おバカな超能力者だけれども…

久保 倫

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Kiss

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「……やっと言ってくれたね。やっと好きだって言ったね。」
「うん、今言わないと後悔しそうで。」
「ちょっと、変なこと言わないで!。」
「そうだよ、坊や。ドラマみたいなシチュエーションだけど、ドラマじゃないんだよ。」
「あぁ、そうだね。俺はまだ死ねないもの。何もしていない。」
「何がしたいのよ。」
「いたひ、いたひ。」
 黒江に頬をつねられる。
「まったく、おバカ。」
 黒江は手を離した。
 つねった白野の頬が血に染まっている。自分の手が血に染まっているのだ。その血は白野の血で、なぜ流れたのかは自分に責任がある。
 そんな馬鹿な自分を好きだと目の前の人は言ってくれた。
「こういうことしたいんでしょ。」
 白野の唇に黒江は自分の唇を重ねた。

 宙に浮いていた画鋲が落ちる。
「画鋲が落ちた。」
 打ち落としたはずがない。跳弾を発生させただけの愚行のはず。
「チャンスですよ。」
 忠が駆け上がる。
「罠かもしれんぞ。」
「しかし、ここでじっとしてられません。」
 偶然、トリックの種を破壊したのかもしれない。M-16を抱え本座も駆け上がる。
 甲斐も二人をバックアップできるよう一歩遅らせて階段を上がる。

 白野と黒江の唇が離れた。
「したくない?」
「したいさ、いっぱいしたいさ。」
「しよ。だから、ね。」
「わかってる。生きて帰る。おバカだけど、頑張るよ。」
「約束だよ。ファーストキスあげたんだから。」
 黒江は白野から離れ、窓際に立った。
「お嬢ちゃん、なんとかしてあの二人をうつむかせておくれ。そうすれば、アタシが気絶させる。」
「下を向かせればいいんですね。」
 もうスカートなど気にしない。大好きな人の負担にならないよう逃げなくてはならない。縄梯子を下ろして足をかけ降り始めた。
「しかし、思ってたけどあんたらバカップル一直線っぽいね。」
「そうですか。」
 白野は、ドアにもたれかかりそのまましゃがみこんだ。ドアにべっとり血の太い線が引かれる。
「坊や!」
「まだ意識はあります。蔵良さんも急いで下さい。」
「あの嬢ちゃん次第さ。アタシだってほんとはもっと急ぎたい。」
 蔵良は窓の外を見た。タンクローリーの近くにいた男たちが縄梯子に近寄ってくる。うまくエサになっているようだ。
「あぁこれを忘れちゃいけなかったね。」
 蔵良は会議室の壁に吉良が準備していたスーツカバーを手にした。

 田家も信吾も無論、縄梯子で降りてくる黒江に気が付いた。
 田家は、縄梯子に近寄ろうとする。
「田家さん、まずいですよ。組長や副組長にぶっ飛ばされます。」
「そうか。」
「こっち来るとき忠が、あの女をさらおう言い出してぶっ飛ばされたんですよ。殺せってね。エロいこと考えてると後が怖いですよ。」
 信吾だって見たいが、恐怖が勝っていた。
「だから近寄るんだよ。」
 田家は、振り返ってにやりと笑った。
「確実に殺るために接近する。それだけだ。」
「田家さん、兄貴って呼んでいいっすか。」
「おう。目標から目を離さないことも大事だ。」
「一生ついて行きます!」
 もはや2人の目は黒江に、いや黒江のスカートの中に釘付けだった。
「白かな。」
「淡い水色じゃねえッスか。」
 二人の馬鹿な会話を聞き羞恥に顔を赤くしながら黒江は縄梯子を降りる。
 蔵良さん、絶対気絶させて下さい。
 地面に足をつけ、2人に向き合い、両手を上げながら黒江は言葉を絞り出した。
「パンツの色知りたかったら自分の目で見て下さい。」
「いいのかい?」
「銃を突きつけられたら、両手を上に上げなきゃいけないでしょ。両手塞がっているようなものですから。」
 白野が重傷を負いながら頑張っていると思わなければ、言えない言葉を紡ぐ。
「その通りさ。」
 田家はチラッと上を見た。女が窓際から除き込んでいるが、降りてくる気配はない。あれは組長達に任せていいだろう。
 田家は左手を黒江のスカートに伸ばす。
 信吾の視線も小柄な黒江のスカートに集中している。
「グェッ。」
 奇声発する上げて信吾が倒れる。
 頭上に吉良を背負った蔵良がテレポートして、ヘルメットに覆われていない首の付け根にニードロップを食らわせたのだ。
 100キロ以上の重量を首に直撃されてただで済むはずがない。信吾の意識は消えていた。
「信吾ッ!」
 田家の意識からさすがに黒江のパンツは消えた。周囲を見回す。
 田家が周囲を見回すより先に蔵良は、テレポートして上に飛んでいる。
 しかし、田家の頭は上がってしまった。
   ヘルメットの上からの打撃で気絶させられるか。蔵良は唇を意味もなく噛んだ。
「時間よ止まれ。」
 黒江は田家が自分のスカートから目を離したとみて、時間を止めた。そして田家の頭に手をかけ、下を向かせ、離れた。
「汝は美しい。」
 時間は動き出し、蔵良は万有引力の法則に従い、田家の首の付け根に膝から落下した。
「お嬢ちゃん、よくやった。」
 「時間停止」をうまく使って標的を下向かせたことに気づいた蔵良は、立ち上がりながら黒江を褒めた。
 褒められたことを無視して、黒江は、むっとした顔で標的の頭を蹴った。
「私の下着、見ていいの一人だけなのに。」
 気持ちはわかるけど、ね。
「そんなことより、早く先生を病院に連れて行かないと。手伝っておくれ。」
「ごめんなさい。」
 その時、ひときわ大きい銃声が響いた。
「なんだい、今の?」
「白野さん!」
「お待ち!」
 踵を返して縄梯子に取り付こうとする黒江を厳しい声で蔵良は制した。
「今、戻るんじゃない。お嬢ちゃんのいい人は戦っているんだ。」
「だけど、今の銃声。さっきまでのとちょっと違います。」
「だからって、お嬢ちゃんが戻ってどうすんのさ。坊やはお嬢ちゃんに逃げて欲しいんだよ。あの坊やは、お嬢ちゃんを守るために戦ってんの。」
「ですけど……。」
「さぁ、行くよ。先生の命だって危ないんだ。」
 無理やり手を引く。本当はテレポートで置き去りにしたかったが、すれば戻るだろう。手を引いて逃げるしかなかった。
「白野さん。」
 涙が黒江の頬を伝った。
 それをぬぐい、黒江は、吉良を蔵良の反対側から支えた。
「急いでここを離れましょう。」
「お嬢ちゃん、ツライだろうけど、信じな、いい人のこと。」
「はい。」
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