【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編2.出張中の執事(三人称です)

70.証拠

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 セリューが受け取った腕輪をカバンにしまっていると、急にダンドが悲鳴をあげた。

「ぐっ!」
「ダンド!!」

 振り向くと、彼はがっしりした男に後ろから羽交い締めにされていた。その隣にコリュムもいる。

 捕まったダンドが苦しそうに呻く。振り払おうとしているようだが、彼を押さえつける腕はビクともしない。狐妖狼の力を封じた影響かもしれない。

 コリュムはセリューを見て、気味悪く笑いながら言った。

「セリューじゃないかあ……嬉しいなあ。俺の家に来てくれたのかあ?」
「ダンドを離せっ!!」
「俺じゃない男と、なにをベタベタしているんだあ? 許せないなあ……」

 コリュムがダンドを捕まえる男に、顎で合図を送る。すると、男がダンドの首を締め上げた。

「ぐっ……」
「ダンド!! やめろっ!! さっさとダンドを離せ!!」
「ダメだ。お前とベタベタした罰だ。やれ」

 男がダンドを捕まえる腕に力を入れる。見る間に彼の顔は青くなっていく。

「コリュム!! やめろ!」
「やめてやってもいいぞ。代わりにお前が永遠に俺の奴隷になると誓え」
「なに……?」
「嫌だと言うなら、この場でこの男を殺す」
「やめろっ!!」
「やぁめて欲しかったらさっさと誓ええぇ……俺の元に来い……セリュー……悪いようにはしないぞ……嫌だと言うならその男を殺す」
「やめろ! ダンドは関係ないだろう!!」
「関係あるじゃないかあ……お前は俺のものだ。バカな魔法使いまで使ってお前をよんだんだ。もう逃がさないぞ」
「……貴様……!!」

 ずっと我慢して来たが、もう限界だ。馬鹿らしい理由でふざけた事件を起こした挙句、ダンドまで苦しめるとは、もう我慢できない。

 セリューはありったけの力でコリュムを殴り飛ばした。コリュムはあっさり吹き飛んで壁に激突する。突然主人が吹き飛び、ダンドを捕まえていた男が戸惑っているうちに、セリューはその男を殴り倒した。男はあっさり床に倒れ、泡を吹いて動かなくなる。

 ダンドは何度か咳き込んでから、起き上がった。

「ゲホ……ありがとう……セリュー……」
「大丈夫か?」
「うん……セリューって、前から思ってたけど、馬鹿力だよね。短剣一つで銀竜の爪を受け止めたり、塀に短剣刺したり」
「……うるさい……」

 そう言いながらも、ダンドが元気そうで安心した。

 セリューはまだ気絶したままのコリュムの胸倉を掴みあげた。

「起きろ。コリュム」
「う……ぐ……せ、セリュー? お、お前……こ、こんなことをして、どうなるか……」
「どうするのか言ってみろ。残念だが、私はもう、ここにいた頃の私ではないんだ。私が仕えるのは、オーフィザン様ただ一人。邪魔をするなら殺す」
「ひっ……」

 震え上がるコリュムを前に、セリューは短剣を抜いた。後ろからダンドが軽い口調で言う。

「セリューセリュー、あんまり脅さないように」
「脅す気は無い。話を聞くだけだ」

 セリューは短剣をコリュムに突きつけた。

「釘の事件はお前がそこの魔法使いに命じて起こしたことだな?」
「な、なにを……知らん!!」
「お前、さっき自分でバカな魔法使いまで使ってお前を呼んだと言っただろう」
「知らん!!」
「そこの魔法使いは、お前に頼まれたと言っているぞ」
「そんなことはそいつが勝手に言っているだけだろう。俺は知らん!!」
「これはお前の部屋にあった釘だぞ」

 セリューはブレシーに渡された釘のうち、消えてなくならなかったものを取り出した。フィッイルに魔法を解くように言うと、彼はそれに触れる。釘は、くにっと曲がって、一本のペンに姿を変えた。それにはコリュムの名前が書いてある。

「見ろ。これはおまえの部屋にあったもので作られたんだ」
「な……このバカ!! なぜそんなもので作った!!」

 コリュムに怒鳴られ、フィッイルは震え上がる。セリューは彼を背後に隠して、コリュムに詰め寄った。

「やはりお前が命じていたな?」
「あ……いや……それは知らん!!」

 強引な言い方に、ダンドはため息をつく。

「コリュムさん。それは無理があるよー」
「うるさい! 知らんもんは知らん!!」

 怒鳴り散らすコリュムに、セリューは、シーニュから聞いたことを話した。

「図書館に釘が打たれた次の日に、お前をあそこで見たものがいる」
「あの農村から来た男だな? あんな男の話など、信用できるものか」
「やはりお前じゃないか。シーニュさんに声をかけられたのは」
「……あ、知らん! その男が見間違えただけだ。俺は関係ない!! 知らんもんは知らん!!」

 頑なな態度のコリュムに、今度はダンドがきいた。

「それ、通じると思ってるの?」
「通じる。俺が知らんといえば知らんのだ。誰もがそうする。王ですらそうだ。誰も俺たちには逆らえんのだ。ざまあみろ!!」
「どうする? セリュー」
「……これ以上は意味がない。この男はずっとこうだった。こいつがないと言えばないことになる。こう答える以外の選択肢を知らないんだ」
「……気の毒。同情したくないけど」

 ダンドにそう言われても、コリュムは平気でそれを笑い飛ばす。

「ふん。そういうことだ。ここでは、全てが俺の思い通りだ」
「でもそれ、ここでだけだろ? オーフィザン様の前で、同じことが言える?」
「お、オーフィ……な、なぜそうなるんだ?」
「だって、俺らの主人、オーフィザン様だから。調査の結果はオーフィザン様に全てお話しする」
「ま、待て! どこまで調べた!?」
「言えないよ。オーフィザン様にしか」
「おい!! やめろ、待て!!」
「どうする? セリュー?」

 ダンドがこちらに振り向く。

「こいつに認めさせるには、伯爵の方をなんとかしなくてはならない。コリュム、伯爵の部屋はどこだ?」
「知らん」

 コリュムはあっさりそっぽを向くが、代わりにフィッイルが答える。

「僕、知ってるよ。あっち! 魔法使って逃げる方法探している時に見つけた!!」
「よし……案内しろ。頼んだぞ」
「はーい!!」

 フィッイルは、返事をしてこちらに向かって手招きする。セリューと、コリュムを縛り上げたダンドもそれに続いた。
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