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番外編10.ペロケと仲良くなる!

128.ペロケと協力する

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 僕らが杖にぶち込まれたのは、薄暗い部屋だった。

 壁には燭台がかけてあるけど、なんだか不気味。周りには天井まで届きそうなほど背の高い本棚が並んでいて、変な形の道具が並ぶ棚もあった。

 なにこの部屋……暗くて怖い……

 僕が持っていた杖は、棚の一つに突っ込んでいて、そこに並べてあったものが床に落ちて割れたり、杖がぶつかった衝撃で壊れちゃったりしてる。杖も途中で折れてるし……ま、またいっぱい壊しちゃった……

「こんのっ……馬鹿猫……」

 ゆらりと、後ろでペロケが立ち上がる。

 う……こ、これはものすごーく怒っているときの声だ。こ、怖い……

 恐る恐る振り向く。

 うわああああああああ!! すごく怖い!! 咲いたばかりの薔薇をドジで水浸しにしたときと同じ顔をしている!!

 その時は「お前を水に沈めてやる」って言って、錨を振り回しながら追いかけてきたんだ。
 そのときと同じ顔をしている……!!

「あ、あのー……ぺ、ペロケ……さん……あの……いろいろごめんなさい……」
「殺す……」
「お、おおお、落ち着いてっ……わああああ!!」

 襲ってくるペロケから逃げ出す僕。だけど、相手には羽があるんだ! ペロケは後ろから僕に飛びかかってきた。

「捕まえたぞ! クソ猫!!」
「く、クソ猫じゃないもん! 狐妖狼だもん!!」
「黙れっ!! 今日と言う今日こそは許さない……皮剥いで肥料にしてやるっっ!!」

 わあああん!! 怖いいいっ!

 だけどそこへ、救いの光が入ってくる。閉まっていた扉が開いて、誰かが入ってきたんだ。助かった!!

「たっ……むぐっ!!」

 助けを求めて叫ぼうとしたけど、後ろからペロケに口を手で塞がれちゃう。

 うーー!! 逃げなきゃ何をされるかわからないよ!!

 必死に暴れて拘束から逃れようとする僕に、なぜかペロケは耳打ちしてきた。

「馬鹿!! 見て!! あれ見て!!」

 あれってなに!? 誰かが僕を助けにきてくれたんじゃないの!?

 だけどペロケが指した先、部屋の扉のあたりには、助けになんか来てくれるはずのない人が立っていた。

 せ、セリュウウウウウウウウウーーーーーー!!!!!

 なんでここにいるの!!??

 どうしよう……ここにあるもの、僕が壊しちゃったって知れたら……こ、殺される……

 ガタガタ震え出す僕に、ペロケは小さな声で言った。

「分かっただろ。こんなことが知られたら、僕ら殺されるんだ!!」
「え……ぺ、ペロケさんも?」
「僕は前にオーフィザン様を裏切ったことがあるから、セリュー様の僕に対する目はものすごーく厳しいの!! ここの物壊したって知れたら……焼き鳥にされちゃうかも……」
「ど、どうしよう…………」
「……何とかしてここから逃げないと……とにかく、僕だけ助かるために、お前が囮になってセリュー様に飛び掛かれ」
「ええ!? な、なにそれ!! やだよ! そんなの!」
「そもそもお前のドジが原因だろ!! 責任とってお前だけ死んで僕を助けろ!!」
「絶対、嫌だーー!! 僕を囮にしたら、セリューにペロケのこと言うもんっ!!」
「しっ!」

 ペロケが僕の口を手で覆う。彼が顎でさす方を見れば、セリューがこっちに振り返っていた。

 こわああああああ!!

 慌てて自分の両手で口を押さえる。見つかったら殺される……

 もう死んだ気になって息を潜める。

 は、早く向こうを向いて!! ここには何もいませんっ!!

 祈りまくりながら、何事もなくセリューがどっか行ってくれることだけを願う。

 ち、近づいてくる……も、もうダメっ……怖すぎて……息が苦しいよ……

 死ぬ気になっていないフリをしていたら、セリューは僕らが隠れている本棚の横をすり抜け、別の本棚から本を引き出し始めた。た、助かった……

「まずい……」
「え? 何がまずいの?」
「あれだよ。馬鹿猫」

 馬鹿猫は余計……

 ペロケが指差す方には、僕らと一緒に部屋に飛び込んできたお布団。ちょうど本棚の影になって見えないみたいだけど、あんなところにあったらすぐに見つかっちゃうかも!!

「ど、どうしよう……ペロケ!!」
「……馴れ馴れしく呼ぶな!! 敬語使え! 僕の方が先輩なんだから!」
「だ、だって面倒だもん……それより、どうするのー!?」
「あれ持って部屋から逃げるしかないでしょ!! すっっごくむかつくけど、あれ、オーフィザン様がお前のためにわざわざ猫柄にしてくれた布団だろ。この城に一つしかないんだ!!」
「う、うん……あ、ありがとう……僕のお布団、運んでくれるんだ!!」
「違う馬鹿!! あれと一緒に城の廊下を飛んでいるところ、城中のみんなが見てるんだ!! あれをここに放り出して行ったら、僕らがここに入ったのがバレちゃうだろ!!」
「あ……そ、そうか……」
「杖も壊れちゃったし、一人で引きずって運んでいたらすぐに見つかる……二人で運ぶしかない……行くよ!!」
「う、うん!!」

 僕らは二人でセリューがこっちに気づかないようにこっそり走って、なんとかお布団までたどり着いた!!

「じゃあ、そっち持って! クラジュ!!」
「う、うん!!」

 ペロケに言われた通り、僕はお布団の後ろを持つ。ペロケが前を持って、僕らはゆっくりこっそり棚の影に隠れながら歩き出した。

 セリューはずっと、手元のメモを読みながら、棚にある本や、変な形の道具なんかを集めている。セリューのことだから、多分、というか絶対にオーフィザン様から頼まれてしてるんだろうけど、何してるんだろう……薬みたいなのとか、変わった形の棒とか、な、なにあれ!? 手錠や鎖まで集めてる!!

 ついそっちに気を取られちゃう。わわっ!! 足元見てなかったから転びそう!!

 前を歩くペロケが小さな声で怒鳴る。

「馬鹿っ!! ちゃんと前見て!! 馬鹿!!」

 うううー! ひどい! なんでいつも馬鹿っていうの!??

 涙目になりながら布団を持ち直す。

 ペロケは前を歩き出すけど、すぐに振り向いた。

「お前が後ろだと、僕が見てないうちに後ろでドジするかもしれない……お前、前歩いて!!」
「う、うん……」

 言われて、僕はペロケと場所を入れ替わった。

「行くよ。クラジュ……ドジするなよ……」
「うん……」

 今度は僕が前を歩く。き、気をつけなきゃ……

 セリューはまだ、メモに書いてあるものを集めるのに夢中。気をつけて布団を運べば逃げられる!!

「クラジュ、足元に気をつけてね……」
「うん……」
「前見て! ぶつかる!」
「は、はい!!」
「声小さく! 死にたいの!?」
「はい……」

 ううー……ペロケ、怖い。

 だけど言われたとおりにものすごく気をつけて歩いていたら、これだけ暗くて物がいっぱいある部屋を僕が歩いているのに、物が壊れない!! ペロケ、すごいなぁ……

「ね、ねえ! ぺ、ペロケ!! こうやって協力するの、初めてだね!!」
「……余計なこと言わなくていいの。協力したくてしてるんじゃないんだから!!」

 小声で言うペロケだけど、今回はあんまり怒ってないみたい!! 何だか嬉しい!!

 こっそりこっそり歩いて、僕らは扉の前まで来た。

 やったあああああ!!! これでもう大丈夫!!!

 だけど、そこで問題発生。地下の部屋は広かったんだけど、扉は狭い。大きなお布団を外へ出すのは一苦労。

 僕はあっさり扉を通れたけど、小さな扉にお布団が引っかかっちゃってなかなか出せない!! もう! 力尽くでひっぱっちゃえ!

 だけどペロケは怒り出しちゃう。

「ち、ちょっと馬鹿猫!! 引っ張ったらダメ!! 普通に落ち着いてやれば上手くいくんだから……!!」

 ペロケは怒るけど、一刻も早くお布団を持ってここから逃げなきゃ!!

 さらに思いっきり布団を引っ張ると、扉に引っかかっていた布団が抜けた!! やった!

 だけど、お布団は真ん中あたりでピリッと破れて、僕は尻餅をついちゃう。

「いたた……僕のお布団が……」

 せっかくオーフィザン様からいただいたのに、何でこうなるの??

 しょんぼりする僕の横をすり抜け、ペロケは一目散に階段を駆け上る。

「ぺ、ペロケ?」

 え? え? 何で走るの!?

 部屋の奥からバタバタと足音がした。後ろに振り向けば、ものすごい形相のセリューが、僕に向かって走ってくる。

 ぎゃあああああ!!!! ばれたああああ!!
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