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第2章
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帰省する日の朝、僕が駅に行くと絢はもう着いていた。グリーングレーのハイウェストワイドパンツに白のニットのフレンチ袖のTシャツ、少し大きめのサイドバッグを下げていて、あの青と紅の蝶々お守りはいつものことだ。
脇に、ショートカットの女性が立っていた。絢と同じような恰好をしている。僕に向かって、微笑みながら頭を下げていた。
「お姉ちゃんに、車で送ってもらったの。美人でしょー。せっかくだから、モト君に会ってみたいんだって」
「初めまして、絢から、いつも聞いていますわ 仲よくしてくださって」
くっきりとした眼に瞳がキラキラしていて、見つめられて、ドキっとした。僕は、少し、あわてて
「いや、僕も、聞いています。お姉さんのこと とっても理解があって、いつも助けてくれるって」
「あらぁーそう 私、こんな、素直で、賢くて、かわいい妹が出来て嬉しくてねっ」
「おねえちゃん ほめすぎ! もう行くよ」
「思っていたより、上半身もがっしりして、頼りがいありそうね 絢をよろしくね 迷子にならないようにね」
「もう、子供みたいに言わないで! じゃぁ行くね 送ってくれてありがとう」
絢は、お姉さんの胸を軽く叩いて、バイバイしていた。僕も、頭を下げて改札に向かった。絢は、直ぐに手をつないできた。もう、確かに恋人同士なんだと感じていた。
座席に座ると、絢はバッグの中から包まれたドッグを出してきて
「ハイッ モト君、多分、朝食食べてこないんじゃぁないか思って、作ってきた 食べてよぅ」
確かに、僕は、ギリギリまで寝ていたので、焦って寮を出てきた。口にほおばって
「絢は? 食べないの」二つあったから、絢の分かなと思った。
「ウチは、いらないからモト君、食べて」
山間を列車は走っていたが、窓の下に見える峡谷を、絢は時折、声をあげながら、見ていた。そして、手をつないできて
「新婚旅行みたいだね!」と小声で言って、僕の顔を、同意を求めるように、覗き込んだ。
「ウチ お願いがあるねん 中華街で小籠包食べて それから異人館歩きたいねん だめー?」
「えぇー 途中下車やん 絢が行きたいのならかまわんけど 遅くなるぞー」
「ええのー 家には帰る時間までいうてへんから」と、隣の座席の様子を見ながら、ほっぺにチュッとしてきた。
新神戸から歩いても良かったけど、日差しが強いので、絢が嫌って、三宮まではバスに乗った。そこからは、ぶらぶらと歩いて、中華街には1時過ぎに着いた。有名な持ち帰り豚まんの店も並んでいる人が多かったので、結局、小籠包目当ての店で並んで、立ち食いだけど、なんとかお店の中で食べることが出来た。僕だけ、ワンタンラーメンも頼んだけど、絢は、普段からあんまり食べないのかもしれない。
北野坂からパンの焼き上げの香り嗅ぎながら、トーマス坂を登って行った。汗だくになって、絢はバッグからタオルを取り出して、渡してくれた。首に巻くと、絢のあの柑橘系の香りがして、僕は、花火の夜のことがかすめた。絢は、自分では頭からかぶって
「帽子被ってくればよかった。髪の毛長いのって、こういうの暑苦しいんだ」
「でも、普段は女の子らしくって良いからね」と、僕は、もう一度絢の手をつなぎ直した。
坂の途中で、手作りのアクセサリーの店の前で、絢は目を止めた。僕も目を止めていた。僕は、リボンのペンダントを見ていて、今日の絢の耳には、お兄さんから貰ったというリボンをモチーフにしたイアリングをしていたから。でも、絢が見ていたのは、小さな蝶々が付いたネックレスだった。
「買ってあげるよ 襟元が寂しいから」
「えっ ウチにこうてくれるん! うれしーい」
風見鶏の館の前の石段に、ふたりでジュースを飲みながら、疲れたと座っていたら、絢に電話がかかってきて、お母さんかららしかった
「ウン 8時頃・・・あんまり、ぎょーさん食べられへんでー・・・帰ったら話すわ」
家でも、帰って来るのを、お母さんも楽しみにしているんだろう。あんまり、僕と一緒に居るのはナァと僕は思っていた。まだ、夏休みの間は会うことが出来るし
「そろそろ、帰ろうか」と言うと「もう少し、一緒に居たい」と返してきて
「今、こうやってモト君と居て、とっても楽しいんだけど、去年の今頃はウチすごく悩んでいたんだ。苦しくって、誰も相談する人居なくって。 モト君はウチのこと嫌いになったんじゃぁないんかなとか、いづみちゃんのことも疑っていたし、他の女の子と付き合っているんカナとか でも、田中大樹君が言ってくれた言葉を信じて、あなたを追いかけようと決心したの 小さい頃、ウチなぁ 男の子嫌いやってん でも、モト君は最初から違った 優しかったし それでナ、モト君がウチを嫌っていてもかまわへんわ 自分で決めたんやから前に進もぅって 良かった 本当に今は幸せって感じているの ありがとう モト君 本当に好きや」
「絢 僕だって 昔から何かで結ばれていたんだって・・ すごく努力してくれていたんだね そんなに苦しんでいたなんて知らなかった ごめんね、あの頃、僕は勇気がなかったと思う。離れて、初めて、絢のこと気づいたんだ。 絢 僕も大好きだよ 今も、可愛くて、仕方ないんだ」
僕は、いとおしくて我慢できなかった。絢を木陰の人気のないところに連れて行って、抱きしめて、ながーいキスを交わしていた。
脇に、ショートカットの女性が立っていた。絢と同じような恰好をしている。僕に向かって、微笑みながら頭を下げていた。
「お姉ちゃんに、車で送ってもらったの。美人でしょー。せっかくだから、モト君に会ってみたいんだって」
「初めまして、絢から、いつも聞いていますわ 仲よくしてくださって」
くっきりとした眼に瞳がキラキラしていて、見つめられて、ドキっとした。僕は、少し、あわてて
「いや、僕も、聞いています。お姉さんのこと とっても理解があって、いつも助けてくれるって」
「あらぁーそう 私、こんな、素直で、賢くて、かわいい妹が出来て嬉しくてねっ」
「おねえちゃん ほめすぎ! もう行くよ」
「思っていたより、上半身もがっしりして、頼りがいありそうね 絢をよろしくね 迷子にならないようにね」
「もう、子供みたいに言わないで! じゃぁ行くね 送ってくれてありがとう」
絢は、お姉さんの胸を軽く叩いて、バイバイしていた。僕も、頭を下げて改札に向かった。絢は、直ぐに手をつないできた。もう、確かに恋人同士なんだと感じていた。
座席に座ると、絢はバッグの中から包まれたドッグを出してきて
「ハイッ モト君、多分、朝食食べてこないんじゃぁないか思って、作ってきた 食べてよぅ」
確かに、僕は、ギリギリまで寝ていたので、焦って寮を出てきた。口にほおばって
「絢は? 食べないの」二つあったから、絢の分かなと思った。
「ウチは、いらないからモト君、食べて」
山間を列車は走っていたが、窓の下に見える峡谷を、絢は時折、声をあげながら、見ていた。そして、手をつないできて
「新婚旅行みたいだね!」と小声で言って、僕の顔を、同意を求めるように、覗き込んだ。
「ウチ お願いがあるねん 中華街で小籠包食べて それから異人館歩きたいねん だめー?」
「えぇー 途中下車やん 絢が行きたいのならかまわんけど 遅くなるぞー」
「ええのー 家には帰る時間までいうてへんから」と、隣の座席の様子を見ながら、ほっぺにチュッとしてきた。
新神戸から歩いても良かったけど、日差しが強いので、絢が嫌って、三宮まではバスに乗った。そこからは、ぶらぶらと歩いて、中華街には1時過ぎに着いた。有名な持ち帰り豚まんの店も並んでいる人が多かったので、結局、小籠包目当ての店で並んで、立ち食いだけど、なんとかお店の中で食べることが出来た。僕だけ、ワンタンラーメンも頼んだけど、絢は、普段からあんまり食べないのかもしれない。
北野坂からパンの焼き上げの香り嗅ぎながら、トーマス坂を登って行った。汗だくになって、絢はバッグからタオルを取り出して、渡してくれた。首に巻くと、絢のあの柑橘系の香りがして、僕は、花火の夜のことがかすめた。絢は、自分では頭からかぶって
「帽子被ってくればよかった。髪の毛長いのって、こういうの暑苦しいんだ」
「でも、普段は女の子らしくって良いからね」と、僕は、もう一度絢の手をつなぎ直した。
坂の途中で、手作りのアクセサリーの店の前で、絢は目を止めた。僕も目を止めていた。僕は、リボンのペンダントを見ていて、今日の絢の耳には、お兄さんから貰ったというリボンをモチーフにしたイアリングをしていたから。でも、絢が見ていたのは、小さな蝶々が付いたネックレスだった。
「買ってあげるよ 襟元が寂しいから」
「えっ ウチにこうてくれるん! うれしーい」
風見鶏の館の前の石段に、ふたりでジュースを飲みながら、疲れたと座っていたら、絢に電話がかかってきて、お母さんかららしかった
「ウン 8時頃・・・あんまり、ぎょーさん食べられへんでー・・・帰ったら話すわ」
家でも、帰って来るのを、お母さんも楽しみにしているんだろう。あんまり、僕と一緒に居るのはナァと僕は思っていた。まだ、夏休みの間は会うことが出来るし
「そろそろ、帰ろうか」と言うと「もう少し、一緒に居たい」と返してきて
「今、こうやってモト君と居て、とっても楽しいんだけど、去年の今頃はウチすごく悩んでいたんだ。苦しくって、誰も相談する人居なくって。 モト君はウチのこと嫌いになったんじゃぁないんかなとか、いづみちゃんのことも疑っていたし、他の女の子と付き合っているんカナとか でも、田中大樹君が言ってくれた言葉を信じて、あなたを追いかけようと決心したの 小さい頃、ウチなぁ 男の子嫌いやってん でも、モト君は最初から違った 優しかったし それでナ、モト君がウチを嫌っていてもかまわへんわ 自分で決めたんやから前に進もぅって 良かった 本当に今は幸せって感じているの ありがとう モト君 本当に好きや」
「絢 僕だって 昔から何かで結ばれていたんだって・・ すごく努力してくれていたんだね そんなに苦しんでいたなんて知らなかった ごめんね、あの頃、僕は勇気がなかったと思う。離れて、初めて、絢のこと気づいたんだ。 絢 僕も大好きだよ 今も、可愛くて、仕方ないんだ」
僕は、いとおしくて我慢できなかった。絢を木陰の人気のないところに連れて行って、抱きしめて、ながーいキスを交わしていた。
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