【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編2.出張中の執事(三人称です)

72.交渉

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 広い庭の一角に、馬小屋はあった。セリューとダンドがそれに駆け寄ると、そこから出てきた掃除をしていたらしい男がこちらに振り向く。

「な、なんだ、お前たち!?」

 セリューは男に駆け寄り、首にお守りを押し付けた。すぐに気絶した男を受け止め、近くの柱にもたれさせる。乱暴なやり方だが、とにかく城に急がなくてはならない。

 二人でめぼしい馬を物色して、それに飛び乗った。後ろに、フィッイルを乗せてやる。

「フィッイル、ちゃんとつかまっていろ」
「うん!」
「落ちるなよ。ダンド、馬には乗れるか?」
「乗れるよ。オーフィザン様に教わったんだ!!」
「オーフィザン様にか!? お前ずるいぞ!!」

 ダンドはこちらを見て笑う。

「行こう。セリュー!!」
「待て、ダンド!!」

 夜も更けた街中を馬を飛ばして行くと、城が見えてくる。そのまま突っ込みたいところだが、門は閉まっていて、門番に止められてしまう。

「止まれ!!」
「私です! 陛下に今すぐ謁見を」
「貴様だからなんだ!! とうに城を去った者が、自由に門を通れると思うな!!」

 数日前に来た時はあっさり通したくせに、ずいぶんと冷たい言い方だ。だが、すぐに検討がついた。伯爵の差し金だろう。このままでは門を通れない。押し通るしかない。セリューは後ろに乗せたフィッイルに叫んだ。

「おい! フィッイル! 魔法で門を開け!」
「えええ……いいの? また失敗するよ?」
「構わない!」
「えーい!」

 フィッイルが門に向かって何かを投げる仕草をすると、門は爆発し、大きな穴が開く。門を開けることはできなかったが、この際通ることができればそれでいい。

「行くぞ! ダンド!!」
「うん!!」

 馬を走らせ、そのまま城内に入る。銀竜は王を狙っている。今の時間なら、寝所のはずだ。ティデュルは優秀な護衛だが、銀竜が相手では、いつまで持つかわからない。

 追ってくる者たちを振り切り、寝所に走る。それの扉が見えて来た。しかし、セリューたちがそれに近づく前に、扉は吹き飛んでしまう。

 馬に乗ったまま壊れた扉を乗り越え中に入ると、寝所の壁は崩れ大きな穴が空いていた。空には巨大な銀竜がいて、床にへたり込む王を睨みつけている。王の前に立ったティデュルは、巨大な剣を構え、銀竜と対峙していた。

「ひけ……銀竜……お前たちの怒りを買うようなことはしていないはずだ」

 しかし、竜はそれを聞かず、二人に突っ込んでいく。セリューは、伯爵の屋敷でフィッイルに返しておいてと頼まれた腕輪を持って、竜に向かって走った。

「銀竜! 話を聞け!!」

 叫んでも、竜は聞かない。セリューはティデュルの前に出て、竜の羽根に飛び乗った。

「聞け! 伯爵とどんな取引をしたかしらんが、あれに従ってもろくなことにならないぞ!!」

 叫ぶセリューを銀竜は振り落とす。セリューはあの腕輪を掲げた。

「聞け!! 巣に行く腕輪なら私も持っている!!」

 銀竜はやっと、話を聞く気になったのか、空中から腕輪を見下ろして言った。

「なぜ、お前まで……」
「昔、私と話をしたじゃないか。いつか私が困っていたら、手を貸すと言っただろう?」
「……言ったか? 覚えていないな……」
「いいや。確かに言った。忘れているだけだ」
「……お前、名前は?」
「…………クラジュ。クラジュだ。見ろ。ここに名前が書いてある」

 セリューは腕輪の、名前が書いてあるところを指した。銀竜に会ったなど、全てデタラメなうえに、全く知らない名前だが、この際利用させてもらおう。
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