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第一章 王国の勇者
都市探索
しおりを挟む俺とペルケウスは都市ヴァーシリウスへ向かった。まずは、情報収集と魔王討伐への仲間探しだ。
都市ヴァーシリウス、中央街
釣り上げられた魚のせりが街の各地で行われている。そのせいか、街は人々の声や活気で溢れている。
「とてもじゃねぇが、世界の危機が迫っているようには見えないだろ?」
と、ペルケウスは呟く。
たしかに、人々は皆幸せそうだ。前世の俺の世界でも、完全とは言えないが人々は平穏な日々を送っていた。
俺もそのひとりになるはずだった。
この世界で人族は凶悪な種族だとされていないらしい。
だが、そこで問題が発生する。
十傑の勇者たちは、人間をひどく憎んでいる者たちばかりだ。
もし魔王を彼らが倒したとすれば、全世界から彼らは賞賛を受けるだろう。
だが、その次に十傑の勇者がとる政策にはおそらく人族の迫害が含まれるだろう。
それだけは絶対に避けなければならない。
そのためにーーーー
「俺はもっと強くなる」
街でペルケウスが魔王退治の仲間を募集していたところ、ひとりの女性が声をかけてきた。
彼女は"リッタ"
金髪エルフの少女だ。
祖母の家が魔王軍により破壊され、今は不憫な生活を強いられている。そこで、剣術を学んでいた彼女は魔王退治に協力することにしたらしい。
「エルフのティアナです。出身はアルフヘイム、今後よろしくお願いしますね!」
「こちらこそ。ちょうど困っていたから、とても助かるよ」
ティアナの無垢な笑顔はどこか、見覚えのあるようなものだった。
またそれぞれ自己紹介をし、街の中を進む。道案内はティアナがしてくれた。なんでも、気の利く情報屋を知っているらしい。
都市ヴァーシリウス、裏路地
さっきまでの街の活気はなく、薄暗い路地とホームレスの人々が道端に座り込んでいる。都市の光と闇を感じる場所だ。
歩いていると、一軒明かりのついた建物があった。2階に誰かいるようだ。
「ここが例の場所です。先に話を通してきますので、待っててくださいね」
と、言ってティアナは階段を登っていく。
彼女と情報屋は知り合いで、都市に来たときに世話になったらしいのだ。
しかし物騒な場所だ。ホームレスといっても、皆ナイフや剣は持っている。襲う準備でもしているのだろうか。
数分が経ち、ティアナと情報屋が建物から出てきた。情報屋の服装はボロボロで、頭部はケガをしているようで包帯が巻かれていた。
「おい、その人大丈夫なのか?」
「ええ、私が手当てしたから大丈夫」
ティアナの治癒魔法で少し回復したという情報屋はそこに至るまでの経緯を話し始めた。
彼は昨晩、新都"ブリューゲル"へ赴いていた。だがその際に、十傑と名乗る9人の者達が一夜にして都市を占領したらしい。
ここに情報が届いていないのは、新都の人々が、そこから出られないからだという。
かろうじて新都から脱出した彼だったが、十傑のひとりに殺されかけ、意識を失った。だが、幸運にもそこを通りかかったティアナに救われたのだ。
「ティアナには感謝している。俺の持つ情報は全て話そう。もちろんあんたらにもな」
そう言って彼は、話を続ける。
「十傑の目的は新都およびこの世界の人族の迫害だ。」
ああ、思った通りだ。だが、少々強引ではないか?このままでは種族の反感を買う恐れも...
「どういうことだ!」
ペルケウスの怒号が響き渡る。
彼はひどく憤慨していた。勝手に異世界から来た者たちに、自分の種族が迫害されると知れば当然だ。
もちろん、俺も同じ気持ちだ
十傑と言いながらも、異世界に来れば世界の敵だ。こんなものは英雄じゃない。
「俺は新都に乗り込みたい。だけど...」
俺とペルケウスは人族の解放が目的だ。
しかし、ティアナはエルフ族。人間の問題で危険な場所には行きたくないはずだ。
と思っていたのだが。
「私も行きますよ!人間の方々がひどいことに遭うのは、放っておけません!」
意外にもティアナは正義感が強かった。新都に行ってからも頼りになりそうだ。
ティアナが仲間になったところで、裏路地を抜ける。
次の問題は戦力差。英傑9人と戦うわけだから、軍では相手にならない。
せめて、ペルケウス並の実力者があと数人ほしいところだ。
「そういえば、十傑って名前なのに9人しかいないんですね」
「!!」
やばい、確かにそうだな。もしかしたらばれてしまうのも時間の問題かもしれない。
ペルケウスは一度、十傑と戦っているしタイミングを計って言うべきか。
いろいろ焦ったが、その場の雰囲気でなんとか誤魔化すことができた。
そろそろ日も暮れそうだな。
街中の喫茶店でひと休みすることにした。
辺りはもう暗い。
異世界独特の飲み物に驚きながらもその雰囲気を楽しんでいた。
ふと思ったのは、自分がなぜ十傑になったのかということだ。十傑の各人の種族はそれぞれ違った。俺は人族代表ということになる。
俺はペルケウスに質問する。
「人族の誇れるところっていうか、武器みたいなものってなんだ?」
唐突に聞かれたペルケウスは驚く。
少し難しい質問だと自分でも思う。
「うーん........."歴史"ではないか?」
「歴史?」
「そうだ。これは我々が誇るべきものだ」
俺のいた世界は、人間しかいなかったから分からかったが、こちらの世界の人々には分かる。
エルフ族、ドワーフ族などたくさんの種族がいる中で人族は最も歴史が長いらしい。
それも、この世界では有名なものや言葉はほとんど全てが人間によるものだ。
歴史...これは何かヒントになるかもしれない。
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