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第一章 王国の勇者
決裂
しおりを挟むエイミル大陸の南西部に位置する都市
"ヴァーシリウス"
ここは海に近いため、水産業が発達している。都市内部には河川が多く、景観が美しいと有名だ。
その都市近郊の森林に十傑は転移した。
まぶたに葉がかかる。広葉樹林の葉のような、やさしい感触だ。
ぽんぽん、とおでこを触られ目が覚める。
「ここは...どこ?」
「あっ、生きてた!」
驚きながらこちらを見つめる少女。
金髪で特徴的な耳の形をしている。
起き上がると、俺の周りには十傑と思われる者たちが立っていた。みんな俺を見つめているようだ。
すると、重装備の男が俺に尋ねる。
「お前、十傑の1人か?」
「ああ、俺は才神リョウ。正当なる十傑のひとりだ!」
全面的な自己紹介をする。
だが、思いのほか反応が薄い。
「ねえ、君って人族だったりする?」
さっきの金髪の子が唐突に尋ねてくる。
「そうだな。ほかのみんなは...違うのか?」
「!?」
一瞬でその場の空気が凍りつく。
素人のリョウでも、それは感じとった。
彼に向けられるのは、9つの...
「殺気...!」
9人の十傑が1人の十傑に戦闘姿勢をとっている状況がリョウには理解できなかった。
「なあ、どうしたんだ!なんで俺を睨んでる?仲間なんじゃないのか?」
当の彼らは聞く耳を持たない。向けられるのは強烈な視線と殺気だけだ。
「人族がなぜ十傑に選ばれている。非道で強欲、自分たちのことにしか興味のない、凶悪な種族め!」
待て待て、こいつらの世界の人間って何なんだ。これじゃあ俺は悪役?なのか。他の全ての十傑の世界で、人間が"悪"だったとしたら、俺は今とてもまずい状況にいるんじゃないか?
"死"という不安が脳裏をよぎる。
「人間は生かしておけない。この世界の平和のためにもーー」
重装備の男が俺に剣で襲いかかる。
ものすごい剣撃で、避けるのが精一杯だ。
これは逃げるしかない...そう思った矢先、
「ぐっ....!」
気づくと足には一本の矢が刺さっている。
他の十傑のひとりの弓で退路を絶たれてしまった。
「こんな不幸なことがあるのかよ...」
死を予感したその瞬間、
「大丈夫か、青年!」
突然、人間の男が戦いに乱入する。
十傑の勇者にも劣らない剣撃で、男は防戦する。
「あんたは誰だ?なんで俺を...」
「同じ種族の人間を放ってはおけないだろう!」
「!」
そう...英雄とはこういう姿を指すのだと、
心底そう思った瞬間だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なんで俺なんかが...」
自分がこの世界に転移した英傑のひとりであり、その中で敵対視されてたなんて、とてもじゃないけど言えない。
ため息をついて考えこんでいると、見回りが終わった男が帰ってきた。いや、命の恩人というべきか。
「俺は才神リョウ。さっきは助かった、本当にありがとう」
「なぁに、いいってもんよ!
俺は"レミオス・ペルケウス"だ。今後もよろしくな!」
ペルケウスは勇敢な男だ。あの十傑を相手にして、ほとんど引けを取らなかった。立派な大剣に傷がついてはしまったが、それ以外はほとんど無傷だ。
男気溢れるな。というか、「今後も」って言ったか?
「ペルケウス、お前どこに住んでるんだ?」
素朴な質問だ。なぜ、あんな森の中まで来れたのかも気になる。
「俺に家はないぜ。なんせ、今は旅してるからな。魔王を倒す旅だ」
「魔王?この世界が窮地に陥っているのは、それが原因なのか?」
魔王が異世界にいることはテンプレだ。
これを倒せば、俺は晴れて自由の身に...
「いや、ちげぇな」
「...え、魔王じゃないの?」
これは予想外。じゃあ一体全体、俺たちはなぜここに転移したんだろうか。
まさか。
「この世界に10人の使徒がやってくるらしいんだ。それも世界を滅ぼすと予言された者たちだ」
驚きすぎて言葉も出なかった。どこで間違ったのか回想してみるが、やっぱりあの神に会ったところしか思い浮かばない。
しかも、自分の身の内を余計話しづらくなってしまった。
(これじゃ俺の存在だけじゃなく、十傑の存在が"悪"になってしまう)
脳裏にあったのは、神の言葉と言動だ。
神はもとからこの状況になることを知っていたはずだ。なにせ、神なんだからな。
「魔王は使徒に対抗すべく、兵力を増やした。それが都市や農村部を襲っている」
ペルケウスの説明によると、そういった状況らしい。
魔王はこの世界で必ず倒さなければならない。十傑が転移したことで、被害が拡大しているからだ。
ペルケウスと行動を共にするのが最も効率が良いが、その分リスクも大きい。自分が十傑のひとりだとばれてしまったときには、潔く白状するしかなさそうだ。
「ペルケウス。魔王退治、俺もついて行くよ」
「おう!よろしくな才神!」
そうして、俺とペルケウスは魔王退治に向かった。
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