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二章

16.何か作戦でもあるの?

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 ヴィリガリーの報告を聞いたバティラートは、彼を睨むように振り向いた。

「魔獣だと……?」
「はい! じ、城門の方に来て、門を焼き払おうと暴れています! ずいぶん興奮しているようで……手がつけられません!! すぐに来てください!」
「次から次へとおかしなものが来るっ……! ヴィリガリー!! 先に魔法使い共に門に集まるように言っておけ! メティリートっ! そのウサギを連れて来い!」

 そう言って、バティラートは部屋を出て行く。ヴィリガリーも心配そうにこちらに一度振り向いたが、よほど急いでいるらしく、部屋を飛び出して、バティラートとは別の方に走って行った。

 部屋に残されたメティリートは俺を抱き上げ、バティラートについて行く。背の高いバティラートが、一度も振り返らずに早足で歩いていくから、メティリートは、小走りになっていた。

「あの……バティラート様……」
「暗殺の魔法の話なら後で聞く」

 冷たく言うバティラートは、振り向こうとはしなかった。

 やっぱり、聞かれていたんだ。このままだとこいつ、メティリートにまで無茶苦茶言い出しかねない。

 俺は、メティリートの手から逃れて、バティラートのところまで走った。

「お、おい! 待てよ!! 言っとくけど誤解だからな!! 誰もお前を暗殺しようなんて、考えてないからな!!」
「では、誰を暗殺しようとしていたんだ?」
「そ、それは……こ、こういう時のためだよ!! 魔獣を退治しなきゃならないんだろ!?」
「魔獣を退治するために暗殺の魔法を用意したと言うのか?」
「へ!? あ、ああ!! そうだよ!! 興奮した魔物が飛び込んできたら、ここは終わりだろ!? だからだよ!!」
「……ではその魔法、今役に立ててもらおうか?」
「え……」
「来い。お前とメティリートで、見事魔獣を追い払えたら、許してやる」
「え……えっと……」

 できるのか? 魔獣退治なんて。俺、今うさぎで、魔法も使えないのに。

 俺がすぐには返事をできないでいると、バティラートは、さっさと先に歩いて行ってしまう。

 代わりに、後ろからついてきたメティリートが、俺を抱き上げた。

「もう……うさぎさん。勝手な約束しないで……」
「なんだよ! このまま殺されるよりマシだ!」
「なにか、作戦でもあるの?」
「……ない。今から考える! おい! 待てよ! バティラート!!」

 俺は、さっさと先に歩いていくバティラートのところまで走った。ウサギなだけあって早い!

 後ろでは、メティリートが頭を抱えているけど、魔獣退治にはまず、どんな魔獣が出たか知らなきゃダメだろ!

「おい!! バティラート!! 聞いてんのか!!! 止まれよせめて!! 聞いてんのかーーーー!!」
「うるさいぞ!」

 そう怒鳴って、バティラートが俺に振り向く。

「黙れ!! 魔獣退治など、できると思ってるのか!? うさぎに!」
「うさぎじゃねーよ!! お前がフィアデス解放しないからこんなことになってるんだぞ!!」
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