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4.俺の前で、ふざけた真似すんな!
俺は、割れた窓から庭に飛び出した。
立ち並ぶ庭木をすり抜けて、花壇を飛び越えて走る。
窓から見えた大きな獣は、真っ黒な毛並みの狼だった。身体中に鎖を巻き付けられたそれは、いきなり光り出したかと思えば、縮んで人の姿に変わっていく。それでも体に巻き付けられた鎖は消えずに、その男は鎖に引っ張られるようにして倒れた。
鎖を握った兵士たちが、倒れた男に駆け寄って行く。そして全員が、倒れた男に剣を向けていた。
何してんだ、あいつら。
倒れた男は、立ちあがろうともがいている。両手を庭についてなんとか立ちあがろうとする男を、取り囲んだ兵士たちが嘲笑っていた。
何があったか知らないが、見過ごせない。倒れた男は、金色の長髪の男で、俺をここに召喚した魔法使いだ。
俺がそいつらに向かって走る間も、兵士たちは倒れた男に対する攻撃をやめない。
事情は知らないが、動けない上に戦意もない奴を大勢で取り囲んで痛めつけるとは。
俺の前でふざけた真似してくれるじゃないか。
駆け寄る俺に気づいたのか、兵士たちが俺に振り向く。そして、各々剣を下げて俺に向かってきた。
おいおいおい!! マジかよ!
こいつらっ……ろくでもない連中だ。
俺は丸腰。しかも、あいつらみたいに魔法なんかも使えない。そんな俺に大勢で刃物ぶら下げて切り掛かってくるなんて、クズにも劣る連中だ。
いや、俺、丸腰じゃないのか。
さっき奪った爆発する球があるんだ!!
俺はそれをふりかぶって、思いっきり投げつけた。
それは向かってくる奴らの足元に落ちて、大きな音を立てて破裂する。
どんっと、耳が壊れるような音と爆風が吹いて、周りにいた奴らは次々倒れていく。さっきのより音はでかいが、威力は低い。爆風も、駆け寄ってきた連中を吹き飛ばすくらいで、持っていた武器や、その連中が身につけていた防具には傷がない。
俺自身も当然無事。
やっぱり俺はついてる。これで、人の体を壊すような威力のものだったらどうしようかと、投げた後から心配してたんだ。
だが、無事だったんだから、それでよし。
倒れた兵士たちを飛び越えて、取り囲まれていた男に駆け寄った。
やっぱり、ヴァンケズだ。俺をここに召喚した魔法使い。
気絶しているが、息はある。だが、身体中に鎖の跡ができて、そこから血が流れている。長く無理に締め付けられた証拠だ。
こいつのことは気に入らない。だが、こんな真似をする奴はもっと気に入らない。
「てめえらっ……! 寄ってたかって何してやがるっっ!!!!」
怒鳴ると、俺を囲んだ兵士たちは俺を睨んでいた。全員が俺に剣を向けている。そいつらの後方には、杖をこっちに向ける奴らもいた。あいつら、確か王家に仕えている魔法使いだ。つまりは、ヴァンケズの仲間じゃないか。それなのに、何してんだこいつら!!
兵士の一人が叫んだ。
「なんだ貴様っ……地下から出てきたのか!?」
「出てきたよ。あんなところにいられるか! つーかお前ら何してんだよ!! 寄ってたかって、なんの真似だ!!」
「黙れ!! この男は用済みだ!」
「用済みって……」
なんだそれ。なんでこいつが用済みなんだ。
そこに、朗々とした声が響いた。
「なんの騒ぎだ?」
その声を聞いただけで、周りの兵士たちも魔法使いたちも、突然その場に跪く。俺にさっき用済みだって言ってた奴も俺に杖を向けて頭を下げていた。
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