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「誠也。大丈夫か?」
渚さんが風呂から俺を連れ出して脱衣所まで連れてくるとしゃがみこんで俺にそう言ってくれた。俺は寒くないようにタオルで包まれてる。この人は二重人格かって疑うぐらい人が変わった。いやけど逆に言えば仲間思いなんだろうな…。
「大丈夫です…。」
「大丈夫じゃねぇだろ。その証拠にお前敬語使ってんじゃねぇか。俺には敬語使わなくなったのに。そんな余裕が無くなるぐらいのことをされたのかよ。何されたんだよ。」
「………………。」
渚さんは小声で言ってるから健二に聞こえることは無いだろう。まぁ聞こえたとて俺には関係ない。健二も健二で渚さんを切るなんてことはしないだろうから。だけど問題は渚さんを信頼してもいいのかってこと。この人が俺の言ったことを健二に告げ口するかもしれない。その可能性は低いけどゼロじゃない。
「言えねぇのかよ誠也。そんなことされたのか?」
「…いえ、ほんとに大丈夫です。」
「そんな顔真っ赤にして涙もたらして大丈夫?ふざけんなよ。俺はそんなに信用ねぇか?」
「…そんなんじゃ、」
ないけど…。裏切られるのが怖いってのがある。こうやって人を信頼していくと誰かには裏切られる。俺はそれが嫌なんだ。
「分かった。お前が嫌なら言わなくていい。とりあえずお前を助けることが出来たみたいだし。良かった。」
「…渚さんは星秀さんがそんなに大切なんですか?」
「ん?なんだ急に。」
「渚さんが俺に優しくしてくれる理由は星秀さんってこと…分かってます。だって初めて会った時渚さん自身も言ってたように俺の事どうでもいいって思ってたから。けど今は人が変わったように優しくしてくれる。助けてくれる…。」
「誠也。それはちょっと違う。勿論お前の言う通り星秀は大切だよ。あいつは俺が本音で話せる数少ない奴だから。大切なやつだ。けどそれはお前も同じだ誠也。俺はどうでもいいやつを守ったりしない。あの時レイプしちまったのもお前が気に入ったから。とんでもねぇ言い訳だよな。お前に怖い思いをさせておいて。けどもうそんなことさせない。それは星秀のためじゃない。お前のためだ誠也。」
…どうする俺。この人は信頼出来る?裏切られない?定めろ。早く定めて判断しねぇと。
「だからお前は無理しなくていい。無理して俺を信頼しようとしなくていい。」
「…え?」
「バレバレなんだよばーか。誠也、お前顔に出るの自分で気づいてねぇだろ。お前さっきから俺を定めるような目で見てる。敵か味方か判断してんだろ。」
「……ちが」
「否定しなくていい。そんな事するな誠也。それならそれでいいから。俺は告げ口したりそんなことしねぇからよ。」
俺は顔に出るほうじゃない。自分で分かってる。なのに渚さんがそれをわかったってことは渚さんが敏感なんだ。渚さんが鋭い…。人のちょっとした動きや動作に対して…。
「けど何度も言うがお前をここから逃がしてやることは出来ねぇ。ごめんな。それは本当にすまないと思ってる。俺に権力があれば組長からお前を盗んで俺と一緒に暮らさせてやれるけど。」
…ん?なんで渚さんと一緒に暮らす前提になってるんだ?まぁいいけど。
「そしたら俺はお前を自由にさせてやれる。好きなもんも買い与えてやるし好きなところにも連れて行ってやれる。まぁそれは夢の話だけどな。現実にはありえねぇ。」
「…そう…だな。」
俺がそう言うと何故か渚さんは俺の顔をじーっと見てきた。じーっと見てきて…。
「誠也。キスしてい?」
「…嫌って言ってもするくせに。」
「はは、正解。」
渚さんはそういうと俺の顔を掴んで唇にキスをしてきた。優しい優しいキスだ。暴力的じゃない。強引じゃない。渚さんとあってほんの少しなのに感情が少し変わるだけで恐怖心だったりそういうのが無くなる。不思議なもんだ…。
「可愛いやつ。抵抗しねぇの?」
渚さんが俺の頬をぺちぺちしながら笑ってそう言ってきた。もちろん小声でな。健二に聞こえちゃまずいから。
「…うるさい。てかさっさと身体拭かないと健二が来ちまう。」
「身体ほとんど乾いてんじゃねぇか。」
「か、乾いてない…。」
嘘だ…。乾いてるのは知ってる。そのために渚さんが俺の体にタオルを巻いてくれたのも…知ってる。けどそう言わねぇと渚さんをどんどん信用してしまいそうで怖い。渚さんはあんな風に言ってくれたけど俺は…。
「乾いてるって。お前が一番分かってんじゃねぇのそれは。なんだよ。そこまで俺とのキスは嫌か?」
「…………嫌だ。」
それも嘘。多分健二にあんなことされたあとだから余計に嫌じゃないんだと思う。安心できる。こうやってちょっとでも信用出来る人と時間を共にするのは…。でも一番信頼出来てキスされて嬉しいのは…バカだ俺、何考えてんだ…っ。
「嘘つけ。まぁそういう正直じゃないところも好きだけどな。誠也。もう1回。」
「も、もういやっ、早く髪も乾かさないと…!」
「うるせぇ。1回キスしたらやるからこっち向け。」
「もうっ、ぁ、ちょ…っ!」
今度は少し強引に渚さんがキスをしてきた。けど直ぐに俺を解放してくれた。
「あー可愛いなお前。ちょっとのキスじゃ物足りねぇけど時間ねぇなら髪乾かそうな。」
「…うん。」
俺は渚さんにそう返事をしてドライヤーを手に取る渚さんを見ていた。この人なんでヤクザになったんだろう…と。けど俺がそんなことを考えていると風呂場のドアが開いた…。
「おい渚。お前まだ誠也の髪乾かせてねぇのか。」
渚さんが風呂から俺を連れ出して脱衣所まで連れてくるとしゃがみこんで俺にそう言ってくれた。俺は寒くないようにタオルで包まれてる。この人は二重人格かって疑うぐらい人が変わった。いやけど逆に言えば仲間思いなんだろうな…。
「大丈夫です…。」
「大丈夫じゃねぇだろ。その証拠にお前敬語使ってんじゃねぇか。俺には敬語使わなくなったのに。そんな余裕が無くなるぐらいのことをされたのかよ。何されたんだよ。」
「………………。」
渚さんは小声で言ってるから健二に聞こえることは無いだろう。まぁ聞こえたとて俺には関係ない。健二も健二で渚さんを切るなんてことはしないだろうから。だけど問題は渚さんを信頼してもいいのかってこと。この人が俺の言ったことを健二に告げ口するかもしれない。その可能性は低いけどゼロじゃない。
「言えねぇのかよ誠也。そんなことされたのか?」
「…いえ、ほんとに大丈夫です。」
「そんな顔真っ赤にして涙もたらして大丈夫?ふざけんなよ。俺はそんなに信用ねぇか?」
「…そんなんじゃ、」
ないけど…。裏切られるのが怖いってのがある。こうやって人を信頼していくと誰かには裏切られる。俺はそれが嫌なんだ。
「分かった。お前が嫌なら言わなくていい。とりあえずお前を助けることが出来たみたいだし。良かった。」
「…渚さんは星秀さんがそんなに大切なんですか?」
「ん?なんだ急に。」
「渚さんが俺に優しくしてくれる理由は星秀さんってこと…分かってます。だって初めて会った時渚さん自身も言ってたように俺の事どうでもいいって思ってたから。けど今は人が変わったように優しくしてくれる。助けてくれる…。」
「誠也。それはちょっと違う。勿論お前の言う通り星秀は大切だよ。あいつは俺が本音で話せる数少ない奴だから。大切なやつだ。けどそれはお前も同じだ誠也。俺はどうでもいいやつを守ったりしない。あの時レイプしちまったのもお前が気に入ったから。とんでもねぇ言い訳だよな。お前に怖い思いをさせておいて。けどもうそんなことさせない。それは星秀のためじゃない。お前のためだ誠也。」
…どうする俺。この人は信頼出来る?裏切られない?定めろ。早く定めて判断しねぇと。
「だからお前は無理しなくていい。無理して俺を信頼しようとしなくていい。」
「…え?」
「バレバレなんだよばーか。誠也、お前顔に出るの自分で気づいてねぇだろ。お前さっきから俺を定めるような目で見てる。敵か味方か判断してんだろ。」
「……ちが」
「否定しなくていい。そんな事するな誠也。それならそれでいいから。俺は告げ口したりそんなことしねぇからよ。」
俺は顔に出るほうじゃない。自分で分かってる。なのに渚さんがそれをわかったってことは渚さんが敏感なんだ。渚さんが鋭い…。人のちょっとした動きや動作に対して…。
「けど何度も言うがお前をここから逃がしてやることは出来ねぇ。ごめんな。それは本当にすまないと思ってる。俺に権力があれば組長からお前を盗んで俺と一緒に暮らさせてやれるけど。」
…ん?なんで渚さんと一緒に暮らす前提になってるんだ?まぁいいけど。
「そしたら俺はお前を自由にさせてやれる。好きなもんも買い与えてやるし好きなところにも連れて行ってやれる。まぁそれは夢の話だけどな。現実にはありえねぇ。」
「…そう…だな。」
俺がそう言うと何故か渚さんは俺の顔をじーっと見てきた。じーっと見てきて…。
「誠也。キスしてい?」
「…嫌って言ってもするくせに。」
「はは、正解。」
渚さんはそういうと俺の顔を掴んで唇にキスをしてきた。優しい優しいキスだ。暴力的じゃない。強引じゃない。渚さんとあってほんの少しなのに感情が少し変わるだけで恐怖心だったりそういうのが無くなる。不思議なもんだ…。
「可愛いやつ。抵抗しねぇの?」
渚さんが俺の頬をぺちぺちしながら笑ってそう言ってきた。もちろん小声でな。健二に聞こえちゃまずいから。
「…うるさい。てかさっさと身体拭かないと健二が来ちまう。」
「身体ほとんど乾いてんじゃねぇか。」
「か、乾いてない…。」
嘘だ…。乾いてるのは知ってる。そのために渚さんが俺の体にタオルを巻いてくれたのも…知ってる。けどそう言わねぇと渚さんをどんどん信用してしまいそうで怖い。渚さんはあんな風に言ってくれたけど俺は…。
「乾いてるって。お前が一番分かってんじゃねぇのそれは。なんだよ。そこまで俺とのキスは嫌か?」
「…………嫌だ。」
それも嘘。多分健二にあんなことされたあとだから余計に嫌じゃないんだと思う。安心できる。こうやってちょっとでも信用出来る人と時間を共にするのは…。でも一番信頼出来てキスされて嬉しいのは…バカだ俺、何考えてんだ…っ。
「嘘つけ。まぁそういう正直じゃないところも好きだけどな。誠也。もう1回。」
「も、もういやっ、早く髪も乾かさないと…!」
「うるせぇ。1回キスしたらやるからこっち向け。」
「もうっ、ぁ、ちょ…っ!」
今度は少し強引に渚さんがキスをしてきた。けど直ぐに俺を解放してくれた。
「あー可愛いなお前。ちょっとのキスじゃ物足りねぇけど時間ねぇなら髪乾かそうな。」
「…うん。」
俺は渚さんにそう返事をしてドライヤーを手に取る渚さんを見ていた。この人なんでヤクザになったんだろう…と。けど俺がそんなことを考えていると風呂場のドアが開いた…。
「おい渚。お前まだ誠也の髪乾かせてねぇのか。」
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