誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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16.ここにいることができて

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 私も急いで荷物を運ぼうとすると、テクフィノレク様が荷物を持って私の横をすり抜け、無言で荷物を荷台に乗せる。

「え!? あ、あのっ…………」
「うるさい虎が邪魔をしてしまったので、その分は私が運びます。詫びの代わりです」
「じ、邪魔だとは思っていません!!」

 言いながら、私も急いで荷物を運ぶ。

「お待ちください!! こちらの荷物は私が運びます!」
「詫びだと言ったでしょう! 素直に受け取りなさい!!」

 そんな命令口調で言いながら、彼は歩くスピードを上げる。どちらかと言えば、彼の方が腹立たしく感じるのですが!!

「す、素直といわれても、私は全部運ばないと、鞭で打たれてしまうんです!」
「あなたの事情は知りません」
「知らないのはおかしいです! だってあなた方が言ったのにっ……!」

 言いながら、私も早足になる。追いつこうと、いつの間にか魔力を使って走っていて、やっと荷台までたどり着いた。

 つい意地を張ってしまった……

 荷物を石畳に下ろして、荒く息を吐いていると、荷台に上がっていたロズルラト様が感心したように言う。

「お前、力持ちだなー」
「へ? わっ!!」

 彼が私の手をぐっと強く引いて、荷台まで持ち上げる。石畳に置いた箱は、彼の魔法で浮き上がった。けれどそれは、荷台を通り越して馬の方まで飛んでいく。

「行っちゃった」
「ぶ、無事なんですか!?」

 慌てて馬の方に走る私。

 よかった……木箱は無事だ。

 急いで運んで全部荷台に積んで、やっと終わり。

 運び込んだ荷物をリストで確認する。確かに、全部運べた。

「ろ、ロズルラト様っ……あの…………今、何時ですか?」
「あ? 時間?」

 彼が告げてくれた時間は、約束の時間を少し過ぎていた。

 確認の前に時計を見ればよかった……荷物運びは時間内に終わっていたの!? それとも、間に合わなかった!?
 どうかは分からないけど……ロズルラト様とテクフィノレク様が手伝ってくれた分は数に入るの!?

 顔を上げたら、荷台にヴィラウレルト様が近づいてくる。

 無言で近づかれて、急に怖くなる。やっぱり、時間は過ぎてしまっていたんだ。

「おい」
「は、はい!!」

 緊張しながら声を上げる。

 結局私、頼まれたことを果たすことができなかったんだ。

 荷台から降りて立って、ヴィラウレルト様の前に立つ。

「……ヴィラウレルト様……申し訳ございません……」

 これじゃ、約束の時間にいくつ余っていたのか分からない……鞭打ちは一回だけじゃ済まないのかな。

 怖い……けど、約束を違えたのは私。覚悟は決めなくてはならない。

 だけど、この服をこれ以上破られたら着る物がなくなってしまう!

「あ、あのっ……! 鞭で打つなら、できれば服がこれ以上傷まないようにしていただきたくて……」
「鞭? ああ……そのことか」
「大口を叩いたのに……申し訳ございません…………あのっ…………きゃああっっ!!」

 彼は私に何か突き出してきた。それは、小さな瓶だ。

「え…………これ……」
「魔力を回復する魔法の薬だ。飲んでおけ」
「で、でもっ……いただく理由がありません!」
「はっっ!!??」

 そんなに驚かれても。だって、魔力を回復する魔法の薬は貴重なもの。それなのに、理由もなくもらえません!

「なぜ私にそんなものをくださるのです? 私は荷物を運べなかったのに……」
「…………その原因を作ったのはそこにいる虎だろう。荷物はそれで全てだ。分かったら、これで魔力を回復しておけ。ほとんど残っていないはずだ」
「でも……」
「まだ別の店でも荷物を積む。お前に魔力があった方がいい」
「え……?」
「魔力で荷物を守っていたんじゃないのか?」
「は、はい…………」
「そのおかげで、荷物は全て無事だ。それは……報酬だ」
「報酬? それはますますおかしいです……だって私は、ここに連れて来てもらった運賃の代わりに働いているだけです」
「強情だな」
「強情!??」
「お前は十分な働きをした。そんな奴を鞭で打ったりはしないし、それは、追加の料金だ」

 そう言って、彼は尚も私にそれを突き出してくる。

 十分な働き……? 報酬?? 私のしたことをそんな風に評価してくださるなんて…………

 普段から、何をしても怒鳴られるだけだった。荷物だって、どう運んだところで必ず鞭でひどく打たれていたはずなのに。

「あ、ありがとうございます…………」

 瓶を受け取ろうとした手は震えていた。

 こんなの……受け取っていいの?

 私の働きが認められた??

 まだ信じられない私に、彼はそれを押し付けた。ロズルラト様が「よかったなー」と言って、テクフィノレク様は無言のまま。

 ヴィラウレルト様は使い魔の方へ向かいながら振り向いた。

「さっさと飲め。出発するぞ」
「は、はい!! あの!! ヴィラウレルト様!!!! それに、ロズルラト様とテクフィノレク様もっ……あ、ありがとうございます!!」

 叫ぶように言って頭を下げるけど、ヴィラウレルト様は何も言わなかった。

 それでも、この小瓶だけで嬉しい!!

 テクフィノレク様も荷台から離れて、ロズルラト様はそうする前に私に振り向く。

「……悪かったな。荷物飛ばして」
「いいえ! あなた方のおかげで、運ぶことができました! 私は、ここにいることができて、嬉しいんです!」
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