おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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上京初日(3)

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 土下座、日本における最高の謝罪であり降伏のスタイルである。

「というわけでございまして。」 
 白野は、黒江に降伏することにした。自分が侵入したことはばれている。おそらくこの黒江という女の子は、自分の同類、超能力者だ。下手な誤魔化しは通用しない可能性がある、と判断したのだ。
「つまり、先輩の胸に見とれてフラフラついてついうっかり入っちゃたと。」
「はい。」
 白野の土下座に黒江のメガネの奥の瞳は、冷たかった。
「おバカ。」
「ぐっ。」
「おバカでしょう。セクハラ、ストーキングに不法侵入ですよ。違います?犯罪者と言いましょうか?」
「…。」
 白野に返す言葉は無かった。確かにその通りだ。生身でやったら、今頃警察沙汰だ。
「反省しているようですから、これで勘弁してあげます。2度とやらないで下さいね。」
 黒江の言葉に、白野は顔を上げた。
 黒江の顔から、冷たさは消え、友好的な雰囲気が漂っていた。
 怒った顔じゃないと結構カワイイな、と白野は思った。黒髪、黒縁メガネで地味だが、パッチリとした目が結構魅力的だ。
「それにしても白野さん、あれは何ですか?」
「あれって?」
「女子寮に侵入した青いぼんやりとした人型のものです。目元というか眼球だけやけにくっきりしてました。」
「『Mark2eyeball』のこと?あの能力を家族の前でも使ったことはあるけど、一度もそんな青い人型を見たなんて話を聞かない。黒江さんには、そう見えたの?」
「『まーくとぅあいぼーる』?」
「あぁ、自分の超能力のことをそう呼んでいる。ミリオタの友人から教えてもらったんだけど、アメリカ軍じゃ、人間の目のことを『Mark1eyeball』って言うらしいんだ。で、俺の能力は普通の眼球と違うから。」
「『Mark2』と。」
「漫画とかに出てくる千里眼とかは、ほら一瞬で遠くの映像が出てくるけど、俺の能力は、例えばこの部屋から移動し始めて俺の歩く速さくらいでしか移動しない。遠くを見ることはできるんだろうけど、かなりの時間がかかるだろうから、『千里眼』とは呼ばないんだ。」
「なるほど。自分の超能力がどんな風に発揮されているかわからなかったのですか?」
「発揮している時は大抵、部屋にこもって目を閉じてじっとしているからね。俺としては目だけを飛ばしているイメージだったんだけど、人型をしているなら納得できることもある。」
「例えば?」
「仮に2階の部屋を見ようとする。浮遊して窓から見ることは、できないんだ。人型を動かしているなら納得できる。人は空を飛んだり浮遊したりできないから、それと同じなんだな。移動の速度が俺の歩く速さと同じなのも同じ理由なんだろう。」
「どっちかというと幽体離脱の方が近いんじゃないんですか?」
「そうかもしれない。でも自分としては、目だけ飛ばしているイメージだったから。」
「後ですね、実は、人型の後ろに青い線があるんですよ。私それを辿ってこの部屋に着いたんです。」
「一度通り過ぎたじゃないか。」
「すぐに部屋に行ったら警戒されると思って、探してるふりしただけです。」
「ひどいなぁ。人をだまして。」
「覗きに、ストーキングに不法侵入よりマシだと思います。」
「ごめんなさい。」
 再び最高の謝罪にして降伏のスタイル。
「それにしても、俺の能力の発揮がそんな形って初めて知ったよ。無線コントロールじゃなくて有線コントロールだったんだ。」
「知らなかったんですね。」
「『Mark2eyeball』でたまたま鏡を見たこともあるけど何も見えなかったから。」
「話を続けますけど、どうやって、『Mark2eyeball』を使えるようになったんですか?」
「色々聞いてくるなぁ。」
「超能力者に会って話をするのは初めてですからね。色々聞きたいんですよ。」
「初めて使ったのは4歳だったな。誕生日に、目を閉じて開けたらご馳走やプレゼントがってサプライズを親がしようとして、ご丁寧にもタオルで目隠しされたんだ。」
「それで?」
「そこまで隠されると『見たい!』と思うもんで、そしたら、脳裏に親がケーキやらおもちゃをテーブルに出すのが映し出されたんだ。」
「つまり、『見たい』と思うことで発揮されるんですか?」
「目を閉じてから『見たい』と強く念じることで発揮される。姿勢はどうでもいいけど目を閉じることが絶対条件。」
「へぇ~。」
「さて、俺のことはだいたい話したと思う。今度は、そっちが話す番じゃないか?この部屋に入ったり俺の眉間に落書きした超能力、話してよ。」
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