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第4話 運命の出逢い
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本気で向き合う二人。
ルナはフェイントをおり混ぜた秒に7、8発もの正拳突きと廻し蹴りで振り払おうと放つが通用せず驚愕する。
……ボクの複合連打が! それどころかいなしながら関節を極めに来る! スゴイ!
――やっぱこれは……合気 ! ……
惹かれ合う二人の技の応酬。繰り出す手数は更に増すがその全てがいなされるルナ。
くっ! これでもまだ ?! とばかり苛立つ。
一方、流火も流れるように捌きながら合気の当て身、投げ、固め技へ持ち込めず焦る。
師範のプライドにかけて強引に攻めるも極め切れず、『こんなの初めて』と驚く。
しかも可憐な女子の息もつかせぬ空手技に舌を巻く流火は、
なんて豪胆かつしなやかな空手! そして攻めよりも更に速い引き戻し! 何より双方の次の動きが既に想定されている!
……神童と言われた私の技が全々極まらない?!
いつまでも決定打はならず。
とそこヘ杖をついた老婆が前も良く見ずヨタヨタやって来て、すぐ近くで躓いたではないか。
速攻で闘いを放り出し地面スレスレで受け止める二人。
「おっとっと~、ヒヒヒ……あんた達イイ子だねぇ。忠告、しっかり覚えてるかい? んじゃ、ア~リガ~トネ~……」
去りゆく老婆を見送る二人。二人はその老婆に見覚えを感じると、『あの死の予言』をした者だ、と思い出す。だが視線を感じ、互いへと目を移す。
加害者の男達と少年も既に消えていた。微かに笑みを浮かべ向き合う二人。
「ねえ、ありがとう。よくボクを止めてくれたね……あのままじゃヤバかったかも」
「だって……こんなに可愛い人が捕まったらやだもん。にしてもその空手……素晴らしい……
私は流火。合気術をずっと学んで来たの。でも本気で決めきれなかったの初めて」
「ボクはルナ。ボクの打撃が全ていなされるなんてもう感動。それに……分かる。キミの強さからは優しくてスゴクいい人、それも感じた。いつかまた手合わせしたいね」
頷く流火。目が離れず胸が苦しくなる程熱くなる。だが二人は互いに武道家。語るのは言葉ではなかった。
少し興奮気味に、しかし満足気に、その日はそこを後にした。
**
数日後、裏路地で如何にもイジメに遭っている子を見かけたルナ。
直ちに駆け寄って一喝すると遠くから同時にハモる声。その主の方を見るとあの深緋色が目に飛び込む。
赤袴姿の流火だ。
虐めっ子はそそくさと逃げてしまった。はにかみながらルナは、
「また会えたね……。あの……物足りなければボクとちょっとイイコトしてかない?」
頬をホンノリ赤らめると流火は、
「ホント?! ステキ! 誘ってくれるの? 私なんかで良ければめくるめく熱い一時を!」
無論、即立会い。
その技の応酬は常人には何が起こっているかすら見切れぬ流れる様な連続技。底無しに沸き立つ征服欲は武道家としてか恋のそれか本人らも知れず。
一瞬も気を抜けぬ鬩ぎ合い。
だが遂にルナは関節を巻き込まれてしまう。見えない速さの正にこの人を神童たらしめる流火の十八番、四方投げ。
極まったかの様に見えたが……
宙に浮くルナは巻かれるより速く自ら全身を捻って回避し、同時に放つ反撃の後ろ廻し蹴りが流火のコメカミに。
ファシュッ……
紙一重の屈み避けで躱す流火の頭を掠め、カチューシャを飛ばされ一瞬で花開く様に美しく舞う長い髪。
勝敗つかず延々と続いて、そのうち同時に
「ねえ!―――――」
動きを止め笑顔で向き合う。心地良い汗が二人のこめかみを伝い息を弾ませながら、
「今日はこの辺にしよっか。ボク、とても楽しかった。また手合わせして貰えるかな」
「えっ!…… うんっ、もちろん。あ、あの……でもあなたの事よく知らないから、ちょっと話して行かない?」
ベンチを求め、近くの大公園へと移る二人。
街の大きな交差点の角、絵画のような春の光に包まれた花と緑の憩いの広場。
まるで付き合い始めた恋人の様に木陰のベンチを譲り合って座った。
「私は天ノ川流火って言うの。今、高1。代々続いてる天ノ川流合気術を親の開く道場で幼少の頃から英才教育受けて来て、師範の資格もあるの」
え、ボクと同い年なんだ~! こ、これはまたとないチャンスかぁ?……
「元々周囲から神童と呼ばれて習得する程さらに強くなって……欲が出た親に『異種格闘技で世界制覇だ!』 なんて将来の金ヅル目的で地獄の特訓。ズット敵無し……だった」
ナルホド~、並じゃないと思った。にしてもこのルカって子……あの美技につい目がいっちゃっうけど見れば見る程メッチャカワイイし~。
ああ……カノジョにしたい~!
ルナの迷走。
その幼少期からの虐待、イジメ、そして事故以降の闇落ち。その人格形成もままならぬ半生ゆえの未熟さと壊れっぷり、そして破綻気味の恋愛観は奔走する。
そう、こんな時、必ずだらしないヨダレ混じりのデレ顔となるルナ。嬉そうに続ける流火。
「でも空しすぎて隙を見つけて抜け出しては人助け、趣味はボランティアに参加とか。 それ以外で楽しいって思った事、これが初めてかも。
だからさっき次のオファーしてくれた事、実は泣く程嬉しかったんだ。だって……今まで友達も居なかったから……」
「え……そ、そう?……」
そっか……思えばボクも友達でさえ初めてなんだな。クスッ、ホントはカノジョにしたいけどいっつも焦って失敗するし、ここは慎重に。
この出逢い……大切にしたいな……
「ところでルナさんは何でこんな事やってるの? 公園で見たあなたは虫も殺さない程の優しい人だった。
でも悪者へはコテンパン……
ごめんね、ストーカーみたいで。ちょっと前に公園で見かけてから気になってずっと見てたの」
「え ?! ハズイ……。ま、自分もライフワークなだけ。ボク自身ズット虐待とかイジメられてたから見てられなくてつい。
それにそうする事が正しいって背中で教えてくれた人がいて……」
……とか言って、それもあるけど本当は……
そうでもしてないとボクは……
息を詰まらせ逸らす様に伏し目がちになるルナ。流火はその一瞬を見逃さずに、
――ン……合気を極めた私には分かる。 微妙な所作、そして得意な第六感で。
この子見た目は溌剌としてるけど何か引きずってる。 それもとても傷だらけ、みたいな。でも手を差し伸べる隙なんて与えてくれなさそう……
そっとしてあげたいけど気になる……
だって自分は辛そうなのに人の為に頑張って……
だったらこういう子にこそ何かしてあげたい!
< continue to next time >
――――――――――――――――――――
もし、こんな二人が報われる日が来るのを応援しても良いと思う方は、フォローをいただけると嬉しいです。
――――――――――――――――――
イメージBGM (youtube)
▼The Bloom of Her skin
https://youtu.be/WEt7VC8Um4g
(公園のベンチでのBGMに。超甘なロマンティック曲)
ルナはフェイントをおり混ぜた秒に7、8発もの正拳突きと廻し蹴りで振り払おうと放つが通用せず驚愕する。
……ボクの複合連打が! それどころかいなしながら関節を極めに来る! スゴイ!
――やっぱこれは……合気 ! ……
惹かれ合う二人の技の応酬。繰り出す手数は更に増すがその全てがいなされるルナ。
くっ! これでもまだ ?! とばかり苛立つ。
一方、流火も流れるように捌きながら合気の当て身、投げ、固め技へ持ち込めず焦る。
師範のプライドにかけて強引に攻めるも極め切れず、『こんなの初めて』と驚く。
しかも可憐な女子の息もつかせぬ空手技に舌を巻く流火は、
なんて豪胆かつしなやかな空手! そして攻めよりも更に速い引き戻し! 何より双方の次の動きが既に想定されている!
……神童と言われた私の技が全々極まらない?!
いつまでも決定打はならず。
とそこヘ杖をついた老婆が前も良く見ずヨタヨタやって来て、すぐ近くで躓いたではないか。
速攻で闘いを放り出し地面スレスレで受け止める二人。
「おっとっと~、ヒヒヒ……あんた達イイ子だねぇ。忠告、しっかり覚えてるかい? んじゃ、ア~リガ~トネ~……」
去りゆく老婆を見送る二人。二人はその老婆に見覚えを感じると、『あの死の予言』をした者だ、と思い出す。だが視線を感じ、互いへと目を移す。
加害者の男達と少年も既に消えていた。微かに笑みを浮かべ向き合う二人。
「ねえ、ありがとう。よくボクを止めてくれたね……あのままじゃヤバかったかも」
「だって……こんなに可愛い人が捕まったらやだもん。にしてもその空手……素晴らしい……
私は流火。合気術をずっと学んで来たの。でも本気で決めきれなかったの初めて」
「ボクはルナ。ボクの打撃が全ていなされるなんてもう感動。それに……分かる。キミの強さからは優しくてスゴクいい人、それも感じた。いつかまた手合わせしたいね」
頷く流火。目が離れず胸が苦しくなる程熱くなる。だが二人は互いに武道家。語るのは言葉ではなかった。
少し興奮気味に、しかし満足気に、その日はそこを後にした。
**
数日後、裏路地で如何にもイジメに遭っている子を見かけたルナ。
直ちに駆け寄って一喝すると遠くから同時にハモる声。その主の方を見るとあの深緋色が目に飛び込む。
赤袴姿の流火だ。
虐めっ子はそそくさと逃げてしまった。はにかみながらルナは、
「また会えたね……。あの……物足りなければボクとちょっとイイコトしてかない?」
頬をホンノリ赤らめると流火は、
「ホント?! ステキ! 誘ってくれるの? 私なんかで良ければめくるめく熱い一時を!」
無論、即立会い。
その技の応酬は常人には何が起こっているかすら見切れぬ流れる様な連続技。底無しに沸き立つ征服欲は武道家としてか恋のそれか本人らも知れず。
一瞬も気を抜けぬ鬩ぎ合い。
だが遂にルナは関節を巻き込まれてしまう。見えない速さの正にこの人を神童たらしめる流火の十八番、四方投げ。
極まったかの様に見えたが……
宙に浮くルナは巻かれるより速く自ら全身を捻って回避し、同時に放つ反撃の後ろ廻し蹴りが流火のコメカミに。
ファシュッ……
紙一重の屈み避けで躱す流火の頭を掠め、カチューシャを飛ばされ一瞬で花開く様に美しく舞う長い髪。
勝敗つかず延々と続いて、そのうち同時に
「ねえ!―――――」
動きを止め笑顔で向き合う。心地良い汗が二人のこめかみを伝い息を弾ませながら、
「今日はこの辺にしよっか。ボク、とても楽しかった。また手合わせして貰えるかな」
「えっ!…… うんっ、もちろん。あ、あの……でもあなたの事よく知らないから、ちょっと話して行かない?」
ベンチを求め、近くの大公園へと移る二人。
街の大きな交差点の角、絵画のような春の光に包まれた花と緑の憩いの広場。
まるで付き合い始めた恋人の様に木陰のベンチを譲り合って座った。
「私は天ノ川流火って言うの。今、高1。代々続いてる天ノ川流合気術を親の開く道場で幼少の頃から英才教育受けて来て、師範の資格もあるの」
え、ボクと同い年なんだ~! こ、これはまたとないチャンスかぁ?……
「元々周囲から神童と呼ばれて習得する程さらに強くなって……欲が出た親に『異種格闘技で世界制覇だ!』 なんて将来の金ヅル目的で地獄の特訓。ズット敵無し……だった」
ナルホド~、並じゃないと思った。にしてもこのルカって子……あの美技につい目がいっちゃっうけど見れば見る程メッチャカワイイし~。
ああ……カノジョにしたい~!
ルナの迷走。
その幼少期からの虐待、イジメ、そして事故以降の闇落ち。その人格形成もままならぬ半生ゆえの未熟さと壊れっぷり、そして破綻気味の恋愛観は奔走する。
そう、こんな時、必ずだらしないヨダレ混じりのデレ顔となるルナ。嬉そうに続ける流火。
「でも空しすぎて隙を見つけて抜け出しては人助け、趣味はボランティアに参加とか。 それ以外で楽しいって思った事、これが初めてかも。
だからさっき次のオファーしてくれた事、実は泣く程嬉しかったんだ。だって……今まで友達も居なかったから……」
「え……そ、そう?……」
そっか……思えばボクも友達でさえ初めてなんだな。クスッ、ホントはカノジョにしたいけどいっつも焦って失敗するし、ここは慎重に。
この出逢い……大切にしたいな……
「ところでルナさんは何でこんな事やってるの? 公園で見たあなたは虫も殺さない程の優しい人だった。
でも悪者へはコテンパン……
ごめんね、ストーカーみたいで。ちょっと前に公園で見かけてから気になってずっと見てたの」
「え ?! ハズイ……。ま、自分もライフワークなだけ。ボク自身ズット虐待とかイジメられてたから見てられなくてつい。
それにそうする事が正しいって背中で教えてくれた人がいて……」
……とか言って、それもあるけど本当は……
そうでもしてないとボクは……
息を詰まらせ逸らす様に伏し目がちになるルナ。流火はその一瞬を見逃さずに、
――ン……合気を極めた私には分かる。 微妙な所作、そして得意な第六感で。
この子見た目は溌剌としてるけど何か引きずってる。 それもとても傷だらけ、みたいな。でも手を差し伸べる隙なんて与えてくれなさそう……
そっとしてあげたいけど気になる……
だって自分は辛そうなのに人の為に頑張って……
だったらこういう子にこそ何かしてあげたい!
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――――――――――――――――――――
もし、こんな二人が報われる日が来るのを応援しても良いと思う方は、フォローをいただけると嬉しいです。
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(公園のベンチでのBGMに。超甘なロマンティック曲)
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