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第1章 最愛の女神と旅立ち

~チートと約束~②

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「ユウジさん、ごめんなさい・・・」
シュンと小さくなるヘイネ様。謝るたびにどんどん小さくなるようだ

「お気になさらないでください、元は俺が原因なんですから」
そう、今回の一件は確実に俺が原因だ
ヘイネ様が覚醒した時点でやめていれば、あんな大惨事にはならなかったのだから
(調子に乗った罰かな?どうも俺は調子に乗りやすい。油断はしない、容赦もしない、だけど調子には乗りやすい・・・はぁ。転移したら鍛練し直すかな)
ヘイネ様をチラリとみやる。
まだ落ち込んでいる。どよ~んの文字が見えそうだ

(どうしたらいいのかな?こういうのは自責にかられてるんだよな?だったら許すんじゃなくて、何か罰を与えた方が実はよかったりするのか?でもヘイネ様を傷つけたくないしな・・・う~ん。ちょっと恥ずかしくなるような罰とかもでも大丈夫かな?ものは試しだ!)

「ヘイネ様。やっぱり許すのはやめました。罰を与えますね」
なるべく怖がらせないように優しく語りかけた

「はい!お願いします!」
ぱぁっと明るい顔になった。

(う~ん、やっぱり喜んでるような?そういうもんなのか?わからん。俺なら無条件で許してもらえるなら喜んでしまうのだが・・・。優しく甘受するだけが優しさではないのかもしれない。教訓としよう)

罰を与えようとしたその時、

『ちょっと!ヘイネ!いつまでかかってるの?いい加減にしなさい!』

突如美の女神アウラ様から、ヘイネ様にお叱りがきた。

(確かに時間かかりすぎだよなぁ、アウラ様には申し訳ないことをしたな。・・・でも。俺のヘイネ様に文句をつけてきたのは看過できない。あっ!どさくさに紛れて、『俺のヘイネ』とか言っちゃったけど、構わないよな!)

ヘイネ様にチラリと視線を向けてみる
あっ!視線があった。なんかもじもじしてるように見える。なにこれ、可愛いいんですけど!

「ヘイネ様、俺のせいにしちゃってください。まだスキルを選べてないって」
アウラ様に聞かれないようにぼそっとつぶやく。

「え?いや、でも・・・」
悩むヘイネ様。

(もう!くそ真面目な性格だな!)

「俺がまだヘイネ様と居たいんです!早くお邪魔ウラ様を追っ払ってください」
強くお願いしてみた。

「アウラ様。白兎様はまだスキルを絞られていないんです。幾つか厳選しましたので今しばらくお待ちくたさい」  
さすがヘイネ様!厳選したとなると、スキルはもう決まると思うだろう。その間はヘイネ様といちゃいちゃできるな

『あら、そうなの?失礼しました、勇者様。ですが、他の勇者は既に準備も整いまして、お待ちになっております。今現在はスキルなどの試し撃ちなどをなさっていますが、お早めにお願いします』
にっこりと微笑み、軽く会釈をして去っていった。

(う~む。さすが美の女神、美しい。仕種一つ一つに美があふれている。胸はぺったんこだけど・・・)

さて、ヘイネ様に罰を与えようとして向かいあった途端、先程までとは違い明らかに不機嫌なオーラを出している。

(あれ・・・?なんで?いきなり雰囲気が変わった?秋の空と女の心は変わりやすいと聞くけど、それなの?)
俺が戸惑っていると

「なんで不機嫌なのかわかりませんか?」
あきらかに刺々しい言葉がヘイネ様から返ってきた

な、なんだ?
よく考えろ!俺は鈍感系主人公じゃない!
不機嫌になる前は落ち込んでた。アウラ様がきて、それから不機嫌。

・・・。あぁ、嫉妬か

「嫉妬ですか?」
穏やかに、でも嬉しさを多分に含んだ声で尋ねてみた。

「!べ、別に嫉妬な・・・」
慌てるのはよくわかる。だが!

「ヘイネ様待ってください!」
俺は強く遮った。

「?」 

「ヘイネ様はツンデレ担当ではありません。ですので、ツンデレにならなくていいのです。そのままのヘイネ様でいてください」

「担当・・・?そ、そう・・・?」
訳が分からず首を傾げるヘイネ様

「どうしてもそこだけは譲れないのです!我が儘で申し訳ないですが、お許しください。今のままのヘイネ様が一番好きなのですから。と言うか、ヘイネ様?」
(よしよし、嫉妬の件は大丈夫だな)

「一番好き!?・・・えへへ。そう、なんだ。好きなんだ・・・。はっ!な、なにかしら?」
なにやら顔を赤くして妄想の彼方に飛び去っていたヘイネ様が現実に帰還したようだ

心読で気付いたことがあるのだが、心を読めるのは大変強力なスキルだ。初見キラースキルと言ってもいい。
ただ原理がわかると対処も実は簡単だ
先程のヘイネ様がそうだが、心読はこちらが意識をして対処するか、使用者をスキルが使えないようにすればなんとかなる
先程のヘイネ様は簡単にいえば、褒め殺しをしてスキルから意識をはずさせたのだ

(ヘイネ様はちょろイン枠なんだよなぁ。ツンデレ枠は別にいるはず!)

「ちょろインってなに?」
首を傾げるヘイネ様

「ちょ~可愛いびじぃんって意味ですよ!言わせないでください。恥ずかしいんですから!」
(あぶなかった!そうだよ、さっき呼びかけて意識を戻したんだった・・・)

「ちょ、超可愛い美人!?そ、そう?えへへ。お世辞でも嬉しいかな~」

(ちょっろ笑。でもそこがまたいいんだよなぁ。俺以外の奴にちょろまかされないように気をつけないとな)
密かに俺色に染める計画を立てる雄司であった

「ところでヘイネ様?俺まだ返事を頂いていないのですが・・・」
さて、本題を詰めていくか
いつまでもいちゃいちゃしていたいが、アウラ様を始めそろそろクラスのやつらも痺れを切らすだろう

「あ・・・ごめんね。忘れてた訳じゃないよ?でもこの時間が楽しくて、ついつい先送りにしてたの。ユウジさんと一緒にいる時間がとても素敵なものだから」
困ったような、でも嬉しそうな、でも申し訳ないような、様々な表情を見せる彼女の笑顔にまた見惚れていた

(・・・ぐはっ、ヘイネ様の笑顔にプライスレス!ヘイネ様だけでなく、俺もちょろかったのか・・・)

「そうでしたか、では今お答えを頂いてもいいですか?」
なんとか鼻血が出るのを抑えつつ、真剣な表情で答えを待つ

「まずはユウジさんが混乱していた部分なんだけど、あれは・・・」 

あぁ、そういえばそんなことになってたなぁ
でも今更な気がする

「あっその部分はもういいですよ」
時間も惜しいし、スルーしとくか 

「え?・・・いいの?」
戸惑うよね、ごめんね。ヘイネ様

「ヘイネ様のお気持ちだけ伺いたいです」 
なんか聞かなくてもわかるような気がするけど、形って大事だよね!俺だって美人に告白されたいしさ!
そのへんの有象無象の女よりもヘイネ様は確実に美人だ。そんな娘が慕ってくれるなら、こんな嬉しいことはない。すごい大きいしな!霊峰富士万歳!!

「さっきも聞いたけど、あの子たちと同じように愛してくれる?心話でなく言葉で紡いで欲しい」

「もちろん!アイツらと同じようにヘイネ様を愛します」
ヘイネ様をのけ者になんかするわけない

「私、かなり淋しがりやだよ?そう『うさぎ』みたいに、必ず迎えにきてくれる?」

「必ず!相手が神様であっても容赦しません」 
ヘイネ様の居場所は俺の隣なんだしな

「私、可愛くもないし、綺麗でもないし、家事も何もできないよ?」

「可愛い人ならたくさんいます、綺麗な人もたくさんいます、家事なら俺も少しできますし、覚えたいなら一緒に覚えていくこともできます。でも俺の女神はヘイネ様だけです!」
ヘイネ様はNo.1ではないかもしれない、それでも俺の中ではOnly.1なんだ

「・・・ヘイネって呼んで」

「なら俺のことは、ユウジと呼んでくれ」  
なんか今更だからこそ恥ずかしい

「・・・ユウジ、ありがとう」

「あぁ、だから。ヘイネ!俺のモノになれ!必ず迎えに来てやる!」

今はまだ迎えにいけるだけの力はない。
気持ちは通じていても、力がなければ『奇跡は起こせない』
力はあっても、気持ちが通じていなければ『奇跡は起こらない』
今、気持ちは手に入れた。
なら足りない力を手に入れるだけだ

(そう遠くない未来だ!力を手に入れて必ず迎えにきてやる!俺のたった一人の女神様のために!)

「ユウジありがとう!愛してる!」

二人は『約束』を交わし、そっと口付けをするのだった。



























(完)

□□□□

「で、終わればよかったんだが、ごめんな?ヘイネ」
俺はかなり後悔している
何を後悔って?
ヘイネが手に入った。こんなに嬉しいことはない。
ただ、二人して盛り上がりすぎた
かなりいい感じだったのは間違いない。
・・・でもここ真っ白な神界ですし、しかも受付窓口ですし?
ロマンチックも、ムードもあったもんじゃない・・・はぁ

「私はユウジと一緒に居られればどこでも幸せよ?」
顔を赤くしてもじもじしながらも、可愛いことを言ってくれる愛しのわが妻、可愛い。可愛いすぎて押し倒したくなる。でもそれは今じゃない。我慢、我慢

(なにか大事なことを忘れているような・・・なんだっただろう・・・)
ぼ~っとしていると、ヘイネが

「ねぇ、・・・ユウジは家庭的な娘が好き?」
「突然どうしたんだ?」
「だってユウジがいた世界は女性が家事をして、男性は働いているでしょ?」
「別にそういう決まりはないんだぞ?確かに女性が家事をしている家庭が大半ではあるが・・・」 
「だって、美味しいご飯作ったり、綺麗な家だったりしたら嬉しいでしょ?」
「まぁ確かに嬉しいかな。俺一人暮らしだったから、飯とかてきと~だったしなぁ」
「だったら私が美味しいご飯を作る!それに・・・」
「それに?」
「わ、わた、私達の子供ができたら、美味しいご飯たくさん作ってあげたいしね」
「!?ヘイネ、子供好きなのか?」
「?うん、いちお子宝の神だしね?」
「あ・・・豊壌ばかりに目がいきすぎて忘れてた、すまん(じ~)」
「ここは、その、豊壌は関係ないと思うんだけど、でも関係あるなら嬉しいかな!ユウジは大きい方が好きなの?」
「な、内緒だぞ?バレたら悲しむ奴いるから注意してくれよ?」
「あ~うん、分かった」
「その~、ヘイネの胸は最高だと思います!」
「あ、ありがと。でも確かあの子は私よりも大きかったような?」
「大きければいいって訳じゃないんだよ。全ては黄金比率が重要なのだ!」
「そ、そうなの?嬉しいかな?」 
「そういう意味ではヘイネは俺の好みのタイプ、どストライクなんだよなぁ」
「本当に!?嬉しい!」
「あぁ、本当さ。愛してるよ、ヘイネ」
「私もユウジの事、愛して・・・んぅ!」 
不意撃ちのキスに驚くヘイネだが、いつのまにかキスの主導権はヘイネが握っていた

ここだけ桃色空間が広がっていたが、ここは神界で受付窓口なのである

□□□□

(あ~幸せだなぁ、いつまでもこう・・・していられないよ!)

「ヘイネ!スキルだ!」
慌ててヘイネに確認する

「う、うん・・・」
ヘイネの様子がおかしい。いや、まさか?

「気付いていたのか?」
「・・・」
「そうか・・・信じられないか?」
「信じてはいるよ。でも前例がないから怖いの」
「大丈夫だ!お前の勇者様はいつだって不可能を可能にしてきただろ?俺を信じろ!」
ヘイネを抱きしめ、そっとキスをする。
まだ微かに震えるヘイネを抱きしめつつ、頭を撫でる

「安心したか?」
「うん、まだ怖いけど。信じて待ってる!じゃあ時を動かすね!」

世界が大きく動かく!

!!!

「え?どういうだ?」
俺はただただ呆然としている

「驚いた?これが私の加護『時空魔法』!時を動かしたり、停止させたりする魔法だよ。ユウジが愛してくれた女はこれでも女神なんだよ?これぐらいは当たり前にできる」

「時を止めた?じゃあ今は?」
訳がわからない

「今はね、アウラ様が文句をいいにきて去った直後だよ」

「じゃあ、あのあとのことは幻なのか?」
え?あの告白も?あの約束も?

「うぅん、全部事実。でも全部虚実。記憶にはあるでしょ?私達が体験したこと。だけど、こちらの動き出した世界ではそれらは行われていない。停止世界では事実だったことも、現実世界では虚実。その逆もありだね。ねぇ、ユウジ。・・・私が怖い?」

そういってヘイネは、女神然とした笑顔を向けてくれた。

当たり前、か。
背中に嫌な汗が流れるのを感じる。
世界を動かす力、きっとアウラ様ですら騙せていたのだろう、神が神を騙す力、・・・どんだけ神はチートなんだよ!
怖い、かなり怖い。俺は慢心していた。きっと俺なら何でもできる。そう思っていた。
でも目の前で巨大な力を見せられた。勝てるのか?そもそも相手にすらなれるのか?恐怖が全身を包む。
きっとヘイネはこうなることを予想していたのだろう・・・。
恐怖に負ければ、きっとヘイネによって停止世界に連れていかれる。それでもいいとさえ、思う。ヘイネさえいれば。
それでも俺は震える全身に喝を入れて、ヘイネの前に・・・

「言っただろ?ヘイネは俺のモノなんだって!必ず迎えにきてやる、だからお前の勇者様を信じろ!」

ヘイネを強く抱きしめ、引き寄せる。
二人は見つめ、『いつものように』キスを交わす。
ここに今、本当の『約束』が結ばれたのだ。

「ありがとう、ユウジ・・・愛してる」
ヘイネの頬に滴り落ちる涙と眩しい笑顔は、決して忘れられないものとなるだろう

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き

ヘイネは身分的には下位神ですが、『元』上位神なので実力的にはアウラと大差ありません。

上位神と下位神の違いは、瞬発力は同等でも、中長期的な力は上位神に軍配が上がります
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