12 / 174
12.何をされるの?
しおりを挟むなんで香炉だけ直さなかったんだろう?
「……何をしているんだ?」
わあ! びっくりした!
声のした方に振り向くと、ドアを開けてオーフィザン様が立っている。
「あ、あの……これ……」
壊れた香炉を乗せたハンカチを差し出すと、オーフィザン様は、首をかしげた。
「それがどうかしたか?」
「あの……ま、魔法で直したり……しないんですか?」
「……それは魔法では直せない」
「え? な、なんで……?」
「…………魔法が効かない。そういう処理をされている」
「そうですか……」
全部直るわけじゃないんだ……直らないものもあるんだ。
僕は、ハンカチをそっと元に戻した。壊れちゃったのに、こうして捨てないで取って置いているってことは、よほど大切なものなのかもしれない。
オーフィザン様は、杖を置いてベッドに座ってから、僕に聞いた。
「気になるのか?」
「……ごめんなさい」
「………………なにがだ?」
「だって、大切なものだったんですよね?」
「……大切……そうだな……」
オーフィザン様は、鋭い目で僕を見ている。怒ってるんだ。
だけど、悪いのは僕だ。そんな風に怒るほど、大切なものだったんだ。それを壊しちゃったんだから、オーフィザン様が怒るのは当然。
僕、オーフィザン様にひどいことしちゃったんだ……
「ご、ごめんなさい……魔法で直せないのに……僕、割っちゃって……」
「……それだけか?」
「え?」
「………………それだけか?」
オーフィザン様は言いながら、ゆっくり僕に近づいてくる。彼は、じっと僕を見ていた。なんだか怖い。それだけかってことは、もっと謝れってこと?
悪いのは僕だし、オーフィザン様がそう言うのなら、もっと謝ったほうがいいんだろうけど、もっと謝るって、何すればいいの? そうか! 土下座か!!
僕は、すぐにベッドから降りて、床で土下座した。
「ごめんなさい……」
「……そういうことじゃない……」
オーフィザン様が僕に手を差し出し、立ち上がらせてくれる。
「そんなことはしなくていい」
あ、あれ?? これじゃないの? じゃあ、何をすればいいの?
あ、そうか、弁償だ!! でも僕、お金持ってないんだ。シーニュみたいにお給料もらってるわけでもないから、いつか返すなんて事も出来ない。オーフィザン様だって、それは知ってるはずなのに。
ちらっとオーフィザン様を見上げると、彼は、じっと僕を見下ろしている。
うぅ……払えませんって、言っていいのかな?
「あ、あの……オーフィザン様……」
「…………なんだ?」
「僕……あの、あの…………僕……僕……お金……お金ない……ないんです……」
「…………知っている。そうじゃない」
「え………………」
違うの? お金じゃないなら何? お金以外? お金以外で弁償ってこと?
ま、まさか……体で謝れ? これか!
ひ、ひどい……人の弱みに付け込んで、体を要求するなんて、酷い人だっ!!
うう……い、嫌だけど……だけど、僕には香炉を直すことはできないし……
ううう……我慢するしかないのか…………頑張れ僕! そもそも僕、性奴隷なんだし!!
「あ、あ、あ、あの……ぼ、ぼ、僕の……僕の……僕のか、か、か、か、かかかかかかか体を……体を……」
「体を、なんだ?」
オーフィザン様、首を傾げてる。
うううーーー!! 最後まで言わせる気だ!! なんて意地悪な人だ!!
「か、かっ……か、かかかかか体を…………っ! す、好きに……好きにしていいので許してくださいっっ!!!!」
もう泣きそうになりながら言ったのに、オーフィザン様、納得してないみたい。何かを考えるように、口に手を当てて言った。
「……他に、ないのか?」
他っっ!!?? 他って……もっと酷いことをさせろってこと!? 体を好きにするより酷いことをっ!!??
え……それって、どんなこと? もう想像つかないよ。
だけど、よく分からないけど、きっと、ものすごく酷いことをしたいんだ! そんなに大事な香炉なの!? ど、どうしよう……
もう僕は困り果ててしまった。僕、これからそんなに酷いことされるの? 怖いよ……
うつむくだけの僕に、オーフィザン様が聞いてくる。
「他に、俺に言うことはないのか?」
「……う……うう…………………………えっと……あ、あの……じ、じゃあ…………一体、何をしたいんですか?」
「何を……か……」
オーフィザン様は呟いて、今度は黙り込んでしまう。じっと僕を見てるから、ますます僕は焦る。
な、なに? なに!? 一体何!? もう怖い! せめて、何をして欲しいのか教えて!! そうしたら、少しは怖さがなくなる気がする。
それなのに、オーフィザン様はじーっと僕を見てるだけだ。もう僕、どうしたらいいの!?
困る僕の頬に、オーフィザン様が触れる。
怯えていたら、オーフィザン様は、急に僕を引き寄せて、僕の髪に触れた。くすぐったくて、僕は体を丸めてしまう。
な、なに? なにをされているの?
彼の手が、僕の髪をすいて頬に降りて、今度は首に触れる。それから、僕の着ていたバスローブの中に入ってきた。
「ひゃっ……!!」
う、う……肌に触れられると、ちょっと怖い……それに恥ずかしい。あんまり触らないで欲しい……
オーフィザン様の大きな手が、僕の胸からゆっくり腹まで滑っていく。
うう……無理……やめて欲しいけど、我慢しなきゃ……
震えながら、僕は耐えていた。すると、急にオーフィザン様は僕を抱き寄せた。抱きしめられているみたいだけど、さっきよりずっと優しい感じがする……
さっきはぎゅうって強く抱きしめられたのに、今度は、すぐに壊れちゃうものをそっと包むみたいだ。
こんな風にされるのは、ちょっと気持ちよくて嬉しいかも……
だけど、こんなに近いと、それだけで恥ずかしい。
オーフィザン様と僕の体がくっついてて、僕の胸がすごく早く動いてるの、オーフィザン様にも伝わっちゃってる。そばにいたいのに、オーフィザン様の体は僕よりちょっと熱くて、その熱で頭がクラクラしてしてきた。
するりと、僕の肩からバスローブが落ちる。足元にさっきまで着てたものがあって、ますますドキドキした。
半身がむき出しになってしまい、僕の体がびくって震える。
一体何をされるの……?
怯える僕の耳元で、オーフィザン様は囁いた。
「魔法を解いてやる……」
え? え? ま、魔法? 香炉壊した罰、それだけ? な、何かしろとか言わないの?
「……ま、魔法を解きたいんですか?」
「ああ。もちろんだ……」
な、なんだ、そんなことか…………大切な香炉を壊した罰がそれなら、全然ひどくない。そのくらいなら、怖くない!
僕は、元気よく頷いた。
「わかりました! 魔法、解いてください!」
「じっとしていろ……」
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
102
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる