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渋谷へ
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「さて、一度甲斐組の事務所を見ておきたいんですけど。」
「ああ、いってきたまえ。」
白野と黒江が会議室から飛び出した。
「やれやれ、若い人は動きが早い。」
後から吉良と蔵良が続いた。
「お待ち、住所もわからないで、どこに行く気だい。」
二人は足を止めた。
「lineで送ってもらえますか?」
「あんたらの番号も知らないのにかい。」
「あ。」
「一度落ち着きな。冷静にやんないと失敗の元だよ。」
「すいません。」
「全く。」
4人は、電話番号を教えあった。蔵良ともlineの登録ができたことも確認する。
「何かあったらすぐに連絡しなさい。無理はしないように。」
「はい、今日は下見にとどめます。」
「行ってきます。」
白野がそう言ってドアを開けようとした時、ドアが開いた。
「ごめんするよ。」
一人の老人が入って来た。歳は80位だが、しゃんとした姿勢に威厳を感じるものがあった。
「江戸川さん。」
吉良と蔵良が立ち上がった。
「近くを通りかかったら電気がついていたんでね、寄らせてもらったよ。」
江戸川と呼ばれた老人は、帽子を帽子かけにかけた。
「今、お茶を用意します。お嬢ちゃん、お茶をお願い。あたしはお茶請け用意するから。」
「は、はい。」
黒江は、急な指示にまごつきながらも急須のお茶を変え、ポットからお湯を注いだ。
蔵良は、棚から小さな饅頭を出し、皿に乗せた。
「蔵良さん、あのご老人は?」
「江戸川 和夫さん、うちに顧問を依頼されてる大事な顧客さ。失礼のないようにね。」
蔵良はお盆にお茶請けと黒江の注いだお茶を乗せ、応接セットに座る江戸川と吉良に出した。
「お構いなく、すぐに帰るつもりだ。それより若い人2人来ているが。」
「新人のバイトです。男の子が白野寿々男君、女の子が黒江文ちゃんです。」
「白野です。よろしくお願いします。」
「黒江です。バイトでなく、白野さんについて来ただけなんですけど。」
「黒江ちゃん、今後、うちのパソコンのことお願いしたい。働いてくれたまえ。頼むよ。」
「黒江さん、一緒にやろうぜ。」
「は、はい、わかりました。」
「ずいぶん若い人だな。失礼だがお幾つかな?」
「俺ら二人とも18です。」
「18!儂は81だ。ひっくり返せば18になるが、そんな元気は、さすがにねぇな。」
「俺がひっくり返りましょう。81になります♪」
逆立ちしようとかがみこむ白野を江戸川と名乗る老人は制した。
「やめねぇ、こんな狭いところでやるこっちゃねえぜ。」
かがみこんで自分を見る江戸川の顔を、白野はどこかで見たことがあるような気がした。知的だが、知性より狡猾さをどこか感じさせる顔。
「センセイ、面白い坊主を雇いなさったなぁ。」
「まっすぐな子でしょう。白野君、渋谷に行きなさい。江戸川さんのお相手は私がするから。」
「よろしいのですか?」
「センセイがおっしゃってるんだ。行きねぇ。」
「ほら、ぼうや行っといで。嬢ちゃんも。」
「はい、行ってきます。江戸川さんも失礼します。」
「それでは行ってきます。お茶美味しくなかったらごめんなさい。」
二人は、江戸川にも挨拶して事務所を出た。
「白野さん、いきなり逆立ちはないよ。蔵良さんピリピリしてたよ。」
「そうかな、あのくらいの年の年寄りは元気なところ見せると結構ウケるんだ。」
白野は、高校のころ、集落の集まりでいきなり木登りして、老人から拍手喝采をもらった話をした。
「それは、ご近所のお年寄り相手にするときでしょ。仕事の相手と違うと思う。お金もらうんだからちゃんとしないと。」
「わかった。」
「でも、意外なところがあるんだ。木登りなんてやるなんて思わなかった。」
「親父の指示さ、子供っぽいことやってみろって言われて。ほら、俺酒今まで呑まなかったからさ、その分芸くらいしなきゃって、ね。」
そんな話をしているうちに新宿駅に着いた。
山手線に乗って渋谷に向かう。
蔵良から送られてきた住所をグーグルマップで検索する。駅から15分くらいのところだった。
マップのナビに従い歩くうちに黒江の顔に嫌悪が現れた。
「やだな、こんなところ。」
まわりに、シティホテルと呼ばれるホテルが増えてきたのだ。
「しょうがないじゃん、こういうところだからこそヤクザが事務所構えるんじゃないの。」
「そうかもしれないけどさぁ。」
アニメキャラのイラストやドレス姿の女性の看板を見ないように黒江は歩く。
「なんだって、男の人ってこういうの好きなんだろう。」
「俺に聞かれても。」
「あぁん、また。」
「コスプレレンタル」の看板が目に入る。丈の短いセーラー服やチアガール、レースクイーンなどのコスチュームを着た女性が文字の下に並んでいた。
「ホント、こんな露出の多いカッコなんかできないよ。脚とかおへそとか出しちゃって。」
「黒江さんもやったじゃん。」
瞬時に黒江の顔が真っ赤になった。
「一昨日の事は忘れなさい!おバカ!」
「痛い、痛いって。」
バッグで叩かれながらもつい、一昨日の黒江を頭に再現してしまう。
「あーっ、ひょっとして今思い出してる!?忘れなさいよ、おバカァ!」
「そんなこと言われたって。」
「ヤダ!してるんだ、おバカ!信じらんない!」
言い争う二人の背後からけたたましいクラクションが鳴った。
慌てて、道路の左右に別れた二人の間を黒塗りのベンツが走り抜けて行く。
「今の車、甲斐が乗ってた。」
「ホント?」
「間違いない。あの眼鏡かけた顔確かに甲斐だった。」
白野は黒江の手を取り、そのまま引っ張って黒江の後ろの建物に入ろうとする。
「ちょっと、ヤだ!冗談でしょ!私、ヤだァ!」
白野の向かう建物に「休憩三千円」などの看板が設置されているのを見た黒江は、抵抗するが男の力には勝てない。
「ウソ、ヤだァァァ!」
「ああ、いってきたまえ。」
白野と黒江が会議室から飛び出した。
「やれやれ、若い人は動きが早い。」
後から吉良と蔵良が続いた。
「お待ち、住所もわからないで、どこに行く気だい。」
二人は足を止めた。
「lineで送ってもらえますか?」
「あんたらの番号も知らないのにかい。」
「あ。」
「一度落ち着きな。冷静にやんないと失敗の元だよ。」
「すいません。」
「全く。」
4人は、電話番号を教えあった。蔵良ともlineの登録ができたことも確認する。
「何かあったらすぐに連絡しなさい。無理はしないように。」
「はい、今日は下見にとどめます。」
「行ってきます。」
白野がそう言ってドアを開けようとした時、ドアが開いた。
「ごめんするよ。」
一人の老人が入って来た。歳は80位だが、しゃんとした姿勢に威厳を感じるものがあった。
「江戸川さん。」
吉良と蔵良が立ち上がった。
「近くを通りかかったら電気がついていたんでね、寄らせてもらったよ。」
江戸川と呼ばれた老人は、帽子を帽子かけにかけた。
「今、お茶を用意します。お嬢ちゃん、お茶をお願い。あたしはお茶請け用意するから。」
「は、はい。」
黒江は、急な指示にまごつきながらも急須のお茶を変え、ポットからお湯を注いだ。
蔵良は、棚から小さな饅頭を出し、皿に乗せた。
「蔵良さん、あのご老人は?」
「江戸川 和夫さん、うちに顧問を依頼されてる大事な顧客さ。失礼のないようにね。」
蔵良はお盆にお茶請けと黒江の注いだお茶を乗せ、応接セットに座る江戸川と吉良に出した。
「お構いなく、すぐに帰るつもりだ。それより若い人2人来ているが。」
「新人のバイトです。男の子が白野寿々男君、女の子が黒江文ちゃんです。」
「白野です。よろしくお願いします。」
「黒江です。バイトでなく、白野さんについて来ただけなんですけど。」
「黒江ちゃん、今後、うちのパソコンのことお願いしたい。働いてくれたまえ。頼むよ。」
「黒江さん、一緒にやろうぜ。」
「は、はい、わかりました。」
「ずいぶん若い人だな。失礼だがお幾つかな?」
「俺ら二人とも18です。」
「18!儂は81だ。ひっくり返せば18になるが、そんな元気は、さすがにねぇな。」
「俺がひっくり返りましょう。81になります♪」
逆立ちしようとかがみこむ白野を江戸川と名乗る老人は制した。
「やめねぇ、こんな狭いところでやるこっちゃねえぜ。」
かがみこんで自分を見る江戸川の顔を、白野はどこかで見たことがあるような気がした。知的だが、知性より狡猾さをどこか感じさせる顔。
「センセイ、面白い坊主を雇いなさったなぁ。」
「まっすぐな子でしょう。白野君、渋谷に行きなさい。江戸川さんのお相手は私がするから。」
「よろしいのですか?」
「センセイがおっしゃってるんだ。行きねぇ。」
「ほら、ぼうや行っといで。嬢ちゃんも。」
「はい、行ってきます。江戸川さんも失礼します。」
「それでは行ってきます。お茶美味しくなかったらごめんなさい。」
二人は、江戸川にも挨拶して事務所を出た。
「白野さん、いきなり逆立ちはないよ。蔵良さんピリピリしてたよ。」
「そうかな、あのくらいの年の年寄りは元気なところ見せると結構ウケるんだ。」
白野は、高校のころ、集落の集まりでいきなり木登りして、老人から拍手喝采をもらった話をした。
「それは、ご近所のお年寄り相手にするときでしょ。仕事の相手と違うと思う。お金もらうんだからちゃんとしないと。」
「わかった。」
「でも、意外なところがあるんだ。木登りなんてやるなんて思わなかった。」
「親父の指示さ、子供っぽいことやってみろって言われて。ほら、俺酒今まで呑まなかったからさ、その分芸くらいしなきゃって、ね。」
そんな話をしているうちに新宿駅に着いた。
山手線に乗って渋谷に向かう。
蔵良から送られてきた住所をグーグルマップで検索する。駅から15分くらいのところだった。
マップのナビに従い歩くうちに黒江の顔に嫌悪が現れた。
「やだな、こんなところ。」
まわりに、シティホテルと呼ばれるホテルが増えてきたのだ。
「しょうがないじゃん、こういうところだからこそヤクザが事務所構えるんじゃないの。」
「そうかもしれないけどさぁ。」
アニメキャラのイラストやドレス姿の女性の看板を見ないように黒江は歩く。
「なんだって、男の人ってこういうの好きなんだろう。」
「俺に聞かれても。」
「あぁん、また。」
「コスプレレンタル」の看板が目に入る。丈の短いセーラー服やチアガール、レースクイーンなどのコスチュームを着た女性が文字の下に並んでいた。
「ホント、こんな露出の多いカッコなんかできないよ。脚とかおへそとか出しちゃって。」
「黒江さんもやったじゃん。」
瞬時に黒江の顔が真っ赤になった。
「一昨日の事は忘れなさい!おバカ!」
「痛い、痛いって。」
バッグで叩かれながらもつい、一昨日の黒江を頭に再現してしまう。
「あーっ、ひょっとして今思い出してる!?忘れなさいよ、おバカァ!」
「そんなこと言われたって。」
「ヤダ!してるんだ、おバカ!信じらんない!」
言い争う二人の背後からけたたましいクラクションが鳴った。
慌てて、道路の左右に別れた二人の間を黒塗りのベンツが走り抜けて行く。
「今の車、甲斐が乗ってた。」
「ホント?」
「間違いない。あの眼鏡かけた顔確かに甲斐だった。」
白野は黒江の手を取り、そのまま引っ張って黒江の後ろの建物に入ろうとする。
「ちょっと、ヤだ!冗談でしょ!私、ヤだァ!」
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