おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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約束

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「ただいま戻りました。」
「あら、早いね。泊まってこなかったんだ。」
「泊まりません!なんでそこのおバカと。」
「だってさ。」
「俺に振らないで下さい。」
「はい、領収書です。」
 黒江が、蔵良の前に領収書を置いた。
「それにしてもどうして、私達がホテルにいるってわかったんですか?」
「簡単よ、あたしは前に潜入するためにあの辺調べたもの。誰にも見られない個室なんてホテルくらいしかないわ。」
「タネがわかれば、なぁんだって話ですね。」
 蔵良は、話しながら領収書をチェックする。
「結構、いい部屋に入ったね。もったいない。」
「わかるんですか?」
「こういうのは、やっぱり値段で決まるよ。坊や、あんたも男なら強引にいかないと。」
「強引にったって。」
「お嬢ちゃん押し倒すくらいしていいんだよ。」
「しませんよ。」
「お嬢ちゃん、坊や、あんたに押し倒すような魅力ないってさ。」
「えぇ、どーせ私はではありませんから。」
 ジト目止めてくんないかな。って言うか蔵良さん、俺らで遊ぶの止めてくんないかな。そう思う白野に救いの手を差し伸べたのは吉良だった。
「ところで、今晩、さっそく侵入するそうだね。」
「はい。」
 そのことは帰り道連絡している。
「準備もしてます。」
 新宿のビッグカメラでSDカードとタッチペンも買ってある。
「渋谷のネットカフェも場所を確認しました。」
「あれ、ホテル取らないの?」
「はい、今回は一人で行きます。」
「大丈夫かね?」
「私も行くって言ったんですけど。」
 ネットカフェを探すと言い出した時、当然自分も一緒に行くものと黒江は思っていた。ホテルを嫌がったから探すものと思い、協力したのに。
「今回は、基本的にPCのファイルのコピーにとどめます。もし、他に証拠などがいると言うなら改めて侵入します。」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫さ、さっきの間取り調べてる時も何人も人がいたけど、誰もわからなかった。バレることはないさ。」
「私としては、白野君の疲労の方が気になるが。」
「疲れてないから大丈夫ですよ。問題ありません!」
 両腕に力こぶをつくって見せる。
「無駄に元気だねぇ。やっぱホテルで発散してきたら。」
「嫌です!」
「別にお嬢ちゃんとは言ってないだろ。呼べばいいんだよ。坊やならその手の雑誌も読んでるから知ってるだろ。」
「そーいえばそうだよねー。物知りだもんねー。色んな雑誌読んでるから知ってるよねー。」
 黒江さん、ジト目で嫌味のコンビネーションは地味に効くのでやめて下さい。
「ぼうや、ホテルの領収書でもちゃんともらってくるんだよ。お嬢ちゃんには内緒で処理したげるからね。」
「だから、ネットカフェに行くって言いましたよね。」
「そう言ってホテルに入っても誰もわからないからねぇ。呼んでもいいよ、そっちも経費にしたげようか。」
「それはやめてくれたまえ、蔵良君。うちの事務所の財務状況でそれは厳しい。」
「そうですね、延長に次ぐ延長なんてなったらいくらになりますことやら。」
「そうだよ、若いからねぇ。」
「先生まで勘弁してくださいよ。」
「ははは、すまなかったな。黒江ちゃんも機嫌を直したまえ。白野君は、嘘をつく男じゃないぞ。浮気はしない安心できる青年だよ。」
「う、浮気なんてつきあってないから関係ありません。」
「では、一旦家に帰ります。渋谷には直接行きます。成否は明日7時に電話でよろしいでしょうか?」
「わかった。無理はしてくれるな。私からはそれだけだ。」
「では、失礼します。」
 強引に話を打ち切り、白野は事務所を出た。

  100均で買い物してから、二人は京王線に乗った。
「白野さん、本当に一人で行くの?」
「うん、大丈夫だよ。今回は、ファイルのコピーだけだし。」
「なんか一人で行かれるとさ、置いて行かれる気がして怖いんだよね。」
「怖いって前も言ってたよね。そんなことしない。少なくとも俺は絶対にしない。黒江さんが悩んでいたの知ってるから。」
「ありがと。」
「心配なら来る?ホテルにするよ。」
「いいよ、白野さん信用する。」
「残念だなぁ。あんなことやこ...。」
「あら、ごめんなさい。電車がゆれちゃってぇ。」
「揺れてない。揺れてない。」
 黒江の足が白野の足をがっちり踏んでいる。
「巨乳じゃないから揺れなくてごめんなさぁい。」
   ぐりぐり。
「そんなこと言ってない言ってない。」
「ちょーし乗らないようにね、おバカ。」
    全く、そういうこと言わないで欲しいな。いい人なんだから。
「ごめんなさい。」
    駅に着いたので電車から降りた。
「それにしても気をつけてね。あぶないことしちゃ駄目だよ。」
「大丈夫、ちゃんと備えはしたし。」
 100均のビニール袋を掲げる。中身はラメのマスキングテープ、サングラス、帽子、押しピン、裁縫針。
 ラメのマスキングテープは、SDカードとタッチペンの先をまとめるため。ラメを入りなのは、暗くてもわかるようにと工夫。
「ねぇ、サングラスや帽子は変装用ってわかるんだけど、押しピンや裁縫針は?」
「一応武器。」
「武器?」
「そう、俺さ、最近念動力色々試しててさ、その中で複数の物が持てることがわかったの。」
「へぇ~。」
「重量制限みたいなのはあるけど、軽い物なら複数持てる。こいつをうまく使えば、牽制とかに十分使えると思う。」
「相手拳銃とかもっと強力な銃を持っているんでしょう。戦うとか考えないで欲しい。」
「基本は逃げるよ。安心して。針とかで人に大ダメージを与えるのは難しいし。」
「絶対だよ。」
「約束するよ。俺だって死にたくないし。置いてかないってのを信じてくれたんだから、こっちも信じて。」
「わかった………。」
 話ながら歩いているうち、寮が見えてきた。
「ところで、晩御飯はどうするの?」
「ネットカフェで食おうと思ってる。一食経費でもらおうかな、と。」
「お野菜も食べてね。約束して。」
「お昼わかめ食べたじゃん?」
「約束してくれないなら、危ないことすると思っちゃうよ。」
  黒江、必殺の上目遣い。
「わかった。サラダを頼むよ。」
「約束だからね。」
 そう言って黒江は、寮に入って行く。
   玄関に入る前に一度振り替えって手を振った。   
 そんな黒江を名残惜しさを感じながら見届け、白野は踵を返した。
「さて、やりますか。」
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