私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー

すんのはじめ

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第3章 あの人の側に居たい

3-4

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 翌春、私は3年生になって、お母さんから釘を刺されていた。

「マイ あんたは大学 国公立に行ってよね 勉強出来るんだからー お姉ちゃんもあんな調子でしょ ウチには二人 私立に行かせる余裕ありませんからね ダメだったら、卒業して働いてちょうだい! お父さんも あんなで どこで何をしてるんだかー お母さんはマイだけが頼りなのよー 良い子だからー」

「うっ うん わかってる・・・マイもお母さんのこと 好きだよー」

「・・・マイは可愛いねー 良い子で良かったワー」

 私は、お母さんが言っていることも、充分理解していた。お父さんも姉ちゃんも自分勝手なのだ。家庭というものを守っているのは私とお母さんと・・・カイ と 時々、ご飯をねだりに来るノラ猫のクロスケ だけなのだ。

 私は、その時はまだ、大学のことなんか考えていなかった。専門学校に行って、栄養士の資格を取って、給食センターあたりに勤めれれば良いと思っていたのだ。その後、私を愛してくれる真面目な人と結婚して、子供を育ててと。でも あの人のことも・・・大学はどうしたのだろうか 私となんて もう 夢なんだと諦めていた。どこかで結ばれているなんて 思いすぎなんだと・・・

 だけど、それは思いがけない形で、私の思いを変えていくことになるのだ。お母さんがお友達のところにお茶を飲みに行って帰ってきた時

「ねえ マイ 今度の日曜日 お母さんと一緒に お茶 飲みに行きましょ 今日ね お友達のところに行ってきたでしょ そこでね 近所の人も呼ぶからって その人ね お母さんが勤めてた時の先輩だったの 偶然 だから、今度 遊びにいらっしゃいよって」

「それでー なんで私なの?」

「うん お友達がね 奥浦さんとこのお嬢さんはふたりとも とってもきれいなんですよっ て 話になって お会いしたいわぁーって その先輩が・・・」

「お母さん ウチは見世物じゃあないからね!」

「だってね 織藻はネジが1本外れてるでしょ だけど、マイは清楚で利発そうだし 先輩に自慢したいのよー」
    
 自慢って・・・わたしゃー 見栄っぱりのバカ女ざんす

 そして、日曜日のお昼前に車で走って、私の洋服を買うのだと言う。よそのお家に初めて行くのに、普段着じゃぁ失礼でしょって言っていた。私の見栄っぱりはお母さんゆずりなんだろうかと、思っていた。薄いブルーでひざ丈のワンピースを選んでくれて、上半身だけが小花柄になってる五分袖のもの。一緒にお昼のスパゲティを食べて、家に帰って、お母さんはこぎれいな服に着替えて、私にも薄くピンクがかったリップクリームを塗ってくれて、二人で歩いて向かった。

 歩いて行くうちに、あの人の家のほうに向かっているのがわかったのだ。まさかと思いながら・・・TATEOBI の表札の前でお母さんは呼び鈴を押していた。えぇー まさか・・・そんなぁー

 出てきたのは、ウェーブが掛かっていて少し栗色で長めの髪の毛。紺色のキャミソールワンピースでその下には白の薄手のセーター。上品そうな女の人が笑顔で迎えてくれた。お母さんと年はそんなに変わらないように見えた。

「いらっしゃい お嬢さんも どうぞ 中に入ってー」と、通されたのは、広ーいリビングダイニングで、ガラス戸の向こうにはお花がいっぱいのお庭が見渡せる。部屋の周りの調度品とか飾りも手の込んだ風なのばっかり。ソファーに案内されて、紅茶とクッキーが出てきた。

「慶ちゃんもきれいかったけど・・・やっぱりネ 清楚で品があるわー」私は、黙って首を振りながら下を向いていた。

「真糸って言うの 私には過ぎた子でね 御夕飯の支度もいつもやってくれるのよ」

「あっ そうなの? 慶ちゃん 楽ねぇー それに こんなにきれいだしー 楽しみでしょう? 今 お幾つ?」 見た目だけは褒めてくれていた。私は、緊張していたのだが、お母さんが

「今年 高校3年になったわ お化粧もリップクリームぐらいなもんで 素直で真面目で 私の自慢の娘よ 上にお姉ちゃんが居るのだけど・・そっちは 遊んでばっかりで・・」

「あらっ それで、お化粧なんかしたりしたら、ますますきれいになって スカウトなんかされたりしてー アイドルになったりしたら慶ちゃんも大変よー」

「ふふっ そうだわね ねぇ 先輩はいつ ここに?」

「そうねぇー 伊織利が中学生になる時だから もう7年になるのかなー 私ね 慶ちゃんが寿退社して、しばらくしてから、赤ちゃんが出来たのがわかって、慌てて籍を入れてもらって、それからは京都のマンションだったんだけど、私 お庭が好きでしょ だから、ここに・・・まだ、マンションもあるの だから、旦那はこっちへは殆ど来ることないのよ 私も週の半分は京都なんだけど 慶ちゃんは、いつ ここに?」 

「もう10年はなるわ 私の実家 父が亡くなって、実家に入ったんだけど、母はもう居ないのよ 先輩のお子さん 伊織利っておっしゃるの? いいお名前ね」 間違い無い! あの人 伊織利さんだ 今 居るの? 私は、急に顔が火照ってきていた。

「そう そん時の子 ひとり息子 なんかの拍子で一途になるとこがあってね 大学なんかも、高校の時のクラブの先輩に傾倒しちゃってね 同じとこ行くんだって・・・でも、去年 浪人しちゃったのよ そーしたら、自分を見つめ直すんだって ひょいと北海道の牧場に行っちゃってー 今年、受かって安心してるんだけどネ でもね 北関東の田舎の大学なのよ 一人住まいでしょ 今度は、そっちも心配なのよ」

 合格したんだ。良かった! でも、行っちゃったのね と、私はガックリしていたが

「そう 良かったわねぇー まぁ 男の子だから 心配ないわよ ひとりで伸び伸びやるんじゃぁない?」

「そうなんだけど・・・でも、あの時は落ち込んでいたわ 高3の秋だったの これから、受験勉強に集中する時でしょ どうも・・・好きな女の子に徹底的に振られたらしいの 電車で見かけて、ずーっと好きって思い続けていたんだって、ショックだったみたいよ でもね そんな見かけただけで、性格なんかもわからないじゃぁない? ウチの伊織利をかんたんに振るような子 ろくなもんじゃぁないわよー」

 そーなんです ろくな女じゃぁないです ごめんなさい。私は、その場で手をついて謝りたかったけど、お母さんも

「そうよねー そんなに想われているって、女にとって幸せなのにねー きっと つまんないバカな子よ! チャラチャラして男の子を物色したりしてー ねっ」 と、私に同意を求めるように・・・お母さんも、そんなに責めないで 私のことなのよ。

「でもね 伊織利のね 住むとこ決めるんで、この前 行ってきたのよ その時にね まだ、その彼女のことを想い続けて忘れられないんだって ポロッと言っていたわ あの子 そーいうとこ 一途なのよー もう 会うことも無いのにね」

 えっ えー まだ・・・私のことを・・???・・ごめんなさい あなたの息子さんのお相手って 眼の前のバカ女なんです 会って 謝りたい 私も 忘れていないよ 好きなの 彼に飛び込んで行きたい。きっと、何かで結ばれているはず・・と

 その後、お母さん達は、昔話とかをしていて、急に

「真糸ちゃんは お付き合いしている男の子って居るの?」

「いえ 私は・・・ 学校と家の行き帰りだけで・・・つまらない子だからー」

「そうなの? こんなにきれいなんだから、男の子達はほおっておかないでしょう?」

「いつも ツンとしているみたいに 見えるみたいよ 母親から見ても・・・男の子も近寄りがたいんじゃぁないかしら」

「そうなの こんな娘が伊織利のお嫁さんになってくれると良いのにねー こんなに近くに素敵なお嬢さんが居るのに あの子 何を見てるのかしら わけのわかんない子を想い続けていてもしょーがないのに・・・ ねぇ 大学へは進むの?」

「私 何か発酵食品とか新しい食品とか・・・でも、栄養士になろうかと、専門学校にでも 家から出ないで、お母さんを助けないと、思ってますから」 その時は、本当にそう思っていたのだ。だけど・・・。

「慶ちゃん 泣けてくるでしょぅ? なんて、良い子なの」

「ふふっ 私も 今 初めて聞いたのよ マイ 先輩の前で、そんなー 猫被っているんじゃぁなければ いいんだけど」だけど、お母さんは嬉しそうにしていて、それから、しばらくは機嫌が良かったのだ。

 だけど、私は心の中がざわざわしていて 神様 どうか あの日に時間を戻してくださいと願っていたのだ。
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