嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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16.どういうつもりだ

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 な、なんだ?! いきなり……

 なんでそんなに真剣な顔をしているんだ?

 そんな風に迫られたら、怖いんだが。

 こんなに後退りしたら、僕が怯えているみたいじゃないか。怯えているなんて思われたら、僕が負けたみたいで嫌だ。

 それなのに……

 くそ……やっぱりこいつ、何だかおかしい。

「あっ……その、僕もっ…………会えて、嬉しい………………っっ!!」

 何か、冷たいものが手首に触れた。それは魔法の鎖で、僕の手に巻きつくと手枷に姿を変え、簡単に僕の両手の動きを封じてしまう。

 殿下の魔法だ。

 一体、なんの真似だ!??

 振り解こうとしたけど、すでに遅い。魔法の手枷は僕の手首をとらえて、両手を天井に向けて引っ張る。手枷なのに、まるで生きているみたい。殿下自身に手首を押さえつけられているみたいだ。そのまま僕は吊るされてしまった。

「……ぅっ…………おいっっ!! 何の真似だっっ……!!」

 くそっ……! 油断したっっ!! こんなに簡単に捕まってしまうなんてっ……!!

 足は床についているから、なんとか逃げられないかと暴れてみるけど、その度に、殿下に強く手首を握られているようで、ぞくっとした。

「殿下っ…………?? こっ……これはっ…………一体っ…………」
「やっと…………迎えにくることができた」
「な、何をっ…………こんなのっ……許さないなからなっっ……!! こんなものっ……僕の魔法でっ……んっ…………!!」

 まだ話している途中なのに、何をされたのかと思ったら、唇に、柔らかい殿下の唇が重なっている。

 微かに、僕を吊るした鎖が鳴る音がした気がした。

 それなのに、耳には僕の唇を咥えて、吸うようにする音ばかり聞こえてくる。

 気づいたら、強く、口付けられていた。

「んっ…………んんっ……………」

 なんなんだよっ……! なんで……いきなり、キス……!?

 それだけじゃない。舌まで入れられている。ずるっと侵入してこようとするそれに驚いた僕は、身を引いて抵抗した。
 突然そんなことをされて、意味がわからず、激しく首をよじって逃げる。舐められた僕の唇は濡れていて、怖くなってきた。

「……な……何をするんだっ…………!!」

 睨みつけてやるのに、殿下はさっきと変わらない目で、僕をすぐそばで見下ろしている。
 あと少し唇を近づけられたら、またキスされてしまいそうで、僕はビクッと震えた。

 震える唇からは、もう拒絶の言葉も出てこない。

 それを追い詰めるように、殿下は僕から目を離してくれない。

「…………迎えに来たって……言っただろ?」
「それとこれとは話が違うっっ…………ぼ、僕っ…………キスなんてっ……!」

 キスなんて、初めてだった。初めてのキスが、こんなに強引なものになるなんて思ってなかった。
 それなのに殿下は、逃げる僕の顔を両手で捕まえて、唇の奥の方にまで舌を入れてくる。

 何これっ…………何するんだよっ……!! こいつ!!

 逃げようとすると、手枷に捕まった手首が、ひどく強く掴まれたように痛んだ。拒絶するたびに、殿下に押さえつけられているかのようだ。

 ちゅっと僕の唇を捕らえる音がする。そんな音にすら、鼓動が高鳴る。
 どれだけ抵抗しようが、殿下の鎖が外れることは全くなくて、むしろ強く押さえつけられた。
 逃げようとするたびに強く捕まって、口の中は乱暴に舐られていく。中までぐちゃぐちゃに愛されているみたいだ。

 体が熱くなるたびに苦しくて、力が抜けてぼんやりした僕から、殿下は唇を離して、ぞっとするような顔で微笑んだ。

「俺は、ダスフィレトを迎えにきたんだ」
「そ、それはさっき聞いた!! どういうつもりだっっ…………!」
「俺と、婚約してほしい」
「……………………は?」

 なんて?

 婚約??

 いきなり??

 求婚ってことか? 王子が、僕に? なんで??

 冗談を……言っているような雰囲気じゃない。

 だけど、いきなり求婚って、どういうつもりだ!!

 それにキスだって…………なんでこんなにいきなりっ…………!

「ふ、ふざけるなっ……!」

 僕は怒鳴りつけているのに、彼は相変わらず、じっと愛しげに僕を見下ろしている。その目のまま頬に触れられて、彼から離れようとしたけど、すでに鎖で捕らえられた身では、無駄だった。
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