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40 賢者タイムの圧倒的性能

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「……で、ウェリナ。さっきの話の続きなんだが」
 乱れた着衣を整えつつ振り返ると、いまだ余韻に浸っていたらしいウェリナは、あからさまに「は?」と言いたげな顔をする。いや、まぁ、言いたいことはわかる。よーくわかるぜウェリナ。確かに、賢者タイムにいきなり先の話を蒸し返されても困るよな。そうでなくともピロートークにしちゃ色気のない話題だ。が、辛うじて理性を取り戻した今のタイミングでなきゃ切り出せない話だし、そもそも俺は、コイツとアブノーマルプレイを楽しみに来たわけじゃねぇんだ。
 ややあってウェリナは、渋々、という顔で吐き捨てる。
「だから言っただろう。自作自演のはずがない」
「あ、うん……そこはわかってるよ。確かに、お前は犯人じゃない……そうじゃなくてだな、要はイザベラちゃんの件な。やっぱ、俺にも手紙を書かせてくれよ。それが無理なら、せめて気に病むほどの状況じゃないってことぐらいは伝えてくれ」
 するとウェリナは、仏頂面で着衣を整えながらしばし考え込む。やがてのろりと顔を上げると、「駄目だ」と小さく被りを振った。エメラルドの双眸からは熱情が早くも失せ、代わりに情報士官の冷徹な光が宿っている。
「くっそー、ケチ」
 ぽこんとウェリナの脛を蹴る。賢者タイムで頭がバカになってるタイミングなら何とかなると思ったんだがなぁ。
「悪いが、理解してくれ。……ここだけの話だが、今まさに調査が山場を迎えている。あと少しで首謀者の尻尾を掴めるところまで来ているんだ」
 おっ、やっぱバカになってたみたいだな多少は。あの歩く機密事項みたいな男が自分から口を割るなんて。賢者タイム恐るべし。
「もう少しで捕まりそうってか? だったら余計に――」
「いや。えてして狩りというやつは、獲物を追い詰めた瞬間こそが最も危険なんだ。退路を断たれた獲物が、活路を見出すべく狩人に反撃をかける。だからこそ俺たちは、そうした場面でこそ用心を重ねる。……わかるだろう、アル。今が一番危険な状況なんだよ。とくに王宮はな」
「王宮は? じゃあ、首謀者はやっぱ王宮の人間なのか?」
 するとウェリナは、一瞬、しまった、という顔をする。おっ、これはなかなかレア度の高い顔。どうやら明かすつもりのなかった情報をうっかりゲロってしまったらしい。いやぁ改めて賢者タイム恐るべし。
 やがてウェリナは、はぁ、と深い溜息をつくと、若草色の髪をわしわしと掻き、明かす。
「……カサンドラ妃が、怪しいと睨んでいる」

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