それから 本町絢と水島基は

すんのはじめ

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第11章

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 結局、泊めてもらうことになった。お父さんに連絡すると 「絢の一生を決めるんだから 絶対に泊まって 納得して帰ってこい」って、半分 命令みたいに・・・それで、会社から歩いても、近いんだけどと言いながらも、誠一郎さんが車で送ってくれた。

「もう、こっちへ向かっていると連絡あったから、直ぐに、帰って来ると思うよ」

「すみません ご迷惑おかけして 社長さんは、お子さんは?」

「迷惑だなんて、こちらこそ、父が無理言ってしまって 僕は、一人っ子なんだ。でも、結婚しているから、もう、孫がいるけどね 3歳の男の子」

 とか、言っているうちに、着いていた。社長の奥さんらしき人が出てきて

「いらっしゃい まぁ こんなに可愛い人なの どうぞ、あがって」お母さんと同い年くらいだろうか

「初めまして 本町絢と申します 今日は、ご迷惑おかけしてしまって申し訳ございません」

「あら そんな、堅苦しい いいのよ 気楽にして 歓迎だわ ねえ、誠一郎」

「そーだよ 緊張してるみたいだよ もっと 気楽にな 本町さん」と言って、会社に戻って行った。

「ありがとうございます」と、言ったものの、緊張するの無理ないよなと、自分でも思っていた。

 少し広めのリビングに通された。奥にはダイニングキッチンが続いている。冷たい紅茶を出しながら

「こっちは、暑いでしょう でも、少し湿気はましになったけどね 絢さんは、お肉大丈夫? 今夜、用意するから」

「はい 大好きです 嫌いなもんないんです」

「そう 良かったわ 関西のお肉に比べると、かたいかも知れないけど、赤身多いからヘルシーよ キューイをしばらく、乗せておいて置くの フルーティで柔らかくなるのよ」

「うぁー 楽しみです お料理、教えてくださいね」

「いいわよ あなた、本当に可愛いわね あー でも、そのお洋服 着替えなんて、持っていないわよね」

「ええ 換えの下着は持ってるんですが」私は、黒のスラックスに長袖のYシャツだった。

「いいわ 郷子さんに、言って、何か持ってきてもらうわ」誰のことかわからなかった。しばらくして

「やぁ お待たせしましたな 悪いね 引き留めて お父さんには、連絡しておきましたから」と、社長さんが帰ってきた。

「あなた 誠一郎にも、来てもらっていいかしら 郷子さんにも、絢さんの着替え頼むつもり」

「ああ 顔合わせしておいた方が、良いだろうからな 連絡しなさい ワシからも誠一郎に早く帰るように言っておく」

「すみません 私のために、いろいろと」

「せっかく、お出でいただいたのに当然ですよ どうですか、誠一郎から、会社のこと聞いてもらえたかな 古い体質でね それでも、取引先が増えてきて、早々に、会社としての体面を整えなきゃならんのだよ どうだろう 本町さん 手伝ってもらえるかな」

「えっ 私 採用していただけるんですか」

「勿論だよ ワシは君が会社に来た時、窓から見さしてもらっていたんだ。会社の門の外で、車から降りて、その去っていくタクシーに向かって、お辞儀をしていたし、歩いてきて、ウチの玄関に入る時にもお辞儀をしていたよね。礼儀正しいし、お会いした時も、眼を見て、びっくりした。キラキラした眼でワシを真っ直ぐに見つめて。その時に決めたんだ。絶対に来てもらおうってな」

「ありがとうございます。一生懸命、働きます。なんでもしますから・・。私、うれしいです」

「そうか 良かった。こんな会社じゃぁ、断られるかと思ったから よろしく、お願いします」

 社長さんは、握手をしてきた。ごっつい手、そういえば、私、男の人の手って、お父さんと、最近では、モトシとしか握ったことなかった。それ思ったら、少し、恥ずかしかった。たぶん、顔が紅くなったのだろう

「あっ すまない ついな おぉーい 房子 本町さんが、ウチに入ってくれるそうだ」と、バツが悪かったのか、キッチンに向かって、声を掛けていた。

「あら そう 良かったわね こんな可愛い人が、来たら、男どもが大騒ぎね」と、奥さんが寄ってきて言ってくれた。

「あっ すみません 私、手伝わせてください」

「いいのよ まだ この人の相手しててくださいな うちは、娘居なかったから、きっと楽しいのよ ねえ、あなた  ビール飲みます?」

「そうだな 祝杯だ 絢さんも飲むか」

 私は、断ったが、コップも用意されて、継がれいてた。ダメだよ、私、直ぐ酔っぱらっちゃうんだからと言い聞かせ、口をつけなかった。

 誠一郎さん達が来た。男の子が社長さんのもとに走ってきた。
 
「おぉ  開ひらく君 元気だのう お姉さんに挨拶できるかな」

 男の子がモジモジしていたら、

「妻の郷子です よろしく」と、挨拶してきた。私も返していたら

「誠一郎 絢さんな 入ってくれることになった」と社長さんが言った。

「そーですか 良かった 僕は、素直だから、飲み込みが早くて、優秀な人だと思っていたから 工場を案内してても 真剣に興味深く 見ていた」

 その時、郷子さんが「お義母さん これでいいかしら」と白い花柄のワンピースを見せていた。

 私、別室に案内されて、そこで着替えた。フレンチ袖のワンピースで涼しかった。それまで、暑かったから。部屋に戻ると

「可愛いわね 私の若い頃みたい」と郷子さんが言っていたが

「そうだね 君も若い頃は、こんなだった」と誠一郎さんが言ってしまった。

「それは、どういう意味 こんなのにしてしまったのは、あなたでしょ」と

「絢さん じゃぁ こっち来て、手伝って」と奥さんから呼ばれた。郷子さんが、前掛けを持ってきてくれて、一緒に食事の準備をしてくれた。お肉はガスコンロの上に網状の鉄板で焼いていて、その他にも、炒めたサラダを作ったり、見たことも無いお魚の刺身が並んでいた。

「じゃあ 改めて、絢さんの入社祝いで乾杯」と、社長さんが発して、私、やっと、ビールに口を付けた。

「そうだ 僕が住んでいた別棟に住めば 炊事場もあるし、風呂はないけどシャワーあるからね」と誠一郎さんも言ってくれたけど

「だめよ 若い女の子を、あそこに独りでなんて」と、郷子さんは反対した。

「そうだな 藤沢さんにも、顔向け出来ないな おかしな扱いすると怒鳴り込んでくるような調子だったからー とにかく会って話せば、直ぐに、良い娘だってわかると、太鼓判押してたからな」

「じゃぁ うちの部屋が余っているんだから、ここに住めばいいんじゃないの 私も、こんな可愛らしい娘が出来たみたいでうれしいわ」と奥さんが言ってくれた。

 結局、そういうことになって、翌朝、帰る時、社長さんが

「直ぐに、田所君に採用通知を出すように言っておくよ」と言ってくれた。

 モトシ いよいよだよ 私 あなたに、付いて行くんだからね!
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