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5.話を聞け!
兵士の一人が杖から放った魔法が俺を包む。すると、俺の体に光る鎖が巻きついて、無理矢理、地面に平伏させられた。
「おい! 何しやがる!!」
「黙れっ!! あの方は国王陛下だぞ!!」
「はあ? コクオー? だからなんだよ!!」
と言いつつ、本当は驚いた。まさか、国王自ら俺に挨拶に来るとは。
俺は大物だから当然だが、だからと言って頭を下げてやるいわれはない!!
鎖で押さえつけられながらも顔を上げる。
すると、城の方から誰かが歩いてくるのが見えた。数人を引き連れて歩いてきた男は、引くほど豪華絢爛な格好をしていて、いばり腐った様子で口を開く。
「何を騒いでいる……? 処刑は終わったのか?」
「そ、それは、まだ……」
兵士の一人が言うと、国王とやらは舌打ちをして俺に振り向いた。明らかに喧嘩売ってる目だ。
こいつには、俺が召喚された時に会っている。俺のことをすぐに、なんだこの役立たず、と馬鹿にした上に、地下に押し込めたクソ野郎だ。
また会えて、俺はなんてラッキーなんだ。一度会って文句言ってやりたかったんだ。
「おい!! 国王陛下! お前には一回言ってやりたかったことがっ……」
「やめろ!!」
俺を怒鳴りつけた兵士の魔法が、俺の頭を地面に押さえつける。顔を地面に押し当てられると、声が出せないじゃないか!!
国王は、もがいている俺からはすぐに興味を失い、倒れたヴァンケズの方を見下ろしていた。
「なんだ……? まだ生きているではないか。早く殺せ」
「殺せって……ヴァンケズのこと言ってんのか?」
俺が聞くと、国王はやっと俺の方を向く。
「貴様は……召喚された異世界の男か?」
「そーだよ。気づいてなかったのか?」
答える俺を、兵士の一人が慌てて押さえつける。跪けって意味だろうが、俺はこんないけ好かない野郎に頭なんか下げない。つーか、しつこいぞ!
「なんだよっ……! 離せ!!」
「いいから頭を下げろ!! 国王陛下の前だぞ!」
「知らねーよ! だからなんだよ!!」
「お前もっ! 死ぬなら楽に死にたいだろう!!!! と、とにかく平伏するんだ!!」
その男の顔は真っ青だ。
なんだ……? こいつ……もしかして、怯えてるのか?
だってずっと震えている。あの国王に怯えているんだ。俺から見たら、ただの嫌な奴なんだが……
すると、国王は兵士と揉み合う俺を見下ろして言った。
「貴様の処遇は後から決める。地下に戻れ」
「嫌だね。お前らこそ、こいつ一人に寄ってたかってリンチか? 止めろよ! 偉い奴なんだろ!?」
「私が命じたことだ」
「あ?」
「それは、私が命じたことだ。ヴァンケズはすでに用済みだ」
「だから……用済みってなんだよ……」
……この野郎と話していると、すっげえイライラしてくる……なんなんだこいつ。用済みだの、命じただの。何様だ。
正直、俺もヴァンケズのことは気に入らない。だって俺をここに召喚した奴だ。俺が地下牢に押し込められたのだって、こいつのせいじゃないか。
だけど、こんな真似をする連中は、もっと気に入らない。
「用済みってどういうことだ!!!! おい!!」
「魔物との戦闘を繰り返し、召喚の魔法を使ったこの男には、すでに魔力も残り少ない。召喚されたのも、貴様のようなハズレだ。王家に仕える魔法使いとしてふさわしくない」
「……んだよっ……それっ……! 魔物退治も俺の召喚もお前がさせたんだろうがっ……! てめえがやったこと全部こいつに押し付けてんじゃねえぞ!!」
「その男は、魔力を封じて追放する」
「はあ!!?? なんでこいつが追放なんだっ……!」
「貴様もだ」
「俺も?」
「すぐに殺してやってもいいのだが、貴様をここに呼び出してしまったのは私たちだ。多少の責任はある」
「何が多少だ!!!! 全部お前のせいだろ!!」
「貴様に、この国のために働く気があるのなら、命を助けてやろう」
「なぁにが助けてやろうだ!! 何様だ! ゲスがっっ!! いいからとっととヴァンケズ離して俺を自由にしろ!!!!」
「魔獣の地で、魔獣を百匹狩って獲物を持ち帰れば、命は助けてやる」
「聞いてんのかてめえっっ!!!!」
「そっちこそ私の話を聞けっっ!!」
ついに怒鳴る国王。聞けと言うが、俺は聞きたくない話は聞かない。だいたい、なんでそんな胸糞悪い話を聞かなきゃならないんだ。
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