極道達に閉じ込められる少年〜監獄

安達

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39話 反逆者の仲間

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「彌生さんに酷いことしないでっ、するなら俺にすればいいだろっ…!」



皆いつもそうだ。潤樹も豊も綉も翔湊ではなく違う人を傷つける。翔湊の周りの大切な人たちの命を奪う。翔湊はそれが何よりも許せなかった。なぜ自分ではなく周りの人を巻き込むのだと。



「そう言われてもなぁ。いくら翔湊の頼みでも俺が裏で糸引いてたってこと彌生にバレちまったからよ。どの道消さねぇと色々面倒になるだろ?そんでもって彌生が海田にでもこのことを言ってみろ。この組は終わんぞ。そしたら最悪全員あの世行きだ。それでもいいのか?」

「………っ。」



橘修の言う通りだ。このことが海田らにバレてしまえば幹部たちが仲違いする。いや仲違いするだけならまだマシであろう。だがきっとそれだけでは終わらない。組の柱とも言える幹部が崩壊してしまえばその部下たちも割れてしまう。そうなれば結果など容易に想像出来る。その事もあり翔湊は橘修にそう言われて何も言い返すことが出来なくなった。



「嫌だよな。そう思うと彌生の命なんて軽いもんだろ。」

「軽いわけないだろっ、ふざけるな…っ!」



大人数が死ぬよりも1人だけが死ぬほうがマシだろと橘修に言われて翔湊は怒りが込み上げてきた。誰も死ぬ必要なんてない。なんで人を殺さなければこんなにも気が済まないのだろうか。邪魔な人間は始末すればいいと考える橘修や綉、潤樹といった彼らの思考を翔湊は理解することが出来なかった。



「翔湊にとって彌生ってそんなに大切なわけ?」

「当たり前だっ、彌生さんは俺の事をいつも大切にしてくれてたんだからっ!」

「それは俺もそうだろ?」

「違う…っ!」



昔はそうだったかもしれない。たしかに優しかった。いつも助けてくれていた。だがそれも全て嘘だったとなれば話が違う。その為翔湊はそう言いながら橘修のことを睨んだ。



「はぁ…。この悪い口と目も躾直さねぇとな。良い子になれるように。」

「やめろ…っ!」



橘修に唇と頬を撫でられるように触られ翔湊はとんでもない嫌悪感に包まれた。気持ち悪い。そう思い顔を背けて橘修の手から逃れようとした時彼が強く翔湊の頬を掴んできた。



「お前そういうの程々にしとけよ。周りを見ろ。相変わらず翔湊は視界が狭いんだな。彌生が訳もなくこの部屋にいると思うか?」



そう言って橘修が翔湊の顔をつかみ彌生の方を向かせた。そしてその光景を見て目を見開き恐怖から身体を震わせている翔湊を楽しそうに橘修は見た。



「やだっ、だめ…。」



翔湊はそう言いながら涙をポロポロと流し橘修のことを見た。なぜなら目の前で橘修の部下であろう男たちが痛めつける道具、つまり拷問器具ような物を持ち彌生のそばに立っていたから。



「そんな顔すんなって。まだ殺さねぇから。今の彌生は利用価値があるからな。」

「そうそう。橘修の言う通り。」

「っ……!!」



どうして…。ここで聞こえるはずがない潤樹の声が聞こえて翔湊は何がどうなっているのか頭がついてこなかった。そして橘修に裏切られていた事実と先程スタンガンで気絶させたはずの怖くてたまらない潤樹が居るこの空間に翔湊は気持ち悪くなって吐き気がしてきた。



「若様。お待ちしておりましたよ。」



敵同士だと思っていた2人が仲間だった。翔湊はここで嫌でも信じなければならなくなった。橘修はずっと自分たちのことを裏切っており潤樹とグルであったということを…。



「ごめんね遅くなっちゃって。まさか翔湊がスタンガンを当ててくるなんて思わなくてさ。回復まで時間がかかっちゃったよ。」



ケラケラと笑いながら潤樹がそう言ってきた。だが翔湊は先程しっかりとこの目で確かめた。潤樹が気絶し倒れている姿を。それなのに何故今普通に歩いているのだ。それが理解出来ず翔湊は錯乱と恐怖が入り交じった目で潤樹のことを見る。



「あはは、不思議そうな目をしてるね翔湊。俺がなんでここにいるかって思ってるんでしょ。俺も舐められたもんだなぁ。あんな軽いスタンガンで気絶するほど俺は弱くない。でも3回目はさすがにやばいと思ったから気絶したっぽく目をつぶってみたんだよ。そしたら案外上手くいっちゃってさ。それで後は橘修に任せようとしたんだよ。気づかなかったでしょ。」



相手が潤樹で焦っていたとはいえもっと慎重にすべきであった。翔湊は慌てていたあまり潤樹が倒れ込んだ際に確認することを忘れていた。その結果がこれだ。結局助けてくれた彌生も巻き込んでしまった。翔湊は悔しくてあの時の自分の行動が許せなくて拳を握りしめた。翔湊は悔しさのあまり爪が肉に食い込むほど強く握りしめていたので橘修がそれを見て力ずくで辞めさせ潤樹の方を見た。



「若様、お体に支障はありませんか?」

「うん。もう大丈夫。でも心の方は傷ついたなぁ。愛してる翔湊にあんなことされちゃったからね。」

「躾が必要なようですね。」



橘修がそう言うと翔湊に2人の視線が刺さった。怖い。見るな。橘修の腕の中から今すぐ駆けだして彌生のところに行きたい。けれどその行動は自分自身の首を絞めるだけでなく彌生まで巻き込んでしまう…。その事も2人は計算済みであったようだ。



「そうだね。まぁでもこうなって良かったかもね。彌生を人質にとれたから。」

「はい。そうですね。翔湊もこれで俺達から逃げられない。」



2人が翔湊に手を伸ばしてくる。翔湊は4本の手が自身の身体に近づいてくる恐怖からガタガタと震えていた。しかしそれを避けることは許されない。避けて逃げてしまえば彌生が死ぬよりも酷い目に遭ってしまう。仮に少しでも逃げる素振りをしてしまえば目の前にいる橘修と潤樹の部下達が容赦なく彌生に襲いかかるだろう。自分が耐えずこの恐怖から逃げ、そのせいで彌生が血だらけになってしまう姿を想像しただけで翔湊は耐えられなくなった。そしてそれと同時にその弱みにつけこんでくる潤樹らへの怒りも増した。
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