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2章
48話 きずな
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協会内の混乱は、夜になっても収まる気配を見せなかった。
今朝までそこにいたはずの人間が今はいない。部屋に戻ったあと、端末に届けられた高階の情報によると、瑠香の他に八名のギフテッドが偽造IDで施設を脱走したそうだ。そのほとんどが、二十、三十代の若いギフテッドだったことが、漣の気持ちをさらに暗くした。
ここに希望はない。
社会とギフテッドとを切り離すやり方に未来はない。
そんな声なき声を、否応なしに突き付けられている気がした。
手のひらには、瑠香が作ったとされる髪飾り。所長室を出たあと、改めて三原に話を聞きに行った漣は、玄関先で門前払いを喰らう代わりにこれを三原に押しつけられた。偽造IDでエントランスを出て行こうとする瑠香を引き留めたさい、置き土産として渡されたものだそうだ。ただ……なぜか三原は、それを手元に置く気にはどうしてもなれなかったそうだ。
――もう、あたしが好きだった瑠香は、どこにもいないんだ。
事実それは、これまで触れた瑠香のそれとは全く異質な作品だった。手に馴染むようで馴染まない、絶妙に不快な曲線。だが、何より目立つのは、それまでの瑠香の作品には見られなかったモチーフだ。一見、散り際の花びらにも見えるそれは、よく見ると女性器を模している。ただ、その姿はひどく糜爛し、満たされない欲望と、それゆえの絶望とを鑑賞者に伝えてくる。
あの時……抱いていればよかったんだろうか。
瑠香がここを訪れた夜、この同じソファで抱き寄せた瑠香の柔らかな肩を思い出す。本当は壊れるほど強く抱きしめたくて、欲望のままに組み敷きたくて――でも、本能に身を委ねれば最後、この脆く繊細な生き物を壊してしまう気がして、慌てて彼女から距離を取った。そうでなくとも自分は遠からず死んでしまう。だから。
でも今、この行き場のない欲望を秘めた彼女の作品に触れていると、それが間違いだったことを嫌でも思い知らされる。あの夜、漣に縋った瑠香の感情が恋だったのか欲望だったのかはわからない。ただ、それが欲にせよ恋にせよ、あそこで彼女を繋ぎ止めていれば、今とは違う結末もあったのかもしれない。
こんな禍々しいものを、彼女の手に彫らせることもなかったのかもしれない。
インターホンの音が、ふと漣を我に返す。髪飾りをローテーブルに置き、廊下の明かりにふらふらと吸い寄せられながら、今更のように明かりの灯らないリビングの暗さに気づき、スイッチを入れる。そのすぐ隣に設置されたインターホン用のモニターを覗き込むと、小さなディスプレイに見慣れた顔が映り込んでいる。
そのまま玄関まで進み、ドアを開くと、廊下に立っていたのはトレーナー姿の嶋野だった。すっかりスーツ姿に見慣れた漣の目には、新鮮、というよりひどく無防備に見える。
ただ、今の漣はそんな嶋野の姿より、その手が抱えるトレーの方が気になった。成人男性の肩幅ほどはある広めのトレーには二つのプレート。その一方にはこぢんまりと、そして、もう一方にはなぜか山のようにサンドイッチだけが盛られている。
「あ……どうしました」
「え、ええ。その……食事を、一緒に摂りたいなと思いまして」
「……食事」
そういえば、夜食がまだだったことを漣は思い出し、にもかかわらず全く空腹を覚えないことに驚く。昼間はカロリーメイト一箱で凌がされ、本当は、胃袋が圧壊しそうなぐらい腹が減っているはずなのに。
「あ、いや俺は、今夜は……」
「まあまあ。何にせよ僕のトレーニングには付き合ってもらいます」
言いながら嶋野は、ずかずかと漣の部屋に押し入ってくる。部屋は、朝ここを出発した時のままなので幸い片付いているが、こんな精神状態ではすぐに酷いことになるだろう。それほどに今は、何に手をつける気にもなれなかった。
そんな、今はまだこざっぱりとした部屋で、嶋野はさっそくダイニングにトレーを置くと、いつぞやの夜のように慣れた手つきで棚からインスタントコーヒーを取り出し、二人分のコーヒーを作る。
「あの、トレーニングって」
カウンター越しに嶋野の作業を見守りながら問えば、嶋野は「ええ」と、少し寂しそうな目をする。
「お察しのとおり、僕は、普通の人間のようにゆっくりと食事を摂ることができません。そもそも……食事に味を感じたこともない。しかし、何も食べないままでは死んでしまいますから、ただの栄養の塊と割り切って胃袋に押し込んでいるんです」
そういえば昼間も嶋野は言っていた。そもそも食事を楽しむ習慣がない、と。
コーヒーが仕上がり、ダイニングテーブルに向き合うように腰を下ろす。当然のように漣の前には大盛りのサンドイッチが置かれたが、やはり食欲は湧かず、とりあえず一切れ摘まんで小さく齧る。一方の嶋野もまず一切れを取り上げると、それを、まずは小さく齧る。が、すぐにごくんと呑み込んでしまい、「ああ駄目だな」などと呟いている。
「そうだ、うん、まずは咀嚼しなきゃ」
それからまた嶋野はサンドイッチを一口齧ると、顔を強張らせながら、もぐ、もぐ、とゆっくり咀嚼する。そうして三十秒ほどたっぷり噛んだあとで、コーヒーでさっと流し込んだ。こんなにも料理を不味そうに、いや、苦しそうに食べる人間は病院でも見たことがない。
「あの……ひょっとして嶋野さん、元自衛官の人とかですか」
「自衛官?」
「え、ええ。自衛官の人ってめちゃくちゃ早く食うじゃないですか。食わされる、というか……うちの病院にも、退官後もその習慣が抜けなくて糖尿になっちゃったおじいちゃんが通院してて……えーと、違いますかね」
「ああ……自衛官、ではないですね」
苦笑すると、嶋野は気まずそうに目を伏せ、ぽつ、と答える。
「施設の出なんですよ、僕」
「えっ」
「今はどうだかわかりませんが、僕がいた当時は出された食事はすぐに食べないと、他の子に盗られるか、食事の途中でも保護司の人に下げられてしまって……で、結局、こういう食べ方が染みついてしまったんですよね。それが今でも抜けないというか、まぁ、その、見苦しいことはわかっているんですけど……」
「そう、だったんすか」
ということは、最初から家族がいなかったか、いても途中で育児放棄されるなりした、ということか。だとすると……父も母もいて経済的にも裕福な暮らしを許された漣には、想像もつかない苦労があったことは間違いない。
「ひょっとして……嶋野さんが〝支配〟のギフトを手に入れたのも、そのせい……ですか」
「えっ? ……ああ、どうなんでしょうね。ただ、言われてみれば、あの頃は奪うか奪われるかの日々で……ええ、見ての通り、僕は同性の中でも体格面では不利な部類なので、腕力で勝てない代わりにそういう力を求めた、という部分は確かにあります。まぁ……絵を描き始めたのは、単に、それぐらいしか楽しみがなかったからですけど……」
「……で、渡良瀬と出会って、協会に入った」
「ええ。あの頃、僕は地元の中学で美術部に属していまして、そこで描いた絵が何かの賞を貰ったんですよね。何の賞だったかな……まぁ、とにかく、それを目にした渡良瀬さんが、僕を施設に引き取りに来て……その後、彼は僕を実の息子のように育ててくれました。あるいは弟のように……なので、あの人のことは今も、心のどこかで家族のように思っているんです。君にしてみれば、ただ社会に混乱をもたらすだけの敵なんでしょうけど」
そしてまた嶋野はサンドイッチを一口齧り、時間をかけて咀嚼する。その目は何かを詫びるようで、でも、そんな嶋野を責めることは誰にもできないのだと漣は思う。嶋野が渡良瀬を家族のように慕うことと、渡良瀬の野望を止めようと足掻くことは何一つ矛盾していない。
誰しも、何かしらの矛盾を抱えて生きているのだ。漣も、嶋野も、そして恐らくは、渡良瀬も。
しんと音のない部屋に響く、さく、さく、と小さな咀嚼音。嶋野が、サンドイッチのレタスかキュウリを噛み締める音だろう。
「どうして、俺に〝支配〟のギフトを使ったんですか」
すると、不意に咀嚼の音が止んで、代わりに、ごく、と嚥下の音がする。
「実は、そのことで話をしに来ました」
やはり、と漣は身構える。食事に付き合えというのは、あくまでも口実だったのだ。そして……これから彼が打ち明けようとする事実に、漣は、すでに目星がついている。
「……渡良瀬を信じるなって命令は、本命じゃなかったんすよね」
「ええ。本来は……あなたに、もう二度と絵を描くな、と命じるつもりでした。一応、用意はしていたんです。首輪の代わりに、僕なりの安全策を……」
嶋野の首に嵌められた二人分のチョーカー。それを目にした時から、薄々わかってはいた。漣の命を奪うことなく、かつ、万一の際に漣のギフトを封じようと思うなら、当然、そういった方法を取ることになる。……少なくとも、漣が嶋野と同じギフトを保持していたなら、やはり、そうしていた。
「もっとも……早々に渡良瀬さんに攻略されてしまいましたが。やはり、ギフトであの人を出し抜くのは難しいですね。〝支配〟の方は、あの人にも伏せていたんですけど」
つまり、両陣営に本当の力を隠していた、ということか。つくづく食えない人だ。なのに妙なところで無防備で、そういうところも、ずるい、と漣は思う。
「要するに……俺からギフトを奪ってでも、俺を生かそうとした……?」
嶋野は、今度は何も答えなかった。ただ、ぎこちない笑みを浮かべたまま、手元のサンドイッチをぼんやりと見下ろしている。
「……すみません」
やがて嶋野は、ぽつ、と呟く。心なしか、その声はかすかに震えていた。
「君が、どれだけ重い選択の果てに描き続けることを選んだのか、もちろん、よくわかっています。その上で……君に、あれ以上、傷ついてほしくなかった。渡良瀬さんに拉致されて、そこで無理やり絵を描かされて……その絵を、もし、大量殺戮に利用されたなら、今度こそ君は、取り返しのつかない傷を負ってしまう。……だから……わかっています。僕は、とんでもなく勝手なことを言っている。君に、罪を背負いながらでも描き続けろと言ったのは僕だ。リスクの高いキュレーターの仕事を勧めたのも……なのに、今更、こんな……」
いつもの饒舌さが嘘のような、喘ぎ喘ぎようやく紡がれる言葉。それでも漣の胸には、今の言葉こそがこれまでのどの嶋野の言葉よりも強く響いた。あの夜かけられた励ましの言葉よりも、なお。
「その上で……図々しい話ですが、改めて、君にお願いしたいことがあるんです」
「お願い? 命令……じゃないんですか」
「はい。……というより、もはや命令に意味はありません。仮に命令を下したところで、どのみち渡良瀬さんにはキャンセルされてしまう。ならば……そんな搦め手ではなく、正攻法でいくしかない」
大きく深呼吸すると、嶋野はまっすぐに漣を見る。
「お願いします。どうか……腕の機能を潰す手術を受けてください。内部に協力者の存在が明らかになった以上、中に籠っていても安全とは言い難い。あの人から君のギフトを遠ざけるには、もはやギフトそのものを消し去るしか方法がないんです」
「……腕の」
それはつまり、アートそのものを手放せ、ということ。
「ええ……わかっています。それを避けるために、君は、全てを捨ててギフテッドとして生きることを選んだ。そんな君に、今更、虫が良すぎるのはわかっているんです。それでも……」
そして嶋野は、テーブルに手をつき、改めて「お願いします」と頭を下げる。確かに……あまりにも身勝手な願いだ。ならば最初から、ギフテッドとしての生き方など示さなければよかったのだ。ただ腕を潰すだけで終わっていれば、仮に医者の道は断たれても、家族と一緒に新しい道を模索できたかもしれない。少なくとも……今のように全てを失うこともなかった。家族も、それまでの人生も。
そう、本当は怒るべきなのだ。その理不尽に――でも。
「それは……できません。その代わり、もし俺が渡良瀬に拉致られた時は、今度こそちゃんと俺の首を吹っ飛ばしてください」
「い、いや、だからそれは!」
跳ねるように、嶋野は席を立つ。なぜ怒らないのかと漣の反応に困惑しているのだろうか。……いや、と漣は思う。きっとこの人は、傷ついてくれているのだ。命懸けで守った漣にこんなことを言われて、ショックを受けてくれている。
それでも、漣の答えは決まっている。最初から――嶋野のギフトの件に触れた時から。
「絆なんです。このギフトは、嶋野さんと俺とを繋ぐ」
「……え?」
「最初は、どうしてこんなギフトを授けられたんだと運命を恨みました。でも、次第にこうも考えるようになったんです。このギフトがあったから、俺は、嶋野さんに出会えた」
立ち上がり、嶋野に歩み寄る。普段の余裕に満ちた表情が嘘のような、蒼褪め、強張った顔を見下ろしながら、また一つ見つけた、と漣は思う。次に嶋野の肖像を描くことがあれば、今度はこの表情をメインに描いてみよう。たくさんの矛盾を抱えたこの人の、美しい多面体のその一面。
「失ったら、俺はもうギフテッドじゃなくなる。確かに……ギフテッドでなくとも引き続き協会で働くことはできるのかもしれません、一般職員として……でも、それは嫌なんです。俺は、あくまでもギフテッドとして、あなたのそばにいたい」
ずっと、自分がどこにいるかもわからなかった。
鏡に映る自分の姿を、まるで見知らぬ他人のように眺めた日々。何食わぬ顔で大病院の跡取り息子を演じながら、違う、こんなのは俺じゃないと叫び続けた。
そんな寄る辺ない日々を終わらせたのが嶋野だった。あの日、漣の人生にこの人が飛び込んできて、そして全てが変わった。自分の本当の姿も、立つ場所も、息を吸って吐いて鼓動して当たり前に生きていることすら、この人と出会って、ようやく漣は知った。
「僕も、嫌だ」
ジャケットの袖を摘まんで引かれ、肩にそっと額を乗せられる。その、かすかな重みと布地越しに伝わる熱に、改めて漣は、失いたくない、と思う。
だから抱き寄せ、強く、強く抱きしめた。
「僕も、ギフテッド……いや、アーティストとしての君と共にいたい。たくさんの矛盾を抱えながら、傷つきながら生きる君と……はは、言葉にすると、本当に悪趣味ですね」
「確かに……めちゃくちゃ悪趣味っすね」
お互いに。そもそも、矛盾を抱えながら傷つき生きるのは嶋野とてそうなのだ。そして、そんな嶋野に漣は惹かれた。どうしようもないほどに――
そんな漣の感慨を不意に断ち切る、端末の呼び出し音。慌てて嶋野から離れ、ジャケットの懐から端末を取り出すも、特に着信はない――かと思えば嶋野が自分の端末を耳に当てている。どうやら着信があったのは嶋野の端末の方らしい。
「はい……えっ、ま、待ってください。――漣くん、テレビをつけてください。今すぐに」
「えっ、は、はい」
慌ててローテーブルからリモコンを取り上げ、テレビをつける。と、それはすぐ目に入ってきた。大規模災害の中継などでよく見かける『緊急速報』と記されたL字の帯。その帯に囲まれた画面には、漣にも見覚えのあるきらびやかな夜の街が中継で映し出されている。場所は、渋谷のスクランブル交差点前だろうか。実際、背景にはマルキューやツタヤビルなど、見覚えのあるビルがいくつも映り込んでいる。ただ、明らかに様子がおかしい。人で溢れているのはいつものことだし、そんな街だから多少のトラブルも日常茶飯事ではあるだろう。……が、カメラに映る限りの群衆が互いに殴り合い、掴み合う恐慌状態はどう考えても異常だ。
やがて、群衆の一人がレポーターに食ってかかり、カメラの方も程なく暗転してしまう。すぐに映像はスタジオに切り替わるも、不穏な空気はなおも画面を支配している。スタジオでは四人のアナウンサーだかコメンテーターだかが横長のテーブルに並んでいるが、今の光景に絶句しているのか、すぐにはこの件に言及する様子を見せなかった。
やがて、司会役と思しき年嵩の男性レポーターが辛うじて口を開く。
『えー、途中、映像が乱れまして申し訳ありません。今回の渋谷での暴動を受け、JRを始めとする鉄道各社は一部路線の運休、または、一部区間での折り返し運転を開始しており――』
「渡良瀬さんだ」
「えっ」
振り返ると、端末を耳に押し当てたまま嶋野がじっとテレビを凝視している。
「……どういう意味です」
「見てください」
言いながら嶋野は、テレビ画面の一部を指さす。示す先はツタヤビルのオーロラビジョン。そこに、明らかにあんな場所に映ってはならないものが映し出されている。画面いっぱいにうねる炎を思わせる曲線。そのところどころに、木星の大赤斑を思わせる目が浮かんで見える。それは、あたかも衆生を睥睨する仁王像の目のようだ。……いや、モチーフはこの際、問題ではない。問題は、それが一般人の目に触れてはならない作品であったことだ。
「まさか」
「ええ。半年前、ニューヨークのホテルで暴動が起きたでしょう。あれと全く同じ手口です。ただ……今回、渡良瀬さんは、作品をただ展示するだけでは済ませなかった」
改めてテレビに目を戻す。オーロラビジョンに映るその絵画が持つギフトは〝怒り〟。三原のそれと同じ、鑑賞者に怒りの感情を植え付けるものだ。しかも、ギフトはアートが媒体を経るごとに威力を減少させるが、このギフトは、街頭の大型ビジョン、そしてテレビという二つの媒体越しにもなお強い効果と鑑賞レベルを維持している。おそらく、オリジナルのそれはレベル5を超えるだろう。何にせよ……一般人ではまず、あの効果に抗えない。
「あの、どうして渡良瀬は、こんなこと」
「もはやなりふり構ってはいられない、ということでしょう。だとしても……あんな人の要求を呑むわけにはいかない。呑めば、さらに大きな被害が出てしまう」と、そこでまた電話口の声に呼ばれたのか、端末を耳に当て直す。
「何ですか、高階さん……えっ、渡良瀬さんから連絡? それで、あの人は何と……えっ」
瞬間、嶋野の顔がさっと蒼褪める。何かとんでもない話が、と漣が身構えた矢先、視線に気づいた嶋野が、凍りついたままの目をぎこちなく漣に向ける。
「協会に、渡良瀬さんからメールが届いているそうです。ギフテッドの存在を公表しろ、内閣総理大臣の名で……さもなければ今度は、各テレビ局をジャックして同様のテロを起こす、と」
今朝までそこにいたはずの人間が今はいない。部屋に戻ったあと、端末に届けられた高階の情報によると、瑠香の他に八名のギフテッドが偽造IDで施設を脱走したそうだ。そのほとんどが、二十、三十代の若いギフテッドだったことが、漣の気持ちをさらに暗くした。
ここに希望はない。
社会とギフテッドとを切り離すやり方に未来はない。
そんな声なき声を、否応なしに突き付けられている気がした。
手のひらには、瑠香が作ったとされる髪飾り。所長室を出たあと、改めて三原に話を聞きに行った漣は、玄関先で門前払いを喰らう代わりにこれを三原に押しつけられた。偽造IDでエントランスを出て行こうとする瑠香を引き留めたさい、置き土産として渡されたものだそうだ。ただ……なぜか三原は、それを手元に置く気にはどうしてもなれなかったそうだ。
――もう、あたしが好きだった瑠香は、どこにもいないんだ。
事実それは、これまで触れた瑠香のそれとは全く異質な作品だった。手に馴染むようで馴染まない、絶妙に不快な曲線。だが、何より目立つのは、それまでの瑠香の作品には見られなかったモチーフだ。一見、散り際の花びらにも見えるそれは、よく見ると女性器を模している。ただ、その姿はひどく糜爛し、満たされない欲望と、それゆえの絶望とを鑑賞者に伝えてくる。
あの時……抱いていればよかったんだろうか。
瑠香がここを訪れた夜、この同じソファで抱き寄せた瑠香の柔らかな肩を思い出す。本当は壊れるほど強く抱きしめたくて、欲望のままに組み敷きたくて――でも、本能に身を委ねれば最後、この脆く繊細な生き物を壊してしまう気がして、慌てて彼女から距離を取った。そうでなくとも自分は遠からず死んでしまう。だから。
でも今、この行き場のない欲望を秘めた彼女の作品に触れていると、それが間違いだったことを嫌でも思い知らされる。あの夜、漣に縋った瑠香の感情が恋だったのか欲望だったのかはわからない。ただ、それが欲にせよ恋にせよ、あそこで彼女を繋ぎ止めていれば、今とは違う結末もあったのかもしれない。
こんな禍々しいものを、彼女の手に彫らせることもなかったのかもしれない。
インターホンの音が、ふと漣を我に返す。髪飾りをローテーブルに置き、廊下の明かりにふらふらと吸い寄せられながら、今更のように明かりの灯らないリビングの暗さに気づき、スイッチを入れる。そのすぐ隣に設置されたインターホン用のモニターを覗き込むと、小さなディスプレイに見慣れた顔が映り込んでいる。
そのまま玄関まで進み、ドアを開くと、廊下に立っていたのはトレーナー姿の嶋野だった。すっかりスーツ姿に見慣れた漣の目には、新鮮、というよりひどく無防備に見える。
ただ、今の漣はそんな嶋野の姿より、その手が抱えるトレーの方が気になった。成人男性の肩幅ほどはある広めのトレーには二つのプレート。その一方にはこぢんまりと、そして、もう一方にはなぜか山のようにサンドイッチだけが盛られている。
「あ……どうしました」
「え、ええ。その……食事を、一緒に摂りたいなと思いまして」
「……食事」
そういえば、夜食がまだだったことを漣は思い出し、にもかかわらず全く空腹を覚えないことに驚く。昼間はカロリーメイト一箱で凌がされ、本当は、胃袋が圧壊しそうなぐらい腹が減っているはずなのに。
「あ、いや俺は、今夜は……」
「まあまあ。何にせよ僕のトレーニングには付き合ってもらいます」
言いながら嶋野は、ずかずかと漣の部屋に押し入ってくる。部屋は、朝ここを出発した時のままなので幸い片付いているが、こんな精神状態ではすぐに酷いことになるだろう。それほどに今は、何に手をつける気にもなれなかった。
そんな、今はまだこざっぱりとした部屋で、嶋野はさっそくダイニングにトレーを置くと、いつぞやの夜のように慣れた手つきで棚からインスタントコーヒーを取り出し、二人分のコーヒーを作る。
「あの、トレーニングって」
カウンター越しに嶋野の作業を見守りながら問えば、嶋野は「ええ」と、少し寂しそうな目をする。
「お察しのとおり、僕は、普通の人間のようにゆっくりと食事を摂ることができません。そもそも……食事に味を感じたこともない。しかし、何も食べないままでは死んでしまいますから、ただの栄養の塊と割り切って胃袋に押し込んでいるんです」
そういえば昼間も嶋野は言っていた。そもそも食事を楽しむ習慣がない、と。
コーヒーが仕上がり、ダイニングテーブルに向き合うように腰を下ろす。当然のように漣の前には大盛りのサンドイッチが置かれたが、やはり食欲は湧かず、とりあえず一切れ摘まんで小さく齧る。一方の嶋野もまず一切れを取り上げると、それを、まずは小さく齧る。が、すぐにごくんと呑み込んでしまい、「ああ駄目だな」などと呟いている。
「そうだ、うん、まずは咀嚼しなきゃ」
それからまた嶋野はサンドイッチを一口齧ると、顔を強張らせながら、もぐ、もぐ、とゆっくり咀嚼する。そうして三十秒ほどたっぷり噛んだあとで、コーヒーでさっと流し込んだ。こんなにも料理を不味そうに、いや、苦しそうに食べる人間は病院でも見たことがない。
「あの……ひょっとして嶋野さん、元自衛官の人とかですか」
「自衛官?」
「え、ええ。自衛官の人ってめちゃくちゃ早く食うじゃないですか。食わされる、というか……うちの病院にも、退官後もその習慣が抜けなくて糖尿になっちゃったおじいちゃんが通院してて……えーと、違いますかね」
「ああ……自衛官、ではないですね」
苦笑すると、嶋野は気まずそうに目を伏せ、ぽつ、と答える。
「施設の出なんですよ、僕」
「えっ」
「今はどうだかわかりませんが、僕がいた当時は出された食事はすぐに食べないと、他の子に盗られるか、食事の途中でも保護司の人に下げられてしまって……で、結局、こういう食べ方が染みついてしまったんですよね。それが今でも抜けないというか、まぁ、その、見苦しいことはわかっているんですけど……」
「そう、だったんすか」
ということは、最初から家族がいなかったか、いても途中で育児放棄されるなりした、ということか。だとすると……父も母もいて経済的にも裕福な暮らしを許された漣には、想像もつかない苦労があったことは間違いない。
「ひょっとして……嶋野さんが〝支配〟のギフトを手に入れたのも、そのせい……ですか」
「えっ? ……ああ、どうなんでしょうね。ただ、言われてみれば、あの頃は奪うか奪われるかの日々で……ええ、見ての通り、僕は同性の中でも体格面では不利な部類なので、腕力で勝てない代わりにそういう力を求めた、という部分は確かにあります。まぁ……絵を描き始めたのは、単に、それぐらいしか楽しみがなかったからですけど……」
「……で、渡良瀬と出会って、協会に入った」
「ええ。あの頃、僕は地元の中学で美術部に属していまして、そこで描いた絵が何かの賞を貰ったんですよね。何の賞だったかな……まぁ、とにかく、それを目にした渡良瀬さんが、僕を施設に引き取りに来て……その後、彼は僕を実の息子のように育ててくれました。あるいは弟のように……なので、あの人のことは今も、心のどこかで家族のように思っているんです。君にしてみれば、ただ社会に混乱をもたらすだけの敵なんでしょうけど」
そしてまた嶋野はサンドイッチを一口齧り、時間をかけて咀嚼する。その目は何かを詫びるようで、でも、そんな嶋野を責めることは誰にもできないのだと漣は思う。嶋野が渡良瀬を家族のように慕うことと、渡良瀬の野望を止めようと足掻くことは何一つ矛盾していない。
誰しも、何かしらの矛盾を抱えて生きているのだ。漣も、嶋野も、そして恐らくは、渡良瀬も。
しんと音のない部屋に響く、さく、さく、と小さな咀嚼音。嶋野が、サンドイッチのレタスかキュウリを噛み締める音だろう。
「どうして、俺に〝支配〟のギフトを使ったんですか」
すると、不意に咀嚼の音が止んで、代わりに、ごく、と嚥下の音がする。
「実は、そのことで話をしに来ました」
やはり、と漣は身構える。食事に付き合えというのは、あくまでも口実だったのだ。そして……これから彼が打ち明けようとする事実に、漣は、すでに目星がついている。
「……渡良瀬を信じるなって命令は、本命じゃなかったんすよね」
「ええ。本来は……あなたに、もう二度と絵を描くな、と命じるつもりでした。一応、用意はしていたんです。首輪の代わりに、僕なりの安全策を……」
嶋野の首に嵌められた二人分のチョーカー。それを目にした時から、薄々わかってはいた。漣の命を奪うことなく、かつ、万一の際に漣のギフトを封じようと思うなら、当然、そういった方法を取ることになる。……少なくとも、漣が嶋野と同じギフトを保持していたなら、やはり、そうしていた。
「もっとも……早々に渡良瀬さんに攻略されてしまいましたが。やはり、ギフトであの人を出し抜くのは難しいですね。〝支配〟の方は、あの人にも伏せていたんですけど」
つまり、両陣営に本当の力を隠していた、ということか。つくづく食えない人だ。なのに妙なところで無防備で、そういうところも、ずるい、と漣は思う。
「要するに……俺からギフトを奪ってでも、俺を生かそうとした……?」
嶋野は、今度は何も答えなかった。ただ、ぎこちない笑みを浮かべたまま、手元のサンドイッチをぼんやりと見下ろしている。
「……すみません」
やがて嶋野は、ぽつ、と呟く。心なしか、その声はかすかに震えていた。
「君が、どれだけ重い選択の果てに描き続けることを選んだのか、もちろん、よくわかっています。その上で……君に、あれ以上、傷ついてほしくなかった。渡良瀬さんに拉致されて、そこで無理やり絵を描かされて……その絵を、もし、大量殺戮に利用されたなら、今度こそ君は、取り返しのつかない傷を負ってしまう。……だから……わかっています。僕は、とんでもなく勝手なことを言っている。君に、罪を背負いながらでも描き続けろと言ったのは僕だ。リスクの高いキュレーターの仕事を勧めたのも……なのに、今更、こんな……」
いつもの饒舌さが嘘のような、喘ぎ喘ぎようやく紡がれる言葉。それでも漣の胸には、今の言葉こそがこれまでのどの嶋野の言葉よりも強く響いた。あの夜かけられた励ましの言葉よりも、なお。
「その上で……図々しい話ですが、改めて、君にお願いしたいことがあるんです」
「お願い? 命令……じゃないんですか」
「はい。……というより、もはや命令に意味はありません。仮に命令を下したところで、どのみち渡良瀬さんにはキャンセルされてしまう。ならば……そんな搦め手ではなく、正攻法でいくしかない」
大きく深呼吸すると、嶋野はまっすぐに漣を見る。
「お願いします。どうか……腕の機能を潰す手術を受けてください。内部に協力者の存在が明らかになった以上、中に籠っていても安全とは言い難い。あの人から君のギフトを遠ざけるには、もはやギフトそのものを消し去るしか方法がないんです」
「……腕の」
それはつまり、アートそのものを手放せ、ということ。
「ええ……わかっています。それを避けるために、君は、全てを捨ててギフテッドとして生きることを選んだ。そんな君に、今更、虫が良すぎるのはわかっているんです。それでも……」
そして嶋野は、テーブルに手をつき、改めて「お願いします」と頭を下げる。確かに……あまりにも身勝手な願いだ。ならば最初から、ギフテッドとしての生き方など示さなければよかったのだ。ただ腕を潰すだけで終わっていれば、仮に医者の道は断たれても、家族と一緒に新しい道を模索できたかもしれない。少なくとも……今のように全てを失うこともなかった。家族も、それまでの人生も。
そう、本当は怒るべきなのだ。その理不尽に――でも。
「それは……できません。その代わり、もし俺が渡良瀬に拉致られた時は、今度こそちゃんと俺の首を吹っ飛ばしてください」
「い、いや、だからそれは!」
跳ねるように、嶋野は席を立つ。なぜ怒らないのかと漣の反応に困惑しているのだろうか。……いや、と漣は思う。きっとこの人は、傷ついてくれているのだ。命懸けで守った漣にこんなことを言われて、ショックを受けてくれている。
それでも、漣の答えは決まっている。最初から――嶋野のギフトの件に触れた時から。
「絆なんです。このギフトは、嶋野さんと俺とを繋ぐ」
「……え?」
「最初は、どうしてこんなギフトを授けられたんだと運命を恨みました。でも、次第にこうも考えるようになったんです。このギフトがあったから、俺は、嶋野さんに出会えた」
立ち上がり、嶋野に歩み寄る。普段の余裕に満ちた表情が嘘のような、蒼褪め、強張った顔を見下ろしながら、また一つ見つけた、と漣は思う。次に嶋野の肖像を描くことがあれば、今度はこの表情をメインに描いてみよう。たくさんの矛盾を抱えたこの人の、美しい多面体のその一面。
「失ったら、俺はもうギフテッドじゃなくなる。確かに……ギフテッドでなくとも引き続き協会で働くことはできるのかもしれません、一般職員として……でも、それは嫌なんです。俺は、あくまでもギフテッドとして、あなたのそばにいたい」
ずっと、自分がどこにいるかもわからなかった。
鏡に映る自分の姿を、まるで見知らぬ他人のように眺めた日々。何食わぬ顔で大病院の跡取り息子を演じながら、違う、こんなのは俺じゃないと叫び続けた。
そんな寄る辺ない日々を終わらせたのが嶋野だった。あの日、漣の人生にこの人が飛び込んできて、そして全てが変わった。自分の本当の姿も、立つ場所も、息を吸って吐いて鼓動して当たり前に生きていることすら、この人と出会って、ようやく漣は知った。
「僕も、嫌だ」
ジャケットの袖を摘まんで引かれ、肩にそっと額を乗せられる。その、かすかな重みと布地越しに伝わる熱に、改めて漣は、失いたくない、と思う。
だから抱き寄せ、強く、強く抱きしめた。
「僕も、ギフテッド……いや、アーティストとしての君と共にいたい。たくさんの矛盾を抱えながら、傷つきながら生きる君と……はは、言葉にすると、本当に悪趣味ですね」
「確かに……めちゃくちゃ悪趣味っすね」
お互いに。そもそも、矛盾を抱えながら傷つき生きるのは嶋野とてそうなのだ。そして、そんな嶋野に漣は惹かれた。どうしようもないほどに――
そんな漣の感慨を不意に断ち切る、端末の呼び出し音。慌てて嶋野から離れ、ジャケットの懐から端末を取り出すも、特に着信はない――かと思えば嶋野が自分の端末を耳に当てている。どうやら着信があったのは嶋野の端末の方らしい。
「はい……えっ、ま、待ってください。――漣くん、テレビをつけてください。今すぐに」
「えっ、は、はい」
慌ててローテーブルからリモコンを取り上げ、テレビをつける。と、それはすぐ目に入ってきた。大規模災害の中継などでよく見かける『緊急速報』と記されたL字の帯。その帯に囲まれた画面には、漣にも見覚えのあるきらびやかな夜の街が中継で映し出されている。場所は、渋谷のスクランブル交差点前だろうか。実際、背景にはマルキューやツタヤビルなど、見覚えのあるビルがいくつも映り込んでいる。ただ、明らかに様子がおかしい。人で溢れているのはいつものことだし、そんな街だから多少のトラブルも日常茶飯事ではあるだろう。……が、カメラに映る限りの群衆が互いに殴り合い、掴み合う恐慌状態はどう考えても異常だ。
やがて、群衆の一人がレポーターに食ってかかり、カメラの方も程なく暗転してしまう。すぐに映像はスタジオに切り替わるも、不穏な空気はなおも画面を支配している。スタジオでは四人のアナウンサーだかコメンテーターだかが横長のテーブルに並んでいるが、今の光景に絶句しているのか、すぐにはこの件に言及する様子を見せなかった。
やがて、司会役と思しき年嵩の男性レポーターが辛うじて口を開く。
『えー、途中、映像が乱れまして申し訳ありません。今回の渋谷での暴動を受け、JRを始めとする鉄道各社は一部路線の運休、または、一部区間での折り返し運転を開始しており――』
「渡良瀬さんだ」
「えっ」
振り返ると、端末を耳に押し当てたまま嶋野がじっとテレビを凝視している。
「……どういう意味です」
「見てください」
言いながら嶋野は、テレビ画面の一部を指さす。示す先はツタヤビルのオーロラビジョン。そこに、明らかにあんな場所に映ってはならないものが映し出されている。画面いっぱいにうねる炎を思わせる曲線。そのところどころに、木星の大赤斑を思わせる目が浮かんで見える。それは、あたかも衆生を睥睨する仁王像の目のようだ。……いや、モチーフはこの際、問題ではない。問題は、それが一般人の目に触れてはならない作品であったことだ。
「まさか」
「ええ。半年前、ニューヨークのホテルで暴動が起きたでしょう。あれと全く同じ手口です。ただ……今回、渡良瀬さんは、作品をただ展示するだけでは済ませなかった」
改めてテレビに目を戻す。オーロラビジョンに映るその絵画が持つギフトは〝怒り〟。三原のそれと同じ、鑑賞者に怒りの感情を植え付けるものだ。しかも、ギフトはアートが媒体を経るごとに威力を減少させるが、このギフトは、街頭の大型ビジョン、そしてテレビという二つの媒体越しにもなお強い効果と鑑賞レベルを維持している。おそらく、オリジナルのそれはレベル5を超えるだろう。何にせよ……一般人ではまず、あの効果に抗えない。
「あの、どうして渡良瀬は、こんなこと」
「もはやなりふり構ってはいられない、ということでしょう。だとしても……あんな人の要求を呑むわけにはいかない。呑めば、さらに大きな被害が出てしまう」と、そこでまた電話口の声に呼ばれたのか、端末を耳に当て直す。
「何ですか、高階さん……えっ、渡良瀬さんから連絡? それで、あの人は何と……えっ」
瞬間、嶋野の顔がさっと蒼褪める。何かとんでもない話が、と漣が身構えた矢先、視線に気づいた嶋野が、凍りついたままの目をぎこちなく漣に向ける。
「協会に、渡良瀬さんからメールが届いているそうです。ギフテッドの存在を公表しろ、内閣総理大臣の名で……さもなければ今度は、各テレビ局をジャックして同様のテロを起こす、と」
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