木下寅丸の世界

木下寅丸

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筋肉信仰に目覚める

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会社を休職して、精神病棟に入っていた時、
私は真っ白になっていた。


不思議な少女と出会い、
徐々に会社へ復職しようとなんとなく決意した。

でも、
不安しかなかった。

希望というものが存在せず、
何かにすがりたかった。


そんな時、
看護師の方で筋肉信仰の人と話をした。

趣味は筋トレ。
私とは到底違う部類の人間。

その人曰く、筋肉は何でも解決するのだそうだ。

馬鹿らしい。


だが、
少し考えてみた。

精神病棟の入院患者で筋肉質の人間が皆無ではないか?
いるのは、
瘦せ型の人間、
太っているか、ぽっちゃりの人間。
後は中肉中背。

大体これに当てはまる。

アスリート系の人間をそういえば見たことがないことに気づいた。

筋肉には何かあるのかもしれない。

調べてみると、
筋肉量が増えると男性ホルモンが増加するらしい。
男性ホルモンが増加するとストレスに効くらしい。

筋肉信仰もあながち間違っていないのかもしれない。


私は退院後、ジムに通った。
プロテインを飲み、食生活でもタンパク質の多いものを好んで食べた。

結果、
1年後に10㎏丸々筋肉を増やすことに成功した。


精神疾患に効いたのかは分からない。

でも、
体の疲れが微妙にましになった。
物が軽くなったし、
ヤンキーに絡まれたとしてワンパンだな。
など、変な自信もついた。


ランニングマシーンで走り込みをしまくったが、
疲れが微妙にましな程度ぐらいにしかならないのは皮肉かなと思った。

肉体的体力と精神的体力の違いなのだろうか?

俺結構がんばったぜ。

結論を言うと、
筋肉信仰は多少ましになった程度の効果だったように思う。

でも、
何かにすがるというのは必要なのかもしれないなとも思った。


私達は、何かに依存しないと自我を到底保てないのである。
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