ミナゴロシノアイカ ~生きるとは殺すこと~【神世界転生譚:ミッドガルズ戦記】

Resetter

文字の大きさ
59 / 59
ゼント : 学園生活は迷宮入り

1.43 - 迷宮の秘宝【エウローン帝国・ナーストロンド迷宮 : ゼント3ヶ月】

しおりを挟む


 石畳に取り残されたかのように横たわる――巨大なミノタウロスの胴体を吸収すべく、黒霧の身体で包み込むゼントであったが、大きすぎて中々思うように進まないようだった。
 

 「おーい、オーズ。何してんだ?」

 エボロスが発見した通路を見ていたシャルマが、振り返って声をかけた。

 「少し大きくてな。全て包み込むことができない。」

 「別にそんな死体ほっといたら消えるだろ? 小ミノみたいによー」

 シャルマはそう言いながら、広い部屋を歩き出した。

 (そう……だといいんだがな……消しておいた方がいいように思えるんだ……)

 ゼントは内心で不安を感じているようである。だが―― 

 「それよりも、だ。お宝あるんじゃねぇのか? なんせ神代の怪物の部屋だぜ?」

 恐ろしい怪物を撃破したからか、シャルマは上機嫌だった。
 
 

 「通路だが、さっき見つけた場所の他に、もうひとつあるようだぞ。」

 部屋内をマッピングしていたエボロスが何かを見つけたようだ。

 「お? マジか? どれどれ……」

 エボロスの声にいち早く反応したシャルマは、エボロスの方へ歩いていく。



 
 「お? これ、部屋じゃねぇか?」

 そこは、通路かと思えば、どうやら部屋のような空間が広がっているようだった。

 「そうみたいだね。」

 「広くなさそうだしよ、ちょっと入ってみようぜ?」

 「うーん。まぁ、オーズ君もまだかかるようだし、"部屋"なら今のうちに調べておくのも悪くない……か。」

 エボロスは少し考えた後、そう言った。

 「んじゃ、光術頼むわ。」

 シャルマは目を輝かせ、今か今かと待ちわびている様子だった。


 

 光に照らし出されたその部屋は、巨大ミノタウロスがいた部屋を体育館とするなら、教室くらいの広さだった。

 「お?  わりと広いな。てか……いろいろあんじゃねぇか?!」

 部屋には、かつての調査隊などの遺品だろうか……武器らしきもの、防具らしきものや、鍋などが、中央辺りにまとめて置かれていた。

 「そうだね。ひとまず僕は部屋を調べるから、シャルマ君は物色してるといいよ。」

 色めき立つシャルマを見ながら、エボロスは小さく微笑んだ。
 

 「おっしゃ!」
 
 シャルマは中央に向かい、エボロスは部屋の隅から調べるようだ。
 

 「ふーむ。何のための部屋なのか……」

 エボロスは、壁ぞいを丹念に調べていた。

 
 「お?  これは中々いいんじゃねぇか?  いやぁ、まさかこんなにため込まれてるとはなぁー!  お?  これ、銭入れか?!」

 シャルマは、金目のものを発見したようだ。機嫌のよさそうな声が響いている。
 
 装備品なども整理しつつ並べているあたり、意外にも細かいところがあるようだ。それもまた、スラム生活で培った生き残る術なのかもしれない。


 
 「む……?  これはなんだ?」

 エボロスが、石壁の一部に違和感を覚えたようだ。

 

 ――ガゴッ!  ……ゴゴゴゴゴ

 違和感の正体を探るべく、そのあたりを触っていたエボロスだったが、どうも起動装置だったらしく――

 「む……隠し扉か!」

 石壁の一部が開いたのだった。
 

 中は、小部屋だった。

 
 「おー? エボロス、なんか見つけたんか?」

 「ああ、小部屋だ。入ってみるかい?」

 「当然よ!」

 「じゃあ、ちょっと待ってくれ。」

 エボロスは、扉が閉まらないように、小型ミノタウロスのこん棒を突っ張り棒代わりにした。


 

 そうして中に入った2人が目にしたものは――

 「おお……」 「あれは……」

 石組みの祭壇だった。
 

 小部屋の中央に、儀式などに使われそうな祭壇があったのだ。

 悠久の時を経てきたとは思えないほどに、形を残しているそれは、うっすらと輝きを帯びているようで、神秘的ですらある。

 

 そして、その上には何かが置かれていた。
 

 「もしかして、神具だろうか……?」

 エボロスはおそるおそる近づいていく。
 

 「おおー。さすが神代の怪物がいるだけはあったってかぁ?」

 シャルマはニヤリとした。

 「妙な気配などはないが、僕では動かしても平気か分からないな。オーズ君に見てもらおう。」
 

 「ふーん。ま、俺にゃ全くわかんねぇからよ、任せるわ! お? これなんだ?」

 部屋を歩くシャルマの足元に、長そうな棒のようなものが落ちていた。

 
 「ん? これ、斧っぽいな?」

 よくよく見れば、それは刃もついている巨大な戦斧らしきものだった。先端に剣のようなものが付いていて、形状としてはハルバードにも近い。

 普通の人間が振るうには大きく重すぎるその造りは、人外の武器のようである。もし使いこなすことが出来るなら、人間の鎧など紙屑にも等しくなるだろう威容であった。

 
 「なんか……書いてあるな。あーくっそ。古語っぽいな。チッ……読めねぇ。エボロスー。コレ読めるか?」

 
 「ああ、少し待ってくれ……」

 エボロスは、部屋の様子や祭壇周りなどをスケッチするように記録していた。

 このまま帰還出来れば、歴史的快挙なのだ。学生や商人としての成功どころか、時の人ともなれるのだ。商家の復興を目指すエボロスには、またとないチャンスなのである。


 
 作業を終えたエボロスは、シャルマの発見した戦斧らしきものを手に取った。
 
 「……えっと、リ、サ……ナ、ウ……ト……? リサナウト、か。この戦斧の銘かな? 持ち主の名前だろうか? 他には何も書かれてはいなさそうだな。これ、ほのかに神力を感じるけど……これも神具かもしれないね。ずいぶん古ぼけてはいるけど……」

 「お? マジか! お宝あったじゃねぇか! 直したら使えっかなー」

 「もし神具だとしたら、普通の鍛冶屋での修理だと心許ないから、ここから出たら僕が預かって直してもらうよ。お代は護衛代ということでね」

 「エボロス~! はっはっ! お前さんはいい商人だぜ!」

 シャルマは、がしっとエボロスの肩を組み寄せる。エボロスも満更ではないようで、短く笑った。




 
 ゼントの様子を見に、2人は一旦隠し部屋を出た。

 「オーズ! 終わったかぁ?」

 「……ああ……なんとか……な……」

 シャルマの声に、明らかに疲弊した返答をするゼントだった。

 「オーズ君、大丈夫かい? ……その、様子が……」

 エボロスのあまり高くない神力感知でも分かるくらいに、ゼントは不安定な状態になっていた。

 脈打つように膨張と収縮を繰り返し、渦巻いてすら見える黒霧の身体、パリパリと小さな音を立て、表面を迸る雷光のようなもの……どう見ても普通ではないのだ。

 「何か……見つけたのか……?」

 それでも普通に会話しようとしているゼントに、シャルマも普通に応じた。

 「おー! お宝見つけたぜ! で、エボロスがよ、オーズに感知して欲しいもんがあるってよ。いいか?」

 「ああ、行こう……」

 「だ、大丈夫かい? 無理しなくとも……」

 エボロスの心配をよそに、ゼントは短く「大丈夫だ……」とだけ答え、漂うように進んでいった。



 「これか……」

 ゼントは祭壇の前で立ち止まり、置かれたものを観察する。

 (……これは、神具か……?)

 それは、黒く艶やかに磨かれたような表面の、円筒状で、片方は円環状になっていて、棒状の部分はところどころに突起物がある形状だった。30cmほどある大きさを除けば、鍵のようにも見える。

 おもむろに、ゼントがそれを手に取った。

 (む……神力が……安定した? だが、まだオーズの形状を取れるほどではないか……。これは、鍵のように見えるが、隠し扉はスイッチだったという話だ。どこか他に使う場所があるのだろうか? それとも、ミノタウロスを封じるための何かだったのか……? まぁ、どちらにせよ、先に進むには持っていった方がいいだろう)

 「何か分かったかい?」

 終始見守っていたエボロスが声をかける。

 「ああ、危険はないだろう。これは持っていく。シャルマ、持ち帰るものの選別は済んだのか?」


 「おー。まぁ、全部持っていきてぇけどなー。持ちきれねぇからしかたねぇよな。金属系の運びやすいモンと、現金にしたぜ! これ、たぶん小ミノが集めてたんだろうなー」

 シャルマは満足そうだった。
 

 「そうか。じゃあ上を目指そう」
 

 そうして3人は上階を目指したのだった。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

悠・A・ロッサ

善人がひどい目にあって転生するという設定が面白く、さらに軽妙な文体とあっていました!
また続きを読ませて頂きます。

解除
悠・A・ロッサ

善人がひどい目にあって転生するという設定が面白く、さらに軽妙な文体とあっていました!
また続きを読ませて頂きます。

解除
せーぶうわがき

善人さん!嫁が嫌な女であることは明白ですが、お人好しすぎるのは人間の世界では逆に不気味に映って距離を取られてしまうんだろうなと思っております
きっとそれはロボットのような存在
だがしかし!感情爆発した今、人間味が発露したということでどのような人生を歩んでいくのか2話以降が楽しみな1話
続き参ります!o(^-^o)(o^-^)o

2025.09.13 Resetter

ありがとうございます!
善人の善意はちょっとズレているんです。
そういう人間は酷い目に会いがちだよなぁー
という発想から生まれました。
今後彼がどうなっていくか
そして鬼婆がどうなるか……
お楽しみいただけると幸いです!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。