赤い狂犬と墓標

黒月禊

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月に牙を剥く

【3】

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道路を滑走していると海が見えた
学校から四十分ほど走っていた
途中コンビニにより休憩として飲み物を買って休んだ
思ったより蓮は平気そうで
バイクに乗るのが気に入ったようだった


「ふはぁ……海、海だ」
ヘルメットを外して新鮮な空気を吸った蓮は
光を反射してキラキラと光る海を見てそう言った
感動してるのか?それとも実物を見たりするのは久しぶりなのかも知れない
俺は黙って跳ねた髪を直してやった


俺はバイクを停めロックし
砂浜に続く階段を二人で降りる
人はあまりおらず遠くの方で家族連れと犬を連れた奴しかいなかった

俺たちは白いコンビニ袋に入った飲み物と肉まんとあんまん
そして弁当を持って流木で出来た椅子に座った


蓮は黙って海を静かに見ていた
俺はそんな横顔を見つつ
海を見る
波音と日差しが心地よく
寝れそうだった


「…そういえば」
「ん」
「サボっちゃった。学校」
独り言のように蓮は言う
「今更だな」
俺は少し笑う
すると蓮もはにかんだ


俺が腹減ったと言うと弁当を包んでいた布を外し
大きめの二段の弁当が姿を現した
カパッと蓋を開けると唐揚げ、きんぴらごぼう、つくねの紫蘇巻き、トマトとブロッコリーの胡麻和え、卵焼き、ウィンナーが入っていた
下段には俵型の握り飯がゆかり飯と白飯の二種
作るの大変だろうに
「すげぇな…」
俺は人生初めての手作り弁当に
情けなくも感動してしまった
これが、噂の…

「別にすごくもないですよ。先日の残りばっかりだし、仁お肉好きでしょ?」
「好きだ」
間髪入れずに言った
横から視線を感じたが空腹感のせいでそれどころじゃなかった
「はい割り箸」
「おう」

「「いただきます」」

それから海を見つつ、と言っても俺はがっついて弁当を食っていた
ちゃんと連の分も考えて食ったからな
偉いだろ
なんてどこの誰に言うでもなく内心で言う
どれも美味かった
人生でこれほどうまい弁当があるのか
そう思うぐらい美味かった
スープジャーというやつに入れたというアオサの味噌汁を飲んで満腹感に浸っていた
……悪くねぇな
なんともいえない充足感だった


波の音と時たまに吹く潮の香りがする風が心地よい
マジで寝そうだった
「美味かった。ありがとな…」
礼はちゃんと言った
苦労かけさせちまったからな

蓮はまっすぐ海を見ていた
光を写していた目が綺麗だった


「海……久しぶりに見ました」
「ふーん」
気の抜けた返事をした

「こんな感じ、だったんだね…」
続いた言葉は波の音と風の音にかき消されるぐらい小さな声だった

袋から茶を取り出して手渡す
ありがとうと言って蓮はペットボトルの蓋が硬くて開けられていなかったから
黙って開けてやる
コクコクと溜飲する音がした


「お母さんと来た時以来なんです」
「…」
蓮は遠くの方で父親に抱っこされ横にいる母親が笑って子供の濡れた足を拭いている様子をただ瞳に映していた

「ここじゃないですけど、ある日の朝今日は海を見に行こうなんて突然言って、電車に乗って行ったんです」

「二人で遠出するなんて久々で、はじめての海だったから楽しみで、電車の窓から見えた海をお母さんがどんな表情で見ていたか、覚えてます」



「その時は少し曇っていて、石段に座って駅から歩いた途中にあったコンビニでアイスを買って食べながら歩いて歩くと暑いねなんて言いながら…歩いて」



「あの時も散歩していた大きな犬がいて触らせてもらおうとお母さんはいったけど、僕は怖くて、だめでした」



「いつのまにか僕はベンチで寝ちゃってたんです。見ると夕焼けが水平線にあって燃えるみたいで、少し怖くて、僕は膝枕されたままお母さんを見上げました」

「…」

「その時はじめて見たんです。お母さんが泣くのを」

「…」

俺は蓮を肩を掴んで抱き寄せた
体は風のせいか少し冷たかった

「僕は幼いながらも、見ちゃいけないものを見た気がして黙って寝たふりをしました」

「そして赤い夕焼けがもうすぐ沈んで、夜に包まれた頃お母さんは帰ろうかと言って、僕を撫でてくれました」

「だから僕は、海が怖くて、でも焦がれるほどまた見たくなる」

蓮は俺の方を見て声もなく笑う
「それが最後でした」

何がとは聞けない
事故に遭う日の前の最後の遠出だったのかも知れない
そんな胸を痛める思い出を想起させる場所に連れて来てしまったことに後悔した

「だから、ありがとうございます」
「なんで感謝すんだよ」
俺は驚いて蓮を見つめる
「だって、僕一人じゃ、来たくても来れませんでしたから」
お母さんとの思い出の場所なので
そう言って、蓮は笑った



「そろそろ帰りましょうか」
パンパンと尻についた僅かについた砂を落として
立ち上がった蓮
俺も同じようにして立ち上がる
少しだけ日が暮れて
太陽の位置が下がっていた

蓮は少しだけ
焼き付けるように見つめると振り返ってバイクを止めたところまで歩いた
振り返ることはなかった
その後文房具が欲しいだとか洗剤がないとかで日用品を買いにスーパーまで行き購入した
今夜の晩ごはんのために少しだけ買いたし
たい焼きを買って帰った

その日の晩、雫から電話があって
サボって抜け出したことがバレており
二人して小言を言われた


そして食べ忘れたあんまんと肉まんは食後に温めて食べた



≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫


ガチャッ…


「あっという間でしたねー」
「朝は車なら混むからな」

ヘルメットを収納して答える
バイクならショートカットできる通路があるからな
すっかりバイクが気に入ったのか機嫌は良さそうだった

正門の方に向かい中高生が混じる生徒の波に混じる
「あーあ」
「…どした」
ふぁとあくびを噛み殺す
薄い中身のない鞄を逆手に持って肩にかける

「同じ学年なら学校内でも一緒なのにーと思って」
「‥.四六時中いれるかようっとしい」
言い放ってからキツイことを言ってしまったかと少し後悔したが気にしていない様子
すっかりこいつも俺に慣れ…いや最初から図々しかったな…
葉が落ちて地面に色変わりした葉が彩った歩道を歩く
周りの奴らは各々眠いだのと部活がだのテストが嫌だと話している
自分がまたこんな風に普通の中で過ごすことができるなんてすこし不思議だった
俺を怖がっている奴もいたが、特に問題もなく
平和だった
前の学校では入学早々上級生に絡まれ殴られたから
全員ぶん殴ってやった
そうしたら職員室に呼ばれめんどくさくなってそれから殆ど通学することはなかった
こうやって…普通の景色に混ざって
普通のガキみてーに歩いて
普通に生きて……か
なんだか酷く虚無感を感じた
あの暗がりの中で死に物狂い
いや死んだように生きていたのに
今でもすえた路地裏の匂いと腐臭が思い出せる
あの安アパートの暗がりも

グイッと腕を引っ張られた
「な、なんだよ」
「聞いてるんですか!聞いてないよね!寝ぼけてるんですかー?」
頬をつっつかれその手を掴みとめる
「やめろ。ったく学校なんてクソめんどくせぇと思ってよ」
「もうまったく。まぁわかりますけどね」
「お前も面倒くさいのか」
「そりゃ僕だって面倒くさいなーとか思いますよ。学校に通う子供は大抵思いますよ多分」
「まぁな」
「嫌いじゃないですけど」
「そうか。悪くねぇんじゃねーか」
「そうですかね」
「そうだろ。それは普通で過ごせる証拠だ」
「確かに。だから兄さんは通わせることに固執するんですね」
「知らね。俺には余計なお世話だがな」
「僕は嬉しいですよ。仁と一緒ですから」
「……そーかよ」
「はい」

蓮は機嫌が良さそうに鼻歌を歌い
ちゃんと教科書や文房具、大きめの弁当が入った
鞄を少し揺らして歩いていた

「じゃあまた、お昼に」
「おう」
「サボって逃げないでよ」
「今日はしねーよ。お前もあれだ、何かあったら連絡しろ」
「…はい」
「どうした?」
一瞬蓮が目を伏せる
「少し、不安な時あるから、そんな時連絡してもいいですか?」
不安そうに尋ねられた
珍しい姿だ
普段図々しく人を操ってなんだかんだやらせるくせに
たまに機嫌をうかがうようにきく
それが甘える時だとわかったのはいつだったのだろうか…

「しゃーねーな。好きにしろよ。俺も暇で寝ちまいそうだしな」
「ふふっ、嬉しいです。でも学校は寝るところじゃないです」
「はいはい」
「それでは、また」
「じゃあな」
俺は背を向けて手を軽く振って自分の高等部の校舎にまけて分岐した道を歩く
少しして振り返ると
蓮はこちらを見つめていた





中庭は広く静かな場所もあった
屋上を最初提案しそうになったが初っ端絡まれたので言わなかった
中抜けの通路下を通り少しすると
人目を避けられるところがあった
木の下にベンチがある
サボるのにも良さそうだと思った
「テーブルもあればよかったんですけどねー」
「しゃーねーだろ。俺はあそこは嫌だ」
この学校にはでかい食堂がありそこは中高生どちらも利用できるが人がその分多かった
うるせーし俺とこいつがいたら人目を集めるだろし
この前ボコったやつが難癖つけて蓮に面倒事に巻き込むかも知れない
だから拒否した
そのあと散歩がてら散策して
この場所を見つけた

「別にここ、お金持ちばかりじゃないですよ」
「はっ、こんなでっかくて綺麗なとこ金持ちしかいねーだろ」
「それは三年前ぐらいに立て直しがあったからで、確かにお金持ちの子も多いですが、一般の生徒の方が断然多いです」
「ふーん」
卵焼きを頬張る
こいつが作る卵焼きは少し甘く出汁も入っていてうまい
「兄さんが以前、どうせ通うならさまざまな人種がいる方が経験として良いから、と言ってました」
「言いそうだなあいつ」
「龍ちゃんと兄さんはOBですね。僕たちは後輩です」
「…やめろよ萎える」
「ふふっ、しかも兄さんは中高どちらも生徒会長だったんです」
「ぽいな。独裁政治してそうだ」
「どうでしょ。兄さんあれで面倒見いいですし人望ありますよ」
「本当かよ。龍司のほうがそれっぽくねぇか」
「そうですね。でも、龍ちゃんは兄さんの言うことが絶対ですから。僕のことだって頼まれてなきゃ…」
「ふーん」
ほんと家族関係で複雑だなこいつら
人のこと言えねーけど


「むぐっ」
蓮の口に摘んだ肉巻きを突っ込む
これはでかいから昨夜手伝った時俺が巻いたやつだ
必死に咀嚼して茶を飲む
「もう乱暴だなー」
「へいへい」
それでも笑っていた
せめてこいつだけでも笑っていて欲しいと
この時の俺は本当に思っていた


木立から影を飛ばして一羽の鳥が
空に消えた




≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫



「チワっす」

「…」


 「む、無視っすか…。でも俺、めげねーっすよ仁の兄貴!」

「誰がテメーの兄貴だゴラ!」

「ひやぁ!?怖いっす!でも俺めげねーっす!」

「……チッ」

目の前で短めの髪を金髪に染め立たせた学ランの中に派手なTシャツを着たアホそうな不良がいた
そいつは自習中の教室の中
俺の目の前の席で椅子を逆に座ってしつこく話しかけてきた
うるせーなこいつ

「誰なんだよテメー」
久しぶりにガンをつけて睨む
そいつはあひゃあと変な声を上げたあと嬉しそうに笑う
変態かよこいつ

「じ、自己紹介したんスけど…八切虎徹っス!最上組の部屋住みっスよ」
「ちょ、お前声でけーだろ馬鹿」
反射で頭を引っ叩く
いい音がした

「す、すみませんです」
「いいよもう、てか組のもんもいんのかここ」
「はい!俺の他に一個下に一人と上に一人っスね」
「ヤクザ御用達かよこの学校」
「若頭…雫さんのお情けっス。俺ら学校なんていらねーって言ったんすけど、学歴も学もない馬鹿はいらないとおっしゃって通わせてもらってるっス!」
「へー。俺にもそんなこと言ってたなあいつ」
「そ、それよりどうしたら兄貴みてーに強くなれんすか!?」
「お前が俺の何を知ってんだよ」
「有名人っすよ仁の兄貴は」
「はぁ?」
「カシラに喧嘩を売って、磯部の兄さんを一撃でのしてあの龍司さんとまでやり合ったじゃないっスか!最後のはうちの組では自殺行為っス!それでも喧嘩売ったのはまじスゲーっす!」
「…‥散々ボコられたけどよ」
「あれは化け物っスよ。あっ、お、オフレコで頼みますよ!?」
両手で拝んできた
知るか
「仁の兄貴はなんで坊ちゃんの側付きになったんすか?」
「関係ねーだろ」
「くぅーークールっす!!」
うぜぇ…
ベラベラの喋りやがって
席替えしてくんねーかな

「若頭と蓮坊ちゃんなら組のもんなら若頭に皆んなつくのに、仁の兄貴はたった一人で坊ちゃんのお側にいる。うー任侠まじカッケェ!兄貴!俺と盃交わして欲しいっス!」
「するかボケ!そもそも組に入ったつもりねーし。俺は組じゃなくね蓮を守るためにいるんだ他は知らねぇ」

するとペラペラと話していた虎徹は黙った
どうしたと思い窺うと
涙を流していた
「な、なんでテメー泣いてんだよ」
「うぅ、漢の中の男っスよ仁の兄貴。一生ついてくっす。みんなめ、妾の子だからって蔑んで蓮坊ちゃんを見て、利用する気満々のやつしか近寄ってこねー蓮坊ちゃんに、こんなかっけー兄貴がおそばにいてもらえるなんて、なんて坊ちゃん幸せ者っス」
うおぉーーーんと泣き出し俺は慌てる
どうしたんだと周りが注目する
仕方なしにこいつを連れて屋上に来た

「おぉ!初めて来たっス!俺来た時閉まっててダメで」
「…」
「こっから中等部の校舎も見れるんすね。蓮坊ちゃん見えるかなー!」
「ちょっとは静かにしやがれ!」
「ひぇあ!?」
金を蹴り上げ脅す
奴は自分の胸に腕をくっつけ飛び跳ねる
「す、すまないっス」
「チッ」

「お前、蓮のファンクラブとかくだらねーの知ってんのか」
キョトンとしたあと笑顔で答える
「知ってるっスよ!」

「一回シメたんすけどねー。虫みたいに湧くんすよ全く。坊ちゃんも罪なお人だ」
「そのファンクラブ?はどうしたら潰せる」
「うーん。非公式っスからなんとも…。その会長は一度辞めさせたけど今度は別のやつが、みたいな」
「チッ、しつけー奴らなんだな」
「まだこの学校ではヤクザの子供ってことは広まってないっスから。襲われる前になんとかしないとっスね」
「襲う?なんでファンクラブの奴らが襲うんだよ」
「それ以外の奴らも含まれるっスけど。過激な奴らもいてめんどーなんす。レイプ未遂もありましたし」
「はぁ!?蓮は男だぞ!?」
「カンケーねぇっスよここ。以前は男子校で女子はいてもほぼほぼ男。思春期の奴らにとって掃き溜めに鶴っスよ坊ちゃんは」
「な、なんだと」
俺は動揺する
た、確かに女みてーな顔してるし
美形、なんだろうがあんなチビを性的に襲うなんて…
自分の中に黒く燃え上がる何かが俺の焦燥感と怒りを高める

「ちょ、どこに行くんすか!?」
「中等部に決まってんだろうか…」
「今行ってどうするんすか!?まだ放課後まで時間あるっス」
「カンケーねぇ。あいつをここから助け出す。ここは危険だ」
「だ、大ジョーブっスよ!?教職員の中にも俺らの協力員いるし、何かあった時の俺たちっスから」
「あってからじゃおせーんだよ!!」
虎徹の首元を掴み吊るす
苦しそうに暴れるが止められなかった
「ぐっ……お、落ち着くっス。そもそもそんな危険なら、雫さんが、行かせるわけねぇですから」
その言葉に俺は力が抜け手を離す
奴は苦しそうに首を押さえ何度か咳払いする
「…わりぃな」
「い、いえ。不安煽るようなこと言って俺が悪かったっス。GPSもついてますし異変があったら俺たちと雫さんたちに連絡行くようになってますから….」


「そうか、悪かった」
「気にしなくていいっス」
ニヘラの笑う
俺は少しバツが悪くなって首の後ろをかく
「いやぁ迫力ぱねぇっスな!ちびりそうだったっス」
「…それは勘弁してくれ」
「漏らさないっスよさすがに!へへ」
屈託のない笑みに俺も少し笑う

「…蓮坊ちゃんは色々立場が危ういとこに立ってるっス。だから仁の兄貴がそばに居て、守ってあげて欲しいっス」
虎徹はまっすぐ俺の目を見ていった
そこにはふざけた様子も戯けた様子もなく
真摯な言葉だった

「おう。当たり前だ」
俺はそれに正面から返した
すると虎徹は人好きする笑顔をした

「そろそろ中等部も下校の時間っスね」
「そうか」
「迎えに行かないんスか」
「今行くところだ」
俺は振り返って屋上出入り口まで歩く
「いろいろ話聞けてよかった。またな」
振り返らず言って俺は扉を閉め
蓮のところに向かった

「バイバイっす。またね」
虎徹は片手をポケットにいれたまま
二ヘラと笑みを浮かべ誰もいない屋上で手を振った



≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫

ーーー…!

電話が震えた
すぐに確認して通知の名前を見て
虎徹は表情をなくす
それは笑顔を取り外した
別の顔だった


「はい。八切です」
静かな声音で話す


「はい。………はい。そうです。接触しました。はい」

何者かと話し
返事をする
虎徹はそのまま歩き屋上の手すりに腕を乗せ
駐車場を見る
そこには
体のでかい男と小さな男が共にバイクに乗り込むところだった
虎徹はそれを見て僅かに微笑む

「えぇ………なかなか面白い男です」
その目は捉える
目標を


「今のところ、問題はないかと思います。…はい。」
冷たい風が染めた髪を揺らす


下からヘルメットをつけた大きな男
仁がこちらを見上げた
虎徹は笑顔を被り
そのまま手を振った
仁は軽く手を挙げ
それに気付き小さな男
蓮も手を振ってくれた

虎徹は手を振る


「はい。障害にはならないと思います。お任せください」

一呼吸入れて
小さく相手の名を呼ぶ


「高崎さん」


そう、男の名を呼んだ




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