この度、転生することになりまして

藍風月

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第二章 「家族の想い」と「新たな路」

修行の日々(sideティナ)

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「わかってますよ、母上、父上。もう、僕は自室に戻りますね。父上は、今日も仕事頑張ってください。」

レイが、セバスとともに食堂を出て行った。

「ルーリス様、私は母失格です…。鍛錬の時に手加減をせずに走らせてしまいそうになりました…。今朝、カーウェルにまだ幼いって言われるまで、レイが1歳を超えたくらいの年齢だということを忘れていたのです。」

私はため込んでいた思いを、ルーリス様にこぼす。

「ティナ、俺もだよ。昨日、馬術を次の休みに教えるという約束をレイとしてしまっただろう?まだ一歳でしかない子供にだ。本来馬術は5歳を超えたくらいで初めて触れるものだというのに…。」

どうやら、ルーリス様も同じような思いを抱えていたみたい。

「レイは、あの年にしては大人びすぎている。俺らが接し方を間違えそうになるくらいに。」

「そうですわね。ねえ、ルーリス様は先ほどのレイの言葉を覚えていらっしゃいますか?」

「ん?どれのことだ?」

「レイはさき程、この家の本のほとんどは読み終わっているといったのです!!まだ、たった一歳の子が。本来なら、文字を読むことでさえすごいとされる様な年の子がですわよ。」

あの時から、私はあの子がまた恐ろしく思えてしまうのだ。

「な…、レイがそんなことを言っていたのか!? この家の図書室には文官の家に比べて少ないとはいえ、2000冊もの本があるんだぞ。それにそのほとんどが兵法書と歴史書だったはず。残りも法律関連の書籍ばかりだ。ありえないとしか言えない…。」

「今までは普通の子よりもかなり天才というだけでしたが、今では異常だとさえ思ってしまいます。体力面が普通の子供だからいいものの、そうでなかったら、私は…。また、あの子が生まれてきたときのように…。」

あの子を……化け物扱いしてしまいそうになる…………。

「ティナ、それ以上は言うのをやめたほうがいい。…………あの子は、この家に生まれてきたのは間違いだったんじゃないだろうか。こんな騎士の家ではなく、文官の家に生まれていたならもっと良い生き方ができただろうに…。」

「ルーリス様!!」

ルーリス様も同じようなこと言おうとしていたから、慌てて止めた。

「!!嗚呼、私はなんということを言おうとしてしまったのだ。」

「ねえ、ルーリス様、あの子の頭脳が私たちのせいでつぶれてしまわないでしょうか…。私たちは騎士としての在り方しか知らない。文官になりたいと望むあの子に何も教えてあげられない。……私は不安なのです。」

「………実はな、ティナ。先日、君の兄であり宰相補佐をしているユーリ殿から、レイを我が家の養子にしないかという提案を受けたのだ。その時は断ってしまったんだが、今ならこの提案を受けたほうがあの子のためになるんじゃないかと思う。」

ルーリス様が言ってきたのは、思いもよらない提案だった。

「…小兄様、そんな提案をいつの間に…。でも確か、小兄様はまだ独身だったはずでは?」

私は三人兄妹で、二人の兄がいる。そして、それぞれ一番目を大兄様、二番目を小兄様と呼んでいるのだ。
私の実家のハインリッヒ家は騎士の家だけれども、小兄様は早々に独立し、ハインリッヒ姓で唯一文官をしている。
もちろん大兄様や、お母様、お父様は、騎士である。ちなみに、実家は伯爵位を代々継いでいる。
大兄様はもう結婚しているし子供もいる。だから、私の両親は小兄様を結婚させるのはもうあきらめていたのだ。

「ああ、そうだ。なんでも結婚はしたくないが、自分の後継者を育てたいと思っていたらしい。もし、養子にできるなら、自分の持つ知識や爵位を全てレイに継がせたいんだとか。たしかつい最近、ユーリ殿は個人で子爵位を与えられていたはずだ。」

「でも、なんでそんなことを言ってきたのでしょう?アンジェスノーラ伯爵家は騎士の家系として有名です。文官をしている小兄様がそんなことを言うとは思えないのですが。」

「確信はないが、俺がレイの天才ぶりを自慢していたせいだろうな…。あとは、爵位を持ったから、継がせられる後継者が必要になったせいでもあるだろう。」

この国で爵位を持つ未婚の人間には、後継者がいない限り、本人が嫌がろうと縁談を勧めてくる輩が多いのだ。

「もう、ルーリス様ってば……。まだ幼いあの子を親である私たちから引き離すのはかわいそうだし、何より、私たちが寂しいです。……だけど、レイが夢を追いかけたいと望むなら、小兄様の提案を飲むべきだと思います。」

小兄様の縁談除けというのが多少気に入らないが、仕方あるまいとも思う。

「そうだな。今日の夕食の時に、レイに直接聞いてみるか。」

「そうですわね。」

「あ!そろそろ出かけないと間に合わない!じゃあ、行ってくるよ。」

「ええ、行ってらっしゃいませ。お気をつけて。」

ルーリス様が、仕事に行かれた。



レイのために私たちができる正しい事とは何だろうか…。
私には、よくわからない……………。
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