おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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新星会

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 夕方5時、黒江が事務所に出勤した時、裏の空き地にタンクローリーが止まっているのに気が付いた。
 車の前に黄色い地に黒い字で「危」と書かれたタンクローリーだった。
 運転席でスマホをいじっていた若い男性が、黒江の視線に気づいたのか手を振ってきた。
 ナンパされるのも嫌なので、足を早めてビルに入った。

「最後のバイトの子の写真撮影しました。」
 lineで黒江の写真が全員に送られた。これで事務所にも全員そろったことが確認できた。
 新星会の事務所に江戸川がいることも確認済みだ。午前中、かかりつけの医師の所に診察に行ったが、いつも通りに終了し、予想された時刻に事務所に戻っている。
「では、作戦を開始する。」
 甲斐はlineでメッセージを送った。

「速報です、先ほど新宿の歯科大学のキャンパスの一角で爆発が発生しました。場所はグランド周辺の植え込みです。死傷者は確認されておりません。植え込みは黒煙をあげて炎上中……。」
 キャスターに新しい原稿が手渡される。
「さらに近隣の中学校でも爆発が発生しました。こちらは、歩道沿いの植え込みで発生したということです。」

 爆発は、甲斐達が仕掛けたものだった。
 爆発で新宿を騒然とさせ、その最中に新星会を制圧する。爆発の対応で警察の手も割かれざるを得ないのも好都合に働く。
 吉良法律事務所の監視に田家を配し、残った9人で3人一組の班を3班組織する。甲斐、姫乃、本座がそれぞれリーダーとなり、行動する。
 まず、爆発の前に姫乃と本座の班が隣のマンションに潜入する。ボディアーマーやヘルメットを着用して不審がられないよう、トビの格好をしてヘルメットも黄色に塗っている。
 銃なども工具箱に入れた。
 足元は、足袋ではなく鉄板入りのブーツだが、ニッカボッカで隠れるのでそれ程違和感は無い。
 ロープを使って新星会事務所の屋上に降下する。銃の入った工具箱も下ろす。作業用のベストに偽装するためボディアーマーにつけていた工具などを予備のマガジンなどに交換して工具箱に入れる。
 屋上は物干し場で普段施錠されていないので突入は容易だった。万が一施錠されていればバールでこじ開ける手はずだったが。
「組長が有事の時は屋上に施錠するよう言っていたはずなんだが。」
「組長が提案したということで無視されたんじゃねえですか。」
 ここで議論しても始まらない。都合がいいのだから行動あるのみ。拳銃やサブマシンガンに装着したサブレッサーを確認。
 近くの電柱から引き込まれている電線を木の柄の斧で切断してから階段を降りる。
 階段を降りたところに銃を構えた者が配置されているということもなかった。5階建てで最上階に組長室があり、幹部クラスが詰めているはずである。
 本座がドアを蹴り開け、中に入るや否やサブマシンガンを掃射する。ただし、人の頭上を弾丸が通過するように銃口を上向かせて。
 後ろに控える二人に目配せし、とっさに伏せた幹部を後ろ手にして電気工事で配線を束ねるインシュロックで左右の親指を縛って拘束する。
 二人は手早く4人拘束した。
「貴様、甲斐の手の者か?」
「久島……組長とお呼びしましょうか?」
 跳弾してくれるな、そう願いながら床に向かって3点バーストでぶっ放す。
 幸い、サブレッサーでエネルギーを減衰させられた銃弾は、頑丈なマホガニーの机をぶち抜いたところで泊まってくれた。
「久島組長、あきらめて下さい。たとえ俺を手持ちの拳銃で射殺しても残った2人があなたを殺します。手を挙げて机の陰から出てきて下さいな。」
 殺すつもりはないが、正直にそれを告げると舐められる。
 久島は観念して机の陰から手を挙げた状態で立ち上がった。

 これだけの騒動を起こして気づかれないはずがない。一部の組員が階段を上がってくる。
 手すりの陰に隠れた姫乃が、情け容赦なく金的に一撃入れ、悶絶する者を背後に控える二人がインシュロックで拘束する。
 姫乃は、素早く階段を転げるように4階に降りる。この階に客間がある。ここに江戸川がいる可能性が高い。
「てめえっ!甲斐組のもんだな!」
 銃を構えた者の顔を姫乃は知らない。おそらく下田一家からの応援であろう。
「副組長!」
 階段からサブマシンガンで後ろの一人が援護してくれた。足元に着弾し怯んだ隙に間合いを詰め、鳩尾に正拳を叩き込み悶絶させる。さらに部屋から出てきた二人が銃を構えるより先にp、一人の金的を蹴り上げる。
 苦悶する男の体勢を崩してもう一人の男に叩きつける。
 そうして作った隙の間にもう一人の男の背後に回り、レバーブロー。
 最初の男が、ダメージからわずかに回復し、姫乃の方を向いて銃を構えようとするが、援護の一人がサブマシンガンの台尻で後頭部を殴りつけ大人しくさせる。
 もう一人が金的を蹴られた男を拘束してくれた。姫乃もレバーブローを叩き込んだ男をポケットからインシュロックを出して拘束する。

 甲斐は、堂々と玄関から事務所に入った。カギはかかっていたが、新星会若頭補佐たるものが事務所のカギを持たないなどありえない。
 偽装のための工具などを外していると後ろから工具箱を持った江渡達が入ってくる。工具箱から信吾が、銃などを取って渡してくるのを受け取り土足で侵入する。
「鍵くらい交換しとけよな。」
 おろおろしている部屋住みと目が合う。そんなんだから、こんなボンクラしか育たん。
「若頭補佐……。」
「頭の後ろで手を組んで壁の方に向け。そうすりゃ命はとらん。」
 銃口を突き付けられ部屋住みは大人しく従った。後ろに控える二人がインシュロックで拘束する。
 無論二人とも偽装の工具などを外しマガジンなどに交換済みだ。
「江渡、信吾、てめえら1階を見て回ってこい。階段は俺が抑える。」
「わかりました。」
 江渡と信吾が、奥に向かうのを見て甲斐は階段のところに向かった。
 降りてくる連中と目が合う。
「そのまま上に上がってろ!」
 彼らの足元にサブマシンガンを撃つ。
「2階に戻んな。さもなきゃ、雲の上に登ってもらうぜ。」
 撃たれた連中は、慌てふためいて階段を戻る。
「逃げるような連中なんざこんなもんか。」
 思ったより楽に推移するかもしれん。

 その頃4階から3階に降りる階段のところで姫乃達の班は停止していた。
 3階で踏みとどまった者の士気は高く、4階に上がってこようとする。サブマシンガンの掃射で食い止めたが、階段下に机などでバリケードを築かれてしまった。
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