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番外編15.どうしたんですか?
155.一緒に行く!
しおりを挟む「冗談だよー。そんなに怒るなよ」
笑っているフィッイルの隣に、僕も座って、クッキーをくわえる。
このクッキーも、オーフィザン様と食べてみたいなあ……
二人でクッキーをつまんでいたら、ロウアルさんが飛んで来た。
「ふ、フィッイルー…………お、俺も……いいか?」
「え? うん……はい」
フィッイルがかごを差し出すけど、ロウアルさんはクッキーには手を伸ばさずに、フィッイルを見上げた。
「そ、そうじゃなくて…………その……」
「……クッキーじゃないの?」
「ち、違うっ……そうじゃなくて……クラジュには、やったじゃないか……」
「クラジュに? ああ……」
フィッイルがカゴのクッキーをつまんで、ロウアルさんに差し出すと、彼は真っ赤になりながらも、嬉しそうにそれをくわえる。
いいなー……僕も、オーフィザン様とそういうの、やってみたい……
夜にはオーフィザン様とご飯を食べられるって考えながら、僕もクッキーを一口。そしたら、窓辺で本を読んでいるブレシーが目にとまった。
僕は、彼にクッキーのかごを持って駆け寄った。
「ブレシーも食べませんか!?」
僕が言うと、彼は顔を上げて、首を横に振る。
「……僕はいいです」
「甘いもの、苦手ですか?」
「いいえ。ですけど、それはクラジュの好物なんですよね? クラジュが食べた方がいいです」
「ブレシー……」
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「オーフィザン様の?」
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「そんなことないです! オーフィザン様に頼んでみます!」
「え!? えっと……それはちょっと……」
「だからクッキー食べてください! 僕、ブレシーにも食べて欲しいもん! はい!!」
「んっ……?」
半ば無理矢理、僕がつまんだクッキーをくわえさせると、ブレシーもちょっとびっくりしたみたいだけど、それを食べてくれる。
「うん……甘いです……ありがとうございます。クラジュ」
彼は、僕の頭を撫でてくれる。
彼のこの仕草、彼の癖らしい。家にも狐妖狼族がいて、よくそうしてるって言っていた。
だからかな……すごく手つきが優しい。
「え……?」
あれ? 今、何か物音がしなかった?
ロウアルさんにも聞こえたみたいで、彼は僕には見えないくらいのスピードでドアまで飛んでいって、人の姿になってそれを開く。
彼が開いた扉の向こうには、オーフィザン様が立っていた。
「オーフィザン様!」
うわあああ! オーフィザン様だ!! 昼からオーフィザン様に会えるなんて、すごく嬉しい!!
駆け寄った僕だけど、オーフィザン様は気まずそうに顔をそむけちゃった。
「……オーフィザン様? どうしたんですか?」
「…………いいや。少し、通りかかっただけだ」
なんで目をあわせてくれないんだろう……それにちょっと赤い?
せっかく会えたのに、こっちを見てくれないなんて寂しい……僕は少しでも一緒にいたいのに……
「お、オーフィザン様! 一緒にクッキー食べませんか!?」
「クッキー?」
「はい! ダンドがいっぱい焼いてくれたんです!! あ、あと、ブレシーが、魔法の道具見たいって言ってるんです! 一緒に行ってくれませんか!?」
「……ブレシーが?」
オーフィザン様が、ブレシーの方に向き直る。そしたらブレシーも顔をそむけてしまう。
「そんなものに興味があるのか?」
「……ま、まあ……そうです……」
「……」
どうしたんだろう……オーフィザン様、答えてくれない……
僕は心配になって、オーフィザン様の顔を覗き込んだ。
「……オーフィザン様? だめ……ですか?」
「……いいや……」
「本当ですか!?」
「ああ。今から行くか」
「はい!!」
僕がブレシーに「いいよね?」って聞くと、彼も頷いてくれる。
やったああああ! オーフィザン様ともう少し一緒にいられるんだ!!
喜んでいたら、ドアを開けたロウアルさんが、腕を組んで言った。
「で、てめえはなんで立ち聞きなんかしてたんだ?」
「……!」
また顔をそむけちゃうオーフィザン様。なんだか今日のオーフィザン様、ちょっと変……
「……なんのことだ?」
「とぼけんなよ。今ここに立って、クラジュたちの話、聞いてただろ」
「……」
オーフィザン様、また黙ってそっぽを向いちゃう。
「オーフィザン様? どうしたんですか?」
「……」
だんだん心配になって、見上げていたら、オーフィザン様は僕に振り向いてくれた。
「……無礼な真似をしたことは謝る」
「え……?」
「だが」
「わっ!」
急に腰に、温かくて力強い手が触れて、オーフィザン様のすぐそば、唇が触れあいそうなくらいそばまで抱き寄せられちゃう。
大好きなオーフィザン様の顔が、すぐそばにあって、一気に体の温度があがりそう。
ドキドキしている僕のあごに、オーフィザン様が触れて、目があって、もう心臓が止まっちゃいそう……
「お、オーフィザン……様……?」
「お前のことが心配だったんだ」
「え……??」
僕のことが? なんで??
もしかして、またドジするって思われてる??
「オーフィザン様! 僕、ドジしたりしません!!」
「……は?」
「ちゃんと気をつけます! 見ていてください!! 僕、ちゃんとブレシーを案内して見せます!!」
「……」
決意して言ったのに、オーフィザン様は「そういうことじゃない」って言って、僕を離しちゃった。
「お、オーフィザン様?」
「行くぞ。魔法の道具の倉庫だな?」
「は、はい!!」
嬉しいな。昼からオーフィザン様と廊下を歩けるなんて!! いつもお部屋で待ってばっかりだったから、すごく嬉しい!!
フィッイルには「クラジュを魔法の道具の倉庫につれていくなんて、危なくない?」って言われちゃったけど、僕にもできるもん!
思いがけず、オーフィザン様と一緒にいられることになって、尻尾まで揺れて、僕はオーフィザン様とブレシーと笹桜さんと一緒に、魔法の道具が並ぶ倉庫に向かって歩いていた。
オーフィザン様が隣を歩いてくれるだけで嬉しくて、勝手に笑顔になっちゃう。
そしたらオーフィザン様も、僕が見上げていることに気づいたのか、微笑んでくれた。
わわ!! なんだか恥ずかしい!!
慌てて顔をそむけちゃう。
ううー……二人で歩いているだけでドキドキする!
だけど、気を抜いたらダメだ! ちゃんとお客さんを案内するって決めたんだから! 頑張って、オーフィザン様に褒めてもらうんだもん!!
「ブレシー! 僕、頑張ります!」
「……? 何をですか?」
「案内です! 僕に任せてください!」
「な、なんでそんなに意気込んでいるんですか……?」
「僕、頑張るもん!! あ! ねえ! 見てください!」
僕はブレシーの手を握って、窓まで連れて行った。
今日はすごくいい天気。青空の中に、薄桃色の小さな鳥が何羽も飛んでいて、まるで花びらが舞っているみたい。やっぱりオーフィザン様の魔法は綺麗。
「すごいー……」
「綺麗ですね」
もうすぐ春が来る。そしたら、森にも花が咲く。
みんなで歩くのも楽しいけど、オーフィザン様と二人きりでも歩いてみたい。
きっと楽しいんだろうな……あ、でも、緊張し過ぎちゃうかもしれない。だって、二人きりで歩いたことがあるのは、お城の中くらいだ。
そうか……僕、まだオーフィザン様とデートしたことがないんだ……
僕はドジだし、二人で歩いたりなんかしたら、多分すぐにデートを台無しにしちゃったりするんだろう。
だけどすっごく気をつけたら、オーフィザン様はデートしてくれるかな?
オーフィザン様とデート、したいなあ……
こっそり振り向いて見上げると、オーフィザン様は、笹桜さんと何か話しているみたいだった。
うううー……デートしたいなんて、そんなに簡単に言えない。
夜、オーフィザン様とお部屋で二人きりになったら、言ってみようかな?
そんなことを考えていたら、隣にいたブレシーが「……綺麗ですね」って呟いた。
「……ブレシーは、デートって、したことありますか……?」
「デート?」
「は、はい! 好きな人と歩いたりするんです!」
「僕はそういったことは…………」
「じゃあ、王都でデートに行くならどこですか!?」
「うーん……展望台でしょうか…………?」
「てんぼう?」
「はい。僕は行ったことがありませんが、城下町では人気のようです」
「ふーん……」
「……クラジュ…………誰かとデートですか?」
「……う、うー……からかわないでください……」
オーフィザン様に、デート行きたいって言いたい……
ううー……どうしよう……
なかなか言い出せないでいたら、いきなり後ろから抱き寄せられた。オーフィザン様だ。
「お、オーフィザン様??」
「行くぞ」
「……行く? どこへですか?」
「デートだ」
「ほ、本当ですかっ!?」
「もちろんだ。展望台か? デートでもなんでも、好きなところへ連れて行ってやる」
「え……? わ!!」
いきなり抱き寄せられてキスされて、びっくりした。
キスは嬉しいけど、みんないるよ?? それに、なんだか今日のオーフィザン様、抱きしめる力が強い。
少し痛いくらいに僕を抱きしめたオーフィザン様は、しばらく僕を離してくれなかった。
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