ミナゴロシノアイカ ~生きるとは殺すこと~【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】

Resetter

文字の大きさ
53 / 59
ゼント : 学園生活は迷宮入り

1.37 - 現在地不明、帰路の捜索【エウローン帝国・ナーストロンド迷宮 : ゼント3ヶ月】

しおりを挟む


 迷宮の穴に落とされ、何とか合流を果たしたゼントたちは、不明階層をマッピングしながら探索しているのだが……

 「おいおい、またかよ……」

 シャルマが苦々しく顔を歪める。それもそのはずだ。通路を曲がるたびにミノタウロスが立っているのだ。いい加減、牛頭刎ねも飽きているらしい。

 「一体、どうなっているんだろうね?  迷宮の怪物がそんなにたくさんいるだなんて話、聞いたことがないのだが……」

 エボロスも困惑顔である。まさか教師陣の配置した幻獣でもあるまい。ミノタウロスなど正真正銘の怪物なのだ。

 
 「ならば、オレが"聞いて"みよう」

 ゼントはそう言うと、ガツンガツンと地面を蹴って威嚇しているミノタウロスに近づき……

 ブワッと一気に黒霧で包み込んだ。

 
 「おお……それが……黒霧の力……」

 エボロスは驚嘆の声を上げた。それはそうだろう。黒霧に包まれると、先ほどまでそこにあったはずの存在が、瞬く間にその場から消えているのだから。

 
 (むぅ……。思考のパターンが人間と違いすぎて、記憶の理解が難しいな……まったくもって言語化されていないからか……)

 「ダメだ。少し難しいようだ。」

 ミノタウロスを消すところまではよかったが、結果自体はかんばしくない様子だった。

 
 「そうかい。まぁ、しかたないね。それより、おそらく今4分の1程度を回ったと思う。」

 エボロスは、広げた紙に目を落としながらそう言った。今自分に出来る事を精一杯する。そんな眼差しである。

 
 「ほぉん。で、お宝はミノが持ってたこん棒だけ、かぁ……。シケてんなぁ。迷宮の宝とかねぇのかよー。怪物はいるってぇのによー」

 シャルマは不満顔である。

 
 「うーん。そもそもの伝説では、ここは"怪物を閉じ込めるための場所"と、伝わってるんだよ。宝がある可能性もなくはないが、どちらかと言えばかつての調査隊の遺品探しになるかもね。」

 (それも地球の神話と同じだな……だが、神話では一体のミノタウロスだったな……それも、島だったはずだ。)

 「ほぉん。そうだっけかぁ?  閉じ込める……ねぇ。」

 顎に手を当てながら唸るように呟くシャルマであるが。

 「いや、一応授業でやってたんだけどね……?  まぁ、君たちは……聞いてなかったのかもね……」

 エボロスは少々呆れ顔であった。

 
 「まぁ、ちぃとサボりがちだしよ!  夜の仕事が盛り上がっちまった時は特になぁー。朝起きるのつらくてよー。」

 少しバツの悪そうな顔で頭を搔くシャルマ。

 
 「ははは。ずいぶんと勢いがあるみたいだね、鉄鋼団は。」

 だが、エボロスはそんなやり取りが楽しいのか、笑顔を見せていた。

 「まぁなー。ガキども食わせなきゃなんねぇしよ。そりゃ働かねぇとよー。」

 
 「……本当に話はしてみるものだよ。学園では問題児といわれているシャルマ君が、スラムの英雄だなんてね。」

 「いや、ちょ、それはやめろって!」

 
 「ははは!  いいじゃないか。……っと。行き止まりか。」

 「おー。まただなぁ。」

 3人は、一層でのやり方と同じく通路を選び、壁の左側を基準として現在の階層もマッピングをしてきていた。
 
 だがこの階層は、一層よりもかなり複雑に入り組んでいるようで、上下の動き……坂などもあったのだ。


 
 「……演習の開始から、どれぐらい経った?」

 通路突き当りで、ゼントがそんなことを言った。

 
 「どうだろうか……。6時間というところだろうか?  8時間ぐらい経っているのか……」

 エボロスにも経過時間に関しては、はっきりと把握できていないようだった。この迷宮の重たい空気は、そんな感覚すらも狂わせてしまうのかも知れない。

 
 「なんだよ、オーズ。疲れたのか?」

 「いや。ここなら、それなりの見通しも効く。休憩したらどうだ?  シャルマもまだ本調子ではないだろう」

 「あー、いやまぁ……」

 
 「休憩か。確かに、ここならテントも張れるか……」

 「オレは眠る必要がない。2人は回復に努めてくれ。」

 「すまないね。」 「おお、わかった。」

 そうして3人は、この突き当たりを休憩の場所と定めた。

 
――――
――

 
 ゼントは、2人が休んでいるテントから少し離れた位置に立って番をすることにした。

 先ほど曲がってきた側の通路と、まだ進んでいない側がちょうど見える分岐の地点だ。

 (しかし、これだけ歩いても上に行く階段も下に行く階段も見つけられないとはな……)

 通路を見張りながら、思考を続けるゼント。

 (教師は、三層までが探索範囲だと言っていたな。と、いうことであれば、三層までは教師が事前に行き来しているはずだ。印石を設置しているはずだしな。エボロスは、落ちた穴は中央付近のはずだと言っていたが、結局オレたちは下層への階段を見つけていない。)

 すっかり考え込んでいるのか、ゼントは腕組みをしている。

 (おそらく、落下地点が中央辺りという予測も、完全な正解とはいえないだろう。一層がそうだったとしても、ここは地下迷宮だ。塔とは違うからな。横に掘り進めることは出来そうだ。だが、探索した範囲でいうと、大幅に上層より拡張された造りにはなってはいなさそうだな……)

 ついには顎に手を当てるゼント。

 (しかし、こんな大掛かりな迷宮を一体誰がどうやって造ったんだろうな。神々がいる世界だとは聞いたが、そういった存在が創ったのだろうか……)

 しかし、ゼントの思考の沼はそこで中断されることとなった。

 (来たか……)

 ゴツッゴツッと蹄の足音がいくつも重なって聞こえてきた。

 (こっちの通路か……。4……いや5か……)

 まだゼントたちが進んでいなかった方の通路から響いてくるその足音に、ゼントは黒霧の姿に変わり、迎え撃つようだ。

 「ぶも?」  「ぶおおお……」

 先頭を歩いていた2頭が怪しい黒霧を認知し、鳴き声を上げた。

 が……

 「やかましい。」

 大声を上げようとした一頭が、即座に黒霧に飲み込まれた。

 「ぶおおおお!」  「ぶも?」  

 だが、その光景に気が付いた隣の一頭が声を上げてしまう。それに気が付いた後ろの一頭が首を傾げた。

 (……いくら即殺が出来るとはいえ、黒霧の拡張範囲はそこまで広くない。コイツらは一気に全て吞み込めるサイズ感ではないからな……気付かれてしまうか……)

 しかたなく、ゼントは極力急ぎながら、順番に吞み込んでいった。

 「ぶ……お……」

 そして最後の一頭を仕留めたゼント。

 (5頭分か……記憶は……どうだ……?  ぐっ……かなり映像的だが……何か、得体の知れないものが……見えたような……)

 かなり負荷が大きかったのか、ゼントは頭を振る。

 (くそ……ダメだ。だが、何か……よくない感じだ。巨大な……影のような……。分からないが……危険かもしれない。オレはこうしてミノタウロスを吸収していれば、神力の補充は出来る。やはりあの2人には、今のうちにしっかり休んでもらうとしよう。)

 そうして、言い知れぬ不安を感じ取ったゼントは、その場で番を続けるのだった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

処理中です...