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番外編5.花嫁修業してドジを直します!

102.また壊しちゃった

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 上の階に上ると、狭い部屋があって、天井から大きくて変な形のランプが吊り下げてあった。そのランプは、部屋のほとんどを埋め尽くすほどの大きさで、ぼんやり火がついててすごく温かい。よかったあ。あったかいところに来れて。

 大きなランプであたたまっていると、キュウテが、窓の向こうを指差しながら僕らを呼んだ。

「ねえ、見て。何か飛んでるよ?」

 何か……? なんだろう?

 駆け寄って窓の外を見ると、彼が指差す先に、竜が飛んでいた。ここからだと小さく見えるけど、すぐそばまで来たら、かなり大きそうだ。

「竜ってことは……もしかしたら、またオーフィザン様のお客さんかも!!」

 僕は絶対そうだって思ったのに、フィッイルは呆れたように言う。

「馬鹿なの? そんなはずないでしょ。あれは銀竜だ……ロウアルが、オーフィザンの魔法の道具は狙われてるって言ってた」
「ええ!? オーフィザン様の道具、誰かが狙ってるの?」
「うん。でも、銀竜を近づけさせないための対策してるみたいだし、問題ないかな……」
「大変だ! オーフィザン様に伝えなきゃ!」
「……僕の話、聞いてた? 伝える必要ないよ。使い魔を通して、もう知っているはずだから」

 フィッイルが指差した先では、犬さんが窓を開けて出て行こうとしている。

「危ない! 行っちゃダメだよ!!」

 慌てて僕は犬さんを抱っこする。この子はオーフィザン様がくれたんだから、僕が守ってあげなきゃ!

 それなのに、横からフィッイルが僕を怒鳴りつける。

「行っていいんだよ!! それ、使い魔なんだから!」
「使い魔でも犬さんが危ないよ! それにこれ、オーフィザン様なんだもん!」
「危なくないから離しなよ……」

 フィッイルはそう言うけど、今外に出たら危ない。竜に食べられちゃうかもしれない。絶対離さないもん!

 そしたら、キュウテが窓の外を指して言った。

「ね、ねえ! 見て!! 銀竜がこっちに気づいたよ!!」

 僕もそっちを覗くと、確かに、空から銀竜がこちらを睨みつけている。

「うわあああ! 早く逃げなきゃ!!」

 焦る僕とキュウテだけど、フィッイルだけは落ち着き払って言う。

「出ないほうがいい。下手に外に出れば空から襲われる。その犬、外に放り出して、僕らはここに隠れていよう」
「なんてこと言うのーー!!」

 僕は思いっきりフィッイルを怒鳴りつけた。

「こんな子犬を外に放り出して隠れるなんて、フィッイル最低だ!!」
「それ犬じゃない。使い魔なの。見て。そいつ、外に出て行きたそうにしてるでしょ? オーフィザンが外の様子を確認しに行こうとしてるんだよ」

 確かに犬さんは僕の腕を引っ掻いて、腕から逃れようとしてるけど、だからって外に放り出すなんてできないよ!!

「それはフィッイルがひどいこと言うからだよ!」
「ひどくないし、邪魔してるのお前だから!!」
「僕は絶対犬さんを守るもん!!」
「いや、だから……」

 なおも言いかけるフィッイルだけど、それを遮って、キュウテが叫んだ。

「ねえ!! 二人とも! 銀竜がこっちに迫ってくるよ!」

 うわああ! 本当だ! 窓の外の竜の影、どんどん近づいてくる!!

「キュウテ! 逃げなきゃ!!」
「うん!!」

 僕もキュウテも、ドアの方に走りだすけど、後ろからフィッイルが僕の腕をつかむ。

「外へ出たらダメ!! ここにいればオーフィザンが守ってくれるから!! あいつの魔法の火が燃えてるだろ!! このランプが銀竜を近づけないようにしているから!」
「な、なんでそんなに詳しいの!?」
「僕も魔法使いだから分かるんだよ!」
「そ、そんなのずるい!」
「何が!?」
「それに犬さんを囮にする人のことなんて信じないもん!」
「だから犬じゃない!!」

 言い合いを始めちゃう僕らに、キュウテが叫ぶ。

「ねえ! 見て!! 犬が……」

 え? あれ? あ、あれ? 抱っこしてたのに、犬さんいないよ?

 あ! 窓の方に走って行っちゃってる!

「待って!」

 僕は犬さんを追いかけようとしたけど、急いじゃったせいで、持ってた筆が手からすっぽ抜けて飛んでいっちゃう。それはランプを吊るしていた鎖にすっぽりはまってしまった。

 うわあああー!! またこんなドジをしたことがバレたら、オーフィザン様との結婚に反対されちゃう!

 フィッイルも、鎖に引っかかった筆を見て、僕を怒鳴りつけた。

「このバカーーーーっっ!!」
「う……ば、バカじゃないもん……と、とってくる!」

 僕はランプに飛び乗る。ジャンプ力はあるんだ。ランプの上に飛び乗ったら、あと少しで鎖に引っかかった筆に手が届きそう。

「バカバカー! 降りて!! どうせまた何かするんだろ!!」

 下からフィッイルが叫ぶけど、降りるなんてできない。筆まであと少しで手が届くんだから!!

 あ、あれ……? ランプの下の方から音がする。あ! 犬さんがランプを上ってくる。

 下からフィッイルが僕に向かって叫んだ。

「ほら! オーフィザンもやめろって言ってるよ! 降りて来て!!」
「ダメ! 筆、取り返すんだもん!! 犬さんは危ないから、来ちゃダメだよ!!」

 僕は鎖に引っかかっている筆を思いっきり引っ張った。だけどそれはビクともしない。

 うー……何が何でも引っこ抜く!!

 思い切り引っ張っると、筆の先がちょっとだけポンって破裂した。おかげで筆がちょっと動く。

 そうか、これ壊れてるし、いっぱい動かせばまた前みたいに燃えて、抜けるようになるかも!

 ぎゅーって引っ張ると、筆の先からポンポンって音がして、なんとか抜けた!!

 やったー!!

 だけど、グラって足元のランプが揺れる。え………………うわあああーーっ!! ランプを吊るしてた鎖、切れちゃってる!!

 僕は慌ててランプから飛び降りる。大きなランプは床に落ちて、音を立てて割れてしまった。

「わ、わ、わ……どうしようーーーっ!!」
「このばかーー!! どうするのこれ!! 銀竜を近づけさせないためにあったのに、粉々……バカクラジューーっ! バカーーっ!」

 フィッイルが怒鳴る。そんなにバカって言わなくても……

 犬さんまで僕に飛び乗って来て、僕の頭をポンポン叩く。

「い、痛いよ……犬さん、乱暴しちゃダメだよ」
「オーフィザンが怒ってるんだよ!! ったく、なんでこの使い魔、話せるようにしておかないんだよ!! あいつ、バカなの!?」

 わわわわわ! それどころじゃない! ランプの火が燃え上がってるよ!! どうしようーーーっ!! えっと、火が燃えたらどうするんだっけ?

「水ーーっ!」

 キュウテが叫ぶ。そうだ、火には水だ!!

 慌てている僕らを押しのけ、フィッイルが燃え上がるランプの前に立つ。彼が手を振ると、巨大な水の玉が現れて、火を消してくれた。

 やっぱり魔法ってすごい!

 ホッとしたのもつかの間、キュウテが窓を指差して叫ぶ。

「逃げたほうがいいよ!! 銀竜が集まって来た!」

 え……? うわあああっ!! 窓の外にいた大きな銀竜が僕らのいる建物に迫って来てる!!
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