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9.お前が先だ!
オヴズティも、俺から離れてしまう。
追って行って、口が開いたらいいのに、俺の体は動かない。
もう、竜がこいつを狙ってないことは明らかだ。もうここにいる理由がなくなったんだ。
「……じゃあ、俺……帰るわ」
言った言葉だけで、なんだか苦しい。本当はもう少し、ここにいたいんだ。
こいつのそばにいたい。だって久しぶりに会えたんだ。
だけど、理由なんてなくなったら、もうここにもいられない。俺はこいつの何でもないし、ここは俺の家でもない。
踵を返す俺。
だけど、扉が近づくごとに、寂しさが増す。本当はここにいたい。
なんでいろって言わないんだよ!!
俺は、オヴズティに振り向いた。
「てめえっ……! なんでいろって言わないんだよっっ!!!!」
カッとなったからか、ひどく力が入った。怒鳴りつけた声が響いて、振り向いた俺の手を、そいつはすでに握っていた。そして、俺の怒鳴り声とほぼ同時に叫んだ。
「なんでいるって言わないんだ!!」
「は……?」
何を言われたんだ。俺は。
いろって言って欲しいのに言ってくれなくて怒鳴る俺と、俺がいるって言わないことにキレたそいつの声が重なって、理解までに時間がかかった。
なんだよこいつ。こいつも俺にここにいて欲しかったのか??
「は、はあ!? さ、先に俺を避けたの、そっちだろうが!!」
やっぱり怒鳴る俺に、オヴズティも負けてない。
「先に避けたのはそっちだ! 俺が連絡したって無視したくせに!」
「だからなんだよ!! あのこと俺が話した時、笑ってるだけだったくせに!」
「それより先に、お前がそんなの馬鹿らしいって言ったんだろ!」
「るせえ! 忘れたよ、んなこと!! いて欲しいならいろって言えよ!」
「いたいんならそっちがいるって言えっ!! 何すぐに帰ろうとしてんだ!!」
ついに、睨み合いになる。
馬鹿らしくなってきた。俺たちは何してるんだ。
要するに、オヴズティも俺にここにいて欲しかったんだ。それはそれで……嬉しい。
そう思ったら、体の力が緩んでしまいそう。隙を見せたら負けるのに、もう遅い。
微かに勢いの緩んだ俺の手を、オヴズティが握った。
「俺は…………お前と離れんの、嫌だから……」
「な、なんだよっ……! そ、そんなのっ……!」
そんなの、俺だって一緒だ。今度こそ、そう言える気がしたのに、そいつは俺を連れて行く。
「お、おいっ……待てよ! ズティっ……!!」
「嫌だ。もうお前と……」
乱暴に、リビングの隣の部屋のドアを開けて、オヴズティは中に入って行く。そこにあったのは、ベッドと小さなサイドテーブルだけ。寝室だ。
なんでこんなとこ来るんだ?!
戸惑うばかりの俺に、そいつは振り向いて、いきなり抱きしめてくる。
「ズティっ……!?」
「俺は……お前がいないなんて嫌だ。もう離したくない」
ぎゅうっと強く抱きしめられて、オヴズティの体温を感じる。全身をそいつに包まれて、気持ちいい。それに、これだけ密着してたら、オヴズティの胸がドキドキしてるのが分かった。こうして触れ合ってるだけで、分かる。こいつも、俺といたいって、思ってくれてるんだ。
「あ、の、ズティっ……俺もっ…………て、おいっっ!!」
俺、まだ話してる途中なのに、そいつは俺を、背後にあったベッドに押し倒した。
「お、おい……何してんだてめえっ……! わっ……!」
俺の話なんて聞く気ないのか、そいつは俺の両頬を捕まえて、俺の唇を吸ってくる。何度も唇を吸われたら、力も緩んで、まるで誘い入れるみたいに、そいつの舌を受け入れてしまう。唇の裏まで丁寧に舐めとられて、腰の辺りがじわじわ熱くなってきた。その熱が、俺の欲望にまで流れて行く。なんだこれ。体が痺れるみたいだ。
ちゅって舌を吸ってから、オヴズティは俺から離れた。長く絡み合った唾液が線になってる。
何すんだって、怒鳴ってやりたいのに、もう力が入らない。
「ノラギ……」
「ま、待って……ひゃっ……!」
まだ俺、何も言ってないのに、そいつの唇が、首にまで降りてきて、組み敷かれたままの俺の服に、そいつが手をかけた。
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