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おかえり
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「頭、お疲れ様です。早かったですね。」
「ああ。」
慎都さんが帰ってきた。けど…慎都さんは変わらず低い声だった。まだ怒ってるんだ…。
「あれ?頭、銀時はいないんですか?」
「あいつは俺の尻拭いをやってくれてる。」
「そうですか。」
「ああ。それで誠也は寝てんのか?」
「はい。寝てますよ。」
「今すぐ起こせ。続きをする。」
やっぱり続きをするつもりだったんだ…。逃げた……だめだ。動いちゃだめ。游さんと約束したじゃないか。いいって言うまで俺は動いちゃだめ。
「いいえ、それは出来ません。」
「は?お前は俺に歯向かうのか?」
「そうですね。」
「あんま調子乗ってんじゃねぇぞお前。」
「調子に乗ってなんかいませんよ。」
慎都さんの聞いたことないぐらい低い声だ…。なのに游さんは怯まない。多分それは慎都さんも本気で怒ってないからだ。慎都さんが本気で怒ってるなら游さんから俺を取り上げるはず。けどそれをしないってことは…。
「游。それなら今すぐ誠也を渡せ。」
「嫌です。」
「何でだよ。」
「頭が後悔するからに決まってるじゃないですか。俺は頭のために生きてるんです。だから頭が後悔する展開にはさせませんよ。絶対に。」
「…は?」
後悔する…?慎都さんが…?游さんは何を…。
「俺は頭が俺たち部下以外に優しくしてんのを初めて見たんですよ。誠也が初めてです。だから俺は誠也を救うんです。まぁ俺自身も誠也を気に入ってるって言う理由の方が大きいですけどね。」
「游、お前は何が言いたい。」
「頭は誠也のこの身体中の傷を見ても何も思わないんですか?」
「それは誠也が悪い。こいつが全部な。これぐらいじゃ足りねぇよ。」
「頭、本心ですかそれは。」
「ああ。誠也が自ら死にに行くような真似をするから。」
死にに…?違う。俺は死にに行こうとしたんじゃない。誤解だ。誤解だって言いたい。けど俺がここで出しゃばったら全部が無駄になる。せっかく游さんが色々してくれてるんだ。我慢しろ俺。
「そうですね。それは頭の言う通りです。あのまま誠也が藤本渚のところに行っていたら俺たちは誠也に会えなかったでしょうから。会えたとしてもその時の誠也は死体でしょうね。」
「そうだ。だから俺は…」
「でもやりすぎです。頭が今してるのは藤本渚達と同じ事ですよ。俺達は誠也をそれから救うために近藤治から救ったんじゃないですか。」
「…………。」
あれ…。慎都さんが黙った。どんな顔を…してるんだろ…。慎都さんのところに行きたい。けど我慢…我慢しなきゃ。
「誠也が幸せなら近藤治のところに置いておいてもいい。あいつの幸せが1番だからって頭言ってましたよね?けど違った。近藤治はこいつのことを玩具としか見ていない。だから誠也を救ったのに頭が同じことしてどうすんですか。」
「…游、俺は」
「言い訳は聞きたくありません。頭、もう一度言います。誠也のこの体を見ても何も思いませんか?身体中痣だらけた。この穴だって腫れてます。俺は頭に誠也を守って欲しい。それが誠也の望みだから。だからどうか頭を冷やしてください。頼みます。」
「…游、誠也と二人で話しをしたい。」
「無理です。俺もいる状態で話してください。今の頭は信用出来ません。」
あんな風には絶対にしないからと言ってくれた游さんの言葉が頭によぎった。だけどもう…大丈夫な気がする。今の慎都さんの声…俺が知ってる声だったから。
「もう落ち着いた。だから誠也と話をさせてくれ。」
「でしたら誠也が起きたらしましょうか。」
「狸寝入りじゃねぇかそいつ。頼むから。」
バレてた…。でもそんな事どうでもいい。だめ…ごめん游さん。もう我慢出来ない。だから俺は涙目のまま立ち上がって慎都さんに抱きついた。
「あ!おい誠也!俺との約束…たく、仕方ねぇやつ。」
ちゃんと後で游さんに謝る。謝るから俺のわがままを許して…。
「…誠也。」
「慎都さん…っ、慎都さんごめんなさい…っ!」
「ああ。」
慎都さんが帰ってきた。けど…慎都さんは変わらず低い声だった。まだ怒ってるんだ…。
「あれ?頭、銀時はいないんですか?」
「あいつは俺の尻拭いをやってくれてる。」
「そうですか。」
「ああ。それで誠也は寝てんのか?」
「はい。寝てますよ。」
「今すぐ起こせ。続きをする。」
やっぱり続きをするつもりだったんだ…。逃げた……だめだ。動いちゃだめ。游さんと約束したじゃないか。いいって言うまで俺は動いちゃだめ。
「いいえ、それは出来ません。」
「は?お前は俺に歯向かうのか?」
「そうですね。」
「あんま調子乗ってんじゃねぇぞお前。」
「調子に乗ってなんかいませんよ。」
慎都さんの聞いたことないぐらい低い声だ…。なのに游さんは怯まない。多分それは慎都さんも本気で怒ってないからだ。慎都さんが本気で怒ってるなら游さんから俺を取り上げるはず。けどそれをしないってことは…。
「游。それなら今すぐ誠也を渡せ。」
「嫌です。」
「何でだよ。」
「頭が後悔するからに決まってるじゃないですか。俺は頭のために生きてるんです。だから頭が後悔する展開にはさせませんよ。絶対に。」
「…は?」
後悔する…?慎都さんが…?游さんは何を…。
「俺は頭が俺たち部下以外に優しくしてんのを初めて見たんですよ。誠也が初めてです。だから俺は誠也を救うんです。まぁ俺自身も誠也を気に入ってるって言う理由の方が大きいですけどね。」
「游、お前は何が言いたい。」
「頭は誠也のこの身体中の傷を見ても何も思わないんですか?」
「それは誠也が悪い。こいつが全部な。これぐらいじゃ足りねぇよ。」
「頭、本心ですかそれは。」
「ああ。誠也が自ら死にに行くような真似をするから。」
死にに…?違う。俺は死にに行こうとしたんじゃない。誤解だ。誤解だって言いたい。けど俺がここで出しゃばったら全部が無駄になる。せっかく游さんが色々してくれてるんだ。我慢しろ俺。
「そうですね。それは頭の言う通りです。あのまま誠也が藤本渚のところに行っていたら俺たちは誠也に会えなかったでしょうから。会えたとしてもその時の誠也は死体でしょうね。」
「そうだ。だから俺は…」
「でもやりすぎです。頭が今してるのは藤本渚達と同じ事ですよ。俺達は誠也をそれから救うために近藤治から救ったんじゃないですか。」
「…………。」
あれ…。慎都さんが黙った。どんな顔を…してるんだろ…。慎都さんのところに行きたい。けど我慢…我慢しなきゃ。
「誠也が幸せなら近藤治のところに置いておいてもいい。あいつの幸せが1番だからって頭言ってましたよね?けど違った。近藤治はこいつのことを玩具としか見ていない。だから誠也を救ったのに頭が同じことしてどうすんですか。」
「…游、俺は」
「言い訳は聞きたくありません。頭、もう一度言います。誠也のこの体を見ても何も思いませんか?身体中痣だらけた。この穴だって腫れてます。俺は頭に誠也を守って欲しい。それが誠也の望みだから。だからどうか頭を冷やしてください。頼みます。」
「…游、誠也と二人で話しをしたい。」
「無理です。俺もいる状態で話してください。今の頭は信用出来ません。」
あんな風には絶対にしないからと言ってくれた游さんの言葉が頭によぎった。だけどもう…大丈夫な気がする。今の慎都さんの声…俺が知ってる声だったから。
「もう落ち着いた。だから誠也と話をさせてくれ。」
「でしたら誠也が起きたらしましょうか。」
「狸寝入りじゃねぇかそいつ。頼むから。」
バレてた…。でもそんな事どうでもいい。だめ…ごめん游さん。もう我慢出来ない。だから俺は涙目のまま立ち上がって慎都さんに抱きついた。
「あ!おい誠也!俺との約束…たく、仕方ねぇやつ。」
ちゃんと後で游さんに謝る。謝るから俺のわがままを許して…。
「…誠也。」
「慎都さん…っ、慎都さんごめんなさい…っ!」
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