陥れられ蔑まれた俺は、暴虐な冷酷貴族に拘束された。鎖に繋がれ婚約を迫られたが、断固拒否してやる!

迷路を跳ぶ狐

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29.いいのか?

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 ベルブラテスと一緒に、暗殺者の牢に入った俺は、鎖に繋がれた暗殺者の前に立った。だけど、どれだけ呼びかけても、暗殺者は何も言わないどころか、顔すら上げずに俺のことを無視している。

「なあ……聞いてるか? このままだと、お前だけ死刑になるぞ」
「……」
「お前、ウォロンテズだろ?」
「……」
「アンガゲルに言われてきたんだろ?」
「……」

 ダメだな……本当に何も話す気がないようだ。

 すると、いつのまにか牢に入ってきていたらしいキユルトが、いつのまにか、鞭を握って言った。

「そんなんじゃ話さないよ。ねえ、僕がやってみてもいいかな?」
「……ダメです。多分、痛めつけたところで無駄です」

 アンガゲルかフオルア家に言われてきたのなら、絶対に話さないだろうからな……

 だけど、これじゃ埒が開かない。

 どうするかな……

 少し考えて、俺は、キユルトに振り向いた。

「あの……危ないので、外に出ていてもらえませんか?」
「え? 嫌」
「……」

 あっさり言われた……

 これ、これ以上何か言っても無駄だよな……

 無言で牢の外に振り向くと、ブローデスがすかさず牢に入ってきて、キユルトを捕まえて外に出ていく。

「何するの!? ブローデス!」
「いい加減にしないと、地下牢からもつまみ出しますよ?」
「なんで!? 僕はここが好きなのに!!」

 そう叫びながらキユルトは暴れているけど、ブローデスは、彼を抑え込んで、地下牢から引き摺り出していく。

 あいつ……本当に領主になって、大丈夫なのか……

 騒がしいそいつらが、牢から出ていくのを見届けてから、俺は、ベルブラテスに振り向いた。

「……ベルブラテス様も、外に出ていてもらえませんか?」
「そうだな……何をする気なのか、話したらな」
「……」

 怒られるかなって思ったけど、意を決して話すことにした。

「……鎖を外す鍵を貸してください……鎖、外したら、ちょっとくらい……話すかなって思って……」
「そうか……」
「もちろん、牢全体に結界を張ります。俺の結界なら、絶対に外に逃すこともありません。ですから……」
「……」
「逃げるチャンスができれば、きっとあいつも動くと思うので……」

 そう言って、俺は鎖に繋がれたままの暗殺者に振り向いた。

 その男は、未だに微動だにしない。ずっと項垂れたままだ。このままだと、絶対に殺されても何も話さない気がするんだ。

 俺は、ベルブラテスに向き直る。

「……絶対に逃さないので、どうか」
「やってみろ」

 俺の言葉も終わらないうちに、ベルブラテスは暗殺者を牢の壁に繋ぐ鎖を、握った短剣で切ってしまう。

 驚いたのは俺の方。

 いきなり!? いいのか!??
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