。
もしも、下手に及び腰になられてしまうと、せっかくの火計の策が失敗する可能性もある。
敵の意気を感じ取りつつ、攻められ過ぎても、退かれてもいけない。
基次達歴戦の将でなければその差配は難しかっただろう。
「・・・・・・じゃがな、将がまともに指揮を取らぬのなら、これほど御しやすいものも無い」
ニヤリと基次は笑う。
「左翼、敵右翼に狙いを定めよ。波を作るぞ!」
ただ敵を撃つだけでは軍略家の必要などない。
基次の指示通りに右翼側への集中砲火が浴びせかけられる。
そうすれば、一瞬のこととは言え敵左翼は突出し、右翼の動きは止まる。
同時に整然と進軍していた明軍が左翼側に密集する。
「ふん。良い的じゃ。放て!」
基次は大砲陣地の沈黙以来、暇を持て余していた大鉄砲隊に向けられる。
すなわち棒火矢部隊に。
兵の密集地に向かって放てば、爆炎で明兵が吹き飛ぶ。
棒火矢は土嚢程度で防げるものではない。
「足を止めたな?」
周囲の明兵がその様子を見て、恐れおののき足を止める。
それを見た基次は一斉攻撃の指示を出す。
すなわち、連装銃を単装で用いずに同時に射撃し、弾幕を形成したのである。
単純に今までの倍の弾が日本軍と明軍の合間を駆け抜ける。
それが産み出す悲鳴もまた倍。
「この程度で怯むでないぞ」
基次は単純にこの攻撃で敵を倒すことを考えているわけではない。
明軍が持つ土嚢と、明兵自体の死体で戦場に丘を創ろうとしていたのだ。
完全な平地であり、戦場となっている上海要塞周辺には丘も山もない。
その中に突如現れた丘は、確実に明軍の進軍の足かせとなる。
そして、それを乗り越えてしまうと、後退が困難になる。
つまり、城壁を用いた火計で、より多くの兵を取り逃さずに殺せる地形を創ろうと言うのだ。
二つの小高い丘と、その間の盆地のような地形。
これを作っておけば、敵が逃げる時には必ずその盆地部分から逃げるはず。
その時に集中砲火を浴びせれば、蓋を閉じられる。
「良いか、あの線までがこちらの火計の効果範囲になる。出来るだけ、あの線で殺せ!」
基次は完全な勝利のために、冷酷により多くを殺せる方法を採用した。
そして、その地形を創ろうとした分、敵前線への攻撃が手薄になる。
そうすれば、一つ、また一つと堀に土嚢が投げられていく。
「ふん。苦戦してやるのも楽ではない!」
時間と犠牲を強いるが、確実に日本軍の城壁に、すなわち勝利に近づいているという達成感は、地獄の入口への甘い誘いであった。
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