1 / 30
第1章
1-1
しおりを挟む
前書き
中学生の時、私は、公園で、泣いていた捨て猫を、連れて帰って、プチと名付けた。それから、友達のように暮らしていたが、私の希望した高校の入学式の日、私を守るように、車に飛び込んで行った。 数年後、同じように、私を待っていたかのように、公園で鳴いていた子猫を抱きかかえて、帰って、育てていた。チッチと名付けた。
― ― ― * * * ― ― ―
私は、この春、地元の大学を卒業して、港湾設計の会社に就職していた。食品会社に就職していて中学からの仲良しの なずな とたまに食事に行く以外は、家と会社の往復といった生活だ。入社して、もう、半年が経っていた。
高校、大学と共学だったが、私は、プライドが高いわけでは無いのだが、思うような男の人は現れなかった。声を掛けられたことも、何度かあったが、気が進まなかったので、まだ、男の人とふたりっきりでデートもしたことが無かった。だから、手をつないで歩いたこともなかった。
なずなは、大学の時に、合コンで5ツ年上の人と付き合っていて、その人を通じて何人か紹介されたが、気が乗らなかった。ただ、最近、会社の取引先の人から、しつこく誘われている。どうも、信頼出来ないから、断ってきたが、取引先との関係であんまり冷たくも出来ないでいる。
その日も、退社して真っすぐに帰ってきた。玄関の横で、チッチは寝たままだ。ご主人が帰ってきたのに、無視したままだ。彼は、夜7時にならないと家の中に入ってこない。お腹がすくからだ。いつからか、こんな風になってしまった。多分、私が、大学受験で構わなくなった時からかもしれない。でも、最初から、私が、可愛がっても、思いが通じなかった。プチの時とは、違うと思いながら、誰にも懐くことなく、すでに5年以上になる。もう、彼も年なのかも知れない。私は、プチを思い出して、懐かしく思っていたのだ。もう 一度 プチに会いたい・・・
7時になり、チッチを呼んだが来ない。どこか散歩にでも行ったのかと、ほっておいた。私は、夕食の準備をして、8時前、いつものようにお母さんが帰ってきた。駅前の洋品店に勤めているのだ。お父さんは、いつも9時頃になる。それから、みんなで晩御飯になる。私は、二人姉弟だけど、弟は東京の大学で独り暮しだ。
「お母さん、チッチ、居なかった? 呼んでも、居ないみたいだったのよ」
「ええ、気が付かなかったけど・・ 気まぐれだからね、あの子 そのうち、帰って来るわよ」
「そうよね 私、先にお風呂入るね」
お風呂からあがって、髪の毛をタオルで乾かしながら、二階の部屋の窓から風を入れていると、網戸の向こうの柵にチッチが現れて、鳴いた。
「チッチ? お前、ここまで、来れるの?」
今まで、そんなことは一度も無かった。プチは、よく、窓から入れてあげたけど・・。部屋に入れてあげると、ベッドに座っている私の横に来て、顔を摺り寄せて来る。チッチはそんなことはしない。頭を撫でながら
「チッチ どうしたの? 今日は 変じゃない?」
「すずりちゃん 髪の毛、切ったんだね それも、可愛いよ」
私、空耳? 声が聞こえた それも、頭ん中で、響いたみたい。
その時、下からお母さんの声がして、「ご飯よ」と呼ばれた。
中学生の時、私は、公園で、泣いていた捨て猫を、連れて帰って、プチと名付けた。それから、友達のように暮らしていたが、私の希望した高校の入学式の日、私を守るように、車に飛び込んで行った。 数年後、同じように、私を待っていたかのように、公園で鳴いていた子猫を抱きかかえて、帰って、育てていた。チッチと名付けた。
― ― ― * * * ― ― ―
私は、この春、地元の大学を卒業して、港湾設計の会社に就職していた。食品会社に就職していて中学からの仲良しの なずな とたまに食事に行く以外は、家と会社の往復といった生活だ。入社して、もう、半年が経っていた。
高校、大学と共学だったが、私は、プライドが高いわけでは無いのだが、思うような男の人は現れなかった。声を掛けられたことも、何度かあったが、気が進まなかったので、まだ、男の人とふたりっきりでデートもしたことが無かった。だから、手をつないで歩いたこともなかった。
なずなは、大学の時に、合コンで5ツ年上の人と付き合っていて、その人を通じて何人か紹介されたが、気が乗らなかった。ただ、最近、会社の取引先の人から、しつこく誘われている。どうも、信頼出来ないから、断ってきたが、取引先との関係であんまり冷たくも出来ないでいる。
その日も、退社して真っすぐに帰ってきた。玄関の横で、チッチは寝たままだ。ご主人が帰ってきたのに、無視したままだ。彼は、夜7時にならないと家の中に入ってこない。お腹がすくからだ。いつからか、こんな風になってしまった。多分、私が、大学受験で構わなくなった時からかもしれない。でも、最初から、私が、可愛がっても、思いが通じなかった。プチの時とは、違うと思いながら、誰にも懐くことなく、すでに5年以上になる。もう、彼も年なのかも知れない。私は、プチを思い出して、懐かしく思っていたのだ。もう 一度 プチに会いたい・・・
7時になり、チッチを呼んだが来ない。どこか散歩にでも行ったのかと、ほっておいた。私は、夕食の準備をして、8時前、いつものようにお母さんが帰ってきた。駅前の洋品店に勤めているのだ。お父さんは、いつも9時頃になる。それから、みんなで晩御飯になる。私は、二人姉弟だけど、弟は東京の大学で独り暮しだ。
「お母さん、チッチ、居なかった? 呼んでも、居ないみたいだったのよ」
「ええ、気が付かなかったけど・・ 気まぐれだからね、あの子 そのうち、帰って来るわよ」
「そうよね 私、先にお風呂入るね」
お風呂からあがって、髪の毛をタオルで乾かしながら、二階の部屋の窓から風を入れていると、網戸の向こうの柵にチッチが現れて、鳴いた。
「チッチ? お前、ここまで、来れるの?」
今まで、そんなことは一度も無かった。プチは、よく、窓から入れてあげたけど・・。部屋に入れてあげると、ベッドに座っている私の横に来て、顔を摺り寄せて来る。チッチはそんなことはしない。頭を撫でながら
「チッチ どうしたの? 今日は 変じゃない?」
「すずりちゃん 髪の毛、切ったんだね それも、可愛いよ」
私、空耳? 声が聞こえた それも、頭ん中で、響いたみたい。
その時、下からお母さんの声がして、「ご飯よ」と呼ばれた。
20
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる