怖いお兄さん達に誘拐されたお話

ちょっかい

｢したくねぇし…！！｣

｢つれねぇやつだな。頭は？したいですよね？｣



何がつれないだ！あん時のこと忘れてねぇからな…！馬鹿みたいに抱きやがって…っ。ぜってぇ游さんとはしねぇから…！



｢俺も遠慮しとくわ。こいつと夜楽しむ予定だし。｣

｢はぁ！？頭ばっかり狡いですよ！俺も誠也とやりたいです！｣

｢お前な。何でもかんでもストレートに言えばいいって話じゃねぇんだよ。分かるか？こいつは俺のもんって言ってんだろ馬鹿。俺としか出来ねぇんだよ。｣



何だこの空間…っ。左と右から意味のわかんねぇ言葉ばっかりが飛んでくる。何も俺とそんなする必要ねぇじゃん…。2人ともこの顔だし寄ってくる女すげぇいるだろうによ。



｢頭は正直言って狡いです。｣

｢狡くねぇわ。そう言うなら游も見つけりゃいいじゃねぇかよ。俺はこいつと昔に約束してっから。それを守ってるだけだ。｣

｢いやいや頭。冗談きついですって。誠也見たあとで他のやつ見たらゲロ吐きます。｣



なんて失礼なんだ游さんは…。ゲロって…。そこまで言う必要はねぇだろ…。



｢…お前なぁ。あのキャバ嬢のことか。｣

｢そうですよ。何とかしてください頭。困ってるんですって。仕事で外に出ただけなのにあの女、いつも俺の事探してよ。気持ち悪い。近寄んなって話ですよ。｣

｢そう言ってやるな游。あいつはお前に恋してんだよ。可愛いじゃねぇか。なぁ誠也。酷いよなこいつ。｣

｢うん。游さんは酷い。｣

｢おら誠也！てめぇまでそんなこと言うな！抱き潰すぞごら！｣

｢游。んな事してみろ。仕事量5倍だからな。｣



慎都さんの前だと俺は強くなる気がする。游さんも下手に俺に手を出せない。慎都さんと一緒にいれば俺は最強だな。



｢…うっ、それは勘弁っすね頭。｣

｢なら誠也には手を出すなよ。絶対に。｣

｢出しませんよ。多分ですけどね。｣



多分…。そう言われて俺は游さんのことをちらっと見た。そしたら游さん俺の事を見て悪い顔をしてきたんだ。これ絶対なんかされる…っ。慎都さんから離れないようにしよう…。



｢たく…。誠也、こいつ危険だからあんま近寄んなよ。俺も変な部下持って手を焼いてんだよ。｣

｢分かった。慎都さんから離れない。｣

｢分かったじゃねぇし馬鹿野郎！｣



游さんは突っ込むスピードがとんでもなく早い。だから俺は面白くて思わず笑っちまった。



｢誠也はよく笑うよな。｣

｢…え？｣



游さんにそう言われて俺は固まった。この前慎都さんにもそう言われたけど俺はこんなに笑うようなやつじゃなかった。でもここに来てからはよく笑うようになった。笑わせてくれる環境があるから。幸せなんだよ俺は今。すっごくな。



｢なぁ游さん。｣

｢んー？なんだよ誠也。俺に抱いて欲しくなったか？｣

｢違ぇし！｣

｢なんだ。つまんねぇな。｣

｢そ、そうじゃなくて！游さんはなんでそんなにキャバ嬢の人が嫌なんだ？｣

｢嫌に決まってんだろ。俺は好意持たれんのが気色悪ぃんだよ。｣



え？好意を持たれるのが嫌い？それなら矛盾してる。だって游さんは…。



｢でも…游さんは俺とは普通に話してくれるじゃねぇか。｣

｢は？｣

｢え？｣



俺なんか変なこと言ったか？いや言ってねぇだろ。何なんだその反応は。游さんも慎都さんも俺の事を変なやつみたいな目で見てくる。な、なんなんだよ一体！



｢な、なんだよ2人とも。｣

｢誠也！お前俺の事好きなのか！！可愛いやつだな！頭から俺に乗り換えろよ！｣



はぁ！？何言ってんだこの人！游さんついに頭おかしくなったのか！？



｢おら游！下がれ！つか誠也もだ！何俺の前で堂々と浮気してんだよ！｣

｢は！？う、浮気！？何言ってんだ慎都さん！変な事言うなよ！｣

｢お前だろそれは！さっきのお前の発言は游の事が好きって言ってるようなもんじゃねぇか！！流石に許さねぇぞ！｣

｢し、慎都さんっ！何勘違いしてんだよ！恋愛感情じゃなくてただ俺は游さんのことを好きなだけだ！｣

｢………………。｣



俺がそう言うとまた場が静まり返った。わかんねぇ！俺は変なことを言ってるのか！？俺がおかしいのか！？さっきから游さんはニヤニヤしてるし、慎都さんはまじで怒ってる！意味分かんねぇし！



｢ふざけんな誠也！！それでも駄目だ！俺はまだお前に好きとか言われてねぇし！｣

｢はぁ！？大人げねぇ！なんだよそれ！｣



俺は思わず慎都さんにそう言っちまった。だってこの人欲しがりすぎだろ！もちろん俺は慎都さんのことも好きだ！けどそれを一々普通言わねぇだろ！んな恥ずかしいことを！



｢大人げねぇだと…？おい游。誠也を抑えろ。いや羽交い締めにしろ。｣

｢承知しました頭。｣

｢な、離せっ！！｣

｢お前が俺の事好きって言うなら離してやる。それまでは離さねぇよ。游は俺の指示に従うからな。｣

｢そうだぞ誠也。早く言った方が身のためだ。｣



な、なんでこうなるんだよ…！！意味分かんねぇし！俺は何も悪いことしてねぇのに！



｢早く言え誠也。言わねぇなら…そうだな。言わせるまでだ。｣