怖いお兄さん達に誘拐されたお話

ごめんな

｢いや、お前が謝るのは違う。｣

｢…でも、俺が浅はかだったから…ごめんなさい…。｣

｢ああ。それはそうだ。けどやりすぎた。すまない誠也。俺はお前の事になるとどうしても冷静さを失ってしまう。｣



そんな事ない。慎都さんは冷静さを保とうとしてくれてるのを俺はいつも分かってた。なのにその慎都さんを俺が爆発させてしまった。いや爆発させるほどのことをしてしまったんだ。



｢…ううん、ごめんね。｣

｢俺の方こそごめんな。誠也、身体大丈夫か？｣

｢うん、大丈夫だよ。｣



正直に言ったら痛い。噛まれたところも痣が出来たところもいっぱいあるから。けど慎都さんのこの優しさが痛みを消し去ってくれるから大丈夫なんだ。あと…安心した。



｢なら良かった。游のおかげだ。｣

｢そうだね。｣

｢誠也は俺がいない間、游になんて言われたんだ？｣

｢俺が何とかしてやるからって。だから慎都さんの事も心配しなくていいって言ってくれて俺の事お風呂に入れてくれた。｣

｢そうか。後で俺もあいつに礼を言わなきゃなんねぇな。｣



そう言いながら慎都さんは俺の頭を抱きしめたまま撫でてくれた。あったかい…。俺はバカだからまた同じ事するかもしれない。そうならないように一回立ち止まってちゃんと考えないとな。大切な人と決別したくないから。



｢うん……あ、あのさ慎都さん。｣



俺はある事が気がかりだった。慎都さんとはこうして仲直り出来たけど…銀時さんは…？銀時さんは大丈夫だろうか。銀時さんとも俺は仲直り…したい。



｢ん？どうした？｣

｢銀時さん、どうしてる…？｣



俺は慎都さんの様子を伺いながらそう聞いてみた。銀時さんは今、渚さんのところにいるはずだ。慎都さんも渚さんに聞きたいことがあるって言ってあそこに行った。しかもさっき慎都さんは銀時さんが尻拭いしてくれてるって言ったんだ。だから何があったのかは何となく想像できる。この人たちはヤクザだから。けど…だからこそ銀時さん大丈夫かなって俺は思ったんだ。



｢あいつは俺より冷静だ。大丈夫。大丈夫だよ誠也。心配すんな…多分な。｣

｢…多分。｣



全然安心出来ないけど…まぁ大丈夫だろう。慎都さんがそう言うってことは。



｢ああ。多分。けどまぁ大丈夫だ。游が銀時のところに行ってくれただろうから。｣

｢そっか。それなら安心だね。｣

｢ああ。｣



游さんが行ってくれることの安心感はすごい。游さんってほんと凄いな。一見ふざけてるように見えるけど実は大真面目だ。そんな事を俺が思っていると慎都さんが俺の首を触ってきた。



｢痛ぇよなこれ。誠也、ごめんな。｣

｢大丈夫だよ。｣

｢大丈夫じゃねぇだろ。理性を失うと俺は何するか分かんねぇ。｣

｢大丈夫だって。｣



痛くないって言ったら嘘になるけどその痛みがどうでも良くなるぐらい俺は今安心してるんだ。だから全然大丈夫。なのに慎都さんが暗い顔をしてて…。



｢…なぁ誠也。｣

｢なに？｣

｢お前はなんであいつに会いに行こうとしたんだ？聞かせて欲しい。お前の気持ちを。｣