おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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破門(2)

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「今頃、甲斐はどうなっているんですかね。」
「さぁな、君の努力が報われることだけは確かだろう。」
 あれから、江戸川を交えて協議し、在日マフィアや弊とのやりとりの証拠として、通話履歴のスクショも取った。甲斐のみならず相手方の通話履歴のスクショまで取ってプリントアウトし、甲斐の資金繰りに関するエクセルファイルなどと合わせて資料としてまとめたのだ。
「新しく、スマホのスクショなんかも追加したもんね。白野さん、お疲れ。」
 そう言って黒江が煎れてくれたお茶の味がほんのり甘い気がしたのは気のせいだろうか。

「何故です!」
「今から説明する。」
 甲斐の怒声にも、江戸川は眉一つ動かさない。
「今から配る資料を見てくれ。」
 江戸川はプリントアウトをホッチキス止めした資料を配った。
「こいつは……。」
 それは、甲斐組の財務状況に始まり、借り入れ先が池袋の幣や新大久保の在日マフィアであることを示すものだった。
 加えて、甲斐が彼らと通信している証拠としてスマホの通話履歴のスクショまである。言い逃れできるものではなかった。
「この通り、甲斐は在日マフィアや弊より借金する形で関係を持った。甲斐、申し開きはあるか?」
「確かに組の立ち上げの時に借金をしたのは事実です。ですが、資料にもある通り、利息も含め支払いはきちんと行っており、付けいる隙は与えておりません。」
「付けいる隙うんぬんではない。何故、同国人以外に閉鎖的な彼らから借金できたのだ?借金自体が、お前と彼らの関係の深さを物語る。」
「それは当時経営していた裏カジノを奴らに渡した代償のようなものです。」
「代償?負けて追い出されるだけならまだしも、そこで借金などする必要がどこにある。」
「再起のために金が必要でした。」
「それなら、カジノの代価でも受け取ればいい。借金する必要はない。しかも1回だけでなく数度に渡って借り入れ、額を増やしている。これは関係を深める行為に他ならない。」
「灰野総長に連絡を。」
「総長よりお前に言付けを預かっている。『黙れ嘘つき。』だ。」
 既に、万事根回しは終わっている。甲斐は唇を噛むしかなかった。
「申し開きは終わりか。」
「言うことはありません。」
 甲斐の言葉を聞いて江戸川は、静江に目配せをした。
「では、ただ今をもって甲斐史郎を新星会より破門する。また、亡くなった主人の跡目を若頭の久島とする。異議のある者はいるかい?」
 居並ぶ者で口を開く者はいない。
「では、これより久島が新星会の会長となる。あたしは代行を退かせてもらう。」
 拍手が起こった。最初はまばらだったが、徐々に大きなものになっていく。
 その大きな拍手の中、指名された久島が上座につく。
「会長に指名された久島です。突然のことで気の利いたことは言えませんが、道を違えぬように勤めさせて頂きます。」
 盛大な拍手の中、甲斐はカバンを手に立ち上がった。
「甲斐、どこに行く!」
「退出します。破門された人間がいていい場所ではありませんから。」
「いい様だな!」
「やっちまうか。」
「そうだな、前々から気に食わなかったんだよな。」
 甲斐は、かつての兄弟分に冷ややかな目を向けた。
「てめえ、なんだ、その眼は。」
「やっちまえ!」
 掴みかかろうと寄ってくる者達に甲斐は、カバンを投げつけた。一瞬足が止まる。
 そこに銃声が鳴り響いた。掴みかかろうとした者たちの頭上を弾丸が通り抜ける。
 掴みかかろうとした者たちは無様にひっくり返った。
「甲斐!」
 甲斐の手にH&KMP5がいつの間にか握られていた。
「こちらも殴られに来たわけではありませんから。相応の防御は講じてます。」
「甲斐、貴様、何を考えてやがる。」
「ここを無事に出たいだけです。久島の兄さん。」
「てめえ、新星会を敵に回すつもりか?」
「必要であれば止むを得ません。」
「甲斐!舎弟や子分はどうするつもりだ?親が黒と言えば白いものが黒となるこの世界でも、おまえ、無茶過ぎるぞ。」
「先々代、甲斐組一同抗争の覚悟は決めております。正直、ここまでやられてやられっぱなしというわけにはいかないんですよ。先々代、ご覚悟願います。弁護士先生にもね。」
 それだけ言い置いて甲斐は、会議室を飛び出した。

「忠、待たせたな。」
「組長、急いで下さい!」
 忠と呼ばれた部屋住みの足元に新星会の部屋住みが倒れている。スタンガンで忠が気絶させたのだ。
「忠、抗争だ。チャカを使え。」
「はい。」
 忠は嬉々として懐からグロッグ19を引っ張り出した。会議室から出てこようとする連中に9mmパラベラムを送り込む。
「ちくしょー、グラサン忘れっちまったから火薬のカスが。」
「こらえろ、馬鹿。俺はサブマシンガンぶっ放してきたんだぞ。」
「銃撃つのは楽しいんすけど。」
 どんな銃でも弾丸を撃つのに火薬を爆発させる。爆発した火薬のカスなどは、四方八方にまき散らされる。無論、人間の顔にだってまき散らされるのだ。
「逃げるぞ、会議室の出入り口は一つじゃねえ。そのうちチャカ持った奴が来る。」
「はい。」
 玄関で倒れたいる男が立ち上がろうとするのを、甲斐は顎を蹴り飛ばして気絶させた。
 ドアを開けると、ベンツが横付けされ停まっていた。
「組長、ご無事で。」
「信吾、出せ!」
「はい!」
 忠が甲斐に続き、後部座席に飛び乗ったのだけ確認し、信吾はベンツをスタートさせた。ドアが閉まってないのは承知の上だ。
 閉まってないドアが観葉植物を倒す感触をハンドル越しに感じながら、信吾はアクセルを踏み込んだ。
 
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