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第4章
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お父さんの昔からの仕事仲間で、〇〇市内で地元の海産物とか土産物を扱っている藤沢さんという人がいた。お父さんは、その人に、まだ私が合格する前から、娘のことを面倒みてほしいと頼んでいたみたいだった。
合格発表の日。あった。自分の番号を見つけた時は、もちろん嬉しかったけど、よし、これからスタートだという気持ちの方が強かった。お父さんに知らせた時も、おそらく、複雑な気持ちだったに違いないと思うが、感情を押し殺しているのか、紛らわせようとしているのか、お母さんに
「直ぐに、明日、藤沢さんのところに絢を連れて、挨拶に行ってこい。向こうには、話はしてあるが、丁寧にな、これからお世話になるんだから」
この人は、私が受かるかどうかもわからないのに、娘のことを考えて動いていてくれたんだ。普段、ぶっきらぼうだけど、昔から私のことを考えていてくれるし、喜んでくれている。素直に、私にとっては、素敵な親で良かったと思った。
後で、聞いた話によると、モト君のことも確かに受かっているかどうかも、人づてに確認していたらしい。
数日後 私とお母さんは、藤沢さんのお宅に居た。
「もうすぐ、うちの人も 澄香も帰って来よるから、でも、もっと気楽にしてくださいね」
「素敵なお庭ですね。いろんな樹が植わってて」とお母さん、話を続けていた。ガラス戸越しに桜の花が見える。
「最近はあんまり手を加えていないんでのー。うちの人、興味ないみたいで・・・」
私は、庭に出てみた。池があったけど、いまは水が入っていなかった。その向こうに築山があって、石灯籠の横に桜が満開だった。そのむこうの方にお城の天守閣が、西陽に照らされて眩しかった。私は、実感していた。ここで、私は新たなスタートだと。
澄香さんが帰ってきて、私の部屋に案内された。もう、花柄のベッドカバーとか机とか置いてあった、東側の小窓からはあのお城が見える。南側にも大きな窓があって、とても明るい。
「夏はチョット暑いかもしれないけど、ドァーを開けておくと風が通るわょ。アハー、私は隣の部屋だから、何かあったら、言ってネ。私、お兄ちゃんしか居なかったから、妹が出来て嬉しくって。ねぇー、私のことは『お姉ちゃん』と呼んでね、アハーッ。今年から私も1年生だけどネ」
澄香さんは、教育学部を出て、今年から地元の小学校の先生になった。私の先輩だ。すごく、明るいし、気さくなんだし、私の姉が居たらこんな感じだったのかなと思った。
「やぁ、いらっしやい。本町君は元気にしているかな。おぉー、おじさんのこと覚えているかな。お宅に寄せてもらった時、おとなしくして、側でずーと絵を描いちょったのが、こんな美人さんになったのかぁー」
そういえば、会ったことがあったかも知れない。この大きな声。お父さんより5才位年上らしい。その夜は、泊っていけということで、食卓には、地元の刺身、寿司、揚げ物、野菜とめちゃくちゃ並んでいた。
「絢ちやん、たっぷり食べてくれ。なにが好きなのかわからんかったから・・肉のほうが良かったか。おい、澄香、『やましげ』に電話してステーキ肉届けさせろ」
私、思わず
「もう、充分です。とてもこんなに食べられません」
「そうかぁー 本町君からな もう 虫が付いているので、他の男は見向きもしないと思うけど、女の子なんで心配だって言っちょったぞー そらぁー こんなに可愛いんだものなー 父親としては・・・わかるわー」
「えっぇー ひどぉーい お父さん 虫だなんてー 私にとっては王子様なのにー」
次の日、お母さんと入学の手続きを済ませた。やっと 大学生になった。
よし! 待ってろよ 水島 基・・・・君 絢は来たぞー
合格発表の日。あった。自分の番号を見つけた時は、もちろん嬉しかったけど、よし、これからスタートだという気持ちの方が強かった。お父さんに知らせた時も、おそらく、複雑な気持ちだったに違いないと思うが、感情を押し殺しているのか、紛らわせようとしているのか、お母さんに
「直ぐに、明日、藤沢さんのところに絢を連れて、挨拶に行ってこい。向こうには、話はしてあるが、丁寧にな、これからお世話になるんだから」
この人は、私が受かるかどうかもわからないのに、娘のことを考えて動いていてくれたんだ。普段、ぶっきらぼうだけど、昔から私のことを考えていてくれるし、喜んでくれている。素直に、私にとっては、素敵な親で良かったと思った。
後で、聞いた話によると、モト君のことも確かに受かっているかどうかも、人づてに確認していたらしい。
数日後 私とお母さんは、藤沢さんのお宅に居た。
「もうすぐ、うちの人も 澄香も帰って来よるから、でも、もっと気楽にしてくださいね」
「素敵なお庭ですね。いろんな樹が植わってて」とお母さん、話を続けていた。ガラス戸越しに桜の花が見える。
「最近はあんまり手を加えていないんでのー。うちの人、興味ないみたいで・・・」
私は、庭に出てみた。池があったけど、いまは水が入っていなかった。その向こうに築山があって、石灯籠の横に桜が満開だった。そのむこうの方にお城の天守閣が、西陽に照らされて眩しかった。私は、実感していた。ここで、私は新たなスタートだと。
澄香さんが帰ってきて、私の部屋に案内された。もう、花柄のベッドカバーとか机とか置いてあった、東側の小窓からはあのお城が見える。南側にも大きな窓があって、とても明るい。
「夏はチョット暑いかもしれないけど、ドァーを開けておくと風が通るわょ。アハー、私は隣の部屋だから、何かあったら、言ってネ。私、お兄ちゃんしか居なかったから、妹が出来て嬉しくって。ねぇー、私のことは『お姉ちゃん』と呼んでね、アハーッ。今年から私も1年生だけどネ」
澄香さんは、教育学部を出て、今年から地元の小学校の先生になった。私の先輩だ。すごく、明るいし、気さくなんだし、私の姉が居たらこんな感じだったのかなと思った。
「やぁ、いらっしやい。本町君は元気にしているかな。おぉー、おじさんのこと覚えているかな。お宅に寄せてもらった時、おとなしくして、側でずーと絵を描いちょったのが、こんな美人さんになったのかぁー」
そういえば、会ったことがあったかも知れない。この大きな声。お父さんより5才位年上らしい。その夜は、泊っていけということで、食卓には、地元の刺身、寿司、揚げ物、野菜とめちゃくちゃ並んでいた。
「絢ちやん、たっぷり食べてくれ。なにが好きなのかわからんかったから・・肉のほうが良かったか。おい、澄香、『やましげ』に電話してステーキ肉届けさせろ」
私、思わず
「もう、充分です。とてもこんなに食べられません」
「そうかぁー 本町君からな もう 虫が付いているので、他の男は見向きもしないと思うけど、女の子なんで心配だって言っちょったぞー そらぁー こんなに可愛いんだものなー 父親としては・・・わかるわー」
「えっぇー ひどぉーい お父さん 虫だなんてー 私にとっては王子様なのにー」
次の日、お母さんと入学の手続きを済ませた。やっと 大学生になった。
よし! 待ってろよ 水島 基・・・・君 絢は来たぞー
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