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第1章 最愛の女神と旅立ち
~チートと約束~③
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「それで?ユウジのスキルはどんなやつなの?」
真剣な眼差しで見つめてくる、ヘイネ。
ヘイネはすごい。
神なだけはある。今の俺では全く敵わない。
いや、ヘイネと敵対するつもりはない。
ただ問題は、他の神だ
少なくともヘイネより上の上位神は危険視すべき存在だ。
ヘイネ、君と一緒に歩んでいく為に・・・。
「あぁ、俺のスキルなんだが、俺専用だと思う。ヘイネならその有用性がわかるはず。恐らくアウラ様ではわからないから出し抜けると思う」
手の内は隠したいからな。神は強大だ。知られないなら知られたくない。
「アウラ様を出し抜く?なんで??」
首を傾げるヘイネ
まぁ普通はそうだよな、神を出し抜くなんて考えたりしない。
「ヘイネ、誰にも話さないのを『約束』してくれる?」
さぁ、約束をしよう。今すぐしよう!
「・・・うん、いいよ」
ヘイネは恥ずかしそうに頷いてくれた。
なんでヘイネが恥ずかしそうにしているのか
それは『約束』にある。
俺達は、停止世界と現実世界で2度の『約束』をおこなった。どちらもヘイネを迎えにいく約束だ。
約束の内容以外に一貫した共通項がキスだったのだ。
□□□□
ある停止世界の出来事
俺達は現在停止世界にいる。
あの日見た、ヘイネの圧倒的な力に俺は恐怖した。
怖かった。でも内心歓喜した。
だってここならアウラ様に気付かれず、ずっとヘイネといられる。
だが、それは根本的な解決にならない。
俺はまだスキルを所持していない。鍛練に励めないのだ。スキル所持の有無は肉体に大きな違いがある。
スキル無しの肉体でしかも停止世界で何十年鍛練しても、スキル有りの肉体で現実世界での1時間の鍛練にすら及ばないのである。
ハッキリ言って無駄である。
だから俺はヘイネとたくさん話をした。
停止世界である。全てが停止している世界。
お腹も空かなければ、便意もない、もちろん睡眠の必要性すらない。
ヘイネは俺の世界を度々見ていたらしい。
だから知識もある程度あった。耳年増というやつだ。
耳年増というと怒られた。
たくさん、たくさん、たくさん話をした。
どれだけの時間が過ぎただろうか、それでも話は尽きなかった。
長い時間を過ごす内に、俺達はたくさんの『約束』を交わした。
ヘイネ曰く、『約束』にキスは必要ないらしい。
ただ俺は断固拒否した。
(ヘイネの停止世界をけなすつもりはないが、こんな何もないところで、味気ない約束はしたくないよなぁ。それに数少ないスキンシップでもあるしな!)
ヘイネには心読は切るようにお願いしている。
二人だけの世界だ、話せばいい。
俺達は以下の『約束』をした。
①俺の童貞はヘイネに捧げる
実は長い時間過ごしてきたが、一度もしていない。
ヘイネは抱いてくれて構わない。現実世界ではまた清いヘイネがあるのだから、と。魅力的な提案だった。
でも俺はそれが許せなかった。
停止世界のヘイネは、現実世界のヘイネの後にすることにした。最初彼女はとても淋しそうにしていた、でも俺の気持ちを汲んでくれたようだ。ありがたい。
②ヘイネの処女は俺に捧げる
これは上の内容のヘイネverだ。
いくら停止世界とは言っても、いちゃいちゃしていれば性欲は沸いて来る。俺だけでなく、ヘイネもだ。だからお互いが監視する意味合いで『約束』した。
③新たな嫁に関しては、必ず報告すること
新しく嫁になった人は、必ずヘイネとのデートの日に挨拶すること。ヘイネの正妻力が半端ない・・・。夜に関しては、一度嫁会議なるものを開催して全員が寂しくならないよう取り計らうらしい。全員をちゃんと愛せないなら嫁の追加は禁止とのこと。あれ?俺の意思は?
④どこでもいいので、家が欲しい
ヘイネが『家と家族』に憧れているらしい。神には家族がいないらしい。これは俺がしっかり叶えてあげたい。それとヘイネは子供がたくさん欲しいらしい。が、がんばります・・・
⑤デートは希望者がいれば一緒でもいい
『約束』の①と②が叶えば、それ以降は二人きりでなくてもいいらしい。俺が希望すれば二人きりでも可。どうやらヘイネは独占欲よりも新たな嫁達とのやりとりに夢を馳せているようだ
おおまかに分けるとこんな感じの『約束』だ。
他にもたくさんあるが、その度に『約束』とキスをした。
既に数えきれないほどのキスをしてきた俺達だが、ヘイネは、毎回恥ずかしがるので、いつまでも初なヘイネを味わえて興奮してしまう。
停止世界にきて、どれぐらいの時間がたったろうか・・・
いつまでもここにはいられない
飽きたのではない、お互いがお互いを求める心が大きくなってしまったからだ。そして二人は意を決して現実世界に舞い戻る、そう、ここからまたお互いの時間が進むのである。
そして冒頭にもどる
□□□□
現実世界での『約束』には注意が必要だ
いつアウラ様やクラスメートがくるかわからないからだ。故に背徳感で興奮してくる
興奮がおさまらない、いつもより少し強くヘイネを抱き寄せ、貪るようにキスをする。
ヘイネもスイッチが入ったのか積極的に求めてくれた。
終わってみたら、ヘイネは肩で息をし、乱れた髪、体からは湯気のようなものが立ち上り、碧眼はとろんっとして潤んでいる。
それを見た俺は野獣のように理性はなくなり、ヘイネを求めようとした所で、ヘイネに止められた。
「ユウジ、これ以上はダメだよ。ここは現実世界」
ビシッと指摘してくるヘイネはさすがだ
(まずいな、俺はこんなに自制が効かないのか?停止世界での甘い時間に慣れすぎたか?)
「ユウジが私を求めてくれるのは嬉しいよ?一緒に頑張ろ?」
(あぁ、心読か・・・久しぶりだな。そうか、ここは現実世界なんだよな。いつまでも浮ついていられないな!豊壌の女神ヘイネの勇者、白兎雄司。今この瞬間に立ち上がるか!)
(!そうだ、私はこの決意した時のユウジの横顔に惚れたんだった。あぁ、私だけの勇者様)
「さて、ヘイネ。俺専用のスキルなんだが、名前は『記憶創造』だ」
「記憶創造?普通の創造と違うの?」
首を傾げるヘイネ。相変わらず可愛い
「あぁ、全く違う。このスキルな、実はヘイネを倒すつもりで日本でずっと考えてたんだよ?」
ヘイネを見て苦笑する
「・・・え?私?何で?・・・嫌いになったの?」
涙目になり絶望の顔色をするヘイネ
俺はヘイネを抱き寄せ、優しく背中を撫でながら耳元で囁く。
「おいおい、俺の愛を疑うのか?俺はもうヘイネ無しじゃ生きていけないのに」
俺の胸の中で、すんすんと泣き声が聞こえていたが、次第に泣き止み、ヘイネは俺の胸にすりすりと頭を押し付けてきた。
彼女をそっと体から離し、不意撃ち気味に軽いキス
あっ・・・と聞こえてきたが、嬉しそうだ
「落ち着いたか?急でごめんな。ちゃんと話すから」
「私こそ、ごめんなさい、あと・・・ありがと。えへへ」
可愛い、可愛いすぎて理性が吹き飛びそう。我慢だ、我慢
「えっとな、さっきの件なんだけど。ヘイネは覚えているだろ?俺を勇者召喚した時のこと」
そう、俺は過去にヘイネによって勇者召喚されていたのだ
「もちろんだよ、『最初』はグズニールのマリーちゃんのところでしょ」
ヘイネは懐かしむように話していた
「そうそう、昔話は置いといて、そこで世界平和に貢献した、そして有無を言わさず地球に帰還させられた。マリーは既に大切な人になっていたから、当日はかなりショックだったよ」
じ~っとヘイネを見つめる。ヘイネは罰が悪そうな顔をして視線を逸らした。
「そして3年後、『次に』召喚されたのが、ショーマリーのセリーヌだな。俺は最初歓喜に震えたよ。またマリーに会える!ってな。ところが実は別の異世界と聞いて落胆したよ。そんなときに支えてくれたのがセリーヌだ。そんな彼女の期待に応えて、またもや世界を救った。そこまではいい、そしたらまた地球に帰還させられた。セリーヌもまた大切な人になっていたから、さすがに俺も納得がいかなかった。そして次があるなら、今度こそ神を・・・そして今に至る。オーケー?」
ちらっとヘイネを見やる
ぷるぷる震えている
「ごめんなさ・・・」
俺はその声を遮るように、そしてヘイネを抱きしめ、
「そしてこの世界で愛しい神様に出会い、恋をした。俺はヘイネが好きだ。だから、今までのことはもういい。でもヘイネ以外の神は全く信用していない。だから、俺は神を殺すことに躊躇しない。また大切な人と引き離すようなら容赦しない」
ヘイネはビクッと体を震わす
「ヘイネ。以前話したこと覚えてるか?俺の事がどれぐらい好きか?親しい人と天秤にかけても俺を選んでくれれのか?っと。改めて聞く。ヘイネお前はどうなんだ?引きかえすなら今の内だぞ?」
話ながらも優しくヘイネを包み込む雄司。
今はただこの愛しい女の子を抱擁していたい。
答えは聞かなくても分かっているから。
「私の事、手放しちゃう?」
俺の胸の中から、顔をあげこちらを伺うように尋ねてくる
「意地悪な聞き方だったな。ヘイネはもう俺のモノだから逃がさないし、逃げられない、邪魔するなら神でも容赦しない、だから覚悟してくれよ?」
「うん!でも本当にあの時はごめんなさい」
深々と頭を下げるヘイネ
「神にも神の事情があるんだろうから、もういいさ。でもこれで俺が言ってた意味分かったろ?俺のスキルは対神用を意識してずっと考えてきたものなんだ。初めはヘイネが対象だったけど、今は違うってこと」
「そういうことだったんだね・・・。具体的にはどういうスキル?」
俺から離れ、お仕事モードに戻る
「創造は創造なんだけど、俺が生まれてから今現在に至るまでに記憶していて手に入れた技術はレベルに関わらず、全て創造できるようにして欲しい。もちろん、その世界にある構成物では作れない物は創造できなくても構わない。そんなスキルなんだけど、できそうかな?」
(確かにチートくさいスキルだけど、世界に干渉できるぐらいの力をもつ神ならきっと作れるはずだ)
「え~と、作れるか作れないかで言えば問題ないと思う。でもどういうこと??」
よくわからず首を傾げている
「簡単に言うと、これから向かうイリアスで、俺は最初から一回目勇者と二回目勇者だった時の記憶を使ってスキルを創造できるってことだな。強くてニューゲームみたいな?どうせイリアスではステータスはまた初期化されるだろうし。けど、ちゃんとレベルはコツコツ上げるつもりだ」
ヘイネの様子を伺う
きっと理解してもらえただろう
「なるほど、分かったわ。確かにそのスキルの内容だと、ユウジの生い立ちを知らないと普通の創造と大して変わらないから、変に思われないかも。でも創造はユウジの魔力依存になるわよ?にしても、どんなチートスキルよ。サイコロの意味ないじゃない」
ジト目で俺を見てくるヘイネ
(ですよねー。向こうで新たに習得できるスキルとかあるのかな?そういうのも含めて楽しみたいんだよなぁ。ヘイネを迎えにいくという目標もあるけど、それとは別に異世界を楽しみたいってのはある。3度目だからか余裕あるのかも)
わくわくしているのがわかる
地球とは違う非日常体験だからだ
魔王を倒すという使命はあるが、はっきり言って二の次だ
別に勇者は俺だけじゃないしな!
俺はヘイネの勇者であれば、それだけでいい
「もう、わくわくしちゃって子供なんだから。じゃあアウラ様にスキルの確認をしてもらってくるね。内容は適当にごまかしておくわ。待ってて。」
若干呆れ顔のヘイネがアウラ様のもとに向かう為、カウンターから離れた
(いよいよ、ヘイネとしばらく会えなくなるのか・・・。停止世界とは言え、長い時間を過ごしてきたからやっぱり寂しいな)
ぼ~っとしながら、ヘイネとの日々を思いだす
その時、体に力がみなぎってきたのが分かった
体が軽い。懐かしい感覚だ
もしや?と思い、確認する
「ステータス」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユウジ・ハクト 17歳 ♂ レベル:1
種族:人間
職業:勇者
体力:300/300
魔力:250/250
筋力:150
敏捷:100
器用:200
幸運:15
称号:なし
加護:女神アウラ『記憶創造』
技能:イリアス言語
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ステータス、ちゃんと見れたな。能力は普通・・・?いや、きっと悪いほうだな。どうやらアウラ様の世界では歓迎されてないらしい。転移後は、スキル作成と鍛練だな。それと・・・記憶創造!)
頭に記憶創造の呪文が浮かんだ。
(・・・ちっ。仕方ないとは言え、呪文面倒だな)
「我、悠久の彼方より求む、顕現せよ、記憶創造」
(スキル発動したな。今回は時間がない。直接創造するか。イメージ、イメージ)
「はぁはぁ、な、んとか成功したみたいだな。まだ魔力が低いから大したものじゃないけど・・・」
正直倒れそうである
現在の魔力をほぼ使い果たし、完成させたのだから
そこへ、確認作業を終えたヘイネが戻ってきた。
なんだか嬉しそうに駆けつけてくる
(なんか犬みたいだな。そんなに俺のとこに来るのが嬉しいのかな。はぁ・・・にしても魔力欠損はやっぱりきついな・・・)
「おまた・・・ってなんでそんなにグッタリしてるの!?」
辛そうにしている俺の顔を心配そうにのぞきこむ
「ハハハ・・・スキル使ってたらこうなりました」
申し訳なさそうに苦笑する
「はぁ・・・ユウジってバカなの?死ぬの?ほら、手貸して」
ジト目でユウジを見つめる
(ひどいっ!ヘイネさん、ひどくないでしょうか!?)
「ふふ、冗談。魔力譲渡」
俺の体が赤い光に包まれる
優しい魔力に包まれ、体の倦怠がなくなった
「ありがとう、ヘイネ」
「どういたしまして。はしゃぐのもいいけど気をつけてよね?・・・本当私がいないとユウジはダメなんだから」
最後のほうはよく聞き取れなかった
「ん?なんか言った?」
「うぅん、なんでもないよ。それといよいよお別れだね・・・」
寂しそうに俯くヘイネ
俺もヘイネと別れるのは寂しい
「ヘイネ、なるだけ早く迎えにくるから。あとデートの日は楽しみにしてるよ!」
「うん、待ってる。あと魔道具を使うにも魔力が必要だからすぐ使えるわけじゃないと思う」
「そうか・・・。あとは俺の頑張り次第だな」
「無理しだいでね、ずっと待ってるから」
ヘイネは今にも泣きそうな顔で微笑む
心が締め付けられそうだ
そんな顔は彼方には似合わない
いつだって笑っていてほしい
だから、俺は・・・
「ヘイネ、左手を出して」
「?はい」
白く細い手だ
でもとても美しく可愛いらしい手だ
そんな手を取り、薬指にスッと指輪をはめる
マジックリング 誓いのゆびわ
シルバーリングに小さい小さいピンク色の宝石がついているシンプルな指輪だ
ユウジが記憶創造で作成した、指輪だ
装備品は装備者の体格に自動で調整されるため、大きさとかは問題ない
「今はこんなものしか創造できなかったけと、受け取ってほしい」
照れ笑いをして、ヘイネに謝罪する
「!・・・じゃあさっきの魔力欠損ってこれのため!?」
自身の薬指に添えられている指輪を見て、驚いてユウジを見る
首を縦にふるユウジ
照れているのが一目でわかる
「ユウジのバカ・・・でも、ありがとう。愛してる!」
あまりの嬉しさに思わず抱き着いてしまったヘイネ
「あぁ、俺もだ、ヘイネ。愛してる!」
抱き着いてきたヘイネを抱きとめ、神界での最後のキスをする
□□□□
『勇者様方、長らくお待たせ致しました。これよりイリアスへと転移させて頂きます。転移後、私達神は不干渉となりますのでよろしくお願い致します。転移場所は王都イシス、そこの王続に召喚された形となります。どうか私の愛しい世界をよろしくお願い致します。』
アウラ様からまばゆい光が解き放たれた
俺達全員が光に包まれる
見送りにきていた、ヘイネへと視線を向ける
にっこりと微笑むヘイネ。とてもとても美しい
(行ってくる、ヘイネ!)
瞬間、世界が揺れ、俺達はイリアスへ旅立った
(いってらっしゃい、ユウジ。私だけの勇者様)
一筋の涙を流したヘイネに気付いた神はいない
頬を伝い流れ落ちた涙は雫となり、薬指にはめられた指輪へと滴り落ちる
雫に彩られた指輪はとても美しかった
マジックリング 誓いの指輪
込められた想いは、『永遠の愛と約束』
真剣な眼差しで見つめてくる、ヘイネ。
ヘイネはすごい。
神なだけはある。今の俺では全く敵わない。
いや、ヘイネと敵対するつもりはない。
ただ問題は、他の神だ
少なくともヘイネより上の上位神は危険視すべき存在だ。
ヘイネ、君と一緒に歩んでいく為に・・・。
「あぁ、俺のスキルなんだが、俺専用だと思う。ヘイネならその有用性がわかるはず。恐らくアウラ様ではわからないから出し抜けると思う」
手の内は隠したいからな。神は強大だ。知られないなら知られたくない。
「アウラ様を出し抜く?なんで??」
首を傾げるヘイネ
まぁ普通はそうだよな、神を出し抜くなんて考えたりしない。
「ヘイネ、誰にも話さないのを『約束』してくれる?」
さぁ、約束をしよう。今すぐしよう!
「・・・うん、いいよ」
ヘイネは恥ずかしそうに頷いてくれた。
なんでヘイネが恥ずかしそうにしているのか
それは『約束』にある。
俺達は、停止世界と現実世界で2度の『約束』をおこなった。どちらもヘイネを迎えにいく約束だ。
約束の内容以外に一貫した共通項がキスだったのだ。
□□□□
ある停止世界の出来事
俺達は現在停止世界にいる。
あの日見た、ヘイネの圧倒的な力に俺は恐怖した。
怖かった。でも内心歓喜した。
だってここならアウラ様に気付かれず、ずっとヘイネといられる。
だが、それは根本的な解決にならない。
俺はまだスキルを所持していない。鍛練に励めないのだ。スキル所持の有無は肉体に大きな違いがある。
スキル無しの肉体でしかも停止世界で何十年鍛練しても、スキル有りの肉体で現実世界での1時間の鍛練にすら及ばないのである。
ハッキリ言って無駄である。
だから俺はヘイネとたくさん話をした。
停止世界である。全てが停止している世界。
お腹も空かなければ、便意もない、もちろん睡眠の必要性すらない。
ヘイネは俺の世界を度々見ていたらしい。
だから知識もある程度あった。耳年増というやつだ。
耳年増というと怒られた。
たくさん、たくさん、たくさん話をした。
どれだけの時間が過ぎただろうか、それでも話は尽きなかった。
長い時間を過ごす内に、俺達はたくさんの『約束』を交わした。
ヘイネ曰く、『約束』にキスは必要ないらしい。
ただ俺は断固拒否した。
(ヘイネの停止世界をけなすつもりはないが、こんな何もないところで、味気ない約束はしたくないよなぁ。それに数少ないスキンシップでもあるしな!)
ヘイネには心読は切るようにお願いしている。
二人だけの世界だ、話せばいい。
俺達は以下の『約束』をした。
①俺の童貞はヘイネに捧げる
実は長い時間過ごしてきたが、一度もしていない。
ヘイネは抱いてくれて構わない。現実世界ではまた清いヘイネがあるのだから、と。魅力的な提案だった。
でも俺はそれが許せなかった。
停止世界のヘイネは、現実世界のヘイネの後にすることにした。最初彼女はとても淋しそうにしていた、でも俺の気持ちを汲んでくれたようだ。ありがたい。
②ヘイネの処女は俺に捧げる
これは上の内容のヘイネverだ。
いくら停止世界とは言っても、いちゃいちゃしていれば性欲は沸いて来る。俺だけでなく、ヘイネもだ。だからお互いが監視する意味合いで『約束』した。
③新たな嫁に関しては、必ず報告すること
新しく嫁になった人は、必ずヘイネとのデートの日に挨拶すること。ヘイネの正妻力が半端ない・・・。夜に関しては、一度嫁会議なるものを開催して全員が寂しくならないよう取り計らうらしい。全員をちゃんと愛せないなら嫁の追加は禁止とのこと。あれ?俺の意思は?
④どこでもいいので、家が欲しい
ヘイネが『家と家族』に憧れているらしい。神には家族がいないらしい。これは俺がしっかり叶えてあげたい。それとヘイネは子供がたくさん欲しいらしい。が、がんばります・・・
⑤デートは希望者がいれば一緒でもいい
『約束』の①と②が叶えば、それ以降は二人きりでなくてもいいらしい。俺が希望すれば二人きりでも可。どうやらヘイネは独占欲よりも新たな嫁達とのやりとりに夢を馳せているようだ
おおまかに分けるとこんな感じの『約束』だ。
他にもたくさんあるが、その度に『約束』とキスをした。
既に数えきれないほどのキスをしてきた俺達だが、ヘイネは、毎回恥ずかしがるので、いつまでも初なヘイネを味わえて興奮してしまう。
停止世界にきて、どれぐらいの時間がたったろうか・・・
いつまでもここにはいられない
飽きたのではない、お互いがお互いを求める心が大きくなってしまったからだ。そして二人は意を決して現実世界に舞い戻る、そう、ここからまたお互いの時間が進むのである。
そして冒頭にもどる
□□□□
現実世界での『約束』には注意が必要だ
いつアウラ様やクラスメートがくるかわからないからだ。故に背徳感で興奮してくる
興奮がおさまらない、いつもより少し強くヘイネを抱き寄せ、貪るようにキスをする。
ヘイネもスイッチが入ったのか積極的に求めてくれた。
終わってみたら、ヘイネは肩で息をし、乱れた髪、体からは湯気のようなものが立ち上り、碧眼はとろんっとして潤んでいる。
それを見た俺は野獣のように理性はなくなり、ヘイネを求めようとした所で、ヘイネに止められた。
「ユウジ、これ以上はダメだよ。ここは現実世界」
ビシッと指摘してくるヘイネはさすがだ
(まずいな、俺はこんなに自制が効かないのか?停止世界での甘い時間に慣れすぎたか?)
「ユウジが私を求めてくれるのは嬉しいよ?一緒に頑張ろ?」
(あぁ、心読か・・・久しぶりだな。そうか、ここは現実世界なんだよな。いつまでも浮ついていられないな!豊壌の女神ヘイネの勇者、白兎雄司。今この瞬間に立ち上がるか!)
(!そうだ、私はこの決意した時のユウジの横顔に惚れたんだった。あぁ、私だけの勇者様)
「さて、ヘイネ。俺専用のスキルなんだが、名前は『記憶創造』だ」
「記憶創造?普通の創造と違うの?」
首を傾げるヘイネ。相変わらず可愛い
「あぁ、全く違う。このスキルな、実はヘイネを倒すつもりで日本でずっと考えてたんだよ?」
ヘイネを見て苦笑する
「・・・え?私?何で?・・・嫌いになったの?」
涙目になり絶望の顔色をするヘイネ
俺はヘイネを抱き寄せ、優しく背中を撫でながら耳元で囁く。
「おいおい、俺の愛を疑うのか?俺はもうヘイネ無しじゃ生きていけないのに」
俺の胸の中で、すんすんと泣き声が聞こえていたが、次第に泣き止み、ヘイネは俺の胸にすりすりと頭を押し付けてきた。
彼女をそっと体から離し、不意撃ち気味に軽いキス
あっ・・・と聞こえてきたが、嬉しそうだ
「落ち着いたか?急でごめんな。ちゃんと話すから」
「私こそ、ごめんなさい、あと・・・ありがと。えへへ」
可愛い、可愛いすぎて理性が吹き飛びそう。我慢だ、我慢
「えっとな、さっきの件なんだけど。ヘイネは覚えているだろ?俺を勇者召喚した時のこと」
そう、俺は過去にヘイネによって勇者召喚されていたのだ
「もちろんだよ、『最初』はグズニールのマリーちゃんのところでしょ」
ヘイネは懐かしむように話していた
「そうそう、昔話は置いといて、そこで世界平和に貢献した、そして有無を言わさず地球に帰還させられた。マリーは既に大切な人になっていたから、当日はかなりショックだったよ」
じ~っとヘイネを見つめる。ヘイネは罰が悪そうな顔をして視線を逸らした。
「そして3年後、『次に』召喚されたのが、ショーマリーのセリーヌだな。俺は最初歓喜に震えたよ。またマリーに会える!ってな。ところが実は別の異世界と聞いて落胆したよ。そんなときに支えてくれたのがセリーヌだ。そんな彼女の期待に応えて、またもや世界を救った。そこまではいい、そしたらまた地球に帰還させられた。セリーヌもまた大切な人になっていたから、さすがに俺も納得がいかなかった。そして次があるなら、今度こそ神を・・・そして今に至る。オーケー?」
ちらっとヘイネを見やる
ぷるぷる震えている
「ごめんなさ・・・」
俺はその声を遮るように、そしてヘイネを抱きしめ、
「そしてこの世界で愛しい神様に出会い、恋をした。俺はヘイネが好きだ。だから、今までのことはもういい。でもヘイネ以外の神は全く信用していない。だから、俺は神を殺すことに躊躇しない。また大切な人と引き離すようなら容赦しない」
ヘイネはビクッと体を震わす
「ヘイネ。以前話したこと覚えてるか?俺の事がどれぐらい好きか?親しい人と天秤にかけても俺を選んでくれれのか?っと。改めて聞く。ヘイネお前はどうなんだ?引きかえすなら今の内だぞ?」
話ながらも優しくヘイネを包み込む雄司。
今はただこの愛しい女の子を抱擁していたい。
答えは聞かなくても分かっているから。
「私の事、手放しちゃう?」
俺の胸の中から、顔をあげこちらを伺うように尋ねてくる
「意地悪な聞き方だったな。ヘイネはもう俺のモノだから逃がさないし、逃げられない、邪魔するなら神でも容赦しない、だから覚悟してくれよ?」
「うん!でも本当にあの時はごめんなさい」
深々と頭を下げるヘイネ
「神にも神の事情があるんだろうから、もういいさ。でもこれで俺が言ってた意味分かったろ?俺のスキルは対神用を意識してずっと考えてきたものなんだ。初めはヘイネが対象だったけど、今は違うってこと」
「そういうことだったんだね・・・。具体的にはどういうスキル?」
俺から離れ、お仕事モードに戻る
「創造は創造なんだけど、俺が生まれてから今現在に至るまでに記憶していて手に入れた技術はレベルに関わらず、全て創造できるようにして欲しい。もちろん、その世界にある構成物では作れない物は創造できなくても構わない。そんなスキルなんだけど、できそうかな?」
(確かにチートくさいスキルだけど、世界に干渉できるぐらいの力をもつ神ならきっと作れるはずだ)
「え~と、作れるか作れないかで言えば問題ないと思う。でもどういうこと??」
よくわからず首を傾げている
「簡単に言うと、これから向かうイリアスで、俺は最初から一回目勇者と二回目勇者だった時の記憶を使ってスキルを創造できるってことだな。強くてニューゲームみたいな?どうせイリアスではステータスはまた初期化されるだろうし。けど、ちゃんとレベルはコツコツ上げるつもりだ」
ヘイネの様子を伺う
きっと理解してもらえただろう
「なるほど、分かったわ。確かにそのスキルの内容だと、ユウジの生い立ちを知らないと普通の創造と大して変わらないから、変に思われないかも。でも創造はユウジの魔力依存になるわよ?にしても、どんなチートスキルよ。サイコロの意味ないじゃない」
ジト目で俺を見てくるヘイネ
(ですよねー。向こうで新たに習得できるスキルとかあるのかな?そういうのも含めて楽しみたいんだよなぁ。ヘイネを迎えにいくという目標もあるけど、それとは別に異世界を楽しみたいってのはある。3度目だからか余裕あるのかも)
わくわくしているのがわかる
地球とは違う非日常体験だからだ
魔王を倒すという使命はあるが、はっきり言って二の次だ
別に勇者は俺だけじゃないしな!
俺はヘイネの勇者であれば、それだけでいい
「もう、わくわくしちゃって子供なんだから。じゃあアウラ様にスキルの確認をしてもらってくるね。内容は適当にごまかしておくわ。待ってて。」
若干呆れ顔のヘイネがアウラ様のもとに向かう為、カウンターから離れた
(いよいよ、ヘイネとしばらく会えなくなるのか・・・。停止世界とは言え、長い時間を過ごしてきたからやっぱり寂しいな)
ぼ~っとしながら、ヘイネとの日々を思いだす
その時、体に力がみなぎってきたのが分かった
体が軽い。懐かしい感覚だ
もしや?と思い、確認する
「ステータス」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユウジ・ハクト 17歳 ♂ レベル:1
種族:人間
職業:勇者
体力:300/300
魔力:250/250
筋力:150
敏捷:100
器用:200
幸運:15
称号:なし
加護:女神アウラ『記憶創造』
技能:イリアス言語
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(ステータス、ちゃんと見れたな。能力は普通・・・?いや、きっと悪いほうだな。どうやらアウラ様の世界では歓迎されてないらしい。転移後は、スキル作成と鍛練だな。それと・・・記憶創造!)
頭に記憶創造の呪文が浮かんだ。
(・・・ちっ。仕方ないとは言え、呪文面倒だな)
「我、悠久の彼方より求む、顕現せよ、記憶創造」
(スキル発動したな。今回は時間がない。直接創造するか。イメージ、イメージ)
「はぁはぁ、な、んとか成功したみたいだな。まだ魔力が低いから大したものじゃないけど・・・」
正直倒れそうである
現在の魔力をほぼ使い果たし、完成させたのだから
そこへ、確認作業を終えたヘイネが戻ってきた。
なんだか嬉しそうに駆けつけてくる
(なんか犬みたいだな。そんなに俺のとこに来るのが嬉しいのかな。はぁ・・・にしても魔力欠損はやっぱりきついな・・・)
「おまた・・・ってなんでそんなにグッタリしてるの!?」
辛そうにしている俺の顔を心配そうにのぞきこむ
「ハハハ・・・スキル使ってたらこうなりました」
申し訳なさそうに苦笑する
「はぁ・・・ユウジってバカなの?死ぬの?ほら、手貸して」
ジト目でユウジを見つめる
(ひどいっ!ヘイネさん、ひどくないでしょうか!?)
「ふふ、冗談。魔力譲渡」
俺の体が赤い光に包まれる
優しい魔力に包まれ、体の倦怠がなくなった
「ありがとう、ヘイネ」
「どういたしまして。はしゃぐのもいいけど気をつけてよね?・・・本当私がいないとユウジはダメなんだから」
最後のほうはよく聞き取れなかった
「ん?なんか言った?」
「うぅん、なんでもないよ。それといよいよお別れだね・・・」
寂しそうに俯くヘイネ
俺もヘイネと別れるのは寂しい
「ヘイネ、なるだけ早く迎えにくるから。あとデートの日は楽しみにしてるよ!」
「うん、待ってる。あと魔道具を使うにも魔力が必要だからすぐ使えるわけじゃないと思う」
「そうか・・・。あとは俺の頑張り次第だな」
「無理しだいでね、ずっと待ってるから」
ヘイネは今にも泣きそうな顔で微笑む
心が締め付けられそうだ
そんな顔は彼方には似合わない
いつだって笑っていてほしい
だから、俺は・・・
「ヘイネ、左手を出して」
「?はい」
白く細い手だ
でもとても美しく可愛いらしい手だ
そんな手を取り、薬指にスッと指輪をはめる
マジックリング 誓いのゆびわ
シルバーリングに小さい小さいピンク色の宝石がついているシンプルな指輪だ
ユウジが記憶創造で作成した、指輪だ
装備品は装備者の体格に自動で調整されるため、大きさとかは問題ない
「今はこんなものしか創造できなかったけと、受け取ってほしい」
照れ笑いをして、ヘイネに謝罪する
「!・・・じゃあさっきの魔力欠損ってこれのため!?」
自身の薬指に添えられている指輪を見て、驚いてユウジを見る
首を縦にふるユウジ
照れているのが一目でわかる
「ユウジのバカ・・・でも、ありがとう。愛してる!」
あまりの嬉しさに思わず抱き着いてしまったヘイネ
「あぁ、俺もだ、ヘイネ。愛してる!」
抱き着いてきたヘイネを抱きとめ、神界での最後のキスをする
□□□□
『勇者様方、長らくお待たせ致しました。これよりイリアスへと転移させて頂きます。転移後、私達神は不干渉となりますのでよろしくお願い致します。転移場所は王都イシス、そこの王続に召喚された形となります。どうか私の愛しい世界をよろしくお願い致します。』
アウラ様からまばゆい光が解き放たれた
俺達全員が光に包まれる
見送りにきていた、ヘイネへと視線を向ける
にっこりと微笑むヘイネ。とてもとても美しい
(行ってくる、ヘイネ!)
瞬間、世界が揺れ、俺達はイリアスへ旅立った
(いってらっしゃい、ユウジ。私だけの勇者様)
一筋の涙を流したヘイネに気付いた神はいない
頬を伝い流れ落ちた涙は雫となり、薬指にはめられた指輪へと滴り落ちる
雫に彩られた指輪はとても美しかった
マジックリング 誓いの指輪
込められた想いは、『永遠の愛と約束』
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