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第1部 暴君立志編 第4話 王太子、侵災調伏する
第4話 3
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俺達がスローグ領に到着して十日ほどして、第三騎士団は到着した。
これまでの間に、<地獄の番犬>隊は黒森の辺縁部を巡回警備し、魔物の間引きを行っている。
そこで得られた経験や情報を元に、グレシア将軍は黒森を囲うように部隊を配置した。
「――で、辺縁部から地道にローラーかけるって?」
森のそばに建てられた大テントの中で、グレシア将軍の説明を聞いて、俺は呟く。
「時間かかりすぎじゃね?」
「しかし、これが一番確実な方法です」
グレシア将軍は黒森を記した地図を見下ろしながら、俺に説明する。
「狩人や山師の話では、この辺りに侵源があるようです。
外周部から魔物を排除しながら進めば、三日ほどで辿り着けるでしょう」
「その間、スローグの領民は魔物に怯える事になる。
――なあ、将軍。俺が居るんだぞ? 使えるものは使えよ」
聞けば、昨年の水害も侵災が原因だったと考えられるらしい。
俺はこれ以上、王城の不手際でスローグ領民を不安にさせる気はない。
椅子の肘掛けに頬杖突いて、足を組んだ俺は、グレシア将軍を見据える。
「包囲網はそのままでいい。俺が<王騎>で侵源までの道をつけてやる。おまえは調伏部隊を編成しろ」
「……ありがとうございます」
将軍は腰を折って深々と礼をした。
「気にすんな。みんなでやれる事やるだけだ」
俺は立ち上がってグレシア将軍の肩を叩く。
そうして方針が決まれば、将軍の動きは早かった。幕僚達に命じて、次々と各方面へ指示を飛ばしていく。
「殿下。銀狼姫はお借りしてもよろしいので?」
「あ? 誰ソレ?」
俺が首を傾げると、幕下で控えていたユリアンが恥ずかしげに手を挙げる。
「あの武技大会は騎士のほとんどが見ておりましたからな。
殿下の寵愛を受けながら、武にも優れた銀狼の姫として、騎士団であだ名されているのですよ」
「ユリアン、なに? おまえ、そんな二つ名もらったの?
なんでそんな面白い事、俺に教えてくれないんだよ!」
「オレア様が、そんな反応するのがわかってたから、黙ってたんですよっ!
呼ばれるボクの気持ちも考えてくださいよ!
オレア様だって、自分がなんて呼ばれてるか知ったら、きっと夜、ベットで悶ますよ!」
「え? 俺にも二つ名付けられてんの? なんて? おい、ユリアン、教えろよ」
「不敬になるので言えませんー」
顔をそらしてユリアンは告げる。
「――<暴虐魔王>っていうのが一番多いようですよ」
フランがそっと俺に耳打ちする。
「あーあ、教えちゃった」
ユリアンが手で顔を覆う。
「んん? 悪くないんじゃないか?」
なんというか、前世の厨二心を刺激される二つ名だ。
「実際、俺、勇者潰してやったしな。
はは。いいじゃん、魔王」
「オレア様のそういう寛容なトコ、ボクは本当に尊敬するよ」
そんな俺の反応につまらなそうに鼻を鳴らしたフランは、再度、顔を寄せてきてニヤリと笑う。
「ちなみに市井では『ヘタレ王太子』と呼ばれてます」
「あ? なんでだよ! 俺のドコがへたれなんだ!? 誰が言ってやがる! 不敬だぞ!」
「さー、なんででしょうねぇ。ユリアン様は心当たりありますー?」
「あ、あぅ……ボクはそんなオレア様でも、素敵だと思うよ」
「フォローが余計に傷つけるんだよ! ちくしょう。おまえまで俺をへたれだと思ってんのか!」
俺が肘掛けを殴りつけると、フランはユリアンに抱きついた。
「だぁって、ねぇ?」
「あ、あははは……」
クソ。恨むぞソフィア。なんでコイツをお付きに指名したんだよ。
やりにくいったらないぞ。
そうしている間にも騎士団の準備は進んでいたようで。
しばらくすると、グレシア将軍が伝令を受けて俺に声をかける。
「――殿下。準備が整いましてございます。
銀狼姫、おまえも<狼騎>の用意を」
「はいっ!」
ユリアンは敬礼して大テントを出ていく。
「侵源調伏隊には、地元の冒険者も組み込みました」
「ああ、森の中じゃ、魔物だけじゃなく魔獣も出てくるかもしれないもんな。良い判断だ」
少し説明しておくと、魔物はこの世界の理から外れて発生する、異界の生き物だ。
侵災によって現れる形状は様々。
共通しているのは、漆黒の粘液質な体表を、鈍色の甲殻で覆った不気味な姿をしているという点と、やたらこの世界の生物に攻撃的という点だ。
一方で、魔獣というのは、自然界から精霊などの魔道的な作用を受けて、巨大化したり、魔法に目覚めたりした生物の総称だ。
魔獣はあくまで生物なので、恐怖を感じれば逃げ出すし、死ぬまで襲ってきたりはしないのだが、やはり野生動物の一種なので、農村などで獣害のような被害を出す事もある。
冒険者は、そんな魔獣退治を主な生業としている連中だ。
他にも魔物退治や遺跡探索なんかを主にしているヤツもいるようだが、収入源の最たるは魔獣退治になるようだ。
俺は椅子から立ち上がって、大テントから出ると、居並ぶ騎士達を見据える。
「――それじゃ、そろそろ始めようか」
ニヤリと笑った俺の言葉に、騎士達が応じて、鬨の声をあげる。
これまでの間に、<地獄の番犬>隊は黒森の辺縁部を巡回警備し、魔物の間引きを行っている。
そこで得られた経験や情報を元に、グレシア将軍は黒森を囲うように部隊を配置した。
「――で、辺縁部から地道にローラーかけるって?」
森のそばに建てられた大テントの中で、グレシア将軍の説明を聞いて、俺は呟く。
「時間かかりすぎじゃね?」
「しかし、これが一番確実な方法です」
グレシア将軍は黒森を記した地図を見下ろしながら、俺に説明する。
「狩人や山師の話では、この辺りに侵源があるようです。
外周部から魔物を排除しながら進めば、三日ほどで辿り着けるでしょう」
「その間、スローグの領民は魔物に怯える事になる。
――なあ、将軍。俺が居るんだぞ? 使えるものは使えよ」
聞けば、昨年の水害も侵災が原因だったと考えられるらしい。
俺はこれ以上、王城の不手際でスローグ領民を不安にさせる気はない。
椅子の肘掛けに頬杖突いて、足を組んだ俺は、グレシア将軍を見据える。
「包囲網はそのままでいい。俺が<王騎>で侵源までの道をつけてやる。おまえは調伏部隊を編成しろ」
「……ありがとうございます」
将軍は腰を折って深々と礼をした。
「気にすんな。みんなでやれる事やるだけだ」
俺は立ち上がってグレシア将軍の肩を叩く。
そうして方針が決まれば、将軍の動きは早かった。幕僚達に命じて、次々と各方面へ指示を飛ばしていく。
「殿下。銀狼姫はお借りしてもよろしいので?」
「あ? 誰ソレ?」
俺が首を傾げると、幕下で控えていたユリアンが恥ずかしげに手を挙げる。
「あの武技大会は騎士のほとんどが見ておりましたからな。
殿下の寵愛を受けながら、武にも優れた銀狼の姫として、騎士団であだ名されているのですよ」
「ユリアン、なに? おまえ、そんな二つ名もらったの?
なんでそんな面白い事、俺に教えてくれないんだよ!」
「オレア様が、そんな反応するのがわかってたから、黙ってたんですよっ!
呼ばれるボクの気持ちも考えてくださいよ!
オレア様だって、自分がなんて呼ばれてるか知ったら、きっと夜、ベットで悶ますよ!」
「え? 俺にも二つ名付けられてんの? なんて? おい、ユリアン、教えろよ」
「不敬になるので言えませんー」
顔をそらしてユリアンは告げる。
「――<暴虐魔王>っていうのが一番多いようですよ」
フランがそっと俺に耳打ちする。
「あーあ、教えちゃった」
ユリアンが手で顔を覆う。
「んん? 悪くないんじゃないか?」
なんというか、前世の厨二心を刺激される二つ名だ。
「実際、俺、勇者潰してやったしな。
はは。いいじゃん、魔王」
「オレア様のそういう寛容なトコ、ボクは本当に尊敬するよ」
そんな俺の反応につまらなそうに鼻を鳴らしたフランは、再度、顔を寄せてきてニヤリと笑う。
「ちなみに市井では『ヘタレ王太子』と呼ばれてます」
「あ? なんでだよ! 俺のドコがへたれなんだ!? 誰が言ってやがる! 不敬だぞ!」
「さー、なんででしょうねぇ。ユリアン様は心当たりありますー?」
「あ、あぅ……ボクはそんなオレア様でも、素敵だと思うよ」
「フォローが余計に傷つけるんだよ! ちくしょう。おまえまで俺をへたれだと思ってんのか!」
俺が肘掛けを殴りつけると、フランはユリアンに抱きついた。
「だぁって、ねぇ?」
「あ、あははは……」
クソ。恨むぞソフィア。なんでコイツをお付きに指名したんだよ。
やりにくいったらないぞ。
そうしている間にも騎士団の準備は進んでいたようで。
しばらくすると、グレシア将軍が伝令を受けて俺に声をかける。
「――殿下。準備が整いましてございます。
銀狼姫、おまえも<狼騎>の用意を」
「はいっ!」
ユリアンは敬礼して大テントを出ていく。
「侵源調伏隊には、地元の冒険者も組み込みました」
「ああ、森の中じゃ、魔物だけじゃなく魔獣も出てくるかもしれないもんな。良い判断だ」
少し説明しておくと、魔物はこの世界の理から外れて発生する、異界の生き物だ。
侵災によって現れる形状は様々。
共通しているのは、漆黒の粘液質な体表を、鈍色の甲殻で覆った不気味な姿をしているという点と、やたらこの世界の生物に攻撃的という点だ。
一方で、魔獣というのは、自然界から精霊などの魔道的な作用を受けて、巨大化したり、魔法に目覚めたりした生物の総称だ。
魔獣はあくまで生物なので、恐怖を感じれば逃げ出すし、死ぬまで襲ってきたりはしないのだが、やはり野生動物の一種なので、農村などで獣害のような被害を出す事もある。
冒険者は、そんな魔獣退治を主な生業としている連中だ。
他にも魔物退治や遺跡探索なんかを主にしているヤツもいるようだが、収入源の最たるは魔獣退治になるようだ。
俺は椅子から立ち上がって、大テントから出ると、居並ぶ騎士達を見据える。
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