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秋夢の構想
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「で、逃げて今までどうしていたの?」
それが最大の疑問だった。
奈良から京都の方に遷都してから1200年以上経過している。
その間、この人たちはどうしていたんだろう。
「それか。」
「教えますか?」
「構わぬだろう、夜まで時間はある。暇つぶしにはなる。」
暇つぶしって。
「我らは西に西に逃れ、ついにここ九州に至った。」
永倉の考えなど、全く無視して秋夢は語り始めた。
「我らは、船で異国に逃れようと思い、この地に来た。そこでとある術師に出会ったのだ。」
「術師?」
「異国から来た術師だ。名前は『李奉典』と名乗った。」
中国の人かな。
遷都の頃だから、確か中国は唐の時代。まだまだ遣唐使とか送っていた時代だよね。空海とか唐に行っているんだから。
「李は、我らの術を未熟と指摘し、指導してくれた。」
「確かに我らは未熟であった。」
2列目に座る小柄な老人が言った。
「李の指導の下、我らは術を磨き、法力を効率よく使えるようになった。そんな我らに李は、ある秘術を授けてくれたのだ。」
「それは『時渡りの術』。」
「ときわたり?」
どんな術だろう?
「それは、時間を移動し、過去や未来に行くことができると言う術だと李は語った。」
時間移動!?
ドラえもんじゃあるまいし。
しかし、今ここにいるってことは……。
「それで、未来に行けと李は語った。」
「なんで?」
迷惑なこと言わないでよ。
「退魔の法は、お主らのような者がいなくなれば、いつかは廃れる。そのような時代まで行き、そこで力を更に貯え再起すればいいと語ったのだ。」
「それでこの時代に来たの?」
1200年を漫然と過ごしてたわけじゃなくて、飛び越えて来たんだ。
そりゃ、この時代のこと知らない訳だ。
イサイとのトンチンカンなやり取りも、やむを得ない事だったのだと、永倉も腑に落ちた。
「そうだ。勢い任せで不安も無くは無かったが、あのまま、あの時代にいても終わりは見えていた。」
「終わりって?」
「我らもいつか寿命が尽きる。我ら6人が死ねば、里を再興する者は、いなくなる。」
寿命!鬼にも寿命があるんだ。
「失礼ですけど、寿命ってどのくらい生きられるの?」
「大体100年位だな。人間が50年位だから、倍と考えてもらっていい。」
改めて、永倉はアキムを観察した。
人間なら20代後半、30歳はいってないかな。
人間と鬼を一緒にしていいのかわからないが、アキムがまだまだ生きられそうなのはわかる。
寿命で死にそうなのは、2列目シートの小柄な老人くらいだろう。
それだってひょっとしたら長寿かもしれないわけだし。
当面死にそうにない。寿命による解決は期待しない方がいいだろう。
「とはいえ、いつかは我も死ぬ。」
「そしたらどうするんですか?」
「それは摂理だから仕方ない。だが、そうなる前にこの地を抑える。」
「抑えたって死んだら、また人間が取り戻すだけですよ。」
「そうならぬように、この地を抑えたら、一度過去に戻る。そして里の者を連れてくる。」
「えっ!?」
「この地に我らの里を再興するのだ。」
ちょっとそれって、この時代に鬼を増やすってこと。
しかも、女性も連れてくるでしょうから、出産して育てて、永遠に福岡の地を支配しようと。
「人間はどうなるんですか?」
「奴婢として使う。我らとて収奪されたままでおらぬ。」
「復讐さ、やられっぱなしなんて悔しいじゃない。」
「我らを虐げただけで済むと思うな。」
え~と、ここは人間側の者として言い返すべきかな。
それが最大の疑問だった。
奈良から京都の方に遷都してから1200年以上経過している。
その間、この人たちはどうしていたんだろう。
「それか。」
「教えますか?」
「構わぬだろう、夜まで時間はある。暇つぶしにはなる。」
暇つぶしって。
「我らは西に西に逃れ、ついにここ九州に至った。」
永倉の考えなど、全く無視して秋夢は語り始めた。
「我らは、船で異国に逃れようと思い、この地に来た。そこでとある術師に出会ったのだ。」
「術師?」
「異国から来た術師だ。名前は『李奉典』と名乗った。」
中国の人かな。
遷都の頃だから、確か中国は唐の時代。まだまだ遣唐使とか送っていた時代だよね。空海とか唐に行っているんだから。
「李は、我らの術を未熟と指摘し、指導してくれた。」
「確かに我らは未熟であった。」
2列目に座る小柄な老人が言った。
「李の指導の下、我らは術を磨き、法力を効率よく使えるようになった。そんな我らに李は、ある秘術を授けてくれたのだ。」
「それは『時渡りの術』。」
「ときわたり?」
どんな術だろう?
「それは、時間を移動し、過去や未来に行くことができると言う術だと李は語った。」
時間移動!?
ドラえもんじゃあるまいし。
しかし、今ここにいるってことは……。
「それで、未来に行けと李は語った。」
「なんで?」
迷惑なこと言わないでよ。
「退魔の法は、お主らのような者がいなくなれば、いつかは廃れる。そのような時代まで行き、そこで力を更に貯え再起すればいいと語ったのだ。」
「それでこの時代に来たの?」
1200年を漫然と過ごしてたわけじゃなくて、飛び越えて来たんだ。
そりゃ、この時代のこと知らない訳だ。
イサイとのトンチンカンなやり取りも、やむを得ない事だったのだと、永倉も腑に落ちた。
「そうだ。勢い任せで不安も無くは無かったが、あのまま、あの時代にいても終わりは見えていた。」
「終わりって?」
「我らもいつか寿命が尽きる。我ら6人が死ねば、里を再興する者は、いなくなる。」
寿命!鬼にも寿命があるんだ。
「失礼ですけど、寿命ってどのくらい生きられるの?」
「大体100年位だな。人間が50年位だから、倍と考えてもらっていい。」
改めて、永倉はアキムを観察した。
人間なら20代後半、30歳はいってないかな。
人間と鬼を一緒にしていいのかわからないが、アキムがまだまだ生きられそうなのはわかる。
寿命で死にそうなのは、2列目シートの小柄な老人くらいだろう。
それだってひょっとしたら長寿かもしれないわけだし。
当面死にそうにない。寿命による解決は期待しない方がいいだろう。
「とはいえ、いつかは我も死ぬ。」
「そしたらどうするんですか?」
「それは摂理だから仕方ない。だが、そうなる前にこの地を抑える。」
「抑えたって死んだら、また人間が取り戻すだけですよ。」
「そうならぬように、この地を抑えたら、一度過去に戻る。そして里の者を連れてくる。」
「えっ!?」
「この地に我らの里を再興するのだ。」
ちょっとそれって、この時代に鬼を増やすってこと。
しかも、女性も連れてくるでしょうから、出産して育てて、永遠に福岡の地を支配しようと。
「人間はどうなるんですか?」
「奴婢として使う。我らとて収奪されたままでおらぬ。」
「復讐さ、やられっぱなしなんて悔しいじゃない。」
「我らを虐げただけで済むと思うな。」
え~と、ここは人間側の者として言い返すべきかな。
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