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12.何をされるの?

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 なんで香炉だけ直さなかったんだろう?

「……何をしているんだ?」

 わあ! びっくりした!

 声のした方に振り向くと、ドアを開けてオーフィザン様が立っている。

「あ、あの……これ……」

 壊れた香炉を乗せたハンカチを差し出すと、オーフィザン様は、首をかしげた。

「それがどうかしたか?」
「あの……ま、魔法で直したり……しないんですか?」
「……それは魔法では直せない」
「え? な、なんで……?」
「…………魔法が効かない。そういう処理をされている」
「そうですか……」

 全部直るわけじゃないんだ……直らないものもあるんだ。

 僕は、ハンカチをそっと元に戻した。壊れちゃったのに、こうして捨てないで取って置いているってことは、よほど大切なものなのかもしれない。

 オーフィザン様は、杖を置いてベッドに座ってから、僕に聞いた。

「気になるのか?」
「……ごめんなさい」
「………………なにがだ?」
「だって、大切なものだったんですよね?」
「……大切……そうだな……」

 オーフィザン様は、鋭い目で僕を見ている。怒ってるんだ。

 だけど、悪いのは僕だ。そんな風に怒るほど、大切なものだったんだ。それを壊しちゃったんだから、オーフィザン様が怒るのは当然。

 僕、オーフィザン様にひどいことしちゃったんだ……

「ご、ごめんなさい……魔法で直せないのに……僕、割っちゃって……」
「……それだけか?」
「え?」
「………………それだけか?」

 オーフィザン様は言いながら、ゆっくり僕に近づいてくる。彼は、じっと僕を見ていた。なんだか怖い。それだけかってことは、もっと謝れってこと? 

 悪いのは僕だし、オーフィザン様がそう言うのなら、もっと謝ったほうがいいんだろうけど、もっと謝るって、何すればいいの? そうか! 土下座か!!

 僕は、すぐにベッドから降りて、床で土下座した。

「ごめんなさい……」
「……そういうことじゃない……」

 オーフィザン様が僕に手を差し出し、立ち上がらせてくれる。

「そんなことはしなくていい」

 あ、あれ?? これじゃないの? じゃあ、何をすればいいの?

 あ、そうか、弁償だ!! でも僕、お金持ってないんだ。シーニュみたいにお給料もらってるわけでもないから、いつか返すなんて事も出来ない。オーフィザン様だって、それは知ってるはずなのに。

 ちらっとオーフィザン様を見上げると、彼は、じっと僕を見下ろしている。

 うぅ……払えませんって、言っていいのかな?

「あ、あの……オーフィザン様……」
「…………なんだ?」
「僕……あの、あの…………僕……僕……お金……お金ない……ないんです……」
「…………知っている。そうじゃない」
「え………………」

 違うの? お金じゃないなら何? お金以外? お金以外で弁償ってこと?

 ま、まさか……体で謝れ? これか!

 ひ、ひどい……人の弱みに付け込んで、体を要求するなんて、酷い人だっ!!

 うう……い、嫌だけど……だけど、僕には香炉を直すことはできないし……

 ううう……我慢するしかないのか…………頑張れ僕! そもそも僕、性奴隷なんだし!!

「あ、あ、あ、あの……ぼ、ぼ、僕の……僕の……僕のか、か、か、か、かかかかかかか体を……体を……」
「体を、なんだ?」

 オーフィザン様、首を傾げてる。

 うううーーー!! 最後まで言わせる気だ!! なんて意地悪な人だ!!

「か、かっ……か、かかかかか体を…………っ! す、好きに……好きにしていいので許してくださいっっ!!!!」

 もう泣きそうになりながら言ったのに、オーフィザン様、納得してないみたい。何かを考えるように、口に手を当てて言った。

「……他に、ないのか?」

 他っっ!!?? 他って……もっと酷いことをさせろってこと!? 体を好きにするより酷いことをっ!!??

 え……それって、どんなこと? もう想像つかないよ。

 だけど、よく分からないけど、きっと、ものすごく酷いことをしたいんだ! そんなに大事な香炉なの!? ど、どうしよう……

 もう僕は困り果ててしまった。僕、これからそんなに酷いことされるの? 怖いよ……

 うつむくだけの僕に、オーフィザン様が聞いてくる。

「他に、俺に言うことはないのか?」
「……う……うう…………………………えっと……あ、あの……じ、じゃあ…………一体、何をしたいんですか?」
「何を……か……」

 オーフィザン様は呟いて、今度は黙り込んでしまう。じっと僕を見てるから、ますます僕は焦る。

 な、なに? なに!? 一体何!? もう怖い! せめて、何をして欲しいのか教えて!! そうしたら、少しは怖さがなくなる気がする。

 それなのに、オーフィザン様はじーっと僕を見てるだけだ。もう僕、どうしたらいいの!?

 困る僕の頬に、オーフィザン様が触れる。

 怯えていたら、オーフィザン様は、急に僕を引き寄せて、僕の髪に触れた。くすぐったくて、僕は体を丸めてしまう。

 な、なに? なにをされているの?

 彼の手が、僕の髪をすいて頬に降りて、今度は首に触れる。それから、僕の着ていたバスローブの中に入ってきた。

「ひゃっ……!!」

 う、う……肌に触れられると、ちょっと怖い……それに恥ずかしい。あんまり触らないで欲しい……

 オーフィザン様の大きな手が、僕の胸からゆっくり腹まで滑っていく。

 うう……無理……やめて欲しいけど、我慢しなきゃ……

 震えながら、僕は耐えていた。すると、急にオーフィザン様は僕を抱き寄せた。抱きしめられているみたいだけど、さっきよりずっと優しい感じがする……

 さっきはぎゅうって強く抱きしめられたのに、今度は、すぐに壊れちゃうものをそっと包むみたいだ。

 こんな風にされるのは、ちょっと気持ちよくて嬉しいかも……

 だけど、こんなに近いと、それだけで恥ずかしい。

 オーフィザン様と僕の体がくっついてて、僕の胸がすごく早く動いてるの、オーフィザン様にも伝わっちゃってる。そばにいたいのに、オーフィザン様の体は僕よりちょっと熱くて、その熱で頭がクラクラしてしてきた。

 するりと、僕の肩からバスローブが落ちる。足元にさっきまで着てたものがあって、ますますドキドキした。

 半身がむき出しになってしまい、僕の体がびくって震える。

 一体何をされるの……?

 怯える僕の耳元で、オーフィザン様は囁いた。

「魔法を解いてやる……」

 え? え? ま、魔法? 香炉壊した罰、それだけ? な、何かしろとか言わないの?

「……ま、魔法を解きたいんですか?」
「ああ。もちろんだ……」

 な、なんだ、そんなことか…………大切な香炉を壊した罰がそれなら、全然ひどくない。そのくらいなら、怖くない!

 僕は、元気よく頷いた。

「わかりました! 魔法、解いてください!」
「じっとしていろ……」
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