白い花が咲く丘で

黒月禊

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旅の記憶は輝いて

白い光と誓いとキス

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「相変わらずは派手だなお前」

「えへへ。遺物武器使うと加減がわからなくてさ。それより皆んなで食事をしようよ!ずっと寂しくて話し相手に主人様にお願いしてたんだけどそろそろ申し訳なくてさ。だからみんなでテーブルを囲んでおしゃべりしたいんだぁ!近くの街に胡桃のパンが美味しい食堂屋さんがあるんだそこにいこうよ!」

「はぁ!?なんでお前隊長を煩わせてんだよ!何のために俺たちがいるんだと思ってんだ隊長は多忙なんだぞ羨ましい!!」

怒り心頭でアベルに怒鳴るが、照れたように笑うアベル

「ちゃんとお願いして、いいって許可もらえ時だけだから許してよスイウン。僕だってスイウンとお話できるならそうしたよ」

「誰が無神経天然神父とお喋りするかよ!てか終わったなら結界と式神解いていいよなゴリゴリ力削られんだけど…」

「…それはやめたほうがよいな」
抱えられたままやっと話し出したカイン
手足をぶらつかせている

「何でだよ悪魔はアベルがやったんだろ?」

「うぬ。肉体は死んでおるな」
意味深な言葉を吐く

その時地面が揺れる
「グフフ……愚かな神の使徒どもよ」
血肉がぶち撒かれた部屋に声が反響する
「奴は生きているのか!?」
だがそこには血溜まりしなかった
「おーごめんね。魂はそのままだった」
やっちゃったえへと言う顔をしたアベル
「じゃあ片付けてみんなでご飯食べに行こうね」
笑顔で本を開く

「もう既に遅い」
一度消えた魔法陣が光る
「おいおいマジかよ….」
焦った声だ
「何が起きているんだ」
異常事態だ
既に肉体は滅ぼしたのにあの悪魔の気配がする
まさか
「そのまさかだ人間。肉体は消滅したが魂はこうして残った」
「ハッ、魂だけの存在で何ができんだよ。恨み言でもぶち撒けて滅されてーのか?」
馬鹿にしたスイウン

「….そう、惜しくも取り憑く加護なしの人間は子供のみ。取り憑いた所で即肉体ごと滅ぼされる」
「詰んでんだよ」
「……それは、果たしてどうかな?」

その声と共にさらに地面が揺れる
魔法陣が、起動している?

「奴は自分の魂を贄にして召喚する気だ!!」
俺は思いついた考えを口に出す

「だからこの色狂いの陣があんのかよ気色悪いと思ったぜ」

「この規模だと貴族クラスか将軍以上が召喚されると思う。一旦脱出するか?」
クハハハと嘲笑うような声が聞こえる

「その程度ではないぞ人間。私が計画し贄を集め陣を築き因果と欲を集めた!」
高らかに言う

「地に降り立つは悪魔の王!アスモデウス様である!」

アスモデウスだと!?
色欲を司り悪魔を支配する王
序列が高い悪魔だ
そんなものを呼んでしまったら村だけではなく国規模の災厄だ

「え?今から来るのかい?あ、本当だ呼び出せないみたいだ!」
黒いページをペラペラと捲りながらアベルはそう言った
呼び出せないみたい、とはつまり普段なら呼び出せるとでもいうのだろうか
なら彼アベルは人類の厄災となるレベルの危険人物だ

「おいおいアベル。上位の奴らは隊長の許可ねーと呼び出し禁止じゃなかったか?以前城で呼び出した時兵たち精神錯乱させて叱られてたよな?」

「うぅ、あれは僕が悪かったよ。でもちゃんと謝ったんだよ。主人様も怖かったけど、最後は僕の頭を撫でて許してくれたんだから」

「なんだかんだお前に甘いよな隊長。不公平だよなぁ」
そうだそうだと小声でカインが言う情けない姿だ
ここからだと尻しか見えない

「何を世迷言を!!私を愚弄しおって人間風情が!」
より勢いが増す
もう既にあの悪魔の魂は供物にされたようだ

「うぅ、どうしよう…。殺すには悪魔を召喚しなくちゃだけどアスモデウスを殺すとなると、序列が上の子を呼ばないとだし、でも上の子たちを呼ぶと、僕は叱られてしまう」
汗と涙目になりながらアベルが困惑する
本で殴ればどうにかならないかな?と尋ねられたけど
首を横に振っておいた


「なら本人に聞けば良いのでは?」
小脇に抱えられたカインがそう言った

「で、でもどうしたら主人様とお話しできるの?カイン兄様….」
大きな体の子供のように小さな兄に尋ねる
カインははぁとため息を吐いてやれやれとでも言うように答えた

「その胸の谷間に挟んでいるものを使えばよいだろ」
呆れた様子で言った

ポカンとした後パッと表情を輝かせて
言われた通り首のホックを外しボタンを外して
胸元を露出した
でかい


確かに何かが挟んであった
「あっ、ご、ごめんね!苦しかったよね!つい忘れちゃってて」
慌てるアベル
両掌に置いて話しかける
見るとそれは羽をしまった白い小鳥だった
アホ毛のような羽が頭から生えている
これは…見たことがある気がする

「し、死んじゃってないよね!?うぅ、お願い返事をしてよお願いだよぉ」
ポロポロと涙を零し懇願するアベル

「…見せてみろ」
スイウンが近づき小鳥の頭を撫でる
「あー接続が切れちまってんな。充電充電….」
不思議なことを言って触れたまま魔力を流す
「えーっと……あったあった」
何かを探るような顔をした後目的が成されたらしい


ピクッ
「…………う、うぅ」
「主人様!!」
喜んで鳥に頬擦りをする
「ありがとうスイウン!!ちゅ」
「やめろ馬鹿!」
頬にキスされ急いで距離を離すスイウン


「……‥胸で圧死するかと思った……」
目を開けた鳥がそう言った
この声、あの時の隊長と呼ばれる者のようだ


「……嫌な死に方っすね….」
「我が愛よ!」
二人が温度差のある言葉を話す

「……状況を」
「はい。村人はほぼ全滅。悪魔は倒しましたが悪魔召喚によりアスモデウスを召喚しようとして己を贄にして現在召喚発動までもうすぐだと思われます」
ふざけた態度を消し部下として冷静に簡潔に報告した


「君たちが集まってこの体たらくですか」

「…申し訳ないっス」
「我輩は悪くない!」
「ごめんなさい主人様…」
三者三様に答えた


「人質は?」

「捕まった子供とスノーは回収できました」
リデレがいつのまにかオプタを背負っている
無事だったんだなよかった…


「なるほど…」
次の言葉を待つ


「では後は私が対処します」

「そんな!?無理をしては….」
「そ、そうですよ!僕たちで何とかできます」
「そうだ。君が背負うことはない」

「…」
俺は黙って後ろから見守る
まだ状況は何も好転していないからだ
本当は今すぐにでもスノーと子供たちを連れて村から退避したほうがいいと判断している
いくら彼らが強いからと言って
悪魔の王相手に三、四人でどうにかなるとは思えなかった
それをこの鳥、隊長とやらは一人でやるらしい
理解できなかった


「いま観測と処理が決まりました。この村全体が後数時間もしないで魔界化します。屍たちは悪魔の眷属となりそしてさらに被害が広がり、そのまま悪魔を全部倒してもこの地は二度と甦らないでしょう」

「「「…」」」

歪みが強制的に作られるとそこは永遠に脆くなる
瘴気によって魔物がより強くなり凶暴になったり
植物も変化して魔界の凶悪な植物となる
それを言っているみたいだ


「なので広域浄化をします。わかりますね」


「「「…はい」」」

「では迅速な退避を。スイウン彼らを先導してくださいね」
「承知しました」
恭しく頭を下げ出口に向かった
強制的にカインも連れていかれる

「どうしたアベル?逃げるぞ?」
じっとしているアベルに話しかける
少し悲しそうに笑う

「…僕はこのままここに残るよ」
そう言い放つ
「なぜだ?あの隊長さんとやらに任せればいいだろう?」

「ううん。僕が失敗しちゃったからこうなっちゃったわけだし、ちゃんと最後まで見ておきたいんだ」

天然でお気楽そうに見えて子供のようだが
中身にはしっかりとした責任感と理性があるようだ
騎士としてその気持ちはわかる

「……必ず無事で戻ってこいよ」
肩を叩く

「うん!またねヴァルツ!僕の大好きなお友達!」
ぎゅっとハグされた
今度はハグを返す

俺は後を引かれながらも振り返って出口に向かう
既にスイウンたちは地上にいるのかもしれない


「…ありがとうヴァルツ君」

後ろから優しい声音が聞こえた
後ろが眩い光に包まれる
地面がさらに揺れる
崩れそうだ

出口に向かいながら視界の端で見えたのは

光に祈りを捧げているアベルの後ろ姿と
長い白髪の女の後ろ姿が見えた





≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫





地上に出ると外が騒がしかった
「おせぇ!」
教会に入ってきた屍を蹴り飛ばすスイウン

背中に子供二人を背負い
小脇にカインが挟まっている

「悪い!」
横からスイウンたちに襲いかかってきた集団を蹴り飛ばす

「お前加速できるか?」
「できる」
「集団防護は?」
「八人までは、できる」
互いに群がる屍を蹴り飛ばしながら話す

「ならよし!俺はいいから自分とスノーちゃんとガキども頼む!俺と爺さんで道を切り開く」
抱えていたカインを屍の群れの中に投げ飛ばした
あっ


「貴様!!」
周囲の屍たちを一斉に弾き飛ばす黒い蝙蝠

「いつまで狸寝入りしてんだよ。サボってねーで働け!チクるぞ!」
そう脅す
「…覚えておれ!せっかく魔力を貯めたのに…」
「なら使わねーでどうすんだよ。いいところ見せたら隊長だって褒めてくれるかもだぞ」
「なんと!なら不肖我輩、ハリきってみせるぞ!」
体から蝙蝠を周囲に放ち屍を大量に弾き飛ばす

「さぁ走れ!」
「!!」
武器を構えたスイウンがぶきをふりまわして薙ぎ払う
できた道に走り出す

「我が身を強化せよ」
体が光に覆われる
「光の下に加護を求めん」
風圧で苦しまないように今度は俺の背に乗ったリデレとオプタ
そして前で抱き抱えたスノーと四人で切り拓かれた道を全力で走る

村は屍だらけで
村全体が魔の気配に満ちていた

俺の両側をスイウンとカインが守る
走りながら器用に道を塞ぐ屍を払い
カインも宙を飛んで周囲に蝙蝠を放って屍を弾いている

「どこまで走ればいいんだ?」

「よっと……んぁー、あの橋までだな」
「遠すぎないか…」
「なら俺が背負って逃げてやるからお前は、いろよ!溶けて死ぬだろうけど、な!」
素早く蹴りと武器で襲いかかる屍を倒す

「我輩一人なら飛んで逃げれるのでは?」
「やってみろよ撃ち落としてやる」
「童風情が」
互いに貶しながらも敵を処理する

「ああもううるせぇな!隊長が俺らの不始末を処理してくれてんだ文句言うな!失望されねーように迅速に命じれたことこなすんだ、よ!!」
「ふん。青二才のくせに。と思うがその通りだな」
『影よ』
カインが命じる
屍たちの影から獣や人ならざる者たちの手が伸び
拘束する
「急ぐぞ」
「最初からやれよ!」
「ええい!魔力がごっそり減るのだ!なら血をよこせ!」
「ぜっっったいに嫌だね!」

「…仲良いよなお前たち」
「「よくない!」」
二人の声が重なる

昼間通った広場まで来て最初来た道とは反対に向かう
「爺さん荷物!」
「その言い方やめい!眷属に回収させた!」
「でかした!」


騒ぎながら走る

そしてなんとか
村を出て高さのある崖近くの橋まで来た

「はぁ…はぁ」
「もうへばってんのかよ」
「…そんなわけがないだろ」
憎まれ口を吐く


ゆっくりと子供たちとスノーを下ろす

「……ん」
「!スノー!起きれるか?」
刺激で目を覚ましたらしい
額を押さえ顔をあげる
「…ヴァルツ」
「もう大丈夫だぞ!ああ、よかった!」
スノーを抱きしめる
やっと安全なところまで来れて気持ちが緩んだ
「…ヴァルツ」
驚いたがそのまま俺の背を優しく撫でてくれる
よかった、スノーだ…




「…始まったか」
小さくスイウンがつぶやいた
立ち上がろうとしたスノーを支え
スイウンたちのいる崖近くに近寄る
そこからは村が一望できた
俯瞰した夜の風景が見えた


「何が始まるんだ」
そう尋ねた時
光の柱が空に伸びた

「なっ、なんだ!」
ここまで眩しい光が届く
そして音もなく消える
「何が起きたんだ?」
尋ねる
「…これから起きるんだ」
尋ねようとした時
変化は突然現れた

スイウンが見つめる先
空を見る
すると白い光が夜を裂くように現れる
まるで太陽が雲間から差し込むようだった

違う

あれは光ではなかった
俺の神眼が反応して熱くなる

そして視えた


あれは白く輝く一羽の鳥の集合体だと
すごい数の鳥の群れだった
それが村を包むように旋回し

そして


堕ちた


村の中心部に降り注ぐように落ちた鳥たちは
そこから光が爆発するように溢れ出す
眩しくて腕で遮る
その視界の端で見えたスイウンは苦しそうな顔をしていて
カインは憎々しげな顔をして顔を背けた

俺とスノーは目の前の景色をただ
呆然と見つめていた



「…あれはなんだ」
そう口から溢れていた

俺の問いが聞こえなかったような顔をして
誰に聞かせるわけでもないように
呟く




「…広域極地浄化術式 光芒堕天の矢だ」

そう吐き捨てスイウンは言った



まるで破壊兵器のようだと
俺は思ってしまった



≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫





俺たちはあの後無言で橋を渡り先へ進んだ

カインの眷属により運ばれた荷物と不機嫌な顔をしたアレクがいた


しばらく進み
森の中で今日は休むことにした
村で手に入れたテント一式のおかげで
屋根がある状態で俺たちは一晩過ごせそうだった

「……」

目覚めたオプタは現状が理解できないようで
リデレが声を震わせながら話すと
理解できないのかしたくないのか
泣き喚いて、それに感化されリデルも泣いてしまい
スノーと俺で慰め二人は今テントの中で寝ている

焚き火を囲みながら休む
スノーが用意してくれたハーブティーが
やっと俺たちの緊張をほぐしてくれた

「…そんなことがあったんだね。ごめん俺のせいで」
「スノーは悪くない!」
「でも、ちゃんとヴァルツを起こしてでもついていって貰えばよかったのに。助けるどころか捕まっちゃうなんてね」
情けないのと笑う
俺は隣でスノーが動いてくれたおかげで俺たちが気づけて
オプタが殺されないで済んだと可能性の話をした

気休めだとは俺もわかっている
でも辛そうなスノーを見るのは心苦しかった

「そうだな。もし似たようなことがあっても気をつけろよ」
「うん。そうだね。スイさんもカインさんも助けに来てくれてありがとう」

二人は軽く手をあげて返事を返す



後ろから魔の気配を感じ身構える
残党か?
こんな近くまでわからないなんて
一同に緊張感が広がる

ゴソッ

「姿を現せ!」
茂みから気配を感じた

ッ!


茂みの中から姿を現した

「やぁ!お待たせみんなぁ!」
満面の笑みを浮かべ手を振って現れたのは
全裸のアベルだった

全裸?

急いでスノーの目を手で覆う
な、なに?と困惑させるが許してほしい
くそ、男として悔しい!


「アベルお前無事だったんだな…良かったが、なぜ全裸?」

「ええっと、服は消滅しちゃってね。えへへ」
「消滅って…」
やっぱりあの光に巻き込まれたのか?
よく無事で、いや不死身と言っていたしまさか
あの攻撃を直撃したのか?
照れ笑いをするアベル
照れるなら股間を隠せと言いたい
とりあえずサイズの大きい服はないので
大きな布をスノーが渡した
これで目の毒は消えた

「…隊長は?」
スイウンが焚き火を枝で崩しながら尋ねる
その声は低く
パチッと火が爆ぜる音がした

「……帰ったよ」
「そうか……」
それで二人の会話は終わった

今夜は冷えるからと
あの村で手に入れたもので簡単に作ったという
スープをスノーが作ってくれた
トマトの野菜スープとチーズをハムを挟んだパンだ
起きた二人も最初暗かったがお腹は空いていたのか勢いよく食べてまた寝てしまった
スノーが二人を見て微笑んでいる


あいつらが焚き火の反対側でコソコソと内緒話をし始めたので気を遣って離れてやる
スノーの隣に座り子供たちをみる
憔悴していたがお腹いっぱいで寝たからか
顔色は悪くない

二人で黙る
今日は大変な一日で
こうやって穏やかに過ごせることが嬉しかった

「…何があったか覚えているかな?」
慎重に聞く
捕まってから何があったか
俺は疑問が残っていた
心の傷を広げないように言葉を選ぶ

「…少しだけ」
そう言って静かに話し出した
教会まで行ったがオプタに取り憑いた悪魔に人質とされ抵抗できずに捕まり
そして地下室に連れて行かれた
そこでは悪魔召喚の儀式のために恐ろしいことが行われていて
それに自分が差し出されたという
だからあんなにボロボロだったんだな…
俺はなんでいつも肝心な時にそばにいないんだと強く拳を握る
…あれはやはり、噎せ返るような死臭の中に
僅かに精の匂いがしたのはそのせいかと納得する
ま、まさか
じっとスノーを見てしまった
それに怪訝な顔をした後
察してしまったのか青い顔をして
「ち、違うからね。何もされてないから。される前に何か爆発して、多分、それでああなったんだともう…」
だんだんと小さくなる声で言った
良かった、良かった…
スノーの純潔は守られていたと分かり心から安堵する

あれ?……………どこまで覚えているんだ?
またスノーの愛らしい顔を見つめる
この顔が俺を見つめいやらしく笑い
潤んだ瞳で見つめて、その淡い桃色の唇で俺の肌に触れ
その熱い口内に俺の指が包まれたのか……


俺は思い出し顔が熱くなる
それを見てスノーはハッとし
俺に負けないぐらい顔が赤くなる
お、おお覚えていたのかそ、そうかそうか…
き、気まずい
呪術によって誘惑されたとはいえ
合意もなしにあ、あんな破廉恥でとてもエロいことをスノーがするなんて
よい体験ができたとつい涎が流れそうになり
訝しまれた
お、俺は無実です
不可抗力だった
う、ご、ごめんなさい
本当はめっちゃ興奮しました
よく耐えたと俺を讃えたい

スノーが俺を見つめる
俺は冷や汗が止まらない


焚き火の炎が揺めき
俺たちを照らす

「ありがとうヴァルツ…」
「え?あ、うん」

救出の件だろうか
実際俺だけではあの結果は得られなかった
感謝される謂れはない
そういうと静かに首を振られる
違うのか
ならなんだ?
言いづらそうにして顔が赤くなるスノーを見て
俺は察した
あ、あの事か!
やっぱりそれも覚えてるんだな!クソォ!
軽蔑されてしまったかな!?
だってあれはないだろう!性の匂いがしない清廉で可愛いスノーがあんな、男を誘う小悪魔のように妖艶に俺を誘うんだ
それが罠だとしても飛びついてしまうだろう!
ああ、エロかったなぁ…と思い出しそうになり思考を振り払う

「あれは、俺は特に感謝されるようなことはしてない」
むしろ感謝する方だとは流石にいえない

「ううん。…嬉しかった」
「え、ええ!?」

俺は動揺する
俺と、あんなイチャイチャしてエロいことしたの
嬉しかったのか?まさか、もしかして合意だったのか!?
俺はなんてことを!それなら受け入れて優しくかっこよくリードしてあげるのが筋ってもんだろ!
経験ないけどさ!俺は何をしていたんだまったく!
まぁ実際横に悪魔もいたしそれどころじゃなかった
は、初めてはちゃんとお付き合いして、デートを重ねて
将来を誓いあってから自宅で二人っきりでがいい…
それ最高だな!
と脳内で一人暴走する

「ヴァルツ?」
「はい!俺は誓うぞ!」
「何を?」
「あ、いやなんでもない」
妄想が漏れてしまったようだあぶないあぶない

「だからさ」
俺の手に手を重ね
あの時のように濡れているわけでも蕩けているわけでもない
俺が惚れた綺麗な優しい光を宿した瞳のスノーだ
やはり俺はこちらが好きだなと俺は改めて思った


「あの時、俺を大切にしたいって言ってくれたの。すごい嬉しかった」

微笑んでそう言った
あの時か
あれは心からの想いと言葉だった

「……うん」
俺の返事を聞いて
スノーはニコッと笑い
お茶を飲んだ

俺も同じようにお茶を飲む
スノーと一緒で
優しい香りがした


頬に柔らかい感触がして顔を向けるが横顔は髪に隠れて見えなく
俺は感触がした頬に触れ
鼓動が高鳴り
冷える夜なのに俺は暑くて仕方がなかった






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